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メイド喫茶でアルバイト5
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メイド喫茶でアルバイト5
順調、由良と奏楽のコンビは初仕事とは思えない早さで人気者になっていく。
しかしそんな中で事件が起きた。それは由良と奏楽がメイド服に着替えるとき更衣室にいた女、伊藤舞に生じた試練。
「ねぇ、きみって名前なんていうの?」
ある客が笑顔で舞に言った。
「は? 昨日教えましたよね?」
舞のそのいたって日常モードな表情と声というのは、出来の悪い男へ向ける女のつめたい感情、そういう色そのもの。店内が静まり返る。いや、ビーン! と緊張で凍り付いた。
(え? なに?)
由良と奏楽、異様なフンイキを肌で感じてドキッとしてしまう。
「おまえ……おまえものすごく不愉快だ!」
男性が震えながら怒りを露にする。そして男性は店長はどこにいる! とか叫びだす。すると火に油とはよく言ったもので、納得出来ないと舞がだまっていられず反撃する。
「昨日ちゃんと教えたでしょうが、モノ覚えの悪いそっちが悪いんでしょうが!」
これは元よりアウトな話を、完全な終わりに導く決定的なセリフとなった。
「あぁ、あいつ終わったね」
他のメイドたちが小さな声で、あんなバカだとは思わなかったというような目を舞に向ける。
「どうもすみません」
店長は客に頭を下げる。そして罪滅ぼしにと、本日は何を頼んでも無料しますと言って男性から赦しを得る。
「来い!」
鬼のような形相で舞を引っ張り始めた店長、店の奥へグイグイ怒りの速度で向かっていく。
奥からかすかに聞こえる。わたしは悪くないです! と泣き叫ぶ舞の声と、ふざけんなよおまえ! と怒り心頭な店長の声。
せっかくいいフンイキが店内にあふれていたのになぁと、由良と奏楽の2人はテンションが下がり気味になっていた。
すると近くにいた先輩メイドが2人に声をかけた。あんなの気にしないで仕事のテンションをちゃんとキープするようにと。
こうして本日の仕事時間は終わりを迎えた。あのアクシデントがなければ大甘なハッピーデーとなるはずだった。
「あの人……どうなったと思う?」
私服へと戻る最中、由良はとなりの奏楽にちいさくつぶやく。
「ん……まさかクビになったりとか、そんなことはないんじゃないのかなぁ。名前をちゃんと教えたのに、すぐ忘れられたらいい気はしないもんね」
着替え終えた2人が更衣室から出ると、ちょっと離れた所にある休憩室から偶然に出てきた店長と目が合う。
「あ、ちょうどいいわ、ちょっとおいで」
店長は2人にクイクイっと手招き。でもって休憩室にあるソファーに2人を座らせ、テーブルの上にお茶とお菓子を置いて質問した。
「あの失態劇場見ていたわよね? どう思った?」
由良が緊張して声を出しづらいので、代わりに奏楽が共有している疑問を声にした。
「あの、あの人はどうなったんですか?」
「クビよ、あのあとすぐ辞めてもらったわ」
「く、クビ……」
「可哀想と思う?」
「ぅ……」
「いいのよ、思っている事を言ってごらんなさない」
「く、クビは……気の毒かなぁって」
「どうして?」
「ど、どうしてって……」
「ほんとうに可哀想なのはあのお客さんの方なのよ?」
店長曰く、あの客は昨日から仕事を始めたメイドこと伊藤舞をとても気に入った。だから舞目当ててで本日もやってきた。
「あのお客さんが、きみ、名前なんて言うんだっけ? とメイドに聞いたのは、メイドに萌えな反応をしてもらいたかったからよ。例えば、名前を忘れたらハートをあげませんよ、プンプン! とか、今度は忘れないようにわたしのハートと名前の両方を多めに受け取ってくださーいとか、そんな感じのね」
店長は続けた。求められるモノがあるから、その求めに応えるべく存在が成り立つ。メイド喫茶で萌えなフンイキを楽しみたいと思う人がいるからメイド喫茶およびメイドって存在が成り立つ。それを忘れて仕事するとかいうのは犯罪的な傲慢でしかない。だから客を傷つけるようなことを言えるのだと。
「あのメイドはお客さんに対して、はぁ? 昨日教えましたよね? って、明らかに上から見下ろす事を発した。バカにされたと客が思うのは当然。だからあのメイドは接客業に向いていないの。ううん、向いていないとかではなく、やってはいけないというタイプなのよ」
室内の空気が重くなった。由良も奏楽も店長の放つオーラに縮こまってしまう。
「あっと、でもね、あなたたち2人はめっちゃ素晴らしかったわ。ほんとう将来有望」
店長はそう言うと冷蔵庫から可愛いと立派が共存している箱を2つ取り出した。
「これボーナスとしてあげるわ」
それは1箱1万円する高級チョコレートボックス。由良と奏楽の2人はよく冷えた箱を受け取ったが、それは記念すべき初仕事という初陣が大成功だった事を意味していた。
順調、由良と奏楽のコンビは初仕事とは思えない早さで人気者になっていく。
しかしそんな中で事件が起きた。それは由良と奏楽がメイド服に着替えるとき更衣室にいた女、伊藤舞に生じた試練。
「ねぇ、きみって名前なんていうの?」
ある客が笑顔で舞に言った。
「は? 昨日教えましたよね?」
舞のそのいたって日常モードな表情と声というのは、出来の悪い男へ向ける女のつめたい感情、そういう色そのもの。店内が静まり返る。いや、ビーン! と緊張で凍り付いた。
(え? なに?)
由良と奏楽、異様なフンイキを肌で感じてドキッとしてしまう。
「おまえ……おまえものすごく不愉快だ!」
男性が震えながら怒りを露にする。そして男性は店長はどこにいる! とか叫びだす。すると火に油とはよく言ったもので、納得出来ないと舞がだまっていられず反撃する。
「昨日ちゃんと教えたでしょうが、モノ覚えの悪いそっちが悪いんでしょうが!」
これは元よりアウトな話を、完全な終わりに導く決定的なセリフとなった。
「あぁ、あいつ終わったね」
他のメイドたちが小さな声で、あんなバカだとは思わなかったというような目を舞に向ける。
「どうもすみません」
店長は客に頭を下げる。そして罪滅ぼしにと、本日は何を頼んでも無料しますと言って男性から赦しを得る。
「来い!」
鬼のような形相で舞を引っ張り始めた店長、店の奥へグイグイ怒りの速度で向かっていく。
奥からかすかに聞こえる。わたしは悪くないです! と泣き叫ぶ舞の声と、ふざけんなよおまえ! と怒り心頭な店長の声。
せっかくいいフンイキが店内にあふれていたのになぁと、由良と奏楽の2人はテンションが下がり気味になっていた。
すると近くにいた先輩メイドが2人に声をかけた。あんなの気にしないで仕事のテンションをちゃんとキープするようにと。
こうして本日の仕事時間は終わりを迎えた。あのアクシデントがなければ大甘なハッピーデーとなるはずだった。
「あの人……どうなったと思う?」
私服へと戻る最中、由良はとなりの奏楽にちいさくつぶやく。
「ん……まさかクビになったりとか、そんなことはないんじゃないのかなぁ。名前をちゃんと教えたのに、すぐ忘れられたらいい気はしないもんね」
着替え終えた2人が更衣室から出ると、ちょっと離れた所にある休憩室から偶然に出てきた店長と目が合う。
「あ、ちょうどいいわ、ちょっとおいで」
店長は2人にクイクイっと手招き。でもって休憩室にあるソファーに2人を座らせ、テーブルの上にお茶とお菓子を置いて質問した。
「あの失態劇場見ていたわよね? どう思った?」
由良が緊張して声を出しづらいので、代わりに奏楽が共有している疑問を声にした。
「あの、あの人はどうなったんですか?」
「クビよ、あのあとすぐ辞めてもらったわ」
「く、クビ……」
「可哀想と思う?」
「ぅ……」
「いいのよ、思っている事を言ってごらんなさない」
「く、クビは……気の毒かなぁって」
「どうして?」
「ど、どうしてって……」
「ほんとうに可哀想なのはあのお客さんの方なのよ?」
店長曰く、あの客は昨日から仕事を始めたメイドこと伊藤舞をとても気に入った。だから舞目当ててで本日もやってきた。
「あのお客さんが、きみ、名前なんて言うんだっけ? とメイドに聞いたのは、メイドに萌えな反応をしてもらいたかったからよ。例えば、名前を忘れたらハートをあげませんよ、プンプン! とか、今度は忘れないようにわたしのハートと名前の両方を多めに受け取ってくださーいとか、そんな感じのね」
店長は続けた。求められるモノがあるから、その求めに応えるべく存在が成り立つ。メイド喫茶で萌えなフンイキを楽しみたいと思う人がいるからメイド喫茶およびメイドって存在が成り立つ。それを忘れて仕事するとかいうのは犯罪的な傲慢でしかない。だから客を傷つけるようなことを言えるのだと。
「あのメイドはお客さんに対して、はぁ? 昨日教えましたよね? って、明らかに上から見下ろす事を発した。バカにされたと客が思うのは当然。だからあのメイドは接客業に向いていないの。ううん、向いていないとかではなく、やってはいけないというタイプなのよ」
室内の空気が重くなった。由良も奏楽も店長の放つオーラに縮こまってしまう。
「あっと、でもね、あなたたち2人はめっちゃ素晴らしかったわ。ほんとう将来有望」
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