69 / 127
69・少女マンガも読むという光の努力
しおりを挟む
69・少女マンガも読むという光の努力
「あの……マリーにお願いがあるんだ……」
それは昼休みに大事な話があるとかで講堂の裏側で向き合ったときに言われたこと。
「ん……」
真っ赤な顔した光が少しモジモジしたりするのを見ると、これはもしかして恋という営みをひとつ上の次元に押し上げたいとか、もしかするとせめてキスくらいはさせてみたいな心の訴えでは? という読みがわたしの中を駆け抜ける。
「えっとその……」
「おちついて、大事なことはゆっくり言わないと」
「いや、そんなに大した事ではないとは思うけれど」
「いいの、テレる事ないよ、誰だって思い詰めたら苦しいもんだよ」
「え?」
「だいじょうぶ! わたしマリーはおおらかな女だから、彼氏の思い悩みに寄り添う器量は持っているよ」
「え?」
「言って、光の苦しいキモチ、わたしにぶつけて」
「じゃ、じゃぁ……お願いしてもいい?」
「いいよ……」
「マンガ……少女マンガのコミックとか持ってる?」
「へ? 持ってるけれど?」
「じゃぁ貸して欲しい、読みたい」
「は? 話ってそれなの?」
「うん」
「じゃぁ何でモジモジしたの?」
「え、だって……少女マンガを読みたいとか、ちょっとテレくさくて言いにくかったから。っていうか、マリー、顔が赤くない?」
「べ、別に赤くないし」
くぅ! ひとりで盛り上がって損した。ただの女子に言うならともかく彼女へ頼むのにテレるとかまったく持って男ってやつは……
「光って少女マンガとか好きなの?」
「いや、好きっていうか……勉強のひとつ」
「あぁ、小説」
「そう。やっぱり濃厚な女の子とか女性のフィーリングって男の想像では全然追いつかないから、少女マンガで栄養摂取しようと思って」
「うわぁ勉強熱心!」
「ま、まぁね」
「もちろん喜んで貸すよ、学校帰りにわたしの家に寄って。おすすめのマンガ50冊くらいまとめてドーン! と貸すから」
「50冊はクソ重いじゃんか……」
「50冊で値を上げるな、がんばれ男の子!」
わたしは光が一歩進んだ恋を求めてくるのかと思っていたから少し肩透かしを食らった。でもこのがんばる光っていうのはほんとうに大好き。そういう男子の彼女になると、束縛されないマネージャーを濃密に経験できるみたいですごいお得。
「なに、マリーがニヤニヤしているんですけれど」
「なんでもないよ。まぁ、あるとすれば……」
「あるとすれば?」
「な・い・し・ょ」
「なんだよそれ」
わたしはこんなやり取りをして校舎へ戻るとき、密かに神さまへお願いしておいた。光がライトノベル作家になって、わたしと結ばれて結婚し、そしてわたしは光の妻にしてマネージャーとなりますように! と。
「あの……マリーにお願いがあるんだ……」
それは昼休みに大事な話があるとかで講堂の裏側で向き合ったときに言われたこと。
「ん……」
真っ赤な顔した光が少しモジモジしたりするのを見ると、これはもしかして恋という営みをひとつ上の次元に押し上げたいとか、もしかするとせめてキスくらいはさせてみたいな心の訴えでは? という読みがわたしの中を駆け抜ける。
「えっとその……」
「おちついて、大事なことはゆっくり言わないと」
「いや、そんなに大した事ではないとは思うけれど」
「いいの、テレる事ないよ、誰だって思い詰めたら苦しいもんだよ」
「え?」
「だいじょうぶ! わたしマリーはおおらかな女だから、彼氏の思い悩みに寄り添う器量は持っているよ」
「え?」
「言って、光の苦しいキモチ、わたしにぶつけて」
「じゃ、じゃぁ……お願いしてもいい?」
「いいよ……」
「マンガ……少女マンガのコミックとか持ってる?」
「へ? 持ってるけれど?」
「じゃぁ貸して欲しい、読みたい」
「は? 話ってそれなの?」
「うん」
「じゃぁ何でモジモジしたの?」
「え、だって……少女マンガを読みたいとか、ちょっとテレくさくて言いにくかったから。っていうか、マリー、顔が赤くない?」
「べ、別に赤くないし」
くぅ! ひとりで盛り上がって損した。ただの女子に言うならともかく彼女へ頼むのにテレるとかまったく持って男ってやつは……
「光って少女マンガとか好きなの?」
「いや、好きっていうか……勉強のひとつ」
「あぁ、小説」
「そう。やっぱり濃厚な女の子とか女性のフィーリングって男の想像では全然追いつかないから、少女マンガで栄養摂取しようと思って」
「うわぁ勉強熱心!」
「ま、まぁね」
「もちろん喜んで貸すよ、学校帰りにわたしの家に寄って。おすすめのマンガ50冊くらいまとめてドーン! と貸すから」
「50冊はクソ重いじゃんか……」
「50冊で値を上げるな、がんばれ男の子!」
わたしは光が一歩進んだ恋を求めてくるのかと思っていたから少し肩透かしを食らった。でもこのがんばる光っていうのはほんとうに大好き。そういう男子の彼女になると、束縛されないマネージャーを濃密に経験できるみたいですごいお得。
「なに、マリーがニヤニヤしているんですけれど」
「なんでもないよ。まぁ、あるとすれば……」
「あるとすれば?」
「な・い・し・ょ」
「なんだよそれ」
わたしはこんなやり取りをして校舎へ戻るとき、密かに神さまへお願いしておいた。光がライトノベル作家になって、わたしと結ばれて結婚し、そしてわたしは光の妻にしてマネージャーとなりますように! と。
0
あなたにおすすめの小説
わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...
MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。
ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。
さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?
母の下着 タンスと洗濯籠の秘密
MisakiNonagase
青春
この物語は、思春期という複雑で繊細な時期を生きる少年の内面と、彼を取り巻く家族の静かなる絆を描いた作品です。
颯真(そうま)という一人の高校生の、ある「秘密」を通して、私たちは成長の過程で誰もが抱くかもしれない戸惑い、罪悪感、そしてそれらを包み込む家族の無言の理解に触れます。
物語は、現在の颯真と恋人・彩花との関係から、中学時代にさかのぼる形で展開されます。そこで明らかになるのは、彼がかつて母親の下着に対して抱いた抑えがたい好奇心と、それに伴う一連の行為です。それは彼自身が「歪んだ」と感じる過去の断片であり、深い恥ずかしさと自己嫌悪を伴う記憶です。
しかし、この物語の核心は、単なる過去の告白にはありません。むしろ、その行為に「気づいていたはず」の母親が、なぜ一言も問い詰めず、誰にも告げず、ただ静かに見守り続けたのか——という問いにこそあります。そこには、親子という関係を超えた、深い人間理解と、言葉にされない優しさが横たわっています。
センシティブな題材を、露骨な描写や扇情的な表現に頼ることなく、あくまで颯真の内省的な視点から丁寧に紡ぎ出しています。読者は、主人公の痛みと恥ずかしさを共有しながら、同時に、彼を破綻から救った「沈黙の救済」の重みと温かさを感じ取ることでしょう。
これは、一つの過ちと、その赦しについての物語です。また、成長とは時に恥ずかしい過去を背負いながら、他者の無償の寛容さによって初めて前を向けるようになる過程であること、そして家族の愛が最も深く現れるのは、時に何も言わない瞬間であることを、静かにしかし確かに伝える物語です。
どうか、登場人物たちの静かなる心の襞に寄り添いながら、ページをめくってください。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
プール終わり、自分のバッグにクラスメイトのパンツが入っていたらどうする?
九拾七
青春
プールの授業が午前中のときは水着を着こんでいく。
で、パンツを持っていくのを忘れる。
というのはよくある笑い話。
ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる