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異世界の魔女と物語の始まり
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教室のカーテンが風で揺れている、どんよりとした雲からは今にも雨が降り出しそうで、窓際の僕の席に少し湿った風が入ってきた。
月曜日はいつも少し憂鬱だ。
「・・ぶき・・・君・・・」遠くから声が聞こえてくる。
「森山!!森山 いぶき君!!!」大地を揺さぶるような担任の大声に飛び上がりそうになった。「は、はい!」返事をして思わず起立してしまった。
「あはははは・・・」「ふふふ・・・」教室からは笑い声が漏れた。
は・・・恥ずかしい・・・僕は顔を真っ赤にしながら席についた。
「森山くん・・・月曜の朝からぼーーっとしているようでどうするんだい?」担任の長久保先生はずり落ちそうな眼鏡を直しながら僕を見つめて言った。
長久保先生はもう定年間近のベテラン先生だ。一人暮らしをしている僕をいつも気にかけてくれている。
「す・・・すいません。」
昨日の夜、あの出来事があったせいかなかなか寝付けなかった。今もまだふわふわと夢の中にいるような気持ちだ。
一通り朝のホームルームも終わりを迎えるころ、長久保先生が「あぁ、ちょっといいか?今日から一人転校生がこのクラスに来ることになってな、もうそろそろ来る頃なんだが」その時教室のドアをノックする音が聞こえた。
コンコンコン。
「あぁ、来たな。入ってきなさい」
ガラガラ・・・ドアを開けて入ってきた来たのは輝くような金色の髪、白い肌、華奢な手足、顔にはチャーミングなそばかす、瞳は薄く紫がかったブルー。物語からでてきたような女の子。
わぁ・・・とあんぐりその子を見ているクラスの子たちを長久保先生はそうだろう、そうだろうとまるで自分の娘を自慢するかのように満足げに眺めた。
「小野寺 エラさんだ。ご両親のご都合でしばらくの間この学校に通うことになった。みんな、親切にな。それと、心配するな、小野寺は日本語が堪能だ。」
小野寺 エラと紹介された可愛い女の子はにっこりとみんなに笑いかけた。
男子軍団の熱い眼差しがすごい・・・。
僕は・・・というと本当に可愛い、本の中から出てきたような美少女・・・なのにどうも心が動かされない。
それよりも頭の大半をまだ昨日の美女とトカゲがしめている。あれは何だったんだ。
倒れていた男の人はあのまま病院に運ばれて行ったけど・・・大丈夫だったかな?
ぼーっとしている僕の横を転校生は自分の席に向かって歩いてくる。
僕の横を通り過ぎる時に彼女が起こした小さな風からはお菓子のような甘い香りがした。
「みーつけた。」
「?」僕は通り過ぎた彼女の後姿に振り返った。
彼女は通り過ぎる瞬間、小さな声で僕に言った気がした。みつけた?って言った?
なぜだろう・・・背筋が凍るような・・・そんな感じがした。
結局、月曜日の時間割はぼーっとしている僕の頭の中には何一つはいってこなかった。
それにしても、転校生の周りには放課後を告げるチャイムがなっても人だかりがすごい。
男性軍よ、頑張れ!
僕はさっさといつもの通学用にしている大きな黒のリュックに教科書を詰め込み退散した。今日はバイトもないから早く帰ってゆっくりしよう・・・なんて高校生の考えじゃないかもしれないけど。
いつもの帰り道・・・いつもの通りのはずなのに・・・商店街に入ると何だか違和感があった。
あれ・・・?クリーニング屋と文房具屋の間に道なんてあったかな??
いつの間にか道ができていた。いや、毎日通っていたけど・・・気が付かなかっただけかな?
なぜか吸い寄せられるように足がその知らない細い道に向く。
なんか・・・怖いな・・・どこの通りに出るのかな・・・?行き止まりには小さな古い洋風なレンガ作りのお店があった。
外には立て看板が出ているが字が消えかかっていて何と書いてあるか見えない。
もうやっていない店なのかな・・・。興味ないのになぜだろう・・・入ってみたくてたまらない・・・吸い込まれるように重厚な木の扉を開ける・・・
ぶわぁっとむせかえるようなラベンダーの良い香り・・・薄暗い室内に雰囲気があるオレンジ色の優しく光るランタン。
天窓から満月の優しい光が・・・ん?・・・んん?「へ?満月?」おいおい時間たつの早すぎだろ?さっきまで夕方・・・?
「いらっしゃい。あなたが来る頃だと思って紅茶を入れておいたわ」
この声・・・はっとした。いっきに心の、頭の靄が晴れる感じ。
彼女だった。
本棚に囲まれた円柱の空間の真ん中で深い緑色の座り心地が良さそうなソファーに体を預け、ティーカップを片手に本を読んでいる。
月の光が彼女の美しさを幻想的に輝かしている。
「な・・・なんで?え?夢の続き?」こんな偶然あるわけない。そう心で思ったとき「夢ねぇ、あなた、昨日赤い月にお願いしてたじゃない?」僕に話しかけながらもその視線は本に向かったままだ。
「な!」顔が熱い・・・心の中で願っただけなのに・・・
「ふふふ。やだわ、私があなたを呼んだのよ。ごめんなさいね。さぁ、こちらにどうぞ。いぶきくん」僕は言われるがまま彼女の向かいの椅子にゆっくりと腰かけた。
「どうして…僕の名前を?しかもさっきまで夕方だったのに…月がこんなに・・・」こんな状況・・・到底ありえないのになぜ僕は怖くないのか・・・本からこちらに移った彼女のまるで宝石のようなグリーンの瞳が僕を捕らえた。
「ここはね、あなたのいる世界と他の世界とを繋ぐ狭間の空間にあるの、。
そしてここは魔物が眠る書庫よ。」
彼女の瞳は冗談を言っているような色は見られない。
「ど・・・、どういうこと?」
彼女は本をゆっくりと閉じると僕に向き直っていたずらな子供のような笑顔を見せ言った。
「私はね、魔女なの。異世界から異世界へと扉を開けて旅をする魔女よ。そして本を集めているの。異世界に散らばってしまった私の書庫の本を。」
僕は困惑しながら「僕を・・からかってるの?」と聞き返した。
「本当に、人間ってめんどくさいよね。信じる心が乏しくてさ」背後から声がして、僕は肩をビクッと震わせた。振り返ると・・・「あー!!昨日の赤いトカゲ!!」昨日見た羽根の生えたトカゲが・・・プカプカと浮いている・・・。
「だーーかーーらぁ――!僕のどこを見たらあんな下等な生物になっちゃうのさ!目ぇくさってんじゃないの?ちゃんと見てよ!この艶のある赤い鱗。気品のある翼。今は小さく収まっているけど本当の僕はもっと大きくて美しいよ。僕はドラゴン族のリマって言うんだ。」ほっぺたらしいところを膨らませながらリマは言った。「ご・・・ごめん・・・。ちょっと・・いや、だいぶビックリして」
「うふふふふふ。」魔女の彼女は口元を細くて長い指で軽くおさえて可愛らしく笑った。少し笑っただけなのに花が咲いたよう。
何故だかわからないけど胸のあたりがキュウゥゥっとなった。
「私はノーチェっていうの。宜しくねイブ。」
「よ、よろしく・・・って、僕の名前、いぶきですけど」
「あら?イブって響きの方が可愛いじゃない?私の事はノーチェ、この子のことはリマって呼んでね」なんか、この不思議なペースに飲み込まれそうだ。
ノーチェは僕のカップに紅茶を注ぎながらリマに訊ねた。
「で、獲物は引っかかったかしら?」
リマは小さな可愛らしい翼(僕にはそう見える。)をパタパタと羽ばたかせ僕の周りをクンクン嗅ぎまわっている。
「え?な、なに?」
リマはノーチェに向き直るとニヤッと笑いその鋭い牙を光らせた。
「かかったね。僕らのおとり作戦は第一段階成功って感じかな。」
ん?おとり?今、なんて言った?
「ちょ、ちょっとまって、お話が全然見えないんですが・・・」
ノーチェはキョトンとした表情で「あら?気が付かなかったのね?昨日の晩、あなたにちょっとした魔法をかけたの。妖精が次にあなたを狙いやすくなるようにね。」
キノウ・・・?マホウ・・・?「ぇえーーー!!どうゆうこと?」
リマが耳を抑えながら迷惑そうに僕を見つめる。「あのさ~、いちいちリアクション大きすぎて耳キーーーンってなるんですけど。何の事情もなく何の力もない人間の君がまた魔女に会える訳ないでしょ?異世界を旅する魔女に会えるなんて君、本当に奇跡のような確率だよ?」
ノーチェは申し訳なさそうに僕を見て言った。「何の説明もしないでここまで呼び寄せてしまってごめんなさいね、時間がなかったものだから。私が本を探してるっていうのはさっきお話したと思うけど、私の本は普通の本のように安全なものではないの。魔力や魔物が封じられている禁断の書物よ。先代の魔女から私が譲り受けたものなの。だけどある時、何冊かの本が行方不明になってしまった。盗まれてなのか、どうかはわからないのだけど他の世界に散らばってしまったことは私の占いで分かったわ。実はね、この世界で心を取って暴れているのも私の書庫の子なの。匂いからして妖精のはずなんだけど。早く見つけないとこの世界に歪みがでてしまうわ。」さっきから時間が少しづつ過ぎているのに天窓の満月は少しもその場所を動こうとはしていない。そこにピンで止まっているかのようだ。
「えっと。君の話は大体理解できたと思う。まだだいぶ疑問が残るけど・・・それと僕に魔法がかかっているというのは?」リマは僕の横にちょこんとならんだ。
「君がノーチェにまた会えたのは僕のお陰と言っても過言ではないんだから感謝してよね?僕があの時おとりを使う作戦を思いついたんだからさ、妖精にとって君の心がものすごく魅力的に映る魔法をかけたさ。作戦は大成功。君の近くにはもう妖精が近づいてきたって訳。心当たりないの?」
リマは自画自賛状態だ。
僕はふかふかのソファーで顔を青くしながらノーチェに訊ねた。「それって・・・僕に危険が迫っているともいえるよね。」カッと目を見開いて思わずリマを掴んだ!「ねぇ!それって次は僕があの男の人みたいになっちゃうって事だよね??」頭の中で昨日の記憶がよみがえる。目を開いたまま倒れてる何の反応もしない人形のような男の人・・・。ゾッとした。
ゴワゴワとした固い鱗は僕の腕からするりと抜けてノーチェの肩に腰を下ろした。
「安心して。私がちゃんとあなたを守るから。」
ラベンダーの香りに包まれた静かな書庫。
月が張られた天窓。
暖かそうなオレンジ色を灯すランタン。
美しい魔女とドラゴン。
僕の物語はここから始まった。
月曜日はいつも少し憂鬱だ。
「・・ぶき・・・君・・・」遠くから声が聞こえてくる。
「森山!!森山 いぶき君!!!」大地を揺さぶるような担任の大声に飛び上がりそうになった。「は、はい!」返事をして思わず起立してしまった。
「あはははは・・・」「ふふふ・・・」教室からは笑い声が漏れた。
は・・・恥ずかしい・・・僕は顔を真っ赤にしながら席についた。
「森山くん・・・月曜の朝からぼーーっとしているようでどうするんだい?」担任の長久保先生はずり落ちそうな眼鏡を直しながら僕を見つめて言った。
長久保先生はもう定年間近のベテラン先生だ。一人暮らしをしている僕をいつも気にかけてくれている。
「す・・・すいません。」
昨日の夜、あの出来事があったせいかなかなか寝付けなかった。今もまだふわふわと夢の中にいるような気持ちだ。
一通り朝のホームルームも終わりを迎えるころ、長久保先生が「あぁ、ちょっといいか?今日から一人転校生がこのクラスに来ることになってな、もうそろそろ来る頃なんだが」その時教室のドアをノックする音が聞こえた。
コンコンコン。
「あぁ、来たな。入ってきなさい」
ガラガラ・・・ドアを開けて入ってきた来たのは輝くような金色の髪、白い肌、華奢な手足、顔にはチャーミングなそばかす、瞳は薄く紫がかったブルー。物語からでてきたような女の子。
わぁ・・・とあんぐりその子を見ているクラスの子たちを長久保先生はそうだろう、そうだろうとまるで自分の娘を自慢するかのように満足げに眺めた。
「小野寺 エラさんだ。ご両親のご都合でしばらくの間この学校に通うことになった。みんな、親切にな。それと、心配するな、小野寺は日本語が堪能だ。」
小野寺 エラと紹介された可愛い女の子はにっこりとみんなに笑いかけた。
男子軍団の熱い眼差しがすごい・・・。
僕は・・・というと本当に可愛い、本の中から出てきたような美少女・・・なのにどうも心が動かされない。
それよりも頭の大半をまだ昨日の美女とトカゲがしめている。あれは何だったんだ。
倒れていた男の人はあのまま病院に運ばれて行ったけど・・・大丈夫だったかな?
ぼーっとしている僕の横を転校生は自分の席に向かって歩いてくる。
僕の横を通り過ぎる時に彼女が起こした小さな風からはお菓子のような甘い香りがした。
「みーつけた。」
「?」僕は通り過ぎた彼女の後姿に振り返った。
彼女は通り過ぎる瞬間、小さな声で僕に言った気がした。みつけた?って言った?
なぜだろう・・・背筋が凍るような・・・そんな感じがした。
結局、月曜日の時間割はぼーっとしている僕の頭の中には何一つはいってこなかった。
それにしても、転校生の周りには放課後を告げるチャイムがなっても人だかりがすごい。
男性軍よ、頑張れ!
僕はさっさといつもの通学用にしている大きな黒のリュックに教科書を詰め込み退散した。今日はバイトもないから早く帰ってゆっくりしよう・・・なんて高校生の考えじゃないかもしれないけど。
いつもの帰り道・・・いつもの通りのはずなのに・・・商店街に入ると何だか違和感があった。
あれ・・・?クリーニング屋と文房具屋の間に道なんてあったかな??
いつの間にか道ができていた。いや、毎日通っていたけど・・・気が付かなかっただけかな?
なぜか吸い寄せられるように足がその知らない細い道に向く。
なんか・・・怖いな・・・どこの通りに出るのかな・・・?行き止まりには小さな古い洋風なレンガ作りのお店があった。
外には立て看板が出ているが字が消えかかっていて何と書いてあるか見えない。
もうやっていない店なのかな・・・。興味ないのになぜだろう・・・入ってみたくてたまらない・・・吸い込まれるように重厚な木の扉を開ける・・・
ぶわぁっとむせかえるようなラベンダーの良い香り・・・薄暗い室内に雰囲気があるオレンジ色の優しく光るランタン。
天窓から満月の優しい光が・・・ん?・・・んん?「へ?満月?」おいおい時間たつの早すぎだろ?さっきまで夕方・・・?
「いらっしゃい。あなたが来る頃だと思って紅茶を入れておいたわ」
この声・・・はっとした。いっきに心の、頭の靄が晴れる感じ。
彼女だった。
本棚に囲まれた円柱の空間の真ん中で深い緑色の座り心地が良さそうなソファーに体を預け、ティーカップを片手に本を読んでいる。
月の光が彼女の美しさを幻想的に輝かしている。
「な・・・なんで?え?夢の続き?」こんな偶然あるわけない。そう心で思ったとき「夢ねぇ、あなた、昨日赤い月にお願いしてたじゃない?」僕に話しかけながらもその視線は本に向かったままだ。
「な!」顔が熱い・・・心の中で願っただけなのに・・・
「ふふふ。やだわ、私があなたを呼んだのよ。ごめんなさいね。さぁ、こちらにどうぞ。いぶきくん」僕は言われるがまま彼女の向かいの椅子にゆっくりと腰かけた。
「どうして…僕の名前を?しかもさっきまで夕方だったのに…月がこんなに・・・」こんな状況・・・到底ありえないのになぜ僕は怖くないのか・・・本からこちらに移った彼女のまるで宝石のようなグリーンの瞳が僕を捕らえた。
「ここはね、あなたのいる世界と他の世界とを繋ぐ狭間の空間にあるの、。
そしてここは魔物が眠る書庫よ。」
彼女の瞳は冗談を言っているような色は見られない。
「ど・・・、どういうこと?」
彼女は本をゆっくりと閉じると僕に向き直っていたずらな子供のような笑顔を見せ言った。
「私はね、魔女なの。異世界から異世界へと扉を開けて旅をする魔女よ。そして本を集めているの。異世界に散らばってしまった私の書庫の本を。」
僕は困惑しながら「僕を・・からかってるの?」と聞き返した。
「本当に、人間ってめんどくさいよね。信じる心が乏しくてさ」背後から声がして、僕は肩をビクッと震わせた。振り返ると・・・「あー!!昨日の赤いトカゲ!!」昨日見た羽根の生えたトカゲが・・・プカプカと浮いている・・・。
「だーーかーーらぁ――!僕のどこを見たらあんな下等な生物になっちゃうのさ!目ぇくさってんじゃないの?ちゃんと見てよ!この艶のある赤い鱗。気品のある翼。今は小さく収まっているけど本当の僕はもっと大きくて美しいよ。僕はドラゴン族のリマって言うんだ。」ほっぺたらしいところを膨らませながらリマは言った。「ご・・・ごめん・・・。ちょっと・・いや、だいぶビックリして」
「うふふふふふ。」魔女の彼女は口元を細くて長い指で軽くおさえて可愛らしく笑った。少し笑っただけなのに花が咲いたよう。
何故だかわからないけど胸のあたりがキュウゥゥっとなった。
「私はノーチェっていうの。宜しくねイブ。」
「よ、よろしく・・・って、僕の名前、いぶきですけど」
「あら?イブって響きの方が可愛いじゃない?私の事はノーチェ、この子のことはリマって呼んでね」なんか、この不思議なペースに飲み込まれそうだ。
ノーチェは僕のカップに紅茶を注ぎながらリマに訊ねた。
「で、獲物は引っかかったかしら?」
リマは小さな可愛らしい翼(僕にはそう見える。)をパタパタと羽ばたかせ僕の周りをクンクン嗅ぎまわっている。
「え?な、なに?」
リマはノーチェに向き直るとニヤッと笑いその鋭い牙を光らせた。
「かかったね。僕らのおとり作戦は第一段階成功って感じかな。」
ん?おとり?今、なんて言った?
「ちょ、ちょっとまって、お話が全然見えないんですが・・・」
ノーチェはキョトンとした表情で「あら?気が付かなかったのね?昨日の晩、あなたにちょっとした魔法をかけたの。妖精が次にあなたを狙いやすくなるようにね。」
キノウ・・・?マホウ・・・?「ぇえーーー!!どうゆうこと?」
リマが耳を抑えながら迷惑そうに僕を見つめる。「あのさ~、いちいちリアクション大きすぎて耳キーーーンってなるんですけど。何の事情もなく何の力もない人間の君がまた魔女に会える訳ないでしょ?異世界を旅する魔女に会えるなんて君、本当に奇跡のような確率だよ?」
ノーチェは申し訳なさそうに僕を見て言った。「何の説明もしないでここまで呼び寄せてしまってごめんなさいね、時間がなかったものだから。私が本を探してるっていうのはさっきお話したと思うけど、私の本は普通の本のように安全なものではないの。魔力や魔物が封じられている禁断の書物よ。先代の魔女から私が譲り受けたものなの。だけどある時、何冊かの本が行方不明になってしまった。盗まれてなのか、どうかはわからないのだけど他の世界に散らばってしまったことは私の占いで分かったわ。実はね、この世界で心を取って暴れているのも私の書庫の子なの。匂いからして妖精のはずなんだけど。早く見つけないとこの世界に歪みがでてしまうわ。」さっきから時間が少しづつ過ぎているのに天窓の満月は少しもその場所を動こうとはしていない。そこにピンで止まっているかのようだ。
「えっと。君の話は大体理解できたと思う。まだだいぶ疑問が残るけど・・・それと僕に魔法がかかっているというのは?」リマは僕の横にちょこんとならんだ。
「君がノーチェにまた会えたのは僕のお陰と言っても過言ではないんだから感謝してよね?僕があの時おとりを使う作戦を思いついたんだからさ、妖精にとって君の心がものすごく魅力的に映る魔法をかけたさ。作戦は大成功。君の近くにはもう妖精が近づいてきたって訳。心当たりないの?」
リマは自画自賛状態だ。
僕はふかふかのソファーで顔を青くしながらノーチェに訊ねた。「それって・・・僕に危険が迫っているともいえるよね。」カッと目を見開いて思わずリマを掴んだ!「ねぇ!それって次は僕があの男の人みたいになっちゃうって事だよね??」頭の中で昨日の記憶がよみがえる。目を開いたまま倒れてる何の反応もしない人形のような男の人・・・。ゾッとした。
ゴワゴワとした固い鱗は僕の腕からするりと抜けてノーチェの肩に腰を下ろした。
「安心して。私がちゃんとあなたを守るから。」
ラベンダーの香りに包まれた静かな書庫。
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