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魔女のダイニング
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彼女の家の扉を開けると、そこはもう僕の部屋だった。
結局僕は僕を守ってくれると言う彼女を信じておとりになることを了承した。っていうか僕の意見なんてはなからないのと同じなんだけど。
しかし本当に不思議だ。さっきまで商店街の一角にいたのに・・・
どうやらノーチェの家の中の時間はかなりゆっくりと進んでいるらしく2時間ほど話していたと思っていたが家の時計をみるとあの家にいたのはほんの5分程度だった事がわかった。魔法って本当にあるんだ。魔女もドラゴンも本当にいるんだ。
あの本棚にはどんな魔法が入っているのか・・・こんなにわくわくしたのはいつぶりだろう。自分が大人になるために捨てていかなきゃといつからか思っていたものをまた大切にできる喜びで胸が一杯になる。
でもそれと同時にこれから僕に降りかかるであろう危険に身を震わせた。
ノーチェの家から出る時に彼女がお守りになるからと一冊の古ぼけた本を貸してくれたけど本の中身は白紙だった。「本当にこれが何かの役にたつのかな・・・明日目を覚ましたら夢だったなんて事ありませんように」
夢を見た。不思議な夢だ。父さんが本を持って旅をしてる夢。
見たこともない景色の中で僕は遠くにいる父さんを必死で呼んでいる。
でも父さんにはその声が届かなくて・・・くやしくて・・・涙がでる・・・
目が覚めると泣いていた。昔、よく同じような夢を見た。
久しぶりだ・・・。
ベットの横の時計に目をやるとまだ朝の5時。・・・このまま寝てしまったらもう学校に遅刻してしまう時間まで目は覚めないだろう。
は~。「早いけど・・・起きるか・・・」初夏になるとこの時間でも明るいのがまだ救いだ。
ハッと思い出しリュックの中に手を突っ込む、「あ!良かった・・・夢じゃない」
お守りの本はちゃんとリュックの中に入っていた。
こんなに早い時間・・・絶対に迷惑だ・・・。わかってはいるのに確かめずにはいられなかった。僕は水道の冷たい水で思い切り顔を洗い、身支度を整え、朝ごはんも食べずに家を出た。
祈るような気持ちで商店街に入ると、クリーニング屋と文房具屋の間・・・その道はまだそこにあった。ドキドキする胸を押さえながら深呼吸をしてその道を歩いていく。レンガ造りの外壁、重厚な扉をノックした。扉は僕が開けなくても静かに開いて僕を招きいれた。
昨日のラベンダーの香りとは打って変わって今朝はパンのいい匂いで部屋の中は一杯だ。
「おはようございます。イブ様。」棚の陰から低い男性の声がした。
陰から姿を現したのは上品なグレーのスーツに身を包んだ・・・狼・・・?体は人・・・頭は「シ・・・白い・・・狼・・・?」口元から大きな牙が白く光っている。「おや?獣人族は初めてでしたか?それは驚かせてしまいましたね、私は獣人族のシャドウと申します。以後お見知りおきを」きっと笑いかけてくれたのだろうけれど牙の印象がすごくて・・・なんて恐ろしい笑顔なんだ・・・。
大きたくましい体に鋭い狼の顔…つ…強そうだ。
何か・・・獣人族の僕のイメージが…可愛い獣の耳の生えた人種かと思ってた・・・。
「さ、イブ様。こちらにどうぞ」
紳士的な振る舞いの狼男は僕を彼女のいるダイニングに案内してくれた。
この建物…外側はとても広いようには見えないのにどんな構造になっているんだろう?あぁ、考えるだけ無駄だな・・・。
「おはよう、イブ。あなたいつもこんなに早起きなの?人間の世界じゃまだ動き出すには早い時間じゃない?まぁ、私の家に朝は来ないのだけどね。」
今日の彼女は、レースが付いている清楚な淡い水色のワンピース姿でアンティーク調の椅子に腰かけている。ダイニングは天井が高くなっていて、少しカーブしている壁には白い縁取りの大きな窓があり、気持ちの良い夜風がカーテンを揺らして入ってくる。今日も綺麗な月夜だ。
「夢じゃないか…確かめたくて。何か・・・外は朝でここは夜って変な感じ」
「そう?慣れてしまえばなんでもないわ。日差しは私には強すぎるもの。」
たしかに彼女の雪のような透明な肌には毒かもな・・・。
椅子につくと狼男のシャドウが朝食を僕の分まで運んでくれた。
絞りたてのオレンジジュースはすごく濃厚、それに焼き立てのパンの香ばしい香り、オムレツはふわふわで付け合わせのサラダは新鮮な色をしている。どれもすごく美味しそうだ。ぐぅぅぅ・・・僕のお腹は素直らしい。
ノーチェがクスクスと可愛らしい笑い声を漏らした。
「どうぞ召し上がれ。魔女のダイニングにようこそ。誰かと一緒に食事をとるなんて久しぶりだわ。」
「リマ達とはご飯食べないの?」僕はパンをちぎりながら言った。
「実はリマもそこにいるシャドウも私と同じものは食べられないの。彼らはここにある本達だから。魔力を吸収して自分のエネルギーにしているの。」
そうか…彼らは本の魔物たちなのか・・・。
「魔力はどうやって手にいれてるの?」
「ここはね、月の魔力で満ちているの。月には魔力があるって知ってるかしら?」
そういえば、占いとか物語の中でそんな事が書いてあったような・・・
「だから…いつもここには満月があるのか・・・」
「それもあるし、私も静かで心地いいこういう夜が好きなの。」
そう言う彼女には夜が似合う、その美しい黒い髪も透き通る肌も瞳の深いグリーンも夜の闇がさらに彼女を引き立てているようだ。
「見つめられるとご飯が食べずらいんだけど」
ノーチェは笑いをこらえながらこちらを見ている。
「ご!ごめん!」は、恥ずかしい。
僕の顔は耳まで真っ赤だ。パンを片手に見つめてしまった。
「昨日の話の続きだけどさ、僕は、その、妖精を捕まえるために何をしたらいいの?」
「なに、釣り竿の先のエサのように美味しそうに泳いでいてくれればいいだけさ」
耳元で急に声がした。
「うぁぁ!」僕はびっくりして椅子から落ちそうになった。
「だーかーらー。何度も言わせないでよね。耳がやられるんだけど」
声の主は赤い小さなドラゴン、リマだった。
「お、脅かさないでよ!」
リマは僕の頭にドスンと座ると「イブは本当に面白い反応してくれるよね。シャドウなんか脅かしても無反応だよ。」シシシ・・・といじわるそうにリマは笑った。
「リーマー。駄目でしょ。人間はか弱い生き物なのだから気を付けてあげて」
か弱いってなんかヤな響きだな。
「だけど、イブは何もしなくても大丈夫よ。妖精の方から近づいてくるはずだから。たぶん・・・ここからいなくなってずいぶん経つからお腹もペコペコだろうし。」
「?え?どういうこと?」
「あなたの中に少し魔力を流しておいたから。人間で魔力を持っている人ってすごく少ないからすぐに魔力に惹かれてやってくるはずよ」
「魅力的に見えるようにしたって・・・そういうこと?」
頭の上のリマがまたシシシ・・・と笑った。
結局僕は僕を守ってくれると言う彼女を信じておとりになることを了承した。っていうか僕の意見なんてはなからないのと同じなんだけど。
しかし本当に不思議だ。さっきまで商店街の一角にいたのに・・・
どうやらノーチェの家の中の時間はかなりゆっくりと進んでいるらしく2時間ほど話していたと思っていたが家の時計をみるとあの家にいたのはほんの5分程度だった事がわかった。魔法って本当にあるんだ。魔女もドラゴンも本当にいるんだ。
あの本棚にはどんな魔法が入っているのか・・・こんなにわくわくしたのはいつぶりだろう。自分が大人になるために捨てていかなきゃといつからか思っていたものをまた大切にできる喜びで胸が一杯になる。
でもそれと同時にこれから僕に降りかかるであろう危険に身を震わせた。
ノーチェの家から出る時に彼女がお守りになるからと一冊の古ぼけた本を貸してくれたけど本の中身は白紙だった。「本当にこれが何かの役にたつのかな・・・明日目を覚ましたら夢だったなんて事ありませんように」
夢を見た。不思議な夢だ。父さんが本を持って旅をしてる夢。
見たこともない景色の中で僕は遠くにいる父さんを必死で呼んでいる。
でも父さんにはその声が届かなくて・・・くやしくて・・・涙がでる・・・
目が覚めると泣いていた。昔、よく同じような夢を見た。
久しぶりだ・・・。
ベットの横の時計に目をやるとまだ朝の5時。・・・このまま寝てしまったらもう学校に遅刻してしまう時間まで目は覚めないだろう。
は~。「早いけど・・・起きるか・・・」初夏になるとこの時間でも明るいのがまだ救いだ。
ハッと思い出しリュックの中に手を突っ込む、「あ!良かった・・・夢じゃない」
お守りの本はちゃんとリュックの中に入っていた。
こんなに早い時間・・・絶対に迷惑だ・・・。わかってはいるのに確かめずにはいられなかった。僕は水道の冷たい水で思い切り顔を洗い、身支度を整え、朝ごはんも食べずに家を出た。
祈るような気持ちで商店街に入ると、クリーニング屋と文房具屋の間・・・その道はまだそこにあった。ドキドキする胸を押さえながら深呼吸をしてその道を歩いていく。レンガ造りの外壁、重厚な扉をノックした。扉は僕が開けなくても静かに開いて僕を招きいれた。
昨日のラベンダーの香りとは打って変わって今朝はパンのいい匂いで部屋の中は一杯だ。
「おはようございます。イブ様。」棚の陰から低い男性の声がした。
陰から姿を現したのは上品なグレーのスーツに身を包んだ・・・狼・・・?体は人・・・頭は「シ・・・白い・・・狼・・・?」口元から大きな牙が白く光っている。「おや?獣人族は初めてでしたか?それは驚かせてしまいましたね、私は獣人族のシャドウと申します。以後お見知りおきを」きっと笑いかけてくれたのだろうけれど牙の印象がすごくて・・・なんて恐ろしい笑顔なんだ・・・。
大きたくましい体に鋭い狼の顔…つ…強そうだ。
何か・・・獣人族の僕のイメージが…可愛い獣の耳の生えた人種かと思ってた・・・。
「さ、イブ様。こちらにどうぞ」
紳士的な振る舞いの狼男は僕を彼女のいるダイニングに案内してくれた。
この建物…外側はとても広いようには見えないのにどんな構造になっているんだろう?あぁ、考えるだけ無駄だな・・・。
「おはよう、イブ。あなたいつもこんなに早起きなの?人間の世界じゃまだ動き出すには早い時間じゃない?まぁ、私の家に朝は来ないのだけどね。」
今日の彼女は、レースが付いている清楚な淡い水色のワンピース姿でアンティーク調の椅子に腰かけている。ダイニングは天井が高くなっていて、少しカーブしている壁には白い縁取りの大きな窓があり、気持ちの良い夜風がカーテンを揺らして入ってくる。今日も綺麗な月夜だ。
「夢じゃないか…確かめたくて。何か・・・外は朝でここは夜って変な感じ」
「そう?慣れてしまえばなんでもないわ。日差しは私には強すぎるもの。」
たしかに彼女の雪のような透明な肌には毒かもな・・・。
椅子につくと狼男のシャドウが朝食を僕の分まで運んでくれた。
絞りたてのオレンジジュースはすごく濃厚、それに焼き立てのパンの香ばしい香り、オムレツはふわふわで付け合わせのサラダは新鮮な色をしている。どれもすごく美味しそうだ。ぐぅぅぅ・・・僕のお腹は素直らしい。
ノーチェがクスクスと可愛らしい笑い声を漏らした。
「どうぞ召し上がれ。魔女のダイニングにようこそ。誰かと一緒に食事をとるなんて久しぶりだわ。」
「リマ達とはご飯食べないの?」僕はパンをちぎりながら言った。
「実はリマもそこにいるシャドウも私と同じものは食べられないの。彼らはここにある本達だから。魔力を吸収して自分のエネルギーにしているの。」
そうか…彼らは本の魔物たちなのか・・・。
「魔力はどうやって手にいれてるの?」
「ここはね、月の魔力で満ちているの。月には魔力があるって知ってるかしら?」
そういえば、占いとか物語の中でそんな事が書いてあったような・・・
「だから…いつもここには満月があるのか・・・」
「それもあるし、私も静かで心地いいこういう夜が好きなの。」
そう言う彼女には夜が似合う、その美しい黒い髪も透き通る肌も瞳の深いグリーンも夜の闇がさらに彼女を引き立てているようだ。
「見つめられるとご飯が食べずらいんだけど」
ノーチェは笑いをこらえながらこちらを見ている。
「ご!ごめん!」は、恥ずかしい。
僕の顔は耳まで真っ赤だ。パンを片手に見つめてしまった。
「昨日の話の続きだけどさ、僕は、その、妖精を捕まえるために何をしたらいいの?」
「なに、釣り竿の先のエサのように美味しそうに泳いでいてくれればいいだけさ」
耳元で急に声がした。
「うぁぁ!」僕はびっくりして椅子から落ちそうになった。
「だーかーらー。何度も言わせないでよね。耳がやられるんだけど」
声の主は赤い小さなドラゴン、リマだった。
「お、脅かさないでよ!」
リマは僕の頭にドスンと座ると「イブは本当に面白い反応してくれるよね。シャドウなんか脅かしても無反応だよ。」シシシ・・・といじわるそうにリマは笑った。
「リーマー。駄目でしょ。人間はか弱い生き物なのだから気を付けてあげて」
か弱いってなんかヤな響きだな。
「だけど、イブは何もしなくても大丈夫よ。妖精の方から近づいてくるはずだから。たぶん・・・ここからいなくなってずいぶん経つからお腹もペコペコだろうし。」
「?え?どういうこと?」
「あなたの中に少し魔力を流しておいたから。人間で魔力を持っている人ってすごく少ないからすぐに魔力に惹かれてやってくるはずよ」
「魅力的に見えるようにしたって・・・そういうこと?」
頭の上のリマがまたシシシ・・・と笑った。
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