鑑定魔法で「時価」が見えるようになったので、勇者パーティを損切りする~金貨10億枚の価値がある少女を拾った俺、新天地で最強投資家へ~

茄子山

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第2話:泥中の宝石

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 崖下の暗がり。
 漂う腐敗臭と、魔物のうなり声。

 右手に握った魔導鉱石の原石。
 これ一つで、妹の当面の治療費は稼げるはずだ。
 まずは生きて帰ること。


(これっぽっちじゃあ、まだ足りない。あいつらを地獄に落とすには、圧倒的な資本がいる)

 立ち上がろうとした瞬間。
 背後の茂みが大きく揺れる。
 現れたのは、ボロ布を纏った一人の少女。

「……はあ、はあ……っ!」

 乱れる呼吸。
 泥にまみれた銀髪。
 背後からは、数人の男たちの足音。

「逃げんなよ、金貨八百枚が!」
「その体、綺麗なまま売れば一生遊んで暮らせるんだよ!」
「お前ら、絶対に死なすんじゃねーぞ?」

 下卑た笑い声。
 少女を追い詰めるのは、賞金稼ぎ風の男たち。
 少女は俺と目が合うと、絶望に瞳を揺らした。

(なんだあいつら、奴隷狩りか?……可哀想だがこっちも関わってられるほど余裕がねえ)

 フラつきながら立ち去ろうとした、その時。
 無意識に視界が「鑑定」を走らせる。


『逃亡中の少女』【時価:金貨800枚。状態:重度の魔力閉塞マナ詰まり


(金貨、はっぴゃくまい!? めちゃくちゃ高いな。何でこんなところに……いや、待て)

 さらに視界の隅、赤く点滅する「詳細データ」が目に刺さる。

【将来価値:金貨1,011,050,378枚以上】
【特記事項:魔導出力は王族級。魔力閉塞が改善した場合に限る】

 一、十、百、千……。
 謎の文字列が示しているのは、国家予算を遥かに超える時価総額。

「はあ?なんだこいつは!?」

「おい!!」
「どけ。そのガキは俺たちの獲物だ」

 驚く俺を見て追手の男が、錆びた大剣を肩に担いで歩み寄る。
 俺は思わず男の装備を鑑定みる

『錆びた大剣』【時価銅貨25枚。状態:手入れ不足。一撃で粉砕のおそれ】

(こいつぁ、……投資価値、ありだな!!)

 俺は少女の前に一歩踏み出した。

「おい、おっさん。あんたのゴミ、終わってるぜ」
「あぁ? いきなり出てきて何言ってやがる、すっこんでろ!」

 振り下ろされる大剣。
 俺は避けない。
 視界には、男の剣に走る微細な「亀裂」がハッキリと見える。

 指先を添える。
 衝撃を吸収するのではなく、外骨格マギの力を一点に集中し、その亀裂を「突いた」。

 パキンッ。

 乾いた音。
 大剣が根元から、まるでガラス細工のように砕け散る。

「……はっ!?はああああ!!!!????」

「悪いがあんたの武器、銅貨一枚以下だわ」

 驚愕で固まる男たちの鳩尾に丁寧に一発ずつ魔力を込めた拳を叩き込む。
 崩れ落ちる男たち。
 沈黙する森。

 俺は、へたり込んだ少女に向き直った。
 彼女は震える手で、俺のボロ布の裾を掴む。

「わ、私を、私を買ってください。痛いのは嫌!死ぬのは……もっと、嫌……」

 涙で濡れた瞳。
 だが、俺が見ているのは薄汚れてもなお穢されない彼女の美貌――ではない。
 その奥に眠る、莫大な「時価総額」だ。

「いいだろう。俺の全財産――原石おまえに投資してやる」

 俺は懐から時価金貨500枚の原石を、彼女に差し出した。
 このくそったれなブラック王国から逃げ出すための、最初の「仕入れ」を始めようじゃないか。
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