鑑定魔法で「時価」が見えるようになったので、勇者パーティを損切りする~金貨10億枚の価値がある少女を拾った俺、新天地で最強投資家へ~

茄子山

文字の大きさ
3 / 9

第3話:死んだはずの男

しおりを挟む
 冒険者ギルド。
 昼下がりの喧騒を切り裂く、下卑た笑い声。
 中央のテーブルを陣取っているのは、勇者パーティ。
 勇者グラディウスは喜色満面でジョッキを呷る。

「いやあ、荷物持ちクエルタ一人で金貨二十枚の保険金。美味すぎるぜ」

 周囲の冒険者たちも、苦笑いしながらそれを見ている。
 彼らにとって、冒険者の死は「よくある事故」に過ぎない。

 普通、一人の冒険者にこれほどの保険金が下りるはずがない。
 どれだけ掛金を積んでいたのか、という眼で彼らは見ていたのだが。

「死んでくれて感謝だな。あいつ、鑑定しか能がないゴミだったし」

 聖女レイラが、クエルタの保険金で買った杖を愛でる。
 女魔法使いブリタニアがテーブルの魔導書を撫でる。

 その時、ぎぃとギルドの重い扉が、音を立てて開いた。

「よお。俺の保険金の酒の味はどうだ?」

 静寂。
 ジョッキが床に落ち、中身が溢れる。
 全員の視線が、扉に立つ俺――そして、背後に控える銀髪の美少女に注がれる。

「なっ……!? お前、生きて……」
「悪いな。崖の下は思ったより居心地が悪くてな」

 俺はゆっくりと彼らのテーブルへ歩み寄る。
 勇者が顔を赤くし、腰の剣に手をかけた。

「……お前、生きてたのかよ。はっ、残念ながら金は使っちまったぜ。ギルドから文句言われたらお前が立て替えとけよ?」

「生きてるのを知った途端に俺の保険金かねの話かよ。相変わらず腐ってんな。ついでにあんたの『聖銀の剣くさったもん』も鑑定してやろうか?」

 俺の視界は勇者剣の魔力をスキャンする。

『聖銀の剣』【時価:銅貨10枚。魔力保持率:0.2%(廃棄推奨)】

「はっ! 鑑定だと? こいつは国から授かった魔剣だ。お前みたいな無能に何が――」
「今朝の魔獣戦、無理に魔力を流し込んだだろ。ガタが来てるぜ、メンテ不足だ」

 俺は一歩、踏み出す。
 周囲の冒険者たちが息を呑む。

「その剣の価値、限りなくゼロに近い。……下手に抜けば爆発するぜ。持ち主の腕を巻き込んで、な」

「……ふざけるな! 黙れ!」

 グラディウスが激昂し、剣を引き抜こうとした瞬間。

 バキリッ。

 抜剣の衝撃にすら耐えられず美しい聖銀の剣身は、見る影もなく砕け散った。
 飛び散る破片。
 勇者は、柄だけを握って間抜けに突っ立っている。

「……な、なんだこれ……俺の魔剣が……!」

「だから、言ったろ。あんたのプライド、その砕けた魔剣以下だね」

 俺は隣に立つ少女の肩を抱き、ギルドの受付へと向かう。
 勇者の肩書は時価総額が大暴落中だ。
 損切りはすでに済ませた。

「あ、それと。その折れた剣の処分費用、保険金から引いとけよ」

 背後で響く勇者の絶叫がうるさくも心地よかった。
 この、くっそざまあが。

 俺の視界にはブラックなこの王国からの脱出最短ルートと、その後に稼ぎ出す莫大な利益の数値が浮かんでいた。

【現在の所持金:金貨500枚相当(原石)】
【目標時価総額:国家予算超え】

「行こうか。……俺たちの『価値』を見せつけにな」
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

聖女の私が追放されたらお父さんも一緒についてきちゃいました。

重田いの
ファンタジー
聖女である私が追放されたらお父さんも一緒についてきちゃいました。 あのお、私はともかくお父さんがいなくなるのは国としてマズイと思うのですが……。 よくある聖女追放ものです。

国外追放ですか? 承りました。では、すぐに国外にテレポートします。

樋口紗夕
恋愛
公爵令嬢ヘレーネは王立魔法学園の卒業パーティーで第三王子ジークベルトから婚約破棄を宣言される。 ジークベルトの真実の愛の相手、男爵令嬢ルーシアへの嫌がらせが原因だ。 国外追放を言い渡したジークベルトに、ヘレーネは眉一つ動かさずに答えた。 「国外追放ですか? 承りました。では、すぐに国外にテレポートします」

【一話完結】断罪が予定されている卒業パーティーに欠席したら、みんな死んでしまいました

ツカノ
ファンタジー
とある国の王太子が、卒業パーティーの日に最愛のスワロー・アーチェリー男爵令嬢を虐げた婚約者のロビン・クック公爵令嬢を断罪し婚約破棄をしようとしたが、何故か公爵令嬢は現れない。これでは断罪どころか婚約破棄ができないと王太子が焦り始めた時、招かれざる客が現れる。そして、招かれざる客の登場により、彼らの運命は転がる石のように急転直下し、恐怖が始まったのだった。さて彼らの運命は、如何。

捨てられた聖女、自棄になって誘拐されてみたら、なぜか皇太子に溺愛されています

h.h
恋愛
「偽物の聖女であるお前に用はない!」婚約者である王子は、隣に新しい聖女だという女を侍らせてリゼットを睨みつけた。呆然として何も言えず、着の身着のまま放り出されたリゼットは、その夜、謎の男に誘拐される。 自棄なって自ら誘拐犯の青年についていくことを決めたリゼットだったが。連れて行かれたのは、隣国の帝国だった。 しかもなぜか誘拐犯はやけに慕われていて、そのまま皇帝の元へ連れて行かれ━━? 「おかえりなさいませ、皇太子殿下」 「は? 皇太子? 誰が?」 「俺と婚約してほしいんだが」 「はい?」 なぜか皇太子に溺愛されることなったリゼットの運命は……。

家の全仕事を請け負っていた私ですが「無能はいらない!」と追放されました。

水垣するめ
恋愛
主人公のミア・スコットは幼い頃から家の仕事をさせられていた。 兄と妹が優秀すぎたため、ミアは「無能」とレッテルが貼られていた。 しかし幼い頃から仕事を行ってきたミアは仕事の腕が鍛えられ、とても優秀になっていた。 それは公爵家の仕事を一人で回せるくらいに。 だが最初からミアを見下している両親や兄と妹はそれには気づかない。 そしてある日、とうとうミアを家から追い出してしまう。 自由になったミアは人生を謳歌し始める。 それと対象的に、ミアを追放したスコット家は仕事が回らなくなり没落していく……。

​『追放された底辺付与術師、実は【全自動化】のチートスキル持ちでした〜ブラックギルドを追い出されたので、辺境で商会を立ち上げたら勝手に世界規

NagiKurou
ファンタジー
​「お前のような、一日中デスクに座って何もしない無能はクビだ!」 国内最大のギルド『栄光の剣』で、底辺の付与術師として働いていたアルスは、ある日突然、強欲なギルドマスターから追放を言い渡される。 しかし、彼らは知らなかった。ギルドの武器の自動修復、物流の最適化、資金管理に至るまで、すべてアルスの固有スキル【全自動化(ワークフロー構築)】によって完璧にシステム化され、回っていたことを。 「俺がいなくなったら、あの自動化システム、全部止まるけど……まあいいか」 管理権限を解除し、辺境へと旅立ったアルス。彼は自身のスキルを使って、圧倒的な耐久力を誇る銀色の四輪型重装ゴーレムを作り出し、気ままな行商を始める。 一度構築すれば無限に富を生み出す「全自動」のチートスキルで、アルスの商会は瞬く間に世界規模へとスケールしていく! 一方、すべてを失ったギルドは、生産ラインが崩壊し、絶望のどん底へと突き落とされていくのだった……。

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

「魔道具の燃料でしかない」と言われた聖女が追い出されたので、結界は消えます

七辻ゆゆ
ファンタジー
聖女ミュゼの仕事は魔道具に力を注ぐだけだ。そうして国を覆う大結界が発動している。 「ルーチェは魔道具に力を注げる上、癒やしの力まで持っている、まさに聖女だ。燃料でしかない平民のおまえとは比べようもない」 そう言われて、ミュゼは城を追い出された。 しかし城から出たことのなかったミュゼが外の世界に恐怖した結果、自力で結界を張れるようになっていた。 そしてミュゼが力を注がなくなった大結界は力を失い……

処理中です...