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第3話:死んだはずの男
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冒険者ギルド。
昼下がりの喧騒を切り裂く、下卑た笑い声。
中央のテーブルを陣取っているのは、勇者パーティ。
勇者グラディウスは喜色満面でジョッキを呷る。
「いやあ、荷物持ち一人で金貨二十枚の保険金。美味すぎるぜ」
周囲の冒険者たちも、苦笑いしながらそれを見ている。
彼らにとって、冒険者の死は「よくある事故」に過ぎない。
普通、一人の冒険者にこれほどの保険金が下りるはずがない。
どれだけ掛金を積んでいたのか、という眼で彼らは見ていたのだが。
「死んでくれて感謝だな。あいつ、鑑定しか能がないゴミだったし」
聖女レイラが、クエルタの保険金で買った杖を愛でる。
女魔法使いブリタニアがテーブルの魔導書を撫でる。
その時、ぎぃとギルドの重い扉が、音を立てて開いた。
「よお。俺の保険金の酒の味はどうだ?」
静寂。
ジョッキが床に落ち、中身が溢れる。
全員の視線が、扉に立つ俺――そして、背後に控える銀髪の美少女に注がれる。
「なっ……!? お前、生きて……」
「悪いな。崖の下は思ったより居心地が悪くてな」
俺はゆっくりと彼らのテーブルへ歩み寄る。
勇者が顔を赤くし、腰の剣に手をかけた。
「……お前、生きてたのかよ。はっ、残念ながら金は使っちまったぜ。ギルドから文句言われたらお前が立て替えとけよ?」
「生きてるのを知った途端に俺の保険金の話かよ。相変わらず腐ってんな。ついでにあんたの『聖銀の剣』も鑑定してやろうか?」
俺の視界は勇者剣の魔力をスキャンする。
『聖銀の剣』【時価:銅貨10枚。魔力保持率:0.2%(廃棄推奨)】
「はっ! 鑑定だと? こいつは国から授かった魔剣だ。お前みたいな無能に何が――」
「今朝の魔獣戦、無理に魔力を流し込んだだろ。ガタが来てるぜ、メンテ不足だ」
俺は一歩、踏み出す。
周囲の冒険者たちが息を呑む。
「その剣の価値、限りなくゼロに近い。……下手に抜けば爆発するぜ。持ち主の腕を巻き込んで、な」
「……ふざけるな! 黙れ!」
グラディウスが激昂し、剣を引き抜こうとした瞬間。
バキリッ。
抜剣の衝撃にすら耐えられず美しい聖銀の剣身は、見る影もなく砕け散った。
飛び散る破片。
勇者は、柄だけを握って間抜けに突っ立っている。
「……な、なんだこれ……俺の魔剣が……!」
「だから、言ったろ。あんたのプライド、その砕けた魔剣以下だね」
俺は隣に立つ少女の肩を抱き、ギルドの受付へと向かう。
勇者の肩書は時価総額が大暴落中だ。
損切りはすでに済ませた。
「あ、それと。その折れた剣の処分費用、保険金から引いとけよ」
背後で響く勇者の絶叫がうるさくも心地よかった。
この、くっそざまあが。
俺の視界にはブラックなこの王国からの脱出最短ルートと、その後に稼ぎ出す莫大な利益の数値が浮かんでいた。
【現在の所持金:金貨500枚相当(原石)】
【目標時価総額:国家予算超え】
「行こうか。……俺たちの『価値』を見せつけにな」
昼下がりの喧騒を切り裂く、下卑た笑い声。
中央のテーブルを陣取っているのは、勇者パーティ。
勇者グラディウスは喜色満面でジョッキを呷る。
「いやあ、荷物持ち一人で金貨二十枚の保険金。美味すぎるぜ」
周囲の冒険者たちも、苦笑いしながらそれを見ている。
彼らにとって、冒険者の死は「よくある事故」に過ぎない。
普通、一人の冒険者にこれほどの保険金が下りるはずがない。
どれだけ掛金を積んでいたのか、という眼で彼らは見ていたのだが。
「死んでくれて感謝だな。あいつ、鑑定しか能がないゴミだったし」
聖女レイラが、クエルタの保険金で買った杖を愛でる。
女魔法使いブリタニアがテーブルの魔導書を撫でる。
その時、ぎぃとギルドの重い扉が、音を立てて開いた。
「よお。俺の保険金の酒の味はどうだ?」
静寂。
ジョッキが床に落ち、中身が溢れる。
全員の視線が、扉に立つ俺――そして、背後に控える銀髪の美少女に注がれる。
「なっ……!? お前、生きて……」
「悪いな。崖の下は思ったより居心地が悪くてな」
俺はゆっくりと彼らのテーブルへ歩み寄る。
勇者が顔を赤くし、腰の剣に手をかけた。
「……お前、生きてたのかよ。はっ、残念ながら金は使っちまったぜ。ギルドから文句言われたらお前が立て替えとけよ?」
「生きてるのを知った途端に俺の保険金の話かよ。相変わらず腐ってんな。ついでにあんたの『聖銀の剣』も鑑定してやろうか?」
俺の視界は勇者剣の魔力をスキャンする。
『聖銀の剣』【時価:銅貨10枚。魔力保持率:0.2%(廃棄推奨)】
「はっ! 鑑定だと? こいつは国から授かった魔剣だ。お前みたいな無能に何が――」
「今朝の魔獣戦、無理に魔力を流し込んだだろ。ガタが来てるぜ、メンテ不足だ」
俺は一歩、踏み出す。
周囲の冒険者たちが息を呑む。
「その剣の価値、限りなくゼロに近い。……下手に抜けば爆発するぜ。持ち主の腕を巻き込んで、な」
「……ふざけるな! 黙れ!」
グラディウスが激昂し、剣を引き抜こうとした瞬間。
バキリッ。
抜剣の衝撃にすら耐えられず美しい聖銀の剣身は、見る影もなく砕け散った。
飛び散る破片。
勇者は、柄だけを握って間抜けに突っ立っている。
「……な、なんだこれ……俺の魔剣が……!」
「だから、言ったろ。あんたのプライド、その砕けた魔剣以下だね」
俺は隣に立つ少女の肩を抱き、ギルドの受付へと向かう。
勇者の肩書は時価総額が大暴落中だ。
損切りはすでに済ませた。
「あ、それと。その折れた剣の処分費用、保険金から引いとけよ」
背後で響く勇者の絶叫がうるさくも心地よかった。
この、くっそざまあが。
俺の視界にはブラックなこの王国からの脱出最短ルートと、その後に稼ぎ出す莫大な利益の数値が浮かんでいた。
【現在の所持金:金貨500枚相当(原石)】
【目標時価総額:国家予算超え】
「行こうか。……俺たちの『価値』を見せつけにな」
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