鑑定魔法で「時価」が見えるようになったので、勇者パーティを損切りする~金貨10億枚の価値がある少女を拾った俺、新天地で最強投資家へ~

茄子山

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第4話:ホワイトな新天地

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 俺達は今、隣国エリュシオンの入口、
 フローレスの街にいた。
 門をくぐった瞬間、視界が広がる。

 石畳の道。
 清掃の行き届いた街並み。
 何より、行き交う人々の表情に
 「明日への不安」がない。

(……これが、まともホワイトな国の空気か)

 俺は銀髪の美少女、リリアを連れて
 冒険者ギルドの門を叩いた。
 そこにあったのは、怒号と汗臭さが充満する
 「前の国」のギルドとは、似ても似つかない
 光景。

「いらっしゃいませ。本日は冒険者登録ですか? それとも換金でしょうか」

 窓口の女性。
 整った制服。
 穏やかな笑み。

 ――ここは天国か。
 あの時ホントは死んでたんだっけ?
 俺は一瞬、入る場所を間違えたかと思った。

「あー、あのそうだ。登録。登録と……こいつを換金したい」

 差し出したのは、崖下で拾った魔導鉱石の原石。
 彼女は手袋をはめ、うやうやしくそれを受け取る。
 奥の鑑定士に見せることもなく、彼女は手元の
 水晶板に石を置いた。

『魔導鉱石』【時価:金貨550枚。判定:高純度】

「これは……高値ですね。お支払いは現金になさいますか? それとも『口座』に振り込みますか?」
「口座……とは?」

 思わず聞き返す。
 彼女は不思議そうな顔をしたが、すぐに納得したように頷いた。

「失礼いたしました。ようこそエリュシオンへ。当冒険者ギルドでは商人ギルドと提携し、魔力認証による『手形決済』を導入しております」

 説明によるとこうだ――

 報酬は冒険者ギルドが管理する「銀行」に数字として記帳される。
 俺は渡された冒険者カードに、自分の魔力を通すだけでいい。

 買い物も、食事も、これ一枚。
 重い金貨袋を抱えて野盗に怯える必要はない。
 紛失しても安い手数料で再発行できる
 ――らしい。

「振り込み手数料は?」
「振込は無料です。出金時に、運営維持費として0.1%だけ頂戴しております」

(おいおい、今までは、換金だけで30%ハネてやがったぞ……クソが)

 あまりの格差に目眩がする。
 だが、俺の「目」は別のものを見逃さなかった。

 笑顔の受付嬢。
 その背後の巨大な帳簿。

 そこに浮かぶ、赤く不吉な「時価総額」の変動。

『第四支部フローレス事務所帳簿』【時価:下落傾向。状態:慢性的な『特定素材』の欠乏による、供給契約の違約金リスク】

 彼女たちの優しさは本物だ。
 だが、このホワイトな組織は今、深刻な
 「仕入れ不足」という負債を抱えている。

「お客様? どうされましたか?」
「……いや。この国は気に入った。ここなら『投資』のしがいがある」
「はい?それはありがとうございます」

 俺はカードを受け取り、リリアの頭を軽く
 撫でた。

「妹様への送金も、そのカードから『為替』で飛ばせます。手数料は一律銅貨十枚ですよ」
「……最高だな」

 今までならきっと、妹に届くまでに半分が
 消えていただろう。
 リリアが不思議そうに俺の顔を見上げる。

「……主様、笑ってる?」
「ああ。勝ち筋が見えた」

 俺は窓口の女性に向き直る。
 そこにある「欠乏」こそが、俺にとっての
 最大の商機だ。

「おい、お姉さん。あんたのところ、今『氷結晶の核』が足りなくて困ってるだろ?」

 女性の手が止まる。
 俺は受付嬢の目が驚愕に見開くのを
 見逃しはしなかった。
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