鑑定魔法で「時価」が見えるようになったので、勇者パーティを損切りする~金貨10億枚の価値がある少女を拾った俺、新天地で最強投資家へ~

茄子山

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第7話:闇の足音

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 エリュシオンの街角。

 支部長から受け取った「紹介状」の重みを感じながら、俺、クエルタは宿へと歩を進めていた。
 隣では、リリアが串肉を頬張りながら、半分眠そうな目でふらふらと歩いている。

(今のリリアは歩いているだけの寝坊助だ。だが、恐ろしいことに周囲への警戒を怠っていない。なんなんだコイツは?)

 ふと、視界の端にノイズが走る。
 建物の影、路地裏、屋根の上。
 複数の「殺気」が、こちらを追尾している。

『暗殺ギルド、黒い蛇』【時価:金貨10枚(懸賞金付き)。対象:追跡者。装備:隠密用魔導具(粗悪品のため鑑定せず)】

「クエルタ。変な匂いする。……腐ったネズミの匂い」

 リリアが串を口に咥えたまま、ぼそりと呟いた。
 彼女の本能が敵の接近を検知している。
 まあ、コイツのことは後で考えるとしよう。

「ああ。どうやら俺たちの『時価』を勘違いしている奴らがいるらしい」

 俺はあえて人通りの少ない、行き止まりの広場へと足を踏み入れた。
 ――直後。
 頭上から網のような魔力拘束具が降り注ぎ、周囲を黒装束の男たちが囲む。

「へへっ、大人しくしろよ鑑定士。その銀髪のガキ、闇市場じゃあ金貨八百枚は下らねえんだ」

 男たちのリーダー格が、短剣を弄びながら現れる。
 たぶん、あの短剣には即効性の痺れ薬の類が塗られているはずだ。

 彼らは今のリリアにどれ程の攻撃力があるか気づいていない。
 ただの「高く売れる逃亡奴隷」だと思っている。
 誰がその情報を売ったか、だが。

「八百枚か。あんたらの目は節穴だな。『時価』相場ってのは絶え間なく変動してるんだよ」

 俺はリリアの肩を叩く。

「リリア。お仕事だ。能力を解除しろ。聞きたいことがある。ぶっ殺すんじゃないぞ」

「ん。了解」

 瞬間、リリアの雰囲気が一変した。
 焦点の定まらなかった瞳が、鋭い金色の縦長へと収束する。
 口に咥えていた串を吐き出し、彼女の周囲の空気が「圧力」で震え始めた。

『リリアーナ・ヴァン・グレイゲン』【時価:金貨50,445枚。対象:ドラゴニュート。モード:デュアル・アクティブ】


「な、なんだ!? そのガキ、急に――」

「言っただろ。時価八百枚だと思って手を出すと、取り返しのつかない負債を抱えることになるぞ」

 男が短剣を突き出そうとした瞬間。
 リリアの姿が消えた。
 いや、能力解放による超高速の姿勢制御と、予測反応が組み合わさった、最短距離の移動だ。

 バキィッ!

 鈍い音。
 リリアの裏拳が、リーダーの腹部にめり込む。
 ただの打撃ではない。
 彼女の「外骨格」から放たれた衝撃波が、男の魔臓器を内側から粉砕したのだ。

「が、はっ……!? あ、あああ……魔力が、流れない……っ!?」

「魔臓の損傷。高価くついたな。あんたの戦士としての資産価値、今のでゼロだ」

 俺は冷たく言い放つ。
 他の手下たちが恐怖に凍りつく中、リリアは無表情のまま、次のターゲットへと視線を向けた。
 その瞳には、感情をリソースに回した「戦闘兵器」の冷徹さしかない。

「逃がさない。……効率的に、排除する」

 リリアが超高速移動中に詠唱を開始する。
 物理戦闘と魔法の並列処理。
 闇ギルドの連中は、自分たちがどれほど「不採算な投資」をしたかを、その身で知ることになる。
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