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第8話:裏切り者の査定
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広場に転がる、闇ギルド『黒い蛇』の残党たち。
リリアはすでに『休止モード』へ移行しつつあり、立ったままコクコクと船を漕いでいる。
さっきの超人的な動きが嘘のような豹変ぶりだ。
(……それにしても、手際が良すぎる)
クエルタは、リーダー格の男が持っていた「手形」を拾い上げ、鑑定を走らせる。
『闇市場の匿名手形』【時価:銀貨1枚。発行元:エリュシオン冒険者ギルド・内部端末】
【備考:『紹介状の発行』による機密情報と引き換えに発行された模様】
「……なるほど。ホワイトな組織にも、汚れは溜まるか」
俺はリリアの袖を引き、再びギルドへと引き返した。
夜の帳が下りたギルド内。
窓口には、昼間とは違う中年の男性職員が座っている。
俺たちの姿を見るなり、彼の頬が微かに引きつった。
ああ、こいつだ。
「おや……クエルタさん。忘れ物ですか?」
『ハンス(ギルド職員)』【時価:金貨2枚。状態:極度の焦燥。信用スコア暴落中】
ハンスの頭上に浮かぶ数値。
一般の冒険者ギルドの職員では安定しているはずの『信用価値』が、今は見る影もなくなっている。
「ハンスさん。あんた、『黒い蛇』に俺たちの情報を売ったな?」
俺の言葉に、周囲のざわめきがナリを潜めた。
空気が凍りついていく。
ハンスは硬い表情のまま鼻で笑い首を振った。
「はは。何を馬鹿な事言ってるんですか。何か証拠でもあるんですか?貴方の個人情報にそんな大きな価値もないでしょう?」
「証拠か。それならあんたの懐にあるんじゃないか?その懐にある金貨五十枚。ギルドの帳簿には載せられない、汚れた金だろ?」
「……っ!」
「あんたの魔臓器、心臓より拍動がうるさいぜ。嘘をつくと、罪悪感が体中に流れ込むんじゃないか?俺には、あんたが真っ黒な負債を抱えてるように見えるぜ」
俺はギルドのカウンターを指先で叩く。
その瞬間、リリアが「むにゃ……」と呟きながら、ハンスの背後に回った。
ハンスが隠し持っていた「非常用ベル」に手を伸ばそうとしたのを無意識に制止したのだ。
目も開けていないのにその手首を正確に掴んでいる。
「っ、離せ! このバケモノめ!」
「バケモノ、ね。……ハンスさん。あんたの裏切り、金貨たった五十枚か。……リリアを敵に回す代償としては、安すぎる投資だったな」
揉め事を聞きつけたのか奥から支部長のゲランドが現れる。
彼の冷徹な視線がハンスを射抜いた。
クエルタの鑑定眼による告発はもはや逃げ場のない「確定診断」だった。
「ハンス。残念だな。お前は冒険者ギルドの信頼を裏切った。その五十枚は、治療費の足しにでもしろ。……地下牢でのな」
ハンスが崩れ落ちる。
彼の『時価総額』がゼロになった瞬間だ。
「助かった、クエルタ。……リリア嬢も。組織の膿を出してくれた礼は、いずれさせてもらう」
支部長が俺に頷く。
冒険者ギルドも騒動が終わると誰もが思い出したように活気が戻っていった。
宿への道を再び歩き出した。
「リリア。……飯にするぞ。最高級の肉を食わしてしてやろう」
「お肉。リリア頑張ったから当たり前。当然の報酬……ステーキ、三枚」
寝ぼけ眼のリリアが、肉の言葉にだけは鋭く反応する。
リリアは話す度に馬鹿になってるような気がするが放っておこう。
暗殺ギルドを片手で叩きのめすくらいの能力があれば他には何もいらない。
彼女にとってはこの程度の荒事は「お腹が空くイベント」の一つに過ぎないらしい。
リリアはすでに『休止モード』へ移行しつつあり、立ったままコクコクと船を漕いでいる。
さっきの超人的な動きが嘘のような豹変ぶりだ。
(……それにしても、手際が良すぎる)
クエルタは、リーダー格の男が持っていた「手形」を拾い上げ、鑑定を走らせる。
『闇市場の匿名手形』【時価:銀貨1枚。発行元:エリュシオン冒険者ギルド・内部端末】
【備考:『紹介状の発行』による機密情報と引き換えに発行された模様】
「……なるほど。ホワイトな組織にも、汚れは溜まるか」
俺はリリアの袖を引き、再びギルドへと引き返した。
夜の帳が下りたギルド内。
窓口には、昼間とは違う中年の男性職員が座っている。
俺たちの姿を見るなり、彼の頬が微かに引きつった。
ああ、こいつだ。
「おや……クエルタさん。忘れ物ですか?」
『ハンス(ギルド職員)』【時価:金貨2枚。状態:極度の焦燥。信用スコア暴落中】
ハンスの頭上に浮かぶ数値。
一般の冒険者ギルドの職員では安定しているはずの『信用価値』が、今は見る影もなくなっている。
「ハンスさん。あんた、『黒い蛇』に俺たちの情報を売ったな?」
俺の言葉に、周囲のざわめきがナリを潜めた。
空気が凍りついていく。
ハンスは硬い表情のまま鼻で笑い首を振った。
「はは。何を馬鹿な事言ってるんですか。何か証拠でもあるんですか?貴方の個人情報にそんな大きな価値もないでしょう?」
「証拠か。それならあんたの懐にあるんじゃないか?その懐にある金貨五十枚。ギルドの帳簿には載せられない、汚れた金だろ?」
「……っ!」
「あんたの魔臓器、心臓より拍動がうるさいぜ。嘘をつくと、罪悪感が体中に流れ込むんじゃないか?俺には、あんたが真っ黒な負債を抱えてるように見えるぜ」
俺はギルドのカウンターを指先で叩く。
その瞬間、リリアが「むにゃ……」と呟きながら、ハンスの背後に回った。
ハンスが隠し持っていた「非常用ベル」に手を伸ばそうとしたのを無意識に制止したのだ。
目も開けていないのにその手首を正確に掴んでいる。
「っ、離せ! このバケモノめ!」
「バケモノ、ね。……ハンスさん。あんたの裏切り、金貨たった五十枚か。……リリアを敵に回す代償としては、安すぎる投資だったな」
揉め事を聞きつけたのか奥から支部長のゲランドが現れる。
彼の冷徹な視線がハンスを射抜いた。
クエルタの鑑定眼による告発はもはや逃げ場のない「確定診断」だった。
「ハンス。残念だな。お前は冒険者ギルドの信頼を裏切った。その五十枚は、治療費の足しにでもしろ。……地下牢でのな」
ハンスが崩れ落ちる。
彼の『時価総額』がゼロになった瞬間だ。
「助かった、クエルタ。……リリア嬢も。組織の膿を出してくれた礼は、いずれさせてもらう」
支部長が俺に頷く。
冒険者ギルドも騒動が終わると誰もが思い出したように活気が戻っていった。
宿への道を再び歩き出した。
「リリア。……飯にするぞ。最高級の肉を食わしてしてやろう」
「お肉。リリア頑張ったから当たり前。当然の報酬……ステーキ、三枚」
寝ぼけ眼のリリアが、肉の言葉にだけは鋭く反応する。
リリアは話す度に馬鹿になってるような気がするが放っておこう。
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