魔力無し転生者の最強異世界物語 ~なぜ、こうなる!!~

月見酒

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第二章 魔力無し転生者は仲間を探す

第五十二話 レイノーツ学園祭前 ⑦

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「ほら、来いよ。遊んでやるからよ」
「調子にのるなや!」
 そう叫んで俺の後ろの奴が鉄パイプで殴り掛かってくる。遅い。なんだこいつ等少しは手応えがあるかと思ったが大違いだ。動きも遅いし隙だらけ。なんらかの格闘技をやっているわけでもない。本当にただのチンピラだ。人数が多ければそれだけで勝てると思ってるだけの馬鹿野郎どもだ。本当は雇われただけで何も知らないんじゃないのか?ま、聞き出せば分かる事か。
 少し動いて躱した俺はカウンターを打ち込んで気絶させる。

「ほい、一人目」
「何してやがる全員で襲え!」
 リーダーがそう言うがそれは力が拮抗している相手だけだ。圧倒的に力の差がある奴には通用しない戦法だ。俺みたいにな!
 一斉に襲い掛かって来たが待ってやる必要もないのでこっちから近づいて殴り飛ばす。
 そして一人。また一人の殴り飛ばす。技なんか使わない。ただ近づいて殴り飛ばす。それだけで奴らは吹き飛ばされて気絶するのだから。
 たった1分程度で終わった戦いとも呼べない戦いは地べたにチンピラたちが倒れて終了した。さて残るはリーダーだが、俺の戦いを見てか腰を抜かして地面に尻餅をついていた。

「おい」
「すみません!悪気はなかったんです!ただ小遣いが欲しくて」
 分かってるよ。お前らはただ金が欲しかっただけだよな。ま、その方法が悪かっただけなだけだ。

「殴られたくなかったら、誰に雇われたか教えろ」
「し、知らないんです!ただいきなりメールが来て。添付されていた写真の男をボコボコにすれば2万RKやるって書いてあっただけで」
「お前らはそれを信じたのか?普通は信じないだろ」
「俺たちだって最初は詐欺サイトへの勧誘かと思いましたよ。だけど1万RKだけは前金として振り込まれていたので」
「なるほどな。で、そのメールはまだあるのか?」
「はい。これです」
 そう言ってスマホに届いたメールを見せてくる。確かに俺の写真付きで送られてるな。
 このスマホからなんらかの情報を得られるかもしれないな。

「おいこのスマホ俺に寄こせ」
「そ、そんな!」
 人を襲うとしたんだそれぐらいしても許されるだろ。でも、今後こいつ等は情報収集として使えるかもしれないからな。ここで恩を売って置くのも悪くないかもな。

「少し待ってろここを動くな」
「え?」
「いいからここで待ってろ。動いたらどうなるか分かるよな?」
「は、はい!」
 俺はそう言ってATMに向かった。
 これはギルドとしての依頼なのでギルドの資金から下ろす。大丈夫誰も文句は言わないだろうからよ。
 数分して戻ってくるとリーダーの男は気絶していた奴らを看病していた。何気に仲間想いの奴なんだな。

「よ」
「そ、それでスマホなんですが?」
「ほれ」
「え?」
 そう言って俺は封筒を男の前に投げる。

「その中に30万入ってる。その金で新しいスマホと仲間の連中と飯でも食いに行け」
「良いんですか?」
「その代わり今後俺が情報が欲しい時は連絡するから教えろ」
「分かりました!」
「俺の名前は鬼瓦仁。仁と呼んでくれ。それでお前の名前は?」
「レシオンって言います!今後ともよろしくお願いしますジンの兄貴!」
 あ、兄貴!いや、確かに前世から合わせればお前よりかは年上だけども兄貴はないだろ!と言うかマジで恥ずかしいからやめてくれ。

「じゃあな。また連絡するから番号だけは変えるなよ」
「はい!」
 そう言って俺は拠点に戻った。
 で、拠点に戻るなりとてつもない殺気が俺を襲った!まさか他にも刺客が居たのか!と思ったがその正体はアインだった。

「どうやら死にたいようですね」
「まだ時間的には大丈夫のはずだが?」
「チッ!」
 おい、なんだその舌打ちは。まさかそれで騙せると思ったのか?
 ま、機嫌が悪いと調べて貰えなさそうだし銀を渡す。
 今にも殺戮行為を犯しそうな程の形相が銀を抱いた瞬間幸せそうな表情に変わる。本当にサイボーグなのか?
 3階のリビングに一緒に行くと既に影光は戻っていたらしくソファーに座って寛いでいた。

「戻ったぞ」
「そうみたいだな。それで依頼はどうだったんだ?」
「正直つまらなかった。ジャイアントオーガの討伐だったんだが。期待はずれも良いところだ。やっぱり仁と戦った後だからかな。大抵の奴が弱く感じて仕方が無い」
「そうか」
 嘆息しながら影光はソファーに座る。
 どうやら影光はまだ上を目指しているようでなによりだ。

「それで仁は第二皇女様の護衛だってな」
「アインから聞いたのか?」
「ああ」
 別に黙って欲しいわけでも無いので俺は別に構わない。
 アイテムボックスから取り出した酒と惣菜をテーブルに並べた俺たちは食事をしながら会話の続きをする。

「それでどうなんだ。皇女様の護衛は?」
「これが思いのほか苦戦している」
「ま、戦えるわけじゃないからな。ましてや皇女様の護衛なんて退屈なだけだろうからな」
「別にそう言うわけじゃない。生憎と第二皇女は前から知り合いだったしそこまで気を使うこともない。それよりも問題なのは皇女を付け狙うストーカー野郎の方だ」
「おいおい、皇女様をストーキングする馬鹿が居るのか?」
「それが居るんだよ。で、今はそいつについて調べてるんだがまったくの情報がない。目ぼしい人物は決まってるんだがまずそいつがどこに居るのかまったく分からないんだ」
「なるほどな」
 別に何も分からないわけじゃない。
 ストーカーと思しき少年の見た目は分かっている。だがその居場所と名前が分からないのだ。もう幽霊と言っても良いほどに。

「そこでだ。アインこのスマホから調べて貰えないか?」
「無理です」
 即答で言うアインは食事をする銀を撫でる。
 お前はもう少しギルドのために貢献しても良いと俺は思うんだが。

「お前が俺の嫌いで手伝いのが嫌なのは分かるが、もう少し協力しても良いと俺は思うんだが?」
「いえ、そう言う意味ではありません。私は創造主によって創られた最高傑作品ではありますが、用途が違うので私には無理なんです」
「どう言う事だ?」
「創造主が作り出したサイボーグは全部で7体。それぞれ違うことに特化したサイボーグなんです」
「つまり得意ジャンルが違うってことか?」
「そう言うことです。で、私は射撃に特化したサイボーグ。一応ネットワークに接続して調べる事は可能ですし、プロテクトやセキュリティーを突破することは可能です。ですが、それだけで乗っ取る事は出来ません。また調べると言っても私自信の中で調べる事が可能であってスマホから調べる事は出来ないんです」
「つまり外部機器などに接続は出来ないと」
「そう言うことです」
 なんだ思ったより役に立たないな。

「今、なんだ思ったより役に立たないな。って思いませんでしたか?」
「ソ、ソンナワケナイダロ!」
「何故片言なのか気になりますが、咎めないであげましょう」
 良かった。どうやら俺は今日も無事に終えれそうだ。
 だが、これで調べる方法が無くなったな。いや、待て。

「そう言えば監視カメラ映像は見れるんだよな」
「はい。あれは乗っ取っているわけではなくこっそり覗き見しているようなものなので」
「なら、自分以外に覗き見している奴が居るとか分からないのか?」
「痕跡があれば可能でしょうが、監視カメラ映像を見ているような者が痕跡を残しているとは思えません」
 だよな~。
 駄目だ。せっかく情報が手に入ると思ったのに行き詰ってしまったか。
 そう思っていたが、そうでも無いようだ。

「ですが、リアルタイムで覗いている者が居れば発見することは可能です」
「それは本当か?」
「私は嘘は言いません」
 さっき俺を騙そうとした人間。いや、サイボーグのセリフとは思えないな。
 だが、こういう時のアインが嘘を言うとは思えないし、理由も無いはずだ。
 となると今回レシオンたちが俺を襲うことに失敗したことは既に分かっている筈だから俺の監視は続けている筈だ。
 となる明日王宮に行く時や、明後日シャルロットが登校する時にでも調べて貰うか。

「なら、明日俺が王宮に向かう時と明後日シャルロットが王宮から登校する時の2回調べてくれ」
「分かりました」
「なんだか、素直だな」
「この依頼が達成できれば報酬も沢山入るはず。そのお金でマスターに美味しいお肉をご馳走して貰うのが条件です」
「だと思ったよ」
 こいつが無償で俺に協力するわけないものな。ま、タダより高いものは無いって言うし裏切られる心配もないから逆に安心は出来るけど。
 ならこのスマホは明日にでもボルキュス陛下にでも渡して調べて貰うか。その前にアインがストーカー野郎を見つけ出すと思うけど。
 そんな事を思いながら俺は買ってきた唐揚げを手で摘んで口の中に放り込む。

「それで拙者は何をすれば良い?」
「影光も手伝ってくれるのか?」
「勿論報酬は3等分だがな」
「そうですね。それなら私のお金でマスターにお肉をご馳走できますので。私もそっちにします」
 それだと俺の取り分が減るじゃないか。ま、失敗して慰謝料を払うよりマシか。
 ここで俺たちのギルド、フリーダムの報酬支払いに関して話しておこう。
 フリーダムは月給やまとめて月払いじゃない。
 どちらかと言えば日払いだ。
 正確には完全歩合制の即決払いだ。
 それぞれが依頼を受けて、依頼を達成したら、依頼のランクによってギルドに入れる割合が変わる程度で残りの分は依頼を受けた本人の口座に振り込まれる仕組みにしている。
 また指名依頼でもギルドに入れる割合は違う。
 指名依頼は多くても2割としている。そして指名依頼はランクに問わず2割だ。
 つまりフリーダムではGランク~Cランクまでは報酬の1割。
 Bランク~Aランクは15%。
 Sランク以上は2割。
 指名依頼も2割とこんな感じだ。
 つまり俺の今回の指名依頼のランクはBランクに設定されているがギルド口座に振り込む金額は2割と言うことだ。ま、そこから食費や光熱費、年に一度支払うビルの固定資産税などもそこから支払う事になっているのだ。勿論ギルドのお金はそれ以外にもビルの修繕や冒険者活動で必要な物を購入する際に使うので幾らあっても問題ない。と言うか今後増えるであろう仲間たちの部屋の家具なんかも購入しないといけないからな。
 で、今回の指名依頼の報酬はまだ決まってない。え?一番大切な事だろうって。そんなの分かってるよ!べ、別に聞くのを忘れていたわけじゃないぞ。
 それに明日にでも聞けば良い話だ。
 お茶を飲んだ俺は口を開いた。

「分かったよ。ただしその分働いて貰うからな」
「ああ、そのつもりだ」
「蛆虫に言われるまでもありません」
 食事中に蛆虫とか言うなのよな。それとも分かって言ったのか?
 そんな事を思いながらも食事を終えた俺はテレビを見る。
 テレビでは丁度明後日から始まるレイノーツ学園祭について採り上げられていた。
 なんでも今年で100回目を迎えるらしくいつも以上に盛大に行われるとアナウンサーが言っていた。
 1時間ほどダラダラとテレビを見た俺は風呂に入る事にした。
 銀と一緒に風呂に入ろうかとも思ったが既にアインと入っているらしく、それは適わなかった。
 湯船で体の疲れを解した俺は寝室の冷蔵庫からビールを取り出して飲む。

「プハッ―!やぱっり風呂上りはビールだよな!」
 これは俺の持論だが風呂上りで飲む物のは子供が牛乳、大人はビールそんな気がする。
 因みに俺はスーパードライが一番好きだ。
 ベッドに座ってビールを飲みながらスマホを弄る。うん、見た目は19歳だが完全におっさんだな。やっぱりおっさんは見た目が変わってもおっさんのままらしい。ちょっと悲しいけど。
 それにしてもやはりCランクになるとフリーの依頼は少ないな。早くBランクになって影光と依頼をこなせるようにならないとな。いや、その前にアインに抜かれないようにしなければ。
 ビールを飲み干した俺は缶を潰してゴミ箱に捨てるとそのままベッドに横になる。
 まだ時間は夜の8時だが、明日も早いので寝ることにする。
 明日にはストーカー野郎が見つかりますように。
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