鬼神転生記~勇者として異世界転移したのに、呆気なく死にました。~

月見酒

文字の大きさ
328 / 351
第七章 忙しいが、呆気なく都市ルーセントに向かう事になりました。

第九十二幕 海底遺跡出発と博打

しおりを挟む
「ねぇ、旦那様」
「どうした?」
「優しいわね」
 千夜の隠れた優しさに笑みを浮かべるエリーゼだが、

「なんの事だ?」
「あの子の犯罪履歴を隠蔽してあげたんでしょ。惚けなくても良いわよ」
「いや、俺は何もしてないぞ」
「え、本当に?」
「ああ、俺は何もしていない。真相は分からないが本当に誤射として判断されたんだろう」
「そ、そうなの」
 千夜の言葉に驚きを隠せないエリーゼ。だが、千夜は別の事で頭を悩ませていた。
(俺にも犯罪履歴が無いのはなんでだ?)
 グレータースケルトンとバンシーから借りたアンデッド軍団で海賊の一人を殺すことに成功はしたが、そのせいで無関係な冒険者を負傷させてしまった。
 つまり千夜にも殺人未遂として犯罪履歴に表示されてもおかしくはないにも拘らず表示されることはなかった。
(まさか海底遺跡内での犯罪行為は犯罪として確認されないということか?)

「また考えごと?」
「あ、ああ。ちょっとな」
 思考の深海に行く前に引き上げられた千夜は考えるのを止めた。
 結局その後はベッドで横になって疲れを癒したのだった。
 次の日になり、朝日と潮風の匂いで目を覚ました千夜はいつものように朝の鍛錬を始めようとしたが、エルザに止められてしまう。
 毎日のように行ってきた事をしないというのは体が疼いて仕方が無い気分に駆られるが我慢するのだった。
 朝食を終えた千夜はウィルの稽古を行うため外に出ていた。勿論見るだけで対峙してはいない。
 夜には最後の会議を行った。
 会議の内容は明日の出航時間の連絡と船に乗り込む再編成の話し合いである。だが、その話し合いは主にベノワ、バレル、千夜の三人で決めた。


 また次の日がやってきた。
 今日はいよいよダラへ向けて出航する日だ。
 朝の鍛錬を昨日の分を取り返すかのように行ったあと、朝食を済ませた。

「忘れ物はないな?」
「ええ、何も無いわ」
「こちらもありません」
 室内に忘れ物がないか最終確認をした千夜はエリーゼたちとともに一週間前に上陸した港へと向かった。
 そこまで離れているわけでもないが、一週間ぶりにやってきた港は懐かしさを覚えた。
 十五分ほどして全員が集まり終えたのか、ベノワが前に立つ。

「皆様、一週間の探索おつかれ様でした。後はダラに戻るだけとなります」
 まるで修学旅行最終日でバスガイドかのような口調と内容だな。と思いながら千夜はベノワの話に耳を傾ける。

「ですが、毎回帰還中に海賊に襲われますので冒険者の皆様には頑張って貰わなければなりませんがよろしくお願いします。では、ここにきた時と同じ船に乗り込んで下さい」
 最後の言葉で全員がそれぞれの船に乗船し始める。

「それじゃ、ダラで会おうぜ」
「ああ、そうだな」
 再編で乗船する船が変わったバレルと僅かな間だけ別れを言い合った。因みに千夜たちは行きと乗る船は同じだ。が人数は少し減ってしまった。それでも戦闘に支障を来たすことは無い。
 乗船した千夜たちは甲板から人工島を見下ろす。

「まるでゴブリンの大群から逃げるために放置される村みたいね」
 エリーゼの例えに同意する千夜。
 昨日までは煩く笑い合う声や喧嘩の声が飛び交い冒険者っちが沢山いたが、今は殺風景の一言だ。
 沢山の色彩に溢れる光景の中一部だけモノクロのように映った。

「それでは出航致します!」
 ベノワの一言で千夜たちは一週間以上生活した人口とを去るのだった。
 出航して一時間もうすでに人工島は見えなくなった。

「それじゃ、何をする旦那様?」
「何をすると言われてもな。海の上じゃすることがないしな」
「なら、私たちも混ぜて貰う?」
 エリーゼが指差した方向には冒険者数人が賭け事をしていた。
(エリーゼたちにさせたら後悔しそうだが、暇だし構わないか)

「ああ、別にいいぞ。ただしこれ以上は無理だと判断したら直ぐに止めるからな」
「分かっているわ」
 千夜たちは賭け事に参加させて貰いダラへつくまでの間時間をつぶす事にした。
 この日の結果だけで言えばエリーゼとクロエが見事に惨敗した。で初心者のエルザが一人勝ちというビギナーズラックを起こしたのだった。
 冒険者たちは手を組んでると思ったが、口喧嘩を始めてしまうエリーゼたちの姿にそれは無いなと決断つけた。因みに本当に手など組んではおらず、仲間や家族であろうと勝負事に手を抜かないのが月夜の酒鬼の決まりだ。それと今回千夜とウィルは観戦していた。理由としてはルールを知らないのとウィルにはまださせられないということだ。
 結局この日は満面の笑みを浮かべるエルザと憂鬱なオーラを発するエリーゼとクロエという陰と陽を目の前で見せられる事になった千夜は内心やっぱりこうなるか。と思いながら嘆息しつつエリーゼとクロエを宥めるのであった。
しおりを挟む
感想 694

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

戦場帰りの俺が隠居しようとしたら、最強の美少女たちに囲まれて逃げ場がなくなった件

さん
ファンタジー
戦場で命を削り、帝国最強部隊を率いた男――ラル。 数々の激戦を生き抜き、任務を終えた彼は、 今は辺境の地に建てられた静かな屋敷で、 わずかな安寧を求めて暮らしている……はずだった。 彼のそばには、かつて命を懸けて彼を支えた、最強の少女たち。 それぞれの立場で戦い、支え、尽くしてきた――ただ、すべてはラルのために。 今では彼の屋敷に集い、仕え、そして溺愛している。   「ラルさまさえいれば、わたくしは他に何もいりませんわ!」 「ラル様…私だけを見ていてください。誰よりも、ずっとずっと……」 「ねぇラル君、その人の名前……まだ覚えてるの?」 「ラル、そんなに気にしなくていいよ!ミアがいるから大丈夫だよねっ!」   命がけの戦場より、ヒロインたちの“甘くて圧が強い愛情”のほうが数倍キケン!? 順番待ちの寝床争奪戦、過去の恋の追及、圧バトル修羅場―― ラルの平穏な日常は、最強で一途な彼女たちに包囲されて崩壊寸前。   これは―― 【過去の傷を背負い静かに生きようとする男】と 【彼を神のように慕う最強少女たち】が織りなす、 “甘くて逃げ場のない生活”の物語。   ――戦場よりも生き延びるのが難しいのは、愛されすぎる日常だった。 ※表紙のキャラはエリスのイメージ画です。

友人(勇者)に恋人も幼馴染も取られたけど悔しくない。 だって俺は転生者だから。

石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていた魔法戦士のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもない状態だった。 だが、此の状態は彼にとっては『本当の幸せ』を掴む事に必要だった 何故なら、彼は『転生者』だから… 今度は違う切り口からのアプローチ。 追放の話しの一話は、前作とかなり似ていますが2話からは、かなり変わります。 こうご期待。

魔王を倒した手柄を横取りされたけど、俺を処刑するのは無理じゃないかな

七辻ゆゆ
ファンタジー
「では罪人よ。おまえはあくまで自分が勇者であり、魔王を倒したと言うのだな?」 「そうそう」  茶番にも飽きてきた。処刑できるというのなら、ぜひやってみてほしい。  無理だと思うけど。

神様、ちょっとチートがすぎませんか?

ななくさ ゆう
ファンタジー
【大きすぎるチートは呪いと紙一重だよっ!】 未熟な神さまの手違いで『常人の“200倍”』の力と魔力を持って産まれてしまった少年パド。 本当は『常人の“2倍”』くらいの力と魔力をもらって転生したはずなのにっ!!  おかげで、産まれたその日に家を壊しかけるわ、謎の『闇』が襲いかかってくるわ、教会に命を狙われるわ、王女様に勇者候補としてスカウトされるわ、もう大変!!  僕は『家族と楽しく平和に暮らせる普通の幸せ』を望んだだけなのに、どうしてこうなるの!?  ◇◆◇◆◇◆◇◆◇  ――前世で大人になれなかった少年は、新たな世界で幸せを求める。  しかし、『幸せになりたい』という夢をかなえるの難しさを、彼はまだ知らない。  自分自身の幸せを追い求める少年は、やがて世界に幸せをもたらす『勇者』となる――  ◇◆◇◆◇◆◇◆◇ 本文中&表紙のイラストはへるにゃー様よりご提供戴いたものです(掲載許可済)。 へるにゃー様のHP:http://syakewokuwaeta.bake-neko.net/ --------------- ※カクヨムとなろうにも投稿しています

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

魔王を倒した勇者を迫害した人間様方の末路はなかなか悲惨なようです。

カモミール
ファンタジー
勇者ロキは長い冒険の末魔王を討伐する。 だが、人間の王エスカダルはそんな英雄であるロキをなぜか認めず、 ロキに身の覚えのない罪をなすりつけて投獄してしまう。 国民たちもその罪を信じ勇者を迫害した。 そして、処刑場される間際、勇者は驚きの発言をするのだった。

間違い転生!!〜神様の加護をたくさん貰っても それでものんびり自由に生きたい〜

舞桜
ファンタジー
「初めまして!私の名前は 沙樹崎 咲子 35歳 自営業 独身です‼︎よろしくお願いします‼︎」  突然 神様の手違いにより死亡扱いになってしまったオタクアラサー女子、 手違いのお詫びにと色々な加護とチートスキルを貰って異世界に転生することに、 だが転生した先でまたもや神様の手違いが‼︎  神々から貰った加護とスキルで“転生チート無双“  瞳は希少なオッドアイで顔は超絶美人、でも性格は・・・  転生したオタクアラサー女子は意外と物知りで有能?  だが、死亡する原因には不可解な点が…  数々の事件が巻き起こる中、神様に貰った加護と前世での知識で乗り越えて、 神々と家族からの溺愛され前世での心の傷を癒していくハートフルなストーリー?  様々な思惑と神様達のやらかしで異世界ライフを楽しく過ごす主人公、 目指すは“のんびり自由な冒険者ライフ‼︎“  そんな主人公は無自覚に色々やらかすお茶目さん♪ *神様達は間違いをちょいちょいやらかします。これから咲子はどうなるのか?のんびりできるといいね!(希望的観測っw) *投稿周期は基本的には不定期です、3日に1度を目安にやりたいと思いますので生暖かく見守って下さい *この作品は“小説家になろう“にも掲載しています

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。