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第七章 忙しいが、呆気なく都市ルーセントに向かう事になりました。
第九十一幕 犯罪と処罰
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毎度恒例となってきた夜の会議に出席した千夜たちだったが、予想していた通りアイーシャたちからの憎しみの篭った殺意を向けられる。
しかし千夜たちは平然といつもの場所に座った。
ここで何も言ってこないアイーシャたちにも場を弁える心がようやく身についてきたんだと内心思いながら、その気持ちを早く持って欲しかったと考える。
ベノワから明日の予定を発表され驚きの声を上げるものもいたが、文句を口にするものはいなかった。そのためかいつも以上に話し合いは早く済んだ。と思いきやバレルの一言で再び会議の場が暗く重い空気が漂うことになった。
「で、キュリアの処罰はどうするんだ?」
「処罰ってどうしてキュリアが処罰されなければならないのよ!されるとするならその男でしょうが!」
タイチに斬られ気を失っていたアイーシャは何も知らされていなかったのか、喚き散らすかの如く怒声を発した。
「おいおい、何を言ってるんだ?」
「だってその男はタイチを……私たちの仲間を殺したのよ!」
涙を流しながら訴えるかのごとく発するアイーシャの姿に同情を覚える冒険者もいたが、バレルは違った。
「俺は最善だと思うがな」
「何の罪もない人間を殺す事が最善だと言うの!」
「罪が有るとか無いとかの問題じゃない。タイチは魔剣に支配され魔物と化した。それを止めるべくセンは奴を殺した。そのお陰で俺たちはこうして生きていられるんだからな」
「それはそうだけど……でもどうしてキュリアが処罰されなきゃならないのよ!」
「お前はタイチに斬られて気を失っていたから何も知らないだろうが、その女は魔剣に支配されたタイチを討伐しようとしたセンに魔法を放って妨害した。そのせいでセンはタイチに斬られ負傷したんだからな。これは紛れも無く犯罪だ。殺人未遂……いや、最悪国家反逆罪と言われても可笑しくはないだろうな」
「ど、どうしてそこまで罪が重くなるのよ!」
「当たり前だろ。ランクはBランクとはいえ、潜在能力の高かったタイチが魔剣に支配され数倍にまで強くなった。魔物のランクで言えばS、もしくはSSランクにも匹敵する可能性だってあるんだ。それは国の一大事と言ってもおかしくないんだ。その討伐の邪魔をしたとなれば国家反逆罪に問われても文句は言えないぞ」
「そ、そんな……」
バレルの言葉にアイーシャは打ちのめされたかのように地面に手をつく。
「それにな。負傷したお前を治療したのはセンの仲間たちだ。感謝しても文句を言う資格はお前たちには無いと思うが?」
「それは本当なの?」
キュリアとレイネに視線を向けるアイーシャ。しかし申し訳なさからなのか視線を合わせようとしない。
「まあまあバレルさん。皆さんも疲れていることですし、この話は当事者たちに任せるということで宜しいですね」
「俺はそれでも構わないが……」
バレルとベノワの視線に嘆息した千夜は口を開いた。
「ああ、俺もそれでいいぞ」
(早く小屋に戻って寝たいんだが)
「では、今日の会議はこれで終了です。冒険者の皆さんは明日は休みなので自由に過ごしてください」
その言葉に雄叫びにも似た喜びの声が夜の海に響き渡る。
会議が終了し誰もが各自の小屋へと戻っていくなか、千夜たちとアイーシャたちはその場から動くことはなかった。
数分して千夜たち以外誰も居なくたってから少し、ようやく千夜が口を開いた。
「さて、俺はさっさと寝たいんでな。言いたいことがあるなら言ってくれ。無いなら俺たちは小屋に戻る」
「なによその偉そうな態度は!人の仲間を好きだった人を殺しておいてよくそんな口が利けるわね!」
「生憎とこの喋りが俺なんでな。気に障ったんなら我慢してくれ」
火に油を注いでいることなど知らない千夜は平然と返事をする。
「それでお前たちはこれから何がしたいんだ?」
「分からないわよ……そんなの好きだった人を失ったんだから……」
その言葉にエリーゼたちは視線を逸らす。その気持ちが理解できるからだろう。勿論千夜にも分からないわけではない。大切な友を失った経験があるからだ。
「なら俺が言えることは一つだ。強くなれ」
その言葉にアイーシャたちは目を見開けた。
「俺を恨もうが憎もうが好きにすればいい。復讐したいのなら好きにすれば良い。いつでも相手してやる。だが絶対に犯罪には手を染めるな。そうなれば俺はお前たちを討伐対象と見なすからな」
それが千夜が出来る最大限の優しさなのだとエリーゼたちには分かっていたが、とても悲しい気持ちが心を痛めつける。
「アンタに言われるまでもないわよ!」
「そうか。なら最後に」
そう言って千夜は懐から水晶玉を取り出した。
「これが何か知っているな」
「ええ。どうしてアンタがそれを持っているのかとても不思議だけど、都市の入り口に必ずある犯罪履歴を見る物でしょ」
「そうだ。それを使ってキュリアの犯罪履歴を確かめる」
「まさか、キュリアを殺すの!」
「表示された犯罪履歴にもよる」
ここで嘘を吐いたところでなんの意味も無いことは知っている。だからこそ千夜は正直に答えた。
「そんなことさせ――」
「アイーシャ。私は大丈夫です!」
「キュリア……」
アイーシャの叫びを遮って答えたキュリア。それはきっともしもここでキュリアを庇って犯罪履歴が付いてしまう可能性を考えたからだろう。
決意を決め不安で震える手で水晶玉に手を翳した。
淡く光った水晶玉は犯罪履歴を表示する。
「あれ?何もない?」
「嘘でしょ!」
キュリアの言葉にアイーシャとレイネは横から除き見るが、そこには何も表示されなかった。
「どういう事なの?」
「どうやらお前の魔法はただの誤射として判断されたようだな。良かったな。これでお前が問い詰められる事はないだろう」
千夜はそう言って水晶玉を懐にしまった。
「これでお前を処罰する必要は無くなった。なら、俺たちは遠慮なく小屋に戻らせて貰う」
そう言って千夜たちは小屋へと戻るのであった。
しかし千夜たちは平然といつもの場所に座った。
ここで何も言ってこないアイーシャたちにも場を弁える心がようやく身についてきたんだと内心思いながら、その気持ちを早く持って欲しかったと考える。
ベノワから明日の予定を発表され驚きの声を上げるものもいたが、文句を口にするものはいなかった。そのためかいつも以上に話し合いは早く済んだ。と思いきやバレルの一言で再び会議の場が暗く重い空気が漂うことになった。
「で、キュリアの処罰はどうするんだ?」
「処罰ってどうしてキュリアが処罰されなければならないのよ!されるとするならその男でしょうが!」
タイチに斬られ気を失っていたアイーシャは何も知らされていなかったのか、喚き散らすかの如く怒声を発した。
「おいおい、何を言ってるんだ?」
「だってその男はタイチを……私たちの仲間を殺したのよ!」
涙を流しながら訴えるかのごとく発するアイーシャの姿に同情を覚える冒険者もいたが、バレルは違った。
「俺は最善だと思うがな」
「何の罪もない人間を殺す事が最善だと言うの!」
「罪が有るとか無いとかの問題じゃない。タイチは魔剣に支配され魔物と化した。それを止めるべくセンは奴を殺した。そのお陰で俺たちはこうして生きていられるんだからな」
「それはそうだけど……でもどうしてキュリアが処罰されなきゃならないのよ!」
「お前はタイチに斬られて気を失っていたから何も知らないだろうが、その女は魔剣に支配されたタイチを討伐しようとしたセンに魔法を放って妨害した。そのせいでセンはタイチに斬られ負傷したんだからな。これは紛れも無く犯罪だ。殺人未遂……いや、最悪国家反逆罪と言われても可笑しくはないだろうな」
「ど、どうしてそこまで罪が重くなるのよ!」
「当たり前だろ。ランクはBランクとはいえ、潜在能力の高かったタイチが魔剣に支配され数倍にまで強くなった。魔物のランクで言えばS、もしくはSSランクにも匹敵する可能性だってあるんだ。それは国の一大事と言ってもおかしくないんだ。その討伐の邪魔をしたとなれば国家反逆罪に問われても文句は言えないぞ」
「そ、そんな……」
バレルの言葉にアイーシャは打ちのめされたかのように地面に手をつく。
「それにな。負傷したお前を治療したのはセンの仲間たちだ。感謝しても文句を言う資格はお前たちには無いと思うが?」
「それは本当なの?」
キュリアとレイネに視線を向けるアイーシャ。しかし申し訳なさからなのか視線を合わせようとしない。
「まあまあバレルさん。皆さんも疲れていることですし、この話は当事者たちに任せるということで宜しいですね」
「俺はそれでも構わないが……」
バレルとベノワの視線に嘆息した千夜は口を開いた。
「ああ、俺もそれでいいぞ」
(早く小屋に戻って寝たいんだが)
「では、今日の会議はこれで終了です。冒険者の皆さんは明日は休みなので自由に過ごしてください」
その言葉に雄叫びにも似た喜びの声が夜の海に響き渡る。
会議が終了し誰もが各自の小屋へと戻っていくなか、千夜たちとアイーシャたちはその場から動くことはなかった。
数分して千夜たち以外誰も居なくたってから少し、ようやく千夜が口を開いた。
「さて、俺はさっさと寝たいんでな。言いたいことがあるなら言ってくれ。無いなら俺たちは小屋に戻る」
「なによその偉そうな態度は!人の仲間を好きだった人を殺しておいてよくそんな口が利けるわね!」
「生憎とこの喋りが俺なんでな。気に障ったんなら我慢してくれ」
火に油を注いでいることなど知らない千夜は平然と返事をする。
「それでお前たちはこれから何がしたいんだ?」
「分からないわよ……そんなの好きだった人を失ったんだから……」
その言葉にエリーゼたちは視線を逸らす。その気持ちが理解できるからだろう。勿論千夜にも分からないわけではない。大切な友を失った経験があるからだ。
「なら俺が言えることは一つだ。強くなれ」
その言葉にアイーシャたちは目を見開けた。
「俺を恨もうが憎もうが好きにすればいい。復讐したいのなら好きにすれば良い。いつでも相手してやる。だが絶対に犯罪には手を染めるな。そうなれば俺はお前たちを討伐対象と見なすからな」
それが千夜が出来る最大限の優しさなのだとエリーゼたちには分かっていたが、とても悲しい気持ちが心を痛めつける。
「アンタに言われるまでもないわよ!」
「そうか。なら最後に」
そう言って千夜は懐から水晶玉を取り出した。
「これが何か知っているな」
「ええ。どうしてアンタがそれを持っているのかとても不思議だけど、都市の入り口に必ずある犯罪履歴を見る物でしょ」
「そうだ。それを使ってキュリアの犯罪履歴を確かめる」
「まさか、キュリアを殺すの!」
「表示された犯罪履歴にもよる」
ここで嘘を吐いたところでなんの意味も無いことは知っている。だからこそ千夜は正直に答えた。
「そんなことさせ――」
「アイーシャ。私は大丈夫です!」
「キュリア……」
アイーシャの叫びを遮って答えたキュリア。それはきっともしもここでキュリアを庇って犯罪履歴が付いてしまう可能性を考えたからだろう。
決意を決め不安で震える手で水晶玉に手を翳した。
淡く光った水晶玉は犯罪履歴を表示する。
「あれ?何もない?」
「嘘でしょ!」
キュリアの言葉にアイーシャとレイネは横から除き見るが、そこには何も表示されなかった。
「どういう事なの?」
「どうやらお前の魔法はただの誤射として判断されたようだな。良かったな。これでお前が問い詰められる事はないだろう」
千夜はそう言って水晶玉を懐にしまった。
「これでお前を処罰する必要は無くなった。なら、俺たちは遠慮なく小屋に戻らせて貰う」
そう言って千夜たちは小屋へと戻るのであった。
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