鬼神転生記~勇者として異世界転移したのに、呆気なく死にました。~

月見酒

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第七章 忙しいが、呆気なく都市ルーセントに向かう事になりました。

第九十五幕 緊急作戦会議と息子に嫉妬

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 その日の夜。
 すべての船の船長、副船長、リーダーと副リーダーがべノワが乗る船に召集された。

「知らせで聞いたがそれは本当なのか?」
「ああ、高確率で間違いないだろう」
「では、どうしますか。夜も航海を続けますか?」
 すると一人の船長が質問してくる。見た目からしてまだ経験が浅く風格が感じられない。

「いや、それはやめた方が良いだろう。何も無いとはいえ複数の船で行動しているからな離れた場合危険になる。それよりかは、迎え撃つべきだろう」
「迎え撃つのですか!?」
「ああ。その方が確実だ」
「ですが、もしも海賊の数がこちらより多かった場合はどうするんですか?」
「もしもではなく間違いなくだろう。な、セン」
「ああ。確実にそうだろうな。考えられる相手の戦術だと、まずは数隻の小船で近づき見張りを殺してから一斉に襲い掛かるという感じだろう」
「ま、妥当な作戦だわな」
 相手の物を夜奪う場合一番の方法としては確実だと言えた。奪う物が少なければ襲ってくる人数も少ないが、海底遺跡の宝となれば戦闘は免れない。それどころか海賊として名を上げたがる連中は多いだろう。そうなれば間違いなく戦いを仕掛けてくることは千夜には分かりきっていたことだ。

「一番の作戦としては本体をある程度近づけさせたところに魔法による一斉攻撃というのがベストなんだが、そうなると偵察してくる少数の人数の奴らに気づかれないようにしなければならない」
「そうだよな」
 確実の死人が出るという作戦だ。
(他に可能な作戦があるわけでも……いや、ある)

「他に作戦を思いついた」
「どんな作戦だ?」
 千夜の言葉に真剣みが増したバレルが問い返す。
 そのあと千夜の作戦に召集させられた者たちが驚きの表情を浮かべる。

「正気なのか」
「ああ、勿論だ。そしてその役目は俺とルーザ、クーエが引き受ける」
「たった三人で。正気とは思えませんね」
「たまには無茶もしたくなる」
 不敵な笑みを浮かべながら呟いた言葉にその場に居た誰もが背筋を凍らせるほどの恐怖を感じた。
(よく、今まで犯罪者に身を落とさなかったな。いや、こいつにはこいつなりの信念や覚悟があるってことか)
 バレルはそんな事を思いながら千夜を見つめた。

「では、この作戦で行きましょう。明日の夜の見張りは夜目が利き、危機察知が得意で戦闘能力が高い人間でお願いします」
「「「「分かった」」」」
 べノワの言葉に各船の護衛のリーダーたちが返事をするのだった。
(さて、俺も準備を始めるとするか)
 そんな事を内心思いながら緊急作戦会議は終了した。
 甲板に出ると心配の表情でエリーゼたちが出迎えてくれ。因みに副リーダーとしてエルザが同行していた。

「それで作戦はどうなったの?」
「ああ、それについては今から説明するが、他の冒険者たちにも知らせないといけないからな。まずは船内に入ろう」
「ええ、分かったわ」
 船内へと移動した千夜たち。
 夜になり暗くなれば寝る以外ほとんどする事がない。そのため寝ているかと思っていた千夜だったが、部屋に入ると話を聞くためなのか誰もが真剣な表情で待っていた。

「それでセンさん。どうなりましたか?」
「ああ。もしも明日海賊が襲ってきた場合、とある作戦を実行することが決定した」
「それで、その作戦ってのは?」
「それについては今から話す」
 床に腰を落ちるかせると作戦内容を冒険者たちに話した。
 口から紡がれていく一つ一つの言葉に冒険者たちは驚きを隠せなかった。

「ほ、本気ですか!」
「ああ」
「無謀としか言いようがありません!」
「かもな。で、その間のリーダーはミーナ。副リーダーはリーゼ。頼んだ」
「分かりました」
「任せておいて」
 心配の表情を浮かべることすらない二人の言動に冒険者たちは驚きを隠せないでいた。

「姉御たちは平気なんですか!」
 この船の冒険者たちにとってエリーゼたちは千夜の大事な妻ということは誰もが知っていた。そこれその強さと妻ということの敬意を表して姉御と呼んでいた。因みに個人の名前を呼ぶときは姉御の前に名前をつけるというありふれた感じだ。

「その呼び方は止めてって言ってるでしょ。まるで悪党の幹部みたいじゃない」
「す、すいません。ですがセンさんの妻ですから」
 無理だと判断したエリーゼたちは同時に嘆息する。

「それで僕はどうすれば良いですか?」
「ウィルはミーナの傍にいろ。もしもミーナに攻撃してくる奴らがいたらお前がミーナを守るんだ」
「分かりました!」
「ウィルが私を守る騎士ですか。よろしくね」
「は、はい!」
 お姉さんとして優しく微笑みに顔を赤らめる。

「(旦那様は息子に嫉妬しないの)」
 小さな声で呟かれたエリーゼの言葉に千夜は返す言葉もなかった。

「お前ら、明日は戦闘だ。気合入れて戦え」
『おう!』
 船内に気合の篭った咆哮が轟く。
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