343 / 351
第七章 忙しいが、呆気なく都市ルーセントに向かう事になりました。
第百七幕 リーダーとギルガメッシュ
しおりを挟む
名前も知らない海賊団船長の憎しみと怒りの傷跡だらけの無残な骸を視界から外した千夜はエルザたちとこの後の事を決める。
「それでこの島の犯罪者どもを皆殺しにしますか?」
「いや、その必要はないだろう。俺たちの目的は別にある。もうこの島にはようはない」
「ですが、この島に滞在している可能性もあるのでは?」
「確かに無いとは言い切れないが、この島に住む古株だったあの男が知らないと言うんだ。その可能性はないだろう。それにこの島の住人なら海賊だけでなく他の組織にも協力を求めるはずだ。だが、その動きの影すら見えてこない。ならその可能性は無いと考えても良い」
「それってつまりは」
「ああ。この海賊団は目的のために利用されていただけだ。ま、船長は楽に財宝が手に入るという好条件に目がいって気づいてなかったみたいだがな」
「所詮は蛆虫以下の存在です。主と同等なわけがありません」
屍になった男に対しても同情や優しさなど一切無い毒舌に千夜は苦笑いを零すのだった。
「それでは船に戻りますか?」
「いや、港の探索をする。情報になるものがあるかもしれないからな」
「畏まりました。クーエ姉さん探索に行きましょう」
「よかろう」
エルザはクロエと一緒に物資が置かれている倉庫へと向かった。
「アイーシャたちも欲しい物があるなら適当に散策しても構わないぞ。ま、もうすぐこの島を出るから、あまり時間はないがな」
「言われなくても分かってるわよ」
棘のある言い方で吐き捨てたアイーシャは仲間とともに金目の物を探しに港の方へと向かった。
「さて、俺も探すとしよう」
そう呟いた千夜は船長が寝床として使っていた船の中へと入った。
木造船の船の中は千夜が予想していたより綺麗に清掃されており腐食などはしていなかった。
(バルディの部屋の方が汚いな)
内心そんな感想を抱きながら船長の書斎と思われる部屋の中へと入る。
一部は船長が気に入ったと思われる財宝が部屋の隅に乱雑に置かれていたが、それ以外は綺麗に整頓されていた。
壁には金の剣や盾。鎧などが置かれていたが、見向きもすることなくオフィスデスクの引き出しを一つ一つ開けて確かめていく。
(殆どが納品書だな。酒、麻薬、媚薬、避妊薬と様々だな。ま、殆どが盗品だろうが。俺の店の酒も発注されていたのか)
知らぬところで、自分が経営する酒が取引されていることに驚くが、別に盗まれたわけじゃない。どうせ商品を買った客から奪った酒なので、千夜にはどうでもいい事だ。
「だが、ギルガメッシュに関する資料はないな」
全ての引き出しを開けても目的の手がかりは見つからない。
「仕方がない。別の場所を探すか」
千夜はそう言うと壁や装飾品の中や裏に隠されていないか確かめるがあるのは、金貨数枚程度だけだった。
「どこかにあると思ったんだがな」
そんな事を思いながら見落としが無いかと再び引き出しを開ける。
「やはりないよ――ん?」
確かめて閉めようとした時手に違和感を覚えた。
「もしかして」
引き出しを引き抜いた千夜は中、側面、裏側と全ての方向を見たり触ったりして確かめる。
その時、指先に小さな穴に触れた感触を感じ取った。
「まさか、からくり細工された隠し引き出しになっているとはな」
思いがけない発見に笑みを零しながら千夜は中身を確かめる。
中に入っていたのは取引先の名簿だった。
「色んな組織の名前にこの島にある組織の名前。それから貴族の名前まである。それにしても随分手広くやっていたんだな。皇国、帝国、法国、聖王国の名前まである」
思いがけない裏社会の名前に呆れつつも、役に立つかもしれないとアイテムボックスに収納しておく。
「だが、ギルガメッシュの名前も暗霧の十月の名前もないか」
だが残念なことに千夜が一番求めた名前はなかった。
しかし他にも隠し引き出しがあるのではと思い探していると見事にあった。いや、ありすぎたというべきだろう。
(いったいどれだけあるんだ。この机そのものがからくり細工で出来ているみたいだな)
そんな事を思いながらもようやく千夜は目的の物を見つけた。
「暗霧の十月創設者兼リーダーギルガメッシュ。副リーダー、フランケンシュタインか」
思いがけない内容に驚きを隠せないでいた。
「まさか本当のリーダーがギルガメッシュだったとはな」
前に聞いたフランケンシュタインが転生者でリーダーと思っていたが調べていくうちにそうでない事が発覚していった。
そしてその証拠となる物が目の前にあることに千夜は嬉しく感じていた。
「これでようやく敵のボスが分かった」
亡霊のように揺ら揺らと揺らめいていた背中がハッキリと見えたことに千夜は不敵な笑みを浮かべるのだった。
「それでこの島の犯罪者どもを皆殺しにしますか?」
「いや、その必要はないだろう。俺たちの目的は別にある。もうこの島にはようはない」
「ですが、この島に滞在している可能性もあるのでは?」
「確かに無いとは言い切れないが、この島に住む古株だったあの男が知らないと言うんだ。その可能性はないだろう。それにこの島の住人なら海賊だけでなく他の組織にも協力を求めるはずだ。だが、その動きの影すら見えてこない。ならその可能性は無いと考えても良い」
「それってつまりは」
「ああ。この海賊団は目的のために利用されていただけだ。ま、船長は楽に財宝が手に入るという好条件に目がいって気づいてなかったみたいだがな」
「所詮は蛆虫以下の存在です。主と同等なわけがありません」
屍になった男に対しても同情や優しさなど一切無い毒舌に千夜は苦笑いを零すのだった。
「それでは船に戻りますか?」
「いや、港の探索をする。情報になるものがあるかもしれないからな」
「畏まりました。クーエ姉さん探索に行きましょう」
「よかろう」
エルザはクロエと一緒に物資が置かれている倉庫へと向かった。
「アイーシャたちも欲しい物があるなら適当に散策しても構わないぞ。ま、もうすぐこの島を出るから、あまり時間はないがな」
「言われなくても分かってるわよ」
棘のある言い方で吐き捨てたアイーシャは仲間とともに金目の物を探しに港の方へと向かった。
「さて、俺も探すとしよう」
そう呟いた千夜は船長が寝床として使っていた船の中へと入った。
木造船の船の中は千夜が予想していたより綺麗に清掃されており腐食などはしていなかった。
(バルディの部屋の方が汚いな)
内心そんな感想を抱きながら船長の書斎と思われる部屋の中へと入る。
一部は船長が気に入ったと思われる財宝が部屋の隅に乱雑に置かれていたが、それ以外は綺麗に整頓されていた。
壁には金の剣や盾。鎧などが置かれていたが、見向きもすることなくオフィスデスクの引き出しを一つ一つ開けて確かめていく。
(殆どが納品書だな。酒、麻薬、媚薬、避妊薬と様々だな。ま、殆どが盗品だろうが。俺の店の酒も発注されていたのか)
知らぬところで、自分が経営する酒が取引されていることに驚くが、別に盗まれたわけじゃない。どうせ商品を買った客から奪った酒なので、千夜にはどうでもいい事だ。
「だが、ギルガメッシュに関する資料はないな」
全ての引き出しを開けても目的の手がかりは見つからない。
「仕方がない。別の場所を探すか」
千夜はそう言うと壁や装飾品の中や裏に隠されていないか確かめるがあるのは、金貨数枚程度だけだった。
「どこかにあると思ったんだがな」
そんな事を思いながら見落としが無いかと再び引き出しを開ける。
「やはりないよ――ん?」
確かめて閉めようとした時手に違和感を覚えた。
「もしかして」
引き出しを引き抜いた千夜は中、側面、裏側と全ての方向を見たり触ったりして確かめる。
その時、指先に小さな穴に触れた感触を感じ取った。
「まさか、からくり細工された隠し引き出しになっているとはな」
思いがけない発見に笑みを零しながら千夜は中身を確かめる。
中に入っていたのは取引先の名簿だった。
「色んな組織の名前にこの島にある組織の名前。それから貴族の名前まである。それにしても随分手広くやっていたんだな。皇国、帝国、法国、聖王国の名前まである」
思いがけない裏社会の名前に呆れつつも、役に立つかもしれないとアイテムボックスに収納しておく。
「だが、ギルガメッシュの名前も暗霧の十月の名前もないか」
だが残念なことに千夜が一番求めた名前はなかった。
しかし他にも隠し引き出しがあるのではと思い探していると見事にあった。いや、ありすぎたというべきだろう。
(いったいどれだけあるんだ。この机そのものがからくり細工で出来ているみたいだな)
そんな事を思いながらもようやく千夜は目的の物を見つけた。
「暗霧の十月創設者兼リーダーギルガメッシュ。副リーダー、フランケンシュタインか」
思いがけない内容に驚きを隠せないでいた。
「まさか本当のリーダーがギルガメッシュだったとはな」
前に聞いたフランケンシュタインが転生者でリーダーと思っていたが調べていくうちにそうでない事が発覚していった。
そしてその証拠となる物が目の前にあることに千夜は嬉しく感じていた。
「これでようやく敵のボスが分かった」
亡霊のように揺ら揺らと揺らめいていた背中がハッキリと見えたことに千夜は不敵な笑みを浮かべるのだった。
10
あなたにおすすめの小説
戦場帰りの俺が隠居しようとしたら、最強の美少女たちに囲まれて逃げ場がなくなった件
さん
ファンタジー
戦場で命を削り、帝国最強部隊を率いた男――ラル。
数々の激戦を生き抜き、任務を終えた彼は、
今は辺境の地に建てられた静かな屋敷で、
わずかな安寧を求めて暮らしている……はずだった。
彼のそばには、かつて命を懸けて彼を支えた、最強の少女たち。
それぞれの立場で戦い、支え、尽くしてきた――ただ、すべてはラルのために。
今では彼の屋敷に集い、仕え、そして溺愛している。
「ラルさまさえいれば、わたくしは他に何もいりませんわ!」
「ラル様…私だけを見ていてください。誰よりも、ずっとずっと……」
「ねぇラル君、その人の名前……まだ覚えてるの?」
「ラル、そんなに気にしなくていいよ!ミアがいるから大丈夫だよねっ!」
命がけの戦場より、ヒロインたちの“甘くて圧が強い愛情”のほうが数倍キケン!?
順番待ちの寝床争奪戦、過去の恋の追及、圧バトル修羅場――
ラルの平穏な日常は、最強で一途な彼女たちに包囲されて崩壊寸前。
これは――
【過去の傷を背負い静かに生きようとする男】と
【彼を神のように慕う最強少女たち】が織りなす、
“甘くて逃げ場のない生活”の物語。
――戦場よりも生き延びるのが難しいのは、愛されすぎる日常だった。
※表紙のキャラはエリスのイメージ画です。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
友人(勇者)に恋人も幼馴染も取られたけど悔しくない。 だって俺は転生者だから。
石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていた魔法戦士のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもない状態だった。
だが、此の状態は彼にとっては『本当の幸せ』を掴む事に必要だった
何故なら、彼は『転生者』だから…
今度は違う切り口からのアプローチ。
追放の話しの一話は、前作とかなり似ていますが2話からは、かなり変わります。
こうご期待。
神様、ちょっとチートがすぎませんか?
ななくさ ゆう
ファンタジー
【大きすぎるチートは呪いと紙一重だよっ!】
未熟な神さまの手違いで『常人の“200倍”』の力と魔力を持って産まれてしまった少年パド。
本当は『常人の“2倍”』くらいの力と魔力をもらって転生したはずなのにっ!!
おかげで、産まれたその日に家を壊しかけるわ、謎の『闇』が襲いかかってくるわ、教会に命を狙われるわ、王女様に勇者候補としてスカウトされるわ、もう大変!!
僕は『家族と楽しく平和に暮らせる普通の幸せ』を望んだだけなのに、どうしてこうなるの!?
◇◆◇◆◇◆◇◆◇
――前世で大人になれなかった少年は、新たな世界で幸せを求める。
しかし、『幸せになりたい』という夢をかなえるの難しさを、彼はまだ知らない。
自分自身の幸せを追い求める少年は、やがて世界に幸せをもたらす『勇者』となる――
◇◆◇◆◇◆◇◆◇
本文中&表紙のイラストはへるにゃー様よりご提供戴いたものです(掲載許可済)。
へるにゃー様のHP:http://syakewokuwaeta.bake-neko.net/
---------------
※カクヨムとなろうにも投稿しています
魔王を倒した手柄を横取りされたけど、俺を処刑するのは無理じゃないかな
七辻ゆゆ
ファンタジー
「では罪人よ。おまえはあくまで自分が勇者であり、魔王を倒したと言うのだな?」
「そうそう」
茶番にも飽きてきた。処刑できるというのなら、ぜひやってみてほしい。
無理だと思うけど。
間違い転生!!〜神様の加護をたくさん貰っても それでものんびり自由に生きたい〜
舞桜
ファンタジー
「初めまして!私の名前は 沙樹崎 咲子 35歳 自営業 独身です‼︎よろしくお願いします‼︎」
突然 神様の手違いにより死亡扱いになってしまったオタクアラサー女子、
手違いのお詫びにと色々な加護とチートスキルを貰って異世界に転生することに、
だが転生した先でまたもや神様の手違いが‼︎
神々から貰った加護とスキルで“転生チート無双“
瞳は希少なオッドアイで顔は超絶美人、でも性格は・・・
転生したオタクアラサー女子は意外と物知りで有能?
だが、死亡する原因には不可解な点が…
数々の事件が巻き起こる中、神様に貰った加護と前世での知識で乗り越えて、
神々と家族からの溺愛され前世での心の傷を癒していくハートフルなストーリー?
様々な思惑と神様達のやらかしで異世界ライフを楽しく過ごす主人公、
目指すは“のんびり自由な冒険者ライフ‼︎“
そんな主人公は無自覚に色々やらかすお茶目さん♪
*神様達は間違いをちょいちょいやらかします。これから咲子はどうなるのか?のんびりできるといいね!(希望的観測っw)
*投稿周期は基本的には不定期です、3日に1度を目安にやりたいと思いますので生暖かく見守って下さい
*この作品は“小説家になろう“にも掲載しています
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!
没落した貴族家に拾われたので恩返しで復興させます
六山葵
ファンタジー
生まれて間も無く、山の中に捨てられていた赤子レオン・ハートフィリア。
彼を拾ったのは没落して平民になった貴族達だった。
優しい両親に育てられ、可愛い弟と共にすくすくと成長したレオンは不思議な夢を見るようになる。
それは過去の記憶なのか、あるいは前世の記憶か。
その夢のおかげで魔法を学んだレオンは愛する両親を再び貴族にするために魔法学院で魔法を学ぶことを決意した。
しかし、学院でレオンを待っていたのは酷い平民差別。そしてそこにレオンの夢の謎も交わって、彼の運命は大きく変わっていくことになるのだった。
※2025/12/31に書籍五巻以降の話を非公開に変更する予定です。
詳細は近況ボードをご覧ください。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。