鬼神転生記~勇者として異世界転移したのに、呆気なく死にました。~

月見酒

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第七章 忙しいが、呆気なく都市ルーセントに向かう事になりました。

第百十三幕 立ち眩みと地下に潜む魔物軍団

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 ベッドに座る千夜に対してラッヘンはふざけた仮面を付けたまま話し出す。

「私がこの都市に来て一番違和感を覚えたのは予想以上に血の臭い発する者が多いことです」
「それは俺もこと都市に来たときから感じていた」
「さすがは創造主様。それでいくつかの人間が一つの建物の中に入っていくのを見かけましたので二週間はその観察を行っておりました」
 ラッヘンの実力を持ってすれば直ぐにでも居場所を見つけることが可能だが、そうしなかったのは出入りする人間がどんな人物なのか知るためだ。

「私が調べた限り、頻繁に出入りしている建物は全部で三つ。どうやらその三つの建物には地下通路があり途中で繋がっているようです。そして出入りするのが頻繁に多かったのは二人一人は大柄な男。もう一人はメガネをかけた研究職についていると思われる痩せた男です」
(大柄な男。そいつがフランケンシュタインの可能性は大きいな。なら痩せた男がギルガメッシュなのか?)
 それだけでは情報が少ないと考えるのは一旦中断した千夜はラッヘンに質問する。

「他に気づいたことは?」
「この都市では一年前程から行商人や都市に住む者たちがオーガやゾンビなどを見かけたと言う噂が頻繁に出ています」
「オーガやゾンビが?」
「はい」
(そんな事をすれば都市の人口が減る可能性だってある。なのに代官が対策をしている形跡がない。いや、襲われたわけじゃない。都市の人間が減ろうと別の都市に行くのであれば入ってくる税は変わらないと言う事か?だが行商人なら二度と来ない可能性だってある。なのになんでだ?いや、分かりきった事だ。そうなれば国に報告しオーガやゾンビの討伐部隊を編成する資金を要求するためであり、オーガが行商人を襲えば残った物資を頂く算段か。だが行商人が減ったって噂が流れればそれだけで、来ることを考えていた者達の考えが変わる可能性だって。いや、討伐したって事にして一旦魔物を隠し、安心させて再び足を向けさせる考えかもしれない。冒険者ではなく国の軍が討伐したとなれば一般市民の安心度は計り知れない。そんな油断した行商人を狙うつもりか)
 一つの考えが纏まった千夜は再びラッヘンに視線を向ける。

「それで他には?」
「はい。二日に一度。数人の男たち。きっと犯罪者と思われる者たちが連れてこられますが出てきた物はおりません」
「なるほど。それはきっと魔物の餌か、実験台にするためだろうな」
「私のそう思います」
 そんな千夜の言葉にエリーゼたちは眉を顰めた。
 盗みなどを行った犯罪者を除けば殆どが死刑される犯罪者たちばかりだ。そんな犯罪者たちがその後どうなろうと平穏に暮らしている一般市民が気にするはずも無い。だからこそ有益な餌であり、実験台なのだろう。
 ゾンビがどうして出没するのが不思議だった千夜だがこれで納得する。
(だが、ゾンビを大量に作ってどうするつもりなんだ?)

「それで既に魔物を養殖している場所を見つけたって報告だったが、内部も調べてあるんだろうな?」
「勿論でございます」
「そうか。よくやった」
「そんなっ!勿体無きお言葉にございます」
 そんな千夜の言葉にラッヘンはふざけた仮面を付けている魔人とは思えないほどその場にひれ伏す。

「それで内部の様子はどうだった?」
「はい。ゴブリンがおよそ3600匹。ホブゴブリンが2000匹。ゴブリンライダーが2500匹、ゴブリンヒーローが500匹。ゴブリンジェネラルが10匹。ゴブリンキング1匹。オーガ2000匹、オーガウォーリアー1000匹、オーガロード10匹、オーク3500匹、オークキング1匹、ゾンビ4000匹、スケルトン5000匹にございます」
「そ、そんな大群が誰にも気づかれずに地下に隠れているなんて。いったいどうして……」
 ラッヘンの驚愕な事実にエリーゼは意識を立ちくらみを起こす。

「どうやら俺たちが考える以上に事態は深刻のようだな。まさか暗霧の十月ミラージ・サヴァンのリーダーであるギルガメッシュはこの国を乗っ取るつもりのようだ」
「そ、そんな……それってもしかして代官も」
「いや、あの腰抜けな代官が知っていると思えない。どうせ領主になる事しか考えていないさ。だから暗霧の十月ミラージ・サヴァンと手を組んだんだろうからな。だけど暗霧の十月ミラージ・サヴァンは代官と手を組んだことで実行できなかった作戦が実行できるようになったんだろう。出なければ軍団規模の魔物を今まで隠し通せて居るわけがないからな」
「じゃが千夜よ。それだけの魔物をどうやって操っておるのじゃ?」
「それは分からないがリーダーであるギルガメッシュは俺と同じ転生者の可能性が高い。となると何らかの強力なスキルを保有している可能性がある。それを使って魔物たちを従わせているんだろう」
「なるほどのぉ」
「それで、どうなされますか?」
「決まっている。今すぐにでも壊滅させる。でないと手遅れになるからな」
「畏まりました」
 そんな千夜とラッヘンの声音が弾んでいたことは言うまでも無いだろう。
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