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その頃、決意した勇者は?
雨降って地固まる。
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時を遡り、千夜たちと帝都で別れた勇治たちは王宮に戻ってきていた。
しかし、勇者パーティーの空気は達成感や思出話に花咲かせるほど明るくはなく、逆に暗く重い空気が立ち込めていた。
「あ、あのいったいどうされたのですか?」
王宮で留守番をしていたセレナは、明るく出ていった筈の勇治たちが暗い表情で帰って来たことに心配でしかたがなかった。
「心配しないで。別に誰かが怪我したとかじゃないから」
真由美は笑顔で言うがその顔には疲れと不安が隠しきれていなかった。
「分かりました。ですので今日は早くお休みになってください」
「ええ、そうするつもり。ごめんね話せなくて」
「いえ、明日にお聞きますのでお気になさらずに」
真由美とセレナは別れた。が、セレナは心配で仕方がなかった。
(こんな時に和也さんが居てくれれば………)
セレナはもうこの世に存在しない彼の姿を頭の中で浮かべるのであった。それが無意味で叶う筈のない願いだと分かっていたとしても。
次の日になり、全員が一つのテーブルで朝食を食べるが昨日のことがまだ引っ掛かるのか、空気が重たく理由を知らないベイベルグと王妃は居心地の悪い食事となっていた。
朝食を済ませた真由美は全員を勇治の部屋に集めた。勿論そのなかにセレナも含まれていた。
「で、真由美話ってなんだい? 悪いけど僕少し気分が優れないから一人にしてくれると嬉しいんだけど」
「駄目よ。ちゃんと昨日の事を話し合わないと何にも解決しないわ」
「…………」
ほんの僅かだけ憤りを表に出す真由美に勇治は無言になる。
「あ、あの、真由美さんいったい何があったのですか?」
「ごめんねセレナ。でも貴女にも聞いて貰いたくて」
「いえ、私は別に構いませんが」
「ありがとう。それじゃ、話し合いを始めるわよ。まず、皆は昨日の件についてどう思った?」
勿論全員がこの質問の意味を理解していた。なぜ襲撃されたのかではない。襲撃の対処について質問しているのだ。
「なら、俺から言わせてもらうぜ。俺は流石に全員を殺す必要はなかったと思う。情報を引き出すなら一人か二人は残して置いた方が良いからな」
「次は私ですね。私は別にあの人たちが殺しで遊んでいたわけではありませんから。正しい対処だと言えると思います」
「次は私だね。私は二人との考えと少し違うかな。見た感じあの人は自分の情報網を持っているようだったし、あの襲撃者たちが情報を吐くとも考えにくいから」
「私は奏と同じ考えよ」
真由美の口から出た短い意見に勇治は強く拳を握りしめた。
「それで勇治、貴方の意見を聞かせて」
「………………」
「勇治聞かせて」
「………………」
「おい、勇治なんとか言えよ」
イライラしているのか正利は強い口調になる。
「………………よ」
「なんだって?」
「おかしいよ! どうして皆はそんなに冷静で居られるのさ! 人が殺されたんだよ! それも目の前で! なのにどうして…………!」
「「「「「…………………」」」」」
勇治の口から吐かれる思いと感情に全員が真剣な表情で受け止める。
「ねえ勇治、私たちはなんのためにこの世界に喚ばれたの?」
「それは魔王を倒すために………」
「ねぇ、セレナ。魔王とその仲間に人間みたいな見た目の魔族っている?」
「はい、居ます。そもそも魔族と人間との見た目はあまり変わりません。強いて言うなら瞳が縦長なのと身体能力や魔力量が多いこと。あとは光属性を持てないことでしょうか。それと魔族と言っても人間とは違って色んな種族が存在します。ただ海を挟んだ向こうの大陸に居る者たちの事を私たちが勝手に魔族と呼んでいるだけなので」
「わかったわ。ありがとう」
「いえ、このような事でお役に立てるのでしたらいつでも聞いてください」
笑顔で返事をするセレナに真由美も笑みが溢れる。そして直ぐに勇治の方を向き、
「わかった勇治?」
「な、なにが?」
「私たちが倒そうとしている相手の見た目は人間とあまり変わらないって事よ」
「っ!?」
この時ようやく勇治は理解した。自分達がやろうとしている本当の事に。
「やっぱりね。気づいていなかったのね」
「真由美は知っていたの?」
「私も今知ったわよ。でも、もしかしたらそんな可能性があるんじゃないかなとは思っていたわ。多分私だけじゃなくて正利も紅葉も奏だって気づいていたと思うわ」
真由美の言葉に勇治は正利たちに視線を向ける。そして正利たちもそんな勇治の視線による問いに言葉で答えた。
「俺も千夜の吸血鬼を見たときからもしやと思ってたけどな」
「私も一つの可能性として考えてはいましたから」
「別に私には関係ない。ただ私はお兄ちゃんの仇と償いが出来ればそれで良いから」
それぞれの考えを聞いた勇治は思わず両手で顔を隠すように覆う。
「僕だけなにも知らなかったなんて………」
「勇治、落ち込んでる暇は無いわよ」
「ちょっと真由美!」
「紅葉、悪いんだけど今回だけは言わせて」
「真由美……………」
「ねえ勇治。私たちは約束したはずよ。誓ったはずよ。和也のためにもやり遂げるって。勇治、貴方はその約束を破るの?」
「そ、それは…………」
「それにね、本当は今すぐにでも勇治を殴り飛ばしたいの! 和也に謝りたいの」
「え?」
「理由なら幾つでもあるわ。貴方がこうウジウジしてるのだって腹が立つ! でもね一番腹が立ったのは貴方が千夜に対して「軽蔑する」って言ったことよ!」
「え、なんで?」
「分からないの! 別に千夜を庇ってる訳じゃ無いわよ! 貴方が未だにその気持ちを持ってることがよ! それって和也に対しても「軽蔑する」ってもう一度言ってるのと同じってわかってる!?」
「っ!」
「私だけじゃない! 皆は気づいてた。でも言わなかった。私たちも一度は和也に同じ気持ちを抱いたから。でも二度と同じような状況で同じことが起きてもその感情は持たないように決めた。なのに貴方は思った。口にした! その事に腹が立つの! 私たちはあの時後悔した。だから償うために頑張るって決めたのにどうして貴方はまだその感情を持ってるのよ!」
「……………ごめん」
勇治はようやく気づいた。あの時千夜に対して言った言葉がもうこの世に居ない和也に同じ対してもう一度言っていた事に。
「なら勇治貴方は今からどうすればいいのか分かるわよね!」
「……………あ、ああ」
「なら、逃げないで。立ち向かって。そして私たちと一緒に和也に償おう。約束を果たそう」
「あ、ああ!」
涙を流す勇治を抱き締める真由美もまた滴が頬に伝う。
それから数分してようやく元気を取り戻し、今まで以上に強く決意した勇者一同。
そんな彼らにセレナは申し訳なさそうに口を開く。
「あ、あの解決して良かったと思います。でも私にも理解できるように教えて貰えるとありがたいのですが」
「ああ、ごめんねセレナさん。でも、どっから話せば言いのかな」
「私たちが抱えてた過去から話せばいいと思います」
その言葉が紅葉から出たことに勇治たちは驚いたが、直ぐに笑みを浮かべて賛同するのだった。
「セレナさん聞いてくれるかい。僕たちが昔犯した大罪を」
ようやく語られる。
勇者たちのみが知る過去。
和也の過去。
そして勇治たちが抱える過去が。
しかし、勇者パーティーの空気は達成感や思出話に花咲かせるほど明るくはなく、逆に暗く重い空気が立ち込めていた。
「あ、あのいったいどうされたのですか?」
王宮で留守番をしていたセレナは、明るく出ていった筈の勇治たちが暗い表情で帰って来たことに心配でしかたがなかった。
「心配しないで。別に誰かが怪我したとかじゃないから」
真由美は笑顔で言うがその顔には疲れと不安が隠しきれていなかった。
「分かりました。ですので今日は早くお休みになってください」
「ええ、そうするつもり。ごめんね話せなくて」
「いえ、明日にお聞きますのでお気になさらずに」
真由美とセレナは別れた。が、セレナは心配で仕方がなかった。
(こんな時に和也さんが居てくれれば………)
セレナはもうこの世に存在しない彼の姿を頭の中で浮かべるのであった。それが無意味で叶う筈のない願いだと分かっていたとしても。
次の日になり、全員が一つのテーブルで朝食を食べるが昨日のことがまだ引っ掛かるのか、空気が重たく理由を知らないベイベルグと王妃は居心地の悪い食事となっていた。
朝食を済ませた真由美は全員を勇治の部屋に集めた。勿論そのなかにセレナも含まれていた。
「で、真由美話ってなんだい? 悪いけど僕少し気分が優れないから一人にしてくれると嬉しいんだけど」
「駄目よ。ちゃんと昨日の事を話し合わないと何にも解決しないわ」
「…………」
ほんの僅かだけ憤りを表に出す真由美に勇治は無言になる。
「あ、あの、真由美さんいったい何があったのですか?」
「ごめんねセレナ。でも貴女にも聞いて貰いたくて」
「いえ、私は別に構いませんが」
「ありがとう。それじゃ、話し合いを始めるわよ。まず、皆は昨日の件についてどう思った?」
勿論全員がこの質問の意味を理解していた。なぜ襲撃されたのかではない。襲撃の対処について質問しているのだ。
「なら、俺から言わせてもらうぜ。俺は流石に全員を殺す必要はなかったと思う。情報を引き出すなら一人か二人は残して置いた方が良いからな」
「次は私ですね。私は別にあの人たちが殺しで遊んでいたわけではありませんから。正しい対処だと言えると思います」
「次は私だね。私は二人との考えと少し違うかな。見た感じあの人は自分の情報網を持っているようだったし、あの襲撃者たちが情報を吐くとも考えにくいから」
「私は奏と同じ考えよ」
真由美の口から出た短い意見に勇治は強く拳を握りしめた。
「それで勇治、貴方の意見を聞かせて」
「………………」
「勇治聞かせて」
「………………」
「おい、勇治なんとか言えよ」
イライラしているのか正利は強い口調になる。
「………………よ」
「なんだって?」
「おかしいよ! どうして皆はそんなに冷静で居られるのさ! 人が殺されたんだよ! それも目の前で! なのにどうして…………!」
「「「「「…………………」」」」」
勇治の口から吐かれる思いと感情に全員が真剣な表情で受け止める。
「ねえ勇治、私たちはなんのためにこの世界に喚ばれたの?」
「それは魔王を倒すために………」
「ねぇ、セレナ。魔王とその仲間に人間みたいな見た目の魔族っている?」
「はい、居ます。そもそも魔族と人間との見た目はあまり変わりません。強いて言うなら瞳が縦長なのと身体能力や魔力量が多いこと。あとは光属性を持てないことでしょうか。それと魔族と言っても人間とは違って色んな種族が存在します。ただ海を挟んだ向こうの大陸に居る者たちの事を私たちが勝手に魔族と呼んでいるだけなので」
「わかったわ。ありがとう」
「いえ、このような事でお役に立てるのでしたらいつでも聞いてください」
笑顔で返事をするセレナに真由美も笑みが溢れる。そして直ぐに勇治の方を向き、
「わかった勇治?」
「な、なにが?」
「私たちが倒そうとしている相手の見た目は人間とあまり変わらないって事よ」
「っ!?」
この時ようやく勇治は理解した。自分達がやろうとしている本当の事に。
「やっぱりね。気づいていなかったのね」
「真由美は知っていたの?」
「私も今知ったわよ。でも、もしかしたらそんな可能性があるんじゃないかなとは思っていたわ。多分私だけじゃなくて正利も紅葉も奏だって気づいていたと思うわ」
真由美の言葉に勇治は正利たちに視線を向ける。そして正利たちもそんな勇治の視線による問いに言葉で答えた。
「俺も千夜の吸血鬼を見たときからもしやと思ってたけどな」
「私も一つの可能性として考えてはいましたから」
「別に私には関係ない。ただ私はお兄ちゃんの仇と償いが出来ればそれで良いから」
それぞれの考えを聞いた勇治は思わず両手で顔を隠すように覆う。
「僕だけなにも知らなかったなんて………」
「勇治、落ち込んでる暇は無いわよ」
「ちょっと真由美!」
「紅葉、悪いんだけど今回だけは言わせて」
「真由美……………」
「ねえ勇治。私たちは約束したはずよ。誓ったはずよ。和也のためにもやり遂げるって。勇治、貴方はその約束を破るの?」
「そ、それは…………」
「それにね、本当は今すぐにでも勇治を殴り飛ばしたいの! 和也に謝りたいの」
「え?」
「理由なら幾つでもあるわ。貴方がこうウジウジしてるのだって腹が立つ! でもね一番腹が立ったのは貴方が千夜に対して「軽蔑する」って言ったことよ!」
「え、なんで?」
「分からないの! 別に千夜を庇ってる訳じゃ無いわよ! 貴方が未だにその気持ちを持ってることがよ! それって和也に対しても「軽蔑する」ってもう一度言ってるのと同じってわかってる!?」
「っ!」
「私だけじゃない! 皆は気づいてた。でも言わなかった。私たちも一度は和也に同じ気持ちを抱いたから。でも二度と同じような状況で同じことが起きてもその感情は持たないように決めた。なのに貴方は思った。口にした! その事に腹が立つの! 私たちはあの時後悔した。だから償うために頑張るって決めたのにどうして貴方はまだその感情を持ってるのよ!」
「……………ごめん」
勇治はようやく気づいた。あの時千夜に対して言った言葉がもうこの世に居ない和也に同じ対してもう一度言っていた事に。
「なら勇治貴方は今からどうすればいいのか分かるわよね!」
「……………あ、ああ」
「なら、逃げないで。立ち向かって。そして私たちと一緒に和也に償おう。約束を果たそう」
「あ、ああ!」
涙を流す勇治を抱き締める真由美もまた滴が頬に伝う。
それから数分してようやく元気を取り戻し、今まで以上に強く決意した勇者一同。
そんな彼らにセレナは申し訳なさそうに口を開く。
「あ、あの解決して良かったと思います。でも私にも理解できるように教えて貰えるとありがたいのですが」
「ああ、ごめんねセレナさん。でも、どっから話せば言いのかな」
「私たちが抱えてた過去から話せばいいと思います」
その言葉が紅葉から出たことに勇治たちは驚いたが、直ぐに笑みを浮かべて賛同するのだった。
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