鬼神転生記~勇者として異世界転移したのに、呆気なく死にました。~

月見酒

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その頃、勇者は?

想いと決意

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 少し時間を遡り、和也を亡くした勇者たちは冷たくなった和也の体と共に城に帰って来ていた。

 その事が直ぐに王とセレナに伝えられ今は訓練所に来ていた。今この場には勇治たちと王とセレナに騎士団長のブラウンとブラウンの部下数名だけだった。
 そして、その中心には和也の死体が置かれていた。

「申し訳ありません!護衛もなしに狩に行かせてしまい!」
 ブラウンが王に跪き謝罪する。

「よい! 我も勇者達を信用していたからな今回は私の責任だ。そして、今、この場で火葬したのち浄化する。直ちに準備せよ!」
「「「はっ!」」」
 王の命令で火葬が行われることになった。

「みなさん、申し訳ありませんが死体を火葬しなければアンデットになる可能性があります。なので………」
「ごめんねセレナ。分かってる。だからお願い火葬の準備が終わるまで側に居させて……」
「……分かりました。真由美さんの言う通りにします」
「ありがとう………」
 それからして火葬の準備が終わり、和也の死体は燃やされた。




「「「「ぅぅううあああああああああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」」」」



 再び四人の叫び声が響いた。


 あれから数日勇治たちは勇治の部屋に集まり引きこもっていた。

「……………」
「……………」
「……………」
「……………」
 けして誰も喋らない部屋には重く暗い空気が漂っていた。

 コンコン

「…………」
勇治は返事をしない。

「皆さん私です。セレナです」
「ごめんねセレナ。今はーー」
「いえ、ダメです。期限は過ぎました。なので入らしてもらいます!」
 セレナの口調には何処か覚悟があった。

「期限ってなんですか!私はそんなこと言った覚えはありません!」
 紅葉は溜まった負の感情を大声でセレナにぶつける。
だが、セレナは負けなかった。なぜなら、

「はい、みなさんには頼まれてません。私に頼んだのは……」
 一瞬間を空ける。伝えても開けてもらえたなっかたらという不安、頼まれたとはいえ、私なんかでいいのかと言う迷いがセレナの脳内を過ぎる。
(どうか、力を貸して下さい!)
 胸の前で握り拳を作ると、吸い込んだ空気を全て吐く思いで伝えた。

「和也さんです」


「「「「………え?」」」」


 その言葉に全員の視線がドアに集まる。

「私は和也さんに頼まれました。『もし、俺が死んだらあいつらは絶対に部屋から出てこなくなるだろう。数日は構わない。だけどな勇治たちは勇者だ。こんなことで躓いてる場合じゃない』と」

「嘘よ。和也の名前を出さないで」
「嘘ではありません」
「嘘よ!」
 真由美もまた後悔に押し潰されそうになる苦しみを払拭するようにセレナに当たる。

「セレナ。なら、和也の言葉だと嘘ではないと言える証拠を出してよ」
 勇治がそう言った。
 そして、その言葉にセレナは驚愕し、賞賛した。
(和也さん。本当に貴方という人は凄いですね)
 セレナは胸の前で左手を右手で覆うように握り断言した。

「分かりました」
「なら、言ってみて」
「なら、言ってみなさいよ」
「なら、言ってみろ」
「なら、言ってみてください」
 四人の言葉が重なる。
 セレナはふと、思い出す。人前では弱い部分を見せない。特に大切な親友の前では。それでも誰よりも親友のことが分かる和也にもう一度賞賛し、
(和也さん力をお借りします)
 口にした。






「この世に「「「「『絶対』など存在しない。なぜなら『絶対』とは希望であり、願望だ。そして『絶対』とは、過去を指す言葉でもあるからだ」」」」」



「どうですか?」



 ガチャ。
ドアが開かれた。
 そこには完全復活とは呼べないが元気なった4人の勇者の姿があった。

「ごめんねセレナ。あたったりして」
「いえ、構いません。和也さんにきっとこうなるだろうと言われてましたから」
「ほんと敵わないな和也には」
 勇治は天井を見上げ呟くのだった。

「皆さんこれを」
 セレナは紙の束を差し出す。

「これは?」
「和也さんがこれまでに調べていた事が書かれた資料です」
 勇治は受け取りパラパラとめくる。そこには通貨、職業、国、種族、歴史、魔法、発展具合が書かれたものだった。

「ほんと、敵わないよ。嫉妬しちゃうな」
「「「まったくね」だ」ですね」
 このとき、4人は和也との思い出を振り返りそして、死ぬ寸前に和也に言われたことを思い出していた。

「さて、和也との約束を果たすために焦らずに頑張ろうみんな!」
「ええ!」
「おう!」
「はい!」
 その光景を見ながら良かったと胸を撫で下ろし、そして改めて思うのだったけど
(和也さん凄いですね。そして貴方が生きていればきっと惚れていたでしょう)
 それは歴史に語られることのないセレナの初恋の瞬間だった。

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