鬼神転生記～勇者として異世界転移したのに、呆気なく死にました。～

第五章 依頼が無いので、呆気なく新婚旅行に行く事になりました。

第九十二幕 戦闘後とついに

　討伐を終えた千夜たちは一旦その場で休憩後ブラッドワームをアイテムボックスにしまう。本当ならその場で解体するが、今回は女性陣の希望でギルドに任せることにした。
　行きよりも落ち着いた気分で森の中を歩く千夜たち。

「どこで夜営するの？」
「そうだな………行きとは違いゆっくり帰りたいからな深淵の森を出て日が半分ほど傾いたら近場の河か森で夜営するとしよう」
「分かったわ」
　何処か機嫌の良いエリーゼ。その姿に疑問符を浮かべる千夜であったが気にする事なく歩みを進める。
　休憩も何度か取りながら歩き続けてようやく日が傾きだしたことで千夜たちは夜営の準備を始めた。
　王都まで残り半分の距離となった。つまり千夜たちは歩くだけでも馬車と同じスピード、いや、それより少し早いスピードと言えた。
 太陽も完全に地平線の彼方へと消えた空は闇に覆われていた。
 夕食も食べ終わるとエリーゼたちは流石に疲れていたのか簡易のテントで熟睡していた。
 そんな彼女たちの寝顔を眺めたのち千夜が一人で見張りを行う。
 別に千夜ではなくてもスケアクロウに任せればエリーゼたちと寝ることも出来た。しかし、今回の戦いでまともに戦っていなかった千夜が自ら選んで見張りを行っているのだ。
 それに千夜にはまだしなくてはならないことがある。正確には考えることがあった。
 それは存在進化である。

「俺の推測が正しければミレーネとクロエは確実に、エルザも心配ないだろう。エリーゼは………運が良ければ可能だろうか？ いや、一番奮闘したのはエリーゼだからな。するかもしれないな」
　揺らめく炎を見詰めぶつぶつと呟く千夜は、視線を気持ち良さそうに眠るエリーゼたちの方へ向ける。

「丁度今頃、選択している筈だ。扉を開けて先に進むか、開けずに立ち止まるのかをな」
　ゲームではアイコンが表示され、YESorNOのどちらかだったが、現実ではどうなるのか、千夜は知らない。しかしブラッドワームを倒した直後に存在進化しなかった所を見る限り、一度深い眠りにつく必要があると千夜は推測した。

「明日が楽しみだな」
　危機察知と探索スキルを発動したまま仮眠を取る千夜であった。
　そして、運命の次の日を向かえた。

「センヤさん！」
「どうした？」
　動揺を隠しきれない声音で千夜の名前を呼ぶ金髪の美女。

「これは、どういう事なのじゃ！」
　その後ろでは口調も変わっている褐色肌の妖艶な美女がいた。

「あ、主………これはいったい……」
 不安を隠しきれない銀髪美少女。

「私は変わってないわね」
 体のあちこちを見るエリーゼ。

「予想通りだな」
「何がですか？」
「ま、驚くのも無理はない。さ、朝食にするとしよう。説明はその後だ」
　そう言ってアイテムボックスからパンと昨日の残りのシチューを取り出すのであった。