上 下
76 / 351
第五章 依頼が無いので、呆気なく新婚旅行に行く事になりました。

第九十九幕 ロッテン山脈と7600

しおりを挟む

「あれか」
「そうじゃ。あれがロッテン山脈じゃ」
 目の前に高々とそびえ立つ灰色の肌を持つ山脈。

「高いわね」
「雲で山頂が見えません」
「立派です」
 馬車の窓から顔を出して目的地の山脈を見上げる。
 7600メートルを超える山脈は雲で山頂が見えないほどだ。

「本当にこんな場所に住んでるの?」
「本当じゃ。我らの村は山頂近くにあるのじゃ」
「そ、それは凄いわね」
 クロエの言葉に行く気が失せてくるエリーゼ。
 それでも行かなくてはならい。クロエを妻にしたことを伝えないといけないのだから。

「今日は山脈の麓で夜営をする。明日は日の出と同時に出発するからな。早く寝ること。分かったか」
「「「「はい」」」」
「スケアクロウ。念のため周りに用心して進め」
「畏まりました」
 マップには千夜たち以外の生命反応はない。それだけ生物が住める場所では無いからだろう。
(しかし、ダークエルフの反応も無いのは気になるが)

「クロエ。山頂の近くとは言ったが、村はどの辺りだ」
 千夜が訊いているのは高さの場所ではなく横の場所なのである。もちろんその事はクロエも理解していた。

「我らが住んでいる村は……あの辺りじゃ」
 真っ直ぐと続く道。つまりこのまま行けば到着するであろう山脈の麓から遥か右を指指していた。

「なるほど。どおりでな」
「何がじゃ?」
「いや、クロエたちダークエルフですら1日は掛かると言っていたからな。ただ真っ直ぐ登るだけならそんなには時間が掛からないと思っただけだ」
「なるほどの。流石はセンヤなのじゃ」
 感心するクロエ。しかし、千夜は他の意味で納得していた。
(通りでマップにも表示されないわけだ)
 クロエが示した場所は千夜のマップの圏外にあることが判明したのだ。
(結果的に存在進化していて正解だったようだな)
 土地を知らない場所で魔物と遭遇すれば遥かに危険度は増す。それが標高の高く空気の薄い場所なら尚更である。

「創造主様、そろそろ麓に到着致します」
「分かった。到着したら、警戒を最大にしたのち、結界を設置してくれ。明日のために魔力は消費したくないんでな」
「畏まりました」
 林道を進み山脈が目の前まで見えてくる。
 それは天然の壁とも言えるものだった。
 そして、千夜たちは明日のため夜営の準備を始めるのであった。
しおりを挟む
1 / 5

この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!

そちらから縁を切ったのですから、今更頼らないでください。

恋愛 / 完結 24h.ポイント:5,175pt お気に入り:2,077

真実の愛がどうなろうと関係ありません。

恋愛 / 完結 24h.ポイント:6,008pt お気に入り:2,925

七人の兄たちは末っ子妹を愛してやまない

ファンタジー / 完結 24h.ポイント:15,756pt お気に入り:7,995

婚約者の彼から彼女の替わりに嫁いでくれと言われた

恋愛 / 連載中 24h.ポイント:7,351pt お気に入り:166

グラティールの公爵令嬢

ファンタジー / 連載中 24h.ポイント:18,077pt お気に入り:3,350

欲しいのは惚れ薬、私が飲むんです

恋愛 / 完結 24h.ポイント:2,115pt お気に入り:13

離宮に隠されるお妃様

恋愛 / 連載中 24h.ポイント:482pt お気に入り:150

オークの苗床候補生活。転生先はオークのコロニー内でした

ファンタジー / 連載中 24h.ポイント:35pt お気に入り:392

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。