鬼神転生記~勇者として異世界転移したのに、呆気なく死にました。~

月見酒

文字の大きさ
89 / 351
第五章 依頼が無いので、呆気なく新婚旅行に行く事になりました。

第百十二幕 シャイネとクロエの戦い (後)

しおりを挟む
「行くぞ、クロエ!」
 力強く宣言したシャイネはクロエに向かって一直線に突っ走る。
(何をするつもりじゃ、もう力の差は分かっている筈じゃ。ただ突っ込むだけでは我には勝てない。まさか横から回り込むつもりか? じゃがスピードも我の方が上じゃ。甘く見るなよ)
 だが、クロエの推測とは裏腹にシャイネは真っ直ぐと突っ込む。

「それではさっきと同じじゃそ!」
 クロエは土壁を作りシャイネの進路を防ぐ。が、
(いまだ!)
 シャイネはそれを待ってましたとばかりに目の前の土壁に突っ込む。

「喰らえ! 私の新しい力を! 『火炎武装』!」
 そう叫ぶと同時にシャイネの短剣が炎によって覆われた。

「まさか魔法武装! 嘘でしょこの短期間で覚えるなんて」
「そうでもない」
「そうなの?」
「ああ。確かにシャイネはクロエやエリーゼたちのような才能はない。だが、それはあくまで総合評価での話だ」
「総合評価?」
「ああ。魔法、武術、スキルやステータスの同時に向上させられる。それも他の奴らよりな。それを総合評価という」
「なるほどね」
「だがな。シャイネはお前たちよりかも遥かに上をいく才能があった」
「それはなんなの?」
「それは一直線なところだ」
「一直線?」
「ああ。シャイネは一つのこと徹底的にさせればクロエやエリーゼたちよりも遥かに早く習得し向上することが分かった。ま、それはシャイネの性格が要因なんだろうがな」
「性格?」
「ああ。けして諦めない。けして成ってみせる、と言うたった一つの事に対しての執着心みたいなものだ。それが彼女の才能の秘訣なんだ」
「でも一つだけ強くなっても」
「確かにその通りだ。だが、どれだけ総合が高かろうと一つの分野を極めたものが1つでもあれば、上回る物があれば数回に一回は貫く事が出来る。それは俺がお前たちに教えた、けして絶対ではない。という言葉と同じだ」
「あ」
 千夜の言葉を理解したエリーゼは視線を戦闘の方に向ける。そこではちょうどシャイネがクロエの土壁を火炎武装で貫いたところだった。

「これで終わりだ!」
 壊されるとは思っていなかったクロエは反応が遅れる。しかし、すぐさま短剣を構える。
 そこはやはりステータスの差が大きい。だが、
(ただの短剣と魔法武装を施した短剣では攻撃力も強度も遥かに違う)
 シャイネが降り下ろした短剣はクロエの短剣を一刀両断する。

「うそ……じゃ」
 目の前の光景が信じられないのかクロエはその場で固まってしまう。その隙にシャイネは火炎武装の短剣をクロエに突きつける。

「そこまで! 勝者、シャイネ!」
 コーランと宣言と共にシャイネ勝利となった。

「クロエ」
「センヤ……ごめん……ごめんなのじゃ。我はこれで……」
「安心しろあれは嘘だ」
「え?」
「負けた人間を長にするような所があると思うか?」
「それは」
「ああ、言わないとクロエが真剣にシャイネと戦わないと思ったからな」
「それじゃ」
「ああ。この村の長はシャイネだ」
 千夜の言葉でクロエはシャイネに視線を向ける。
 そこにはその場に座り込みならも村人と楽しそうに談話するシャイネの姿があった。

「やはりシャイネは凄いな」
 そう呟くクロエであった。

「それはそうとクロエ」
「なんじゃ?」
「俺は言ったよな。力が上だからといって相手を侮るな。と」
「……………」
「なのにお前は力が上だからと過信して手を抜いたな」
「………………でも、それは……」
「良いわけは無用だ。後で説教だ」
「うぅ……」
「どんまいクロエ」
「何を言っている。さっき言っただろエリーゼお前もだ」
「そ、そんな!」
 悲鳴にも似た雄叫びが山脈の山頂に響き渡るのだった。
しおりを挟む
感想 694

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

戦場帰りの俺が隠居しようとしたら、最強の美少女たちに囲まれて逃げ場がなくなった件

さん
ファンタジー
戦場で命を削り、帝国最強部隊を率いた男――ラル。 数々の激戦を生き抜き、任務を終えた彼は、 今は辺境の地に建てられた静かな屋敷で、 わずかな安寧を求めて暮らしている……はずだった。 彼のそばには、かつて命を懸けて彼を支えた、最強の少女たち。 それぞれの立場で戦い、支え、尽くしてきた――ただ、すべてはラルのために。 今では彼の屋敷に集い、仕え、そして溺愛している。   「ラルさまさえいれば、わたくしは他に何もいりませんわ!」 「ラル様…私だけを見ていてください。誰よりも、ずっとずっと……」 「ねぇラル君、その人の名前……まだ覚えてるの?」 「ラル、そんなに気にしなくていいよ!ミアがいるから大丈夫だよねっ!」   命がけの戦場より、ヒロインたちの“甘くて圧が強い愛情”のほうが数倍キケン!? 順番待ちの寝床争奪戦、過去の恋の追及、圧バトル修羅場―― ラルの平穏な日常は、最強で一途な彼女たちに包囲されて崩壊寸前。   これは―― 【過去の傷を背負い静かに生きようとする男】と 【彼を神のように慕う最強少女たち】が織りなす、 “甘くて逃げ場のない生活”の物語。   ――戦場よりも生き延びるのが難しいのは、愛されすぎる日常だった。 ※表紙のキャラはエリスのイメージ画です。

友人(勇者)に恋人も幼馴染も取られたけど悔しくない。 だって俺は転生者だから。

石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていた魔法戦士のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもない状態だった。 だが、此の状態は彼にとっては『本当の幸せ』を掴む事に必要だった 何故なら、彼は『転生者』だから… 今度は違う切り口からのアプローチ。 追放の話しの一話は、前作とかなり似ていますが2話からは、かなり変わります。 こうご期待。

魔王を倒した手柄を横取りされたけど、俺を処刑するのは無理じゃないかな

七辻ゆゆ
ファンタジー
「では罪人よ。おまえはあくまで自分が勇者であり、魔王を倒したと言うのだな?」 「そうそう」  茶番にも飽きてきた。処刑できるというのなら、ぜひやってみてほしい。  無理だと思うけど。

神様、ちょっとチートがすぎませんか?

ななくさ ゆう
ファンタジー
【大きすぎるチートは呪いと紙一重だよっ!】 未熟な神さまの手違いで『常人の“200倍”』の力と魔力を持って産まれてしまった少年パド。 本当は『常人の“2倍”』くらいの力と魔力をもらって転生したはずなのにっ!!  おかげで、産まれたその日に家を壊しかけるわ、謎の『闇』が襲いかかってくるわ、教会に命を狙われるわ、王女様に勇者候補としてスカウトされるわ、もう大変!!  僕は『家族と楽しく平和に暮らせる普通の幸せ』を望んだだけなのに、どうしてこうなるの!?  ◇◆◇◆◇◆◇◆◇  ――前世で大人になれなかった少年は、新たな世界で幸せを求める。  しかし、『幸せになりたい』という夢をかなえるの難しさを、彼はまだ知らない。  自分自身の幸せを追い求める少年は、やがて世界に幸せをもたらす『勇者』となる――  ◇◆◇◆◇◆◇◆◇ 本文中&表紙のイラストはへるにゃー様よりご提供戴いたものです(掲載許可済)。 へるにゃー様のHP:http://syakewokuwaeta.bake-neko.net/ --------------- ※カクヨムとなろうにも投稿しています

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

魔王を倒した勇者を迫害した人間様方の末路はなかなか悲惨なようです。

カモミール
ファンタジー
勇者ロキは長い冒険の末魔王を討伐する。 だが、人間の王エスカダルはそんな英雄であるロキをなぜか認めず、 ロキに身の覚えのない罪をなすりつけて投獄してしまう。 国民たちもその罪を信じ勇者を迫害した。 そして、処刑場される間際、勇者は驚きの発言をするのだった。

間違い転生!!〜神様の加護をたくさん貰っても それでものんびり自由に生きたい〜

舞桜
ファンタジー
「初めまして!私の名前は 沙樹崎 咲子 35歳 自営業 独身です‼︎よろしくお願いします‼︎」  突然 神様の手違いにより死亡扱いになってしまったオタクアラサー女子、 手違いのお詫びにと色々な加護とチートスキルを貰って異世界に転生することに、 だが転生した先でまたもや神様の手違いが‼︎  神々から貰った加護とスキルで“転生チート無双“  瞳は希少なオッドアイで顔は超絶美人、でも性格は・・・  転生したオタクアラサー女子は意外と物知りで有能?  だが、死亡する原因には不可解な点が…  数々の事件が巻き起こる中、神様に貰った加護と前世での知識で乗り越えて、 神々と家族からの溺愛され前世での心の傷を癒していくハートフルなストーリー?  様々な思惑と神様達のやらかしで異世界ライフを楽しく過ごす主人公、 目指すは“のんびり自由な冒険者ライフ‼︎“  そんな主人公は無自覚に色々やらかすお茶目さん♪ *神様達は間違いをちょいちょいやらかします。これから咲子はどうなるのか?のんびりできるといいね!(希望的観測っw) *投稿周期は基本的には不定期です、3日に1度を目安にやりたいと思いますので生暖かく見守って下さい *この作品は“小説家になろう“にも掲載しています

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。