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第五章 依頼が無いので、呆気なく新婚旅行に行く事になりました。
第百十三幕 宴と杯
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クロエの実家にて説教を終えた千夜たちは宴に誘われ洞窟の中央広場に来ていた。
宴の内容は勿論次代の長が決まったことへの祝福だ。
「俺たちも参加して良いのか」
と、聞いたところ短時間でシャイネを強くした事と一時的とはいえ、クロエを連れて返って来てくれた事への感謝らしい。
「ま、そう言うことならありがたく参加させて貰おう」
千夜も宴は嫌いではないらしく、アイテムボックスからオールリキュールで作った酒を振舞った。
(やはり、美味しそうに飲んで貰えるのはありがたいな)
ダークエルフたちが笑みを浮かべて飲む姿に頬が緩む千夜。
そんな彼に近づくものが居た。
「どうしたシャイネ」
「いや、改めてお礼を言っておこうと思ってな」
「別に気にする必要はない。俺はただお前に勝って貰わないと困ったから強くしただけだ。互いの目的が重なったに過ぎないからな」
「それでもだ。本当にありがとう」
「なら、お礼ついでに頼まれごとを言いか?」
「ああ、なんでも言ってくれ」
「今日の主役を独り占めする訳にも行かないからな。一度だけ酌してくれ」
「そんな事で良いのか?」
「ああ。それで構わない」
「そうか」
シャイネは千夜の空になった杯に酒を注ぎこむ。
「ほれ、次はシャイネだ」
「あ、ああ。すまない」
今度は千夜がシャイネに酌をする。
「それじゃ、ダークエルフの安寧と未来の長に乾杯」
「か、乾杯。なんか気恥ずかしいな」
酒で赤くなったのか、それともただ恥ずかしかったのかは曖昧だが、シャイネは嬉しそうに酒を口にする。
「ほら、シャイネ他のところにも行って酌してやれ。次代の長なんだからな」
「あ、ああ。そうさせて貰う」
軽く手を振って行ってしまったシャイネを見送りながら千夜は杯に酒を注ぐ。
「ねえ、旦那様?」
「なんだ?」
「どうして答えてあげなかったの?」
「なんの事だ?」
「惚けても無駄。分かってる筈よ。シャイネが旦那様に好意を向けていることは」
「その事か?」
「なんで答えてあげなかったの?」
「シャイネのあれは好意なのかもしれないが、その一部は強い者への憧れだろう。それにシャイネは次代の長だ。せっかくの夢を叶えたんだ。ひと時の感情で夢を捨てさせるわけにも行かないからな」
「そうだけど……」
「それにな。俺は夢を叶えても尚、前に進み続け仲間と笑っているシャイネの姿が好きなんだ。いや、羨ましいのだろうな」
「あら、私たちは何時もあれ以上に笑ってるわよ」
「確かにな。だが、お前たちは仲間であっても家族だからな。あれとは少し違う」
「確かにそうね」
焚き火を囲み楽しそうに笑顔を振りまくシャイネたちの姿にどこか儚げな瞳で見つめる千夜の横顔をエリーゼは気になってしかたが無かった。
(きっと、この表情をさせるのは旦那様の過去にある。でも私たちは旦那様の過去をしらない。訊いても旦那様は話してくれない。それは信頼関係以前に旦那様の整理がついていないから)
「旦那様」
「なんだ」
「何時までも待ってるわ」
「ん? 分かった」
エリーゼの言葉の意味を理解できない千夜であった。
宴の内容は勿論次代の長が決まったことへの祝福だ。
「俺たちも参加して良いのか」
と、聞いたところ短時間でシャイネを強くした事と一時的とはいえ、クロエを連れて返って来てくれた事への感謝らしい。
「ま、そう言うことならありがたく参加させて貰おう」
千夜も宴は嫌いではないらしく、アイテムボックスからオールリキュールで作った酒を振舞った。
(やはり、美味しそうに飲んで貰えるのはありがたいな)
ダークエルフたちが笑みを浮かべて飲む姿に頬が緩む千夜。
そんな彼に近づくものが居た。
「どうしたシャイネ」
「いや、改めてお礼を言っておこうと思ってな」
「別に気にする必要はない。俺はただお前に勝って貰わないと困ったから強くしただけだ。互いの目的が重なったに過ぎないからな」
「それでもだ。本当にありがとう」
「なら、お礼ついでに頼まれごとを言いか?」
「ああ、なんでも言ってくれ」
「今日の主役を独り占めする訳にも行かないからな。一度だけ酌してくれ」
「そんな事で良いのか?」
「ああ。それで構わない」
「そうか」
シャイネは千夜の空になった杯に酒を注ぎこむ。
「ほれ、次はシャイネだ」
「あ、ああ。すまない」
今度は千夜がシャイネに酌をする。
「それじゃ、ダークエルフの安寧と未来の長に乾杯」
「か、乾杯。なんか気恥ずかしいな」
酒で赤くなったのか、それともただ恥ずかしかったのかは曖昧だが、シャイネは嬉しそうに酒を口にする。
「ほら、シャイネ他のところにも行って酌してやれ。次代の長なんだからな」
「あ、ああ。そうさせて貰う」
軽く手を振って行ってしまったシャイネを見送りながら千夜は杯に酒を注ぐ。
「ねえ、旦那様?」
「なんだ?」
「どうして答えてあげなかったの?」
「なんの事だ?」
「惚けても無駄。分かってる筈よ。シャイネが旦那様に好意を向けていることは」
「その事か?」
「なんで答えてあげなかったの?」
「シャイネのあれは好意なのかもしれないが、その一部は強い者への憧れだろう。それにシャイネは次代の長だ。せっかくの夢を叶えたんだ。ひと時の感情で夢を捨てさせるわけにも行かないからな」
「そうだけど……」
「それにな。俺は夢を叶えても尚、前に進み続け仲間と笑っているシャイネの姿が好きなんだ。いや、羨ましいのだろうな」
「あら、私たちは何時もあれ以上に笑ってるわよ」
「確かにな。だが、お前たちは仲間であっても家族だからな。あれとは少し違う」
「確かにそうね」
焚き火を囲み楽しそうに笑顔を振りまくシャイネたちの姿にどこか儚げな瞳で見つめる千夜の横顔をエリーゼは気になってしかたが無かった。
(きっと、この表情をさせるのは旦那様の過去にある。でも私たちは旦那様の過去をしらない。訊いても旦那様は話してくれない。それは信頼関係以前に旦那様の整理がついていないから)
「旦那様」
「なんだ」
「何時までも待ってるわ」
「ん? 分かった」
エリーゼの言葉の意味を理解できない千夜であった。
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