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第六章 帰って早々、呆気なくフィリス聖王国調査を始めました。

第十一幕 リュミエールと和也

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 フィリス聖王国王都リュミエールの大通りにある三階建の建物に人地の少年が来訪する。
 情報を交換する者、素材を換金する者、掲示板で依頼を探している者などの視線が一斉に集中する。普通ならそこで直ぐに自分の事をするため視線を戻すだろう。しかし、彼の時だけは違った。

「カズヤだぜ。戻ってきたって事はもうSランクの依頼を達成したって事だよな」
「流石はカズヤさんね」
「ああ、流石は『孤高の蒼槍使い』だ」
「一度で良いから、パーティー組んでくれないかな」
「そんなの無理に決まってるだろ。カズヤさんは――」
「バカ! その話は禁句だろうが!」
「す、すまない」

 とある冒険者達の中で有名な噂。それは千夜、もとい和也が3ヶ月前に王都、リュミエールに気たばかりに和也自信が話した噂だった。
 そんな噂が飛び交うなか、和也は気にすることなく受付で依頼達成の報告を行う。

「ソワール・ハウンドの討伐は無事に達成してきたぞ」
 受付嬢に伝えながら懐からギルドカードを取り出す。

「確かに討伐を確認しました。こちらが報酬です」
 既に用意されていた金貨が入った皮袋がずっしりとカウンターに置かれる。

「いつもの事ですが、報酬金の35パーセントは教会に自動で寄付されますので」
「ああ、分かっている」
 この国では全てに対して教会への寄付という名目で税が掛けられている。それがこの国の法律だ。
 それぞれで、寄付する税金の割合は変わってくるが、最低でも単価の一割は寄付しなければならない。もしも、寄付を拒めば最悪死罪にだってなりうるのだ。
 しかしそれでは不満が出てもおかしくはない。
(だが、調べた限りじゃ、そういった噂はきないからな)
 内心呟く和也。
 理由としては、いくつかの神からの御加護というなの特典、それは怪我や病気などしたとしてもフィリス聖王国の住民ならば銅貨5枚で手当てをしてくれるのだ。
 だが、一番大きな理由はこの王都の住民に教会の言葉に不満、ましてや疑うものなど一人も居ないからだ。
(信者の国だな)
 呆れを感じながら思う。

「それと、今回の依頼達成によりSSランクになりました。おめでとうございます」
「ありがとう。それじゃ、俺は宿屋に戻る。緊急の依頼が入ったら着てくれ」
「分かりました」
 背後から感じる憧れの眼差しを背中で感じながらギルドを後にするのだった。
 宿屋に戻った和也はステータスを開く。


───────────────────────────

朝霧和也
ヒューマン
LV180
HP 135000
MP 117000
STR 11700
VIT 10800
DEX 9000
AGI 11700
INT 9900
LUC 100

スキル
言葉理解
言語理解
超解析
剣術LV99
槍術LV99
調理LV65
鑑定LV48
魔力操作LV89
状態異常耐性LV64
HP自動回復LV58
MP自動回復LV55
火属性耐性LV76
水属性耐性LV60
土属性耐性LV60
風属性耐性LV59
光属性耐性LV57
闇属性耐性LV75
レベルアップ時ステータス倍Ⅱ
限界突破Ⅲ
危機察知LV85
アイテムボックス

属性
火 水 土 風 光

称号
龍殺し

─────────────────────────────

 となっている。
 千夜のままだと怪しまれるためステータスを超隠蔽と劣化を使い隠しているのだ。
 もちろん本気を出そうと思えば何時だって強くなれるが、ステータスの数値が今の和也の力そのものなのだ。
(理由は分からないが、何故かこの姿になるとステータスまで反映されるみたいだなんだよな。それとこの姿だと口調や心の声も和也だった時に戻ってるしな)
 和也が千夜の姿になっただけでなく口調が変わってしまうのだ。

「ま、俺自身が設定したから仕方が無いが」
 そんな事を呟きながら和也は次にギルドカードの情報を確認する。

「ようやくSSランクか。千夜の姿だと気付いたときにはXランクだったからな」
 平然と呟いていつが、問題はない。現在和也が宿泊している宿屋は王都の中でも2番目に有名な宿屋なのだ。
 セキュリティーもしっかりしており、客からの信頼の高い宿屋なのだ。

「さてと、飯でも食べて寝るとするか」
 和也はベッドから立ち上がり食堂へと向かうのだった。

 ギルドにて依頼を探す和也。
 そんな彼をジロジロと見つめる冒険者達。
(俺がどの依頼を受けるのか気になるのは分かるが、気が散るな)
 思わず嘆息する和也。
 そんな時、ギルドの扉が開かれる。

「ここに、カズヤ・アサギリは居るか!」
 一人の騎士が大声で叫ぶ。
 その姿に全員の視線を集める。

「あの甲冑七聖剣の紋章入りだぞ」
「あの紋章はライラ様の紋章だ」
 腕章には三日月と剣が模様が施されていた。

「居ないのか!」
 男は苛立ちを含みながら再び叫ぶ。それにより今度は冒険者たちの視線が掲示板の前に立つ和也に集中する。
(なんだ?)

「貴様が、カズヤ・アサギリだな」
「そう………はい、私が朝霧和也です」
 一瞬いつもの感じで返答しそうになるが、すぐさま敬語で返答し直す。

「よし、ならばついて来い」
「どちらに向かうのでしょうか」
「教会本部だ」
 騎士の言葉でギルド内がざわめく。
 フィリス聖王国は教会の国。つまり教会本部とは他国でいえば王宮にあたるのだ。

「それで、私はどうして呼ばれたのでしょうか?」
「お前の噂を聞いたライラ様がお前に興味をしめしたのだ」
「そ、それは……」
(これは、ありがたいな。兵の募集は色々あって駄目だったからな)
 和也はフィリス聖王国に来る途中ファブリーゼ皇国で偶然立ち寄った屋台の味にほれ込み2週間も滞在してしまったのだ。そのせいで兵募集の期限に間に合わなかったのだ。

「ん? 嫌なのか」
 鋭い視線を向ける騎士。

「いえ、ライラ様に御呼ばれされた事に驚きと感動を覚えたのです」
「そうだとう。私もライラ様に声を掛けられた時は嬉しくて仕方が無かったぞ」
 和也の言葉に満面の笑みで思い出を語る騎士。

「おっと話している場合では無かったな。では、行くぞ」
「はい」
 教会本部へとやってきた和也。
 教会内を目にした和也が最初に感じたのは、
(真っ白だな)
 柱も壁も天井も全てが白。まるで聖を光を表わしているかのようだった。
 教会内を歩く事数分。騎士がひとつの扉の前で止まる。

「ライラ様、ラケムです。カズヤ・アサギリを連れてまいりました」
「入りなさい」
「はっ!」
 ラケムという騎士はライラの透き通ったような声音に従いドアを開き中に入る。和也もまた、ラケムの後に部屋の中に入る。
 そして和也、もとい千夜は3人目の七聖剣と対面するのだった。
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