鬼神転生記~勇者として異世界転移したのに、呆気なく死にました。~

月見酒

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第六章 帰って早々、呆気なくフィリス聖王国調査を始めました。

第三十五幕 レイとフーリッシュ

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「さて、魔族軍襲撃に関しての報告はこれにて終了する。が、我々には由々しき問題が残っている」
 先ほどとは打って変わって怒気を含んだ声音に誰もが顔を歪ませた。
(由々しき問題。いったいなんの事だ?」
 唯一事情を知らない和也は内心疑問符を浮かべるが表情は真剣な面持ちを崩さないでいた。

「先日、我々が密かに取引を行っていたエルフの里にてXランク冒険者、『漆黒の鬼夜叉』によって取引相手を失う事態となった。これは由々しき問題である。如何にして我々の情報を手に入れたのかは不明だが、これは一刻を争う自体である」
(いや、あれは偶然出くわしただけだからな)
 内心ツッコミを入れる和也だが、けして口にはしない。

「よもや、存在進化を果たした七聖剣と互角に戦い。いや、それ以上の力を持っていようとは、噂も馬鹿に出来ぬ」
(いや、絶対オヒレがついて伝わっているから)

「そこで、ワシは漆黒の鬼夜叉に対して報復させる事をここに宣言する」
 ヴァイスの言葉に誰もが笑みを浮かべる。一人、正確には二人を除いては。

「教皇様、恐れながら申し上げます」
「なんだ?」
 誰もヴァイスに対して反論しなかったなか、唯一口を開いたのは七聖剣の団長だった。

「潜入させている部下からの報告によりますと、漆黒の鬼夜叉、センヤは信頼置ける者にしか家の場所を教えておらず、部下にも調べさせましたが幻惑関連の結界を張っているらしく所在は不明のこと」
「うむ……」
「レイ殿は教皇様が仰せになったが愚かだと申すのか!」
「フーリッシュ枢機卿、そうではありません。情報も少なく、レイーゼ帝国皇帝にすら家の在り処を教えていないほどの慎重さに、私の部下ですら越える事が不可能な高性能な結界を常時展開出来るほどの魔力領と知識。ましてやセンヤはレイーゼ皇帝の信頼も厚いとか。そのような相手になんの策も練らずして襲撃を行うなど死人を増やすだけかと。もしやフーリッシュ枢機卿にはなんらかの策が御有りか?」
「うっ」
 (やはり戦いとなると七聖剣に分があるな。それにしてもレイーゼ帝国にまで諜報員を忍び込ませるとか、徹底的だな)
 国が掲げる方針が違えば、それだけで敵国となり得るのだが大抵は不可侵があたりまえ、商人や吟遊詩人などの情報を基に相手の状態を知るのだが、このレイという七聖剣はいつでも戦争が起きても情報が集められるようにしていた。その事に和也の中で危険実物ナンバー1に格付けされるのであった。

「教皇様、報復には賛成致します。しかし、時期を見てその時を待つべきかと。私は進言します」
「確かに一理ある。して、漆黒の鬼夜叉は現在何をしておる。先日の報告では営んでいる店に出向いていたと聞いたが」
「実は数ヶ月前から姿が見当たらないのです」
「なに?」
「調べさせましたが情報は手に入らず、部下に詮索させているところです」
「そうか……」
(まずいな。千夜が姿をけした時期と俺が現れた時期が重なれば疑われる危険性がある。ましてや千夜が帝都に居ないと事でエリーゼやオールリキュールの皆に危険が及ぶ可能性だってある)
 表情には出さないが和也は動揺していた。その証拠に握りこぶしを作る手には汗で湿っていた。
(なにか、何かいい方法は………っ! そうだあれがある)
 閃いた内容に誰にも気づかれないよう笑みを零す。

「レイよ。引き続き漆黒の鬼夜叉の捜索を行い。確認が済み次第ワシのところに報告せよ」
「御意!」
 気品ある返答に笑みを零すヴァイス。
 こうして謁見は終了した。
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