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第六章 帰って早々、呆気なくフィリス聖王国調査を始めました。
第三十六幕 円卓会議と無い
しおりを挟む謁見の間から退室した和也はさっそく行動を起こすべく、一人になれる場所を探そうとする。が、
「カズヤ」
ライラに呼び止められてしまう。
「なんだ?」
だからといって嫌な顔せず、平常心のまま応答する。
「今から円卓会議を行う。すまないが同行してくれ」
「円卓会議?」
小説や漫画などでは見覚えのある言葉だが、この世界に来て初めて耳にしたことにご門系になる。
「そうだ。我々七聖剣のみで行われる会議の事だ。主に戦や戦闘についての会議を行う場所だ」
「で、なんで俺がそんな場所に行かないといけないんだ?」
「理由は幾つかある。一つは、一人だけなら部下同行が認められていること。もう一つはカズヤに七聖剣たちが興味をしめしたことだ」
「つまりは、直に話してみたいと言うことだな」
「その通りだ」
(勇者として召還された俺が珍しいのと俺が住んでいた異世界について会って話してみたい。と言ったところか)
少し悩んだ和也だったが、
「分かった。同行しよう」
「そ、そうか。それは助かる」
どこか弾んだ返答に和也は嘆息する。
(円卓会議で俺を七聖剣に推薦して欲しいんだろうな)
生真面目な分、顔に出やすいライラに可愛らしさを感じる和也だったが、同行を認めた理由は純粋な私情であった。
(ここで他の七聖剣と友好的になっておくのも悪くない。なれなくても悪目立ちするより、よっぽどマシだろうしな)
早速移動を開始したライラと和也だったが、円卓会議が行われる場所は謁見の間からそう遠くない場所にあった。およそ徒歩3分といったところだろう。
先ほどの謁見の間ほど派手さない扉を開けるライラ。
そこから流れ出る重たい雰囲気に和也は心を引き締める。
「レイ殿遅れてすまない」
「いや、気にする必要はない。それより席につけ」
「はい」
軽く謝罪の言葉を口にしたライラはレイに促されて席に座り、和也はその後ろに控える。
先ほどよりも狭い空間のせいか、重圧が圧し掛かる。
(この重圧、やはり存在進化を果たしている者たちだな)
超解析を使い確かめようと考えたが、油断ならぬ雰囲気を醸し出す目の前の者達に和也直ぐに諦めることにした。
「ではこれより円卓会議を行う」
レイの開会の挨拶によって先ほどよりも重苦しい雰囲気と化す。
「まずは先ほど謁見の間にて行われた魔族軍襲撃に関しての報告だが、我々は今回の件は不問とする事に決定した」
「そ、それはありがとうございます」
謁見の間では和也の話題が大きかった分洗脳された村人たちとの戦闘に関しての判決がうやむやになっていたが、事前に話し合っていた事が分かる判決にライラは安堵を含んだ礼を口にする。
「魔族や亜人種との戦闘になれている者たちが人間ましてや我が国の民を切り殺す事ができなくてもおかしくはない。よって今回は不問とする」
今回はという言葉に次は無いと判断したライラは真剣な面持ちとなる。
「それよりも問題はエルフの里での事だ。七聖剣が二人も護衛として同行しながら商人を殺されるなどあってはならないことだ。しかもひとりは精神を掻き乱し冷静さを失い、もうひとりは護衛対象者から離れるなど」
「申し訳ありませんでした……」
「ごめんね。でも仕方がなかったんだよ」
「それに関してはすでに報告を受けている。漆黒の鬼夜叉との戦闘に苦戦していたエクスの援護に向かうべく護衛対象者から離れたと」
「そのとおりです」
「苦戦しているだけで援護に向かうなんて随分と優しくなったものだな」
レイとの会話に割り込む一人の男性。筋骨隆々の体格は背もたれは軋ませいつ折れてもおかしくはなかった。
「仕方がなかったのです。数キロ離れた場所にいながら遥かにエクス君を上回る魔力の波動を感じたので」
「それは本当なのか?」
「はい。それに漆黒の鬼夜叉は半間人でありながら光属性を持つ存在でもありましたので」
「おいおい半間人が光属性を持っているだと。悪い冗談にしか聞こえないぜ」
「でも事実です……」
いまだに信じられないといった表情をみせるエクスから小さく呟かれた言葉に誰もが緊急事態だと判断した。
「半間人でありながら光属性に対する耐性を持つか。これほやっかいな魔族もいないな」
「その通りだ。だが、運が良いとも言える」
「どういうことだ?」
レイの言葉に全員が怪訝そうな表情を浮かべ、代表として口を開く筋骨隆々の男。
「奴が魔族側の者ではないからだ」
「それってつまり魔族と戦争になった場合俺達の味方をしてくれると言うことか?」
「違う。漆黒の鬼夜叉は冒険者だ。つまり戦争には興味がないということだ。潜伏させている部下からの報告でもけして国に仕えるつもりは無いらしい。レイーゼ帝国に住んでいるのは住み心地が良いらしいからだ」
「単純な理由だな」
(ほっとけ)
男が呟いた言葉に内心ツッコミをいれる和也であった。
「つまりは国同士の喧嘩に興味が無いが降りかかる火の粉は払いのけるというわけか?」
「そういうことだ」
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