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第六章 帰って早々、呆気なくフィリス聖王国調査を始めました。
第四十幕 見詰める入り口と黙っている
しおりを挟む「で、どうして睨み合っていたのですか?」
「私は親切心でSランク以上の依頼が無いことを教えてあげたのよ。なのにそこの勇者がいきなり怒気を含んで食って掛かってきたから腹が立ったのよ」
「それは貴女が馬鹿にするからでしょ!」
「別に最初はそんなつもりは無かったわ。もしもそれで腹を立てたのなら随分と異世界の勇者様は短気のようね。それとも理性の無い獣なのかしら?」
「っ! この――」
「はい、そこまで! ギルド内で喧嘩するなら出入り禁止にすると言いましたよね」
「「………」」
再び口を瞑る二人だが、その目は完全に怒り狂った獣その物だった。
「ま、いいわ。私達はこれで失礼するわ。マキもまたね」
「はい。次からは平和的に解決してくれることをお願いします」
「わかってるわ」
そういい残してエリーゼたちはギルドを後にしようとした。が、
「あ、あのエリーゼお姉さま」
「どうしたのセレナ」
「少しお話しませんか?」
「……そうね。今日の予定は無くなったわけだし、たまには良いわね。なら、一緒に屋敷に行きましょ」
「あ、あの出来れば勇者様方も一緒に宜しいでしょうか?」
申し訳なさそうな面持ちのセレナ。幼少期の頃からエリーゼと仲のいいセレナはここで少しでも仲良くしたいと考えていた。が、
「御免ね、それは無理よ」
「あ、あのそれはどうして。やはり勇者様方をお屋敷招くのは……」
「確かにそれもあるわ。でもね屋敷に招くかどうかを決めるのは旦那様なの。だから私達がよくても旦那様が駄目と言ったら駄目なの」
「もしかしてセンヤさんが駄目と仰ったのですか?」
「いえ、言ってないわ。ただ旦那様の許可を取らないと無理なのよ」
「そうでしたか……」
「セレナだけなら大丈夫だけど、どうする?」
「申し訳ありませんが、今回はお止めしておきます」
「そう、分かったわ。気が向いた時にでも来て頂戴」
「分かりました」
エリーゼたちはセレナたちと別れ、屋敷へと帰るのであった。
そんな彼女達の後姿を眺める勇治たちはというと。
「何が旦那様の許可よ。最初っから招くつもりなんて無かったくせに」
「真由美少しは落ち着いて」
「勇治は悔しくないのあんなこと言われて!」
「悔しいよ。でもそれは僕達が信用されていない証拠だよ」
「あんな奴らに信用されたくないわよ!」
「真由美……」
完全に拗ねる真由美の姿に呆れる勇治。正利と紅葉も悔しさはあれど勇治の言葉に納得していた。
「奏ちゃんどうしたの?」
未だにギルド入り口を見つめる奏に怪訝の視線を向ける。
「信用に足る者にしか屋敷の場所を教えないなんて随分と用心深いと思ってね」
「確かにそうだね。でもこの世界は僕達が居た世界と違って治安が悪いから」
「そうだね。治安が悪いからそうしてるみたいだね」
「っ! 奏ちゃんもしかして」
「うん。千夜は間違いなく転生者だと思う」
奏から呟かれた単語に勇治たちは驚きの表情を浮かべる。
(でも、用心深いのは治安だけじゃないと思う。人間不信とまではいかない程度に人を信頼していない。だから信頼出来る者にしか教えていないんだと思う。きっとお兄ちゃんならそうする)
入り口を見つめ続ける奏。そんな奏に申し訳なさそうな視線を向けるセレナ。
(ごめんなさい。私は皆様に黙っている事があります)
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