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第六章 帰って早々、呆気なくフィリス聖王国調査を始めました。
第六十六幕 スケアクロウとへルート
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戦闘が開始されてから数十分。戦いは一方的だった。
豪雨の如く魔法攻撃を浴びるスケアクロウはその場から一歩も動く事すら出来なかった。
己の武器であるロングソードと盾を屈指して防いではいるが近づく事すら出来ていない。
正確には近づこうとしていた。だが、接近しようとすればその分相手も後方に下がったり、地面から土魔法で攻撃して来たりと多彩な攻撃で近づけさせないのだ。
だが、内心精神状態が不安定なのはスケアクロウよりもへルートの方だった。
豪雨の如く浴びせている多種多様の属性の魔法攻撃。種族関係なく常人ならすでに蜂の巣になり絶命していても可笑しくは無い。
へルートはこれまでも同じ戦い方で負けたことは数える程しかない。
(早く帰って寝たいのに、あの防御力と体力はなんなんだ。この遣り方で負けたことがあるのは四天王の皆様だけ。僕が仕えるシーザー様でさえ長時間防ぐ事を嫌っていたはずなのに。いったい何なんだこの魔人は)
理解不能の敵に困惑を隠しきれないへルート。だからといって魔法制御が揺らぐほど柔ではない。
多種多様の魔法を多方向から同時攻撃しているにも拘わらず弱った形跡の無いスケアクロウ。そんな目の前の人物に恐怖に似た疑念を覚えたって可笑しくは無かった。
だが、それは当然と言えた。スケアクロウの正体はデスナイト。普通なら巨大なスケルトンとして知られているが、スケアクロウは千夜によって創造された変異種。肉体を持つ存在。だが、体力の概念は存在しない。つまりスケルトンと言うより知能を持った上位アンデットといった存在なのだ。
そしてデスナイトはその名の通り騎士。誰かを守る存在。つまりスケアクロウの戦闘スタイルは守りの戦い。そんな相手に魔法攻撃を幾らしようと蚊に刺された感覚だろう。いや、アンデットに痛覚は存在しない。ただ感じるだけなのだろう。
しかし、スケアクロウは内心安堵していた。
(創造主様に『不屈の湧き水』と『力の源(超)』『能力薬』を頂いて貰えて正解でした)
スケアクロウはラッヘンよりも圧倒的に弱かった。
しかし、今は違う。
──────────────────────────────────
スケアクロウ
デスナイト(変異種)
LV 240
HP 1135000
MP 0
STR 86800
VIT error
DEX 32800
AGI 44200
INT 15400
LUC 80
スキル
剣術LV95
盾術LV95
武術LV90
状態異常無効
火属性耐性LV80
水属性耐性LV80
土属性耐性LV80
風属性耐性LV80
闇属性耐性LV80
光魔法耐性LV80
属性
──────────────────────────────────
『不屈の湧き水』と『力の源(超)』『能力薬』によってそのステータスはほぼ互角、STRに至っては月夜の酒鬼の誰よりも上とい驚異的数値をたたき出していた。
先日千夜に渡された『不屈の湧き水』と『力の源(超)』『能力薬』。不屈の湧き水は経験値を獲得するものだが、それだけではこれほどのステータスは向上しない。
しかし、二つのアイテムを使う事でステータスを向上させたのだ。
──────────────────────────────────
力の源(超)
効果
飲んで20分間は、経験値、スキル経験値獲得10倍になる。
──────────────────────────────────
力の源(超)には等級があり、低い準から、下、中、上、超の四段階に分かれており、低いほど効果は小さく、高いほど効果は絶大なのだ。その分、獲得が難しくハイプレイヤーと呼ばれる者たちでさえ、二桁行く事が少ないアイテムである。
千夜も全部で12個しか持っていない貴重なアイテムなのだ。
──────────────────────────────────
能力薬
効果
スキル経験値獲得
──────────────────────────────────
これにより、ステータスだけでなくスキルレベルの向上させたと言うわけだ。
ここだけの話、千夜は後悔していた。仕方が無いと事とはいえ、こういったドーピング紛いのアイテムは使うぐらいならちゃんと訓練と戦闘に参加させておくべきだった思うのである。
そんな千夜の後悔をしるよしもないスケアクロウの戦いは続いていた。が、先ほどよりも放ってくる数が減っている事にスケアクロウは気づいていた。
それでも反撃しないのは、千夜の教えられた可能性を考慮しているからだろう。
一つは、本当に魔力残量が少なくなった可能性。
もう一つは、誘いである。
この世に創造された時に教えられた一つを思い出しスケアクロウは動かない。好機が訪れるその時まで。
しかし、その判断は正解だった。
進まない戦闘にへルートは珍しくも苛立ちめいたものを覚えていた。
(僕が見る限り、相手の力は想像以上に強い。このままだと間違いなく負ける。別に他の十二神将や補佐官が死んでも構わないけど、そうなると僕の仕事が増えるから、早く終わらせて援護しないと)
相手に悟られないよう少しずつ、少しずつ数を減らしていく。そして数分後には最初の7割となっていた。が、
(これでも攻撃してこないの。面倒だな)
数を減らしすぎれば作戦の有無に拘わらず、一瞬で負けてしまう。スケアクロウウの力を考慮すればこれ以上減らすのは危険だとへルートの本能が警鐘を鳴らしていた。それがまたへルートを苛だせる。
(ああ、もう! 面倒だな! 早く攻撃して来いよ! 死んじゃえよ!)
それでもスケアクロウは動かない。戦況が動かないと言っても言い程に戦いは膠着状態に入った。
言い方を帰れば、完全な我慢比べ、忍耐力で決まると言っても過言ででは無かった。
あれからどれぐらいの時間が経過したか互いに分からない。
ただ、へルートが先ほど取った行動が幸いしているほど時間が経過していた。
(あそこで攻撃する数を減らして正解だった。でないと魔力が尽きる所だった。でも、魔力残量が少なくなってきたのは確か。ああ、早く攻撃してこないかな。面倒だな)
未だ動く気配のない大盾に身を隠すスケアクロウに怒気を宿した瞳で睨み付ける。
だが、突如として戦況が動く。
(っ!)
突然構えていた大盾が重みで地面に突き刺さり、ふら付いたとのか、身体の一部が大盾からはみ出る。
(そうか、どれだけ防御力が高くても効いていない訳じゃない。あれだけ大きい盾を構え続けるのにも他力の限界がある。よし、もう少しだ!)
苛立ちと焦りで曇った瞳にスケアクロウの真意を見抜く事など今のへルートには不可能だった。
体力の限界だと考えたへルートは多方向からの攻撃を止め、大盾だけに残り少ない魔力で集中砲火を浴びせる。
(ほら、早く殺られなよ!)
完全に勝利を確信したへルート。
だが、それは突如の眩暈によって消滅する。
「しま……った………」
先ほどまでの豪雨の如く降り注いでいた魔法攻撃がピタリと止む。
焦りと苛立ちによって曇った瞳と勝利への執着が思考を鈍らせた結果、へルートは魔力欠乏症になってしまった。
どうにかして相手に悟られないように平静を保とうとするが、視界は歪み、身体に力が入らない状態でどうする事も出来ずに、へルートは地面に倒れ伏す。
薄れ行く意識の中、甲高い金属音と砲声と絶叫が轟く。
そんな轟音の中を掻き分け、ゆっくりと、しかし着々と大きく、そして近づく足音がへルートの耳に届く。
突如、足音が無くなると同時にぼやけた視界に影が落ちる。見上げる力も残ってはいないへルートは悟った。
死ぬんだと。
だが、心には苛立ちも、悔しさも、憤りもない。ただあるのは安心と安らぎ。
(これでようやく長い昼寝が出来る)
幸せそうな笑みを浮かべると同時にへルートの首が少しだけ宙を舞った。
「さて、奥方様たちはどうなったでしょうか?」
へルートの気持ちなど一切しらないスケアクロウは創造主である千夜が最も大事にする者たちが居る方向に視線を向け歩き出した。
豪雨の如く魔法攻撃を浴びるスケアクロウはその場から一歩も動く事すら出来なかった。
己の武器であるロングソードと盾を屈指して防いではいるが近づく事すら出来ていない。
正確には近づこうとしていた。だが、接近しようとすればその分相手も後方に下がったり、地面から土魔法で攻撃して来たりと多彩な攻撃で近づけさせないのだ。
だが、内心精神状態が不安定なのはスケアクロウよりもへルートの方だった。
豪雨の如く浴びせている多種多様の属性の魔法攻撃。種族関係なく常人ならすでに蜂の巣になり絶命していても可笑しくは無い。
へルートはこれまでも同じ戦い方で負けたことは数える程しかない。
(早く帰って寝たいのに、あの防御力と体力はなんなんだ。この遣り方で負けたことがあるのは四天王の皆様だけ。僕が仕えるシーザー様でさえ長時間防ぐ事を嫌っていたはずなのに。いったい何なんだこの魔人は)
理解不能の敵に困惑を隠しきれないへルート。だからといって魔法制御が揺らぐほど柔ではない。
多種多様の魔法を多方向から同時攻撃しているにも拘わらず弱った形跡の無いスケアクロウ。そんな目の前の人物に恐怖に似た疑念を覚えたって可笑しくは無かった。
だが、それは当然と言えた。スケアクロウの正体はデスナイト。普通なら巨大なスケルトンとして知られているが、スケアクロウは千夜によって創造された変異種。肉体を持つ存在。だが、体力の概念は存在しない。つまりスケルトンと言うより知能を持った上位アンデットといった存在なのだ。
そしてデスナイトはその名の通り騎士。誰かを守る存在。つまりスケアクロウの戦闘スタイルは守りの戦い。そんな相手に魔法攻撃を幾らしようと蚊に刺された感覚だろう。いや、アンデットに痛覚は存在しない。ただ感じるだけなのだろう。
しかし、スケアクロウは内心安堵していた。
(創造主様に『不屈の湧き水』と『力の源(超)』『能力薬』を頂いて貰えて正解でした)
スケアクロウはラッヘンよりも圧倒的に弱かった。
しかし、今は違う。
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スケアクロウ
デスナイト(変異種)
LV 240
HP 1135000
MP 0
STR 86800
VIT error
DEX 32800
AGI 44200
INT 15400
LUC 80
スキル
剣術LV95
盾術LV95
武術LV90
状態異常無効
火属性耐性LV80
水属性耐性LV80
土属性耐性LV80
風属性耐性LV80
闇属性耐性LV80
光魔法耐性LV80
属性
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『不屈の湧き水』と『力の源(超)』『能力薬』によってそのステータスはほぼ互角、STRに至っては月夜の酒鬼の誰よりも上とい驚異的数値をたたき出していた。
先日千夜に渡された『不屈の湧き水』と『力の源(超)』『能力薬』。不屈の湧き水は経験値を獲得するものだが、それだけではこれほどのステータスは向上しない。
しかし、二つのアイテムを使う事でステータスを向上させたのだ。
──────────────────────────────────
力の源(超)
効果
飲んで20分間は、経験値、スキル経験値獲得10倍になる。
──────────────────────────────────
力の源(超)には等級があり、低い準から、下、中、上、超の四段階に分かれており、低いほど効果は小さく、高いほど効果は絶大なのだ。その分、獲得が難しくハイプレイヤーと呼ばれる者たちでさえ、二桁行く事が少ないアイテムである。
千夜も全部で12個しか持っていない貴重なアイテムなのだ。
──────────────────────────────────
能力薬
効果
スキル経験値獲得
──────────────────────────────────
これにより、ステータスだけでなくスキルレベルの向上させたと言うわけだ。
ここだけの話、千夜は後悔していた。仕方が無いと事とはいえ、こういったドーピング紛いのアイテムは使うぐらいならちゃんと訓練と戦闘に参加させておくべきだった思うのである。
そんな千夜の後悔をしるよしもないスケアクロウの戦いは続いていた。が、先ほどよりも放ってくる数が減っている事にスケアクロウは気づいていた。
それでも反撃しないのは、千夜の教えられた可能性を考慮しているからだろう。
一つは、本当に魔力残量が少なくなった可能性。
もう一つは、誘いである。
この世に創造された時に教えられた一つを思い出しスケアクロウは動かない。好機が訪れるその時まで。
しかし、その判断は正解だった。
進まない戦闘にへルートは珍しくも苛立ちめいたものを覚えていた。
(僕が見る限り、相手の力は想像以上に強い。このままだと間違いなく負ける。別に他の十二神将や補佐官が死んでも構わないけど、そうなると僕の仕事が増えるから、早く終わらせて援護しないと)
相手に悟られないよう少しずつ、少しずつ数を減らしていく。そして数分後には最初の7割となっていた。が、
(これでも攻撃してこないの。面倒だな)
数を減らしすぎれば作戦の有無に拘わらず、一瞬で負けてしまう。スケアクロウウの力を考慮すればこれ以上減らすのは危険だとへルートの本能が警鐘を鳴らしていた。それがまたへルートを苛だせる。
(ああ、もう! 面倒だな! 早く攻撃して来いよ! 死んじゃえよ!)
それでもスケアクロウは動かない。戦況が動かないと言っても言い程に戦いは膠着状態に入った。
言い方を帰れば、完全な我慢比べ、忍耐力で決まると言っても過言ででは無かった。
あれからどれぐらいの時間が経過したか互いに分からない。
ただ、へルートが先ほど取った行動が幸いしているほど時間が経過していた。
(あそこで攻撃する数を減らして正解だった。でないと魔力が尽きる所だった。でも、魔力残量が少なくなってきたのは確か。ああ、早く攻撃してこないかな。面倒だな)
未だ動く気配のない大盾に身を隠すスケアクロウに怒気を宿した瞳で睨み付ける。
だが、突如として戦況が動く。
(っ!)
突然構えていた大盾が重みで地面に突き刺さり、ふら付いたとのか、身体の一部が大盾からはみ出る。
(そうか、どれだけ防御力が高くても効いていない訳じゃない。あれだけ大きい盾を構え続けるのにも他力の限界がある。よし、もう少しだ!)
苛立ちと焦りで曇った瞳にスケアクロウの真意を見抜く事など今のへルートには不可能だった。
体力の限界だと考えたへルートは多方向からの攻撃を止め、大盾だけに残り少ない魔力で集中砲火を浴びせる。
(ほら、早く殺られなよ!)
完全に勝利を確信したへルート。
だが、それは突如の眩暈によって消滅する。
「しま……った………」
先ほどまでの豪雨の如く降り注いでいた魔法攻撃がピタリと止む。
焦りと苛立ちによって曇った瞳と勝利への執着が思考を鈍らせた結果、へルートは魔力欠乏症になってしまった。
どうにかして相手に悟られないように平静を保とうとするが、視界は歪み、身体に力が入らない状態でどうする事も出来ずに、へルートは地面に倒れ伏す。
薄れ行く意識の中、甲高い金属音と砲声と絶叫が轟く。
そんな轟音の中を掻き分け、ゆっくりと、しかし着々と大きく、そして近づく足音がへルートの耳に届く。
突如、足音が無くなると同時にぼやけた視界に影が落ちる。見上げる力も残ってはいないへルートは悟った。
死ぬんだと。
だが、心には苛立ちも、悔しさも、憤りもない。ただあるのは安心と安らぎ。
(これでようやく長い昼寝が出来る)
幸せそうな笑みを浮かべると同時にへルートの首が少しだけ宙を舞った。
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