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第六章 帰って早々、呆気なくフィリス聖王国調査を始めました。
第八十幕 一滴の涙と告白!?
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謹慎処分を言い渡された次の日、和也は寝室で寛いでいた。
せっかく訓練所を自由に使えるようになったにも拘わらず寝室から出られなくなってしまった和也。
(暇だな)
する事のない和也が部屋で暇を持て余していた。
現在ライラたちは魔族対策会議に出席している。こっそり抜け出す事は可能だが、あまり目立つ事はしたくないと考えている
(有名になるとこういう時不便だよな)
そんな事を考えながらベッドに横たわる。結局することも無い和也は魔族対策会議が終わるまで寝る事にした。
久しぶり気兼ね無く寝られた和也は深い眠りについていた。そんな彼を起こしたのはドアをノックする音だった。
「誰だ?」
「セレナです。入っても宜しいでしょうか?」
「ああ。良いぞ」
外にセレナ以外が居る事も考えて仮面を被りドアを開ける。
外には護衛数人が居たが、話が終わるまで外で待機しているように命じられた騎士達は一瞬渋い顔をするが慣れているのか直ぐに返事をするのだった。
何故セレナがここに来たのか和也には理解出来た。そのため和也は直ぐに盗聴防止と防音を発動する。
(勇治たちに聞いたんだろうな)
そんな事を思いながら和也はセレナをソファーに座るよう促す。
気兼ねなくソファーに座ったセレナと対面する形で和也もソファーに座る。
「何か飲むか?」
「では、紅茶を」
「分かった」
和也は一旦立ち上がるとアイテムボックスからティーセットを取り出す。エルザやマリン、セバスに紅茶の淹れ方を教わっていた事もあり、その手つきは慣れたものだった。それでもやはりセバスたちに比べれば洗礼さに欠ける部分があったのも事実だ。
紅茶が注がれたティーカップをセレナの前に出すと和也再びソファーに座る。
「それで話ってなんだ?」
「その前に仮面を取って貰って良いですか?」
「そうだな」
和也はセレナに言われ仮面とウィッグを取り外す。
そこにはセレナが二度と見る事が出来ないと諦めていた顔があった。
「…………ようやく……本当の意味で会えました………」
「………」
頬を伝う一滴の涙。
しかしセレナの顔には笑みが浮かんでおり、それに対して和也はただ黙り込む。
「カズヤさん………お久しぶりです………」
「ああ、久しぶりだな。セレナ」
申し訳なさそうな笑みを浮かべる和也。それでもセレナにとっては待ち望んだ人物であることには変わりなかった。
「一つ聞かせてください」
「何だ?」
「貴方はセンヤさんですか?」
「なるほどな、そういう事か。今は色々な事情で和也の姿をしているが、俺は千夜だ。俺の屋敷で話した時と同じ人物だよ」
「そうですか」
安堵の表情を浮かべるセレナ。もしも千夜と和也が別人だった場合どちらかが偽者になる事になる。もしくは魂が二つ存在する事になるからだ。
「それでは本題に入らせて貰います」
「…………」
真剣な表情に変貌するセレナを見て和也も真剣な面持ちになる。
「本当に宜しいのですか?」
「何がだ?」
「はぐらかさないで下さい。分かっていますよね?」
「ああ、奏たちの事だろう。話を聞いたからここに来たんだろう?」
「そうです。そして和也さんの伝言も聞きました。それでも言わせて貰います。本当に宜しいのですか?」
セレナが言いたい事。それは、このままで良いのか、今ならまだやり直せる。仲直り出来る。そのためならなんだってする。セレナはそう言いたいのだ。
「ああ、全て解決した事だからな」
「分かりました」
セレナはティーカップに口を付ける。
「話は終わりか?」
「いえ、その………」
和也に問われ思わず黙り込んでしまう。確かに勇治たちの事を終わった。だが、セレナにはまだ言いたい事があった。伝えたい事があった。
(伝えるべきでしょうか。でも、伝えたらユウジさんたちを裏切る事になってしまうのでは………)
セレナが伝えようとしてる事、それは己の中に仕舞い込んでいた気持ち。いや、一度は諦めた気持ち。
(私はファブリーゼ皇国の第一皇女、セレナ・L・ファブリーゼ。私は我が皇国の未来のために必要な存在。それなのに自分の我儘で皇国の未来を他人に任せるような事をしても宜しいのでしょうか? それにユウジさんたちを見捨てる事にも……)
皇女としての責任感や友情とずっと押し殺してきた気持ちの間で揺らぐ。
(私はどうしたら……)
分からない。まるで出口の無い、答えのない迷宮に入り込んでしまった。そんな気持ち。だが、保留には出来ない。
(ここで、何もありません。と言ったら私の恋は本当に終わってしまう! でも……)
どうして良いのか分からない。涙が出そうな程分からない。
(もしも自分の気持ちを伝えて、良い返事が貰えたとしても私にはエリーゼお姉さまたちみたいな力はありません。称号を一つ持っているのと魔力が少し高いだけ。お兄様や妹、弟に比べても平凡すぎる私では結婚できてもなんのお役にも立てません。だったら………)
第一皇女として産まれたセレナだったが、見た目と教養、そして称号以外取柄と言う取柄がない事がセレナのコンプレックスだった。兄妹たちは天才では無いが優秀である。それに比べ自分のステータスが平凡な事が許せなかったのだ。
(そんな人物が千夜さんの役に立てる筈がありません。それなら皇国の為に政略結婚したほうが少しは役に立つ筈です。それでも私は………)
どうしても人間は思い悩んだとき嫌な事を考えてしまう生き物だ。中にはポジティブ思考とか考え無しに行動する人物も居るが、大半の人間は前者だ。
(どしたら……)
「セレナ」
「は、はうっ!」
突然名前を呼ばれて驚き慌てて返事をしようとしたら、和也の手に頬を軽く挟まれてしまい、変な返答になってしまう。その事と和也に触れられている事が嬉しさと恥ずかしさで、顔が赤く染まる。
しかし、そんなセレナの気持ちなどお構い無しに和也は話を続ける。
「セレナ、何に思い悩んでいるか知らないが、言いたい事があるならはっきりと言った方が良い。その方が後悔も少ないだろうからな」
セレナの目を真っ直ぐ見て話す和也。
しかしセレナにとってはそれが真っ暗闇な迷宮に差し込んだ一筋の光であり、背中を押された気分だった。
(そうですよね。私は皇女の前に一人の女です。それでどんな結果を迎えようと構いません。ですから――」
これまでの想いがようやく伝えられる。気が付いた時には既に遅く、チャンスがあってもそれは無理だと諦め、胸の奥に仕舞い込んでいた気持ちが、今日、この時、口から言葉になって吐かれる。
「カズヤさん」
「何だ?」
「好きです。大好きです。貴方がカズヤさんでもセンヤさんでも構いません。私は貴方が大好きです。愛しています!」
「…………」
流石の和也も予想だにしていなかった告白に目を見開け言葉を失った。
「貴方が地位や権力に興味が無いのはしっています。ですから貴方が私が皇族だから結婚できないと言うのであれば、私は皇族である事をやめます。そして帝都にある貴方の屋敷に共に住みます。私は正妻であることを望んではいません。何番目でも構いません。ですから私を貴方の妻にしてください!」
涙目で懇願してくる姿に和也は動揺して何も言い返せなかった。ただ、ドS心が擽られそうになったのは言うまでも無いが、今はそんな事はどうでも良い。
軽く停止しかけた思考を復旧させ冷静に状況把握を行う和也。そして、
「本当に良いのか?」
「はい」
「今の姿は仮初だ。元の姿に戻れば千夜になる。それでも良いのか?」
「はい。私が貴方を好きになったのは見た目ではありません。貴方の性格、人格、そして優しさです」
「国に迷惑を掛ける事になってもか?」
「はい。その時は全力で説得します」
「俺は勇治たちと縁を切った。そんな奴と結婚するんだぞ。つまり裏切り行為に等しいんだぞ。それでもか?」
「覚悟しています!」
先程まで思い悩み、その表情には影が落ちていたが、今はその面影も無く真剣な眼差しで和也を見詰めていた。
「分かった。セレナ結婚しよう」
「はい!」
「だが、直ぐには無理だ。今、依頼で調査中だからな」
「理解しているつもりです」
「それとこの事はエリーゼ達以外には言うな。周りの奴に報告する時は俺から発表する。その時は傍に居てくれるか?」
「はい。妻として傍で支えます」
「頼もしいな」
「いえ、私にはエリーゼお姉様たちみたいな力はありません。ですから支えられるか不安ではあります」
「そこらへんは安心しろ。家族や夫婦ってのは互いに支え合い、助け合う物だ。もしも不安に感じる事があれば正直に話せ。俺には言い難い悩みならエリーゼたちでも構わない。俺の家族は皆素晴らしい奴だからな」
「存じております。そして私にとっては貴方が一番です」
「ありがとう……」
ゆっくりと歩み寄り、見詰め合う二人。そして――
「「……んんっ………」」
唇を重ねるのであった。
いったいどれだけの時間が過ぎたかは分からない。ただ一生このまま時間が止まれば良いのにと思ってしまう程の一時。
それでも二人はその一時を大切に堪能するのだった。
せっかく訓練所を自由に使えるようになったにも拘わらず寝室から出られなくなってしまった和也。
(暇だな)
する事のない和也が部屋で暇を持て余していた。
現在ライラたちは魔族対策会議に出席している。こっそり抜け出す事は可能だが、あまり目立つ事はしたくないと考えている
(有名になるとこういう時不便だよな)
そんな事を考えながらベッドに横たわる。結局することも無い和也は魔族対策会議が終わるまで寝る事にした。
久しぶり気兼ね無く寝られた和也は深い眠りについていた。そんな彼を起こしたのはドアをノックする音だった。
「誰だ?」
「セレナです。入っても宜しいでしょうか?」
「ああ。良いぞ」
外にセレナ以外が居る事も考えて仮面を被りドアを開ける。
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何故セレナがここに来たのか和也には理解出来た。そのため和也は直ぐに盗聴防止と防音を発動する。
(勇治たちに聞いたんだろうな)
そんな事を思いながら和也はセレナをソファーに座るよう促す。
気兼ねなくソファーに座ったセレナと対面する形で和也もソファーに座る。
「何か飲むか?」
「では、紅茶を」
「分かった」
和也は一旦立ち上がるとアイテムボックスからティーセットを取り出す。エルザやマリン、セバスに紅茶の淹れ方を教わっていた事もあり、その手つきは慣れたものだった。それでもやはりセバスたちに比べれば洗礼さに欠ける部分があったのも事実だ。
紅茶が注がれたティーカップをセレナの前に出すと和也再びソファーに座る。
「それで話ってなんだ?」
「その前に仮面を取って貰って良いですか?」
「そうだな」
和也はセレナに言われ仮面とウィッグを取り外す。
そこにはセレナが二度と見る事が出来ないと諦めていた顔があった。
「…………ようやく……本当の意味で会えました………」
「………」
頬を伝う一滴の涙。
しかしセレナの顔には笑みが浮かんでおり、それに対して和也はただ黙り込む。
「カズヤさん………お久しぶりです………」
「ああ、久しぶりだな。セレナ」
申し訳なさそうな笑みを浮かべる和也。それでもセレナにとっては待ち望んだ人物であることには変わりなかった。
「一つ聞かせてください」
「何だ?」
「貴方はセンヤさんですか?」
「なるほどな、そういう事か。今は色々な事情で和也の姿をしているが、俺は千夜だ。俺の屋敷で話した時と同じ人物だよ」
「そうですか」
安堵の表情を浮かべるセレナ。もしも千夜と和也が別人だった場合どちらかが偽者になる事になる。もしくは魂が二つ存在する事になるからだ。
「それでは本題に入らせて貰います」
「…………」
真剣な表情に変貌するセレナを見て和也も真剣な面持ちになる。
「本当に宜しいのですか?」
「何がだ?」
「はぐらかさないで下さい。分かっていますよね?」
「ああ、奏たちの事だろう。話を聞いたからここに来たんだろう?」
「そうです。そして和也さんの伝言も聞きました。それでも言わせて貰います。本当に宜しいのですか?」
セレナが言いたい事。それは、このままで良いのか、今ならまだやり直せる。仲直り出来る。そのためならなんだってする。セレナはそう言いたいのだ。
「ああ、全て解決した事だからな」
「分かりました」
セレナはティーカップに口を付ける。
「話は終わりか?」
「いえ、その………」
和也に問われ思わず黙り込んでしまう。確かに勇治たちの事を終わった。だが、セレナにはまだ言いたい事があった。伝えたい事があった。
(伝えるべきでしょうか。でも、伝えたらユウジさんたちを裏切る事になってしまうのでは………)
セレナが伝えようとしてる事、それは己の中に仕舞い込んでいた気持ち。いや、一度は諦めた気持ち。
(私はファブリーゼ皇国の第一皇女、セレナ・L・ファブリーゼ。私は我が皇国の未来のために必要な存在。それなのに自分の我儘で皇国の未来を他人に任せるような事をしても宜しいのでしょうか? それにユウジさんたちを見捨てる事にも……)
皇女としての責任感や友情とずっと押し殺してきた気持ちの間で揺らぐ。
(私はどうしたら……)
分からない。まるで出口の無い、答えのない迷宮に入り込んでしまった。そんな気持ち。だが、保留には出来ない。
(ここで、何もありません。と言ったら私の恋は本当に終わってしまう! でも……)
どうして良いのか分からない。涙が出そうな程分からない。
(もしも自分の気持ちを伝えて、良い返事が貰えたとしても私にはエリーゼお姉さまたちみたいな力はありません。称号を一つ持っているのと魔力が少し高いだけ。お兄様や妹、弟に比べても平凡すぎる私では結婚できてもなんのお役にも立てません。だったら………)
第一皇女として産まれたセレナだったが、見た目と教養、そして称号以外取柄と言う取柄がない事がセレナのコンプレックスだった。兄妹たちは天才では無いが優秀である。それに比べ自分のステータスが平凡な事が許せなかったのだ。
(そんな人物が千夜さんの役に立てる筈がありません。それなら皇国の為に政略結婚したほうが少しは役に立つ筈です。それでも私は………)
どうしても人間は思い悩んだとき嫌な事を考えてしまう生き物だ。中にはポジティブ思考とか考え無しに行動する人物も居るが、大半の人間は前者だ。
(どしたら……)
「セレナ」
「は、はうっ!」
突然名前を呼ばれて驚き慌てて返事をしようとしたら、和也の手に頬を軽く挟まれてしまい、変な返答になってしまう。その事と和也に触れられている事が嬉しさと恥ずかしさで、顔が赤く染まる。
しかし、そんなセレナの気持ちなどお構い無しに和也は話を続ける。
「セレナ、何に思い悩んでいるか知らないが、言いたい事があるならはっきりと言った方が良い。その方が後悔も少ないだろうからな」
セレナの目を真っ直ぐ見て話す和也。
しかしセレナにとってはそれが真っ暗闇な迷宮に差し込んだ一筋の光であり、背中を押された気分だった。
(そうですよね。私は皇女の前に一人の女です。それでどんな結果を迎えようと構いません。ですから――」
これまでの想いがようやく伝えられる。気が付いた時には既に遅く、チャンスがあってもそれは無理だと諦め、胸の奥に仕舞い込んでいた気持ちが、今日、この時、口から言葉になって吐かれる。
「カズヤさん」
「何だ?」
「好きです。大好きです。貴方がカズヤさんでもセンヤさんでも構いません。私は貴方が大好きです。愛しています!」
「…………」
流石の和也も予想だにしていなかった告白に目を見開け言葉を失った。
「貴方が地位や権力に興味が無いのはしっています。ですから貴方が私が皇族だから結婚できないと言うのであれば、私は皇族である事をやめます。そして帝都にある貴方の屋敷に共に住みます。私は正妻であることを望んではいません。何番目でも構いません。ですから私を貴方の妻にしてください!」
涙目で懇願してくる姿に和也は動揺して何も言い返せなかった。ただ、ドS心が擽られそうになったのは言うまでも無いが、今はそんな事はどうでも良い。
軽く停止しかけた思考を復旧させ冷静に状況把握を行う和也。そして、
「本当に良いのか?」
「はい」
「今の姿は仮初だ。元の姿に戻れば千夜になる。それでも良いのか?」
「はい。私が貴方を好きになったのは見た目ではありません。貴方の性格、人格、そして優しさです」
「国に迷惑を掛ける事になってもか?」
「はい。その時は全力で説得します」
「俺は勇治たちと縁を切った。そんな奴と結婚するんだぞ。つまり裏切り行為に等しいんだぞ。それでもか?」
「覚悟しています!」
先程まで思い悩み、その表情には影が落ちていたが、今はその面影も無く真剣な眼差しで和也を見詰めていた。
「分かった。セレナ結婚しよう」
「はい!」
「だが、直ぐには無理だ。今、依頼で調査中だからな」
「理解しているつもりです」
「それとこの事はエリーゼ達以外には言うな。周りの奴に報告する時は俺から発表する。その時は傍に居てくれるか?」
「はい。妻として傍で支えます」
「頼もしいな」
「いえ、私にはエリーゼお姉様たちみたいな力はありません。ですから支えられるか不安ではあります」
「そこらへんは安心しろ。家族や夫婦ってのは互いに支え合い、助け合う物だ。もしも不安に感じる事があれば正直に話せ。俺には言い難い悩みならエリーゼたちでも構わない。俺の家族は皆素晴らしい奴だからな」
「存じております。そして私にとっては貴方が一番です」
「ありがとう……」
ゆっくりと歩み寄り、見詰め合う二人。そして――
「「……んんっ………」」
唇を重ねるのであった。
いったいどれだけの時間が過ぎたかは分からない。ただ一生このまま時間が止まれば良いのにと思ってしまう程の一時。
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