鬼神転生記~勇者として異世界転移したのに、呆気なく死にました。~

月見酒

文字の大きさ
201 / 351
第六章 帰って早々、呆気なくフィリス聖王国調査を始めました。

第八十七幕 黒幕と企て

しおりを挟む
 書庫で本を物色しているとある程度この国の事が分って来た。
 歴史があるようでそこまで無い事。
 皇国や帝国のように500年以上も続く国ではなく、極最近200年ほど前に神を崇める教会が大きくなり国になった事。
 国を造るのに尽力した人物などが分って来た。
(だがやはりどの国にも闇はあるものだな。国が出来る直後の指導者が病で無くなった。と書いてあるがどうみても暗殺だな)
 指導者であり先導者、国を造るのに最も尽力した人物、ハンリー・スミス。複数の称号を持て生まれ、誰にでも優しく接し、魔法に長け周りからの人望も厚かった青年。
 しかし、国がもう少しで出来上がるという時に病によって急死。24歳と言う若さでこの世を去った。
(24歳で急死。ありえなくはない話だが、どう考えても他の奴らが私利私欲の為に暗殺したと考えるべきだろう。で、そんなハンリーと共に尽力したのがセンチ・オラーケルとユーリ・バスラか。他にも入るが、ここ数百年で家系が途切れているな。生き残りはこの二人の子孫だけ。オラーケルは教皇だ。バスカは誰だ)
 聞いたことの姓に頭を悩ませるが答えが出るはずもない。

「カズヤ」
「ライラか、どうした?」
「これ、前にお前が読みたいって言っていた本じゃないか?」
「ああそうだ。見つけてくれてありがとうな」
「別に気にするな。暇だったからな!」
「そうか。ん? ライラ、その手に持っている本はなんだ?」
「ああ、これか。これは歴代の七聖剣の資料だ。前の本は古くなってボロボロになっていたからな。新しくなった奴ではあるがな」
「そうなのか。少し見せてもらって良いか?」
「ああ、構わないぞ」
 ライラから本を受け取るとパラパラと捲って行く。歴史が浅いせいか、そこまでの人数は居なかったが、歴代の七聖剣の生い立ちが記されていた。
(やはり、昔の人物の方が強かったようだな。時が流れていくにつれて全体のスタータス値が低くなったようだな。ん?)

「そうだったのか……」
「どうかしたのか?」
「いや、なんでもない」
 笑みを零す和也の姿に怪訝な表情を浮かべるライラ。

「ありがとうな」
「もう良いのか?」
「ああ、他に読みたい本もあるからな」
「そうか。私はこの本を持って部屋に戻るが、カズヤはどうする?」
「俺はもう少しここで本を読んでから戻る事にする」
「そうか。閲覧可能時間は決まっているから気をつけろよ」
「ああ、解っている」
 忠告を残してライラは書庫を後にした。

「それなりに上層部の人間だとは思っていたが、その通りだったな」
 ライラが持っていた本の最後のページに記された名前に和也は再び笑みを零す。

 修復担当、記録部。
 代表、フーリッシュ・バスラ。

(あの男だったとはな)
 意外な発見に和也は調べる内容を限定していく。歴史、国の生い立ち。そして、フーリッシュ・バスラ。
 和也の調べ物は日が暮れるまで続いた。


 次の日、書斎で資料整理をしながら偶然見つけた日記とも言えそうな本の内容を思い出す。
(バスラ一族は代々、多種族を嫌う一族であり、貪欲で傲慢であったか。初代バスラ当主は特にその思考が強く。多種族に関係無く地位や力が弱いものは見下し、力がある者は妬んだ。もしもあの男が同じならば帝国を異常に嫌う理由にも説明がつく。それにしてもやっぱり私利私欲か。ハンリー・スミスを殺したのも間違いなく奴の祖先だろう。ふふ、面白くなってきた)
 明確な標的を見つけた事に和也は嬉しく感じていた。
(ハクアたちの目的がなにか解らないが多分俺と同じだろう。他にもあるかもしれないが)
 和也は机に置かれた小さな鈴を鳴らす。

「御呼びでしょうかカズヤ様」
「ああ、ギンを呼んで来てくれないか。それと紅茶を3人分頼む」
「畏まりました」
 和也の言葉で理解したハクアは笑みを浮かべて退出した。
 十数分してギンを呼んできたハクアはテーブルに紅茶が注がれたティーカップを人数分置く。
 和也はその間に防音と盗聴防止の魔法結界を発動させる。

「で、話って何かしら?」
「姉御は切り替えが早いな」
「メイドなんて面倒だもの。少しでも気を休めないとね」
「そうですか」
「それで?」
「ああ、お前たちが何を求めて来たかは俺には解らないが、ある程度の推測を出来る」
「へぇ、面白そうね。その推測を聞かせてもらいましょうか」
「多分だが俺と同じだろう。フィリス聖王国の急激な戦力の上昇。特に個人のステータス上昇についてじゃないか?」
「………」
「あ、姉御どうしよう! バレてるよ!」
「貴方は少し黙って為さい!」
「はい……」
 ギンの慌てようにハクアの無表情も意味を成さなくなった。

「選抜する奴を間違えたわ」
「そうみたいだな」
 呆れるハクアの態度に苦笑いを浮かべる和也。


「どうして諜報なんかって言うのは可笑しいけど、どうしてだ? 再び戦争をするための情報収集か? それなら前からしている筈だよな。何故今頃になって」
「隠していても仕方ないわね。どうせある程度予想はしてるんでしょ」
「まあな」
「私も詳しくは知らないけど予定が狂ったらしのよ」
「やはりか」
「やっぱり気づいていたのね」
「まあな。魔族対策会議同日に届いた魔族軍の襲撃はタイミングが良過ぎたからな」
「それだけでここまで推測が出来るなんて流石ね」
 ハクアの言葉はきっと本心なのだろう。だが、和也には皮肉にしか聞こえなかった。

「で、お前たちもその理由を知るためにお前たちの上司と情報を交換している黒幕を調べに来たんだろう?」
「そうよ」
「誰か教えて貰っても良いか?」
「…………フーリッシュ枢機卿って奴よ。私達はそれぐらいしか知らないわ。だから多分貴方の方が情報は持ってると思うわよ」
「そんなに情報は持っていないぞ。その証拠に予想通りではあったがフーリッシュが犯人だと確証を得たのは今だからな」
「本当かしら?」
 疑わしいと言わんばかりに鋭い視線を和也に向ける。

「で、お前たちには悪いんだが明日にでも俺はフーリッシュに会おうと思う。理由は何でも良いがな。その隙に奴の部屋、寝室や家を調べて貰いたい。お前たちの事だから使い魔も使役してるんだろう?」
「ほんと何もかも見透かされているみたいで気持ち悪いわね」
 気持ち悪そうに吐き捨てるハクアだったが、情報収集を楽にさせて貰えると判断し了承するのだった。
しおりを挟む
感想 694

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

戦場帰りの俺が隠居しようとしたら、最強の美少女たちに囲まれて逃げ場がなくなった件

さん
ファンタジー
戦場で命を削り、帝国最強部隊を率いた男――ラル。 数々の激戦を生き抜き、任務を終えた彼は、 今は辺境の地に建てられた静かな屋敷で、 わずかな安寧を求めて暮らしている……はずだった。 彼のそばには、かつて命を懸けて彼を支えた、最強の少女たち。 それぞれの立場で戦い、支え、尽くしてきた――ただ、すべてはラルのために。 今では彼の屋敷に集い、仕え、そして溺愛している。   「ラルさまさえいれば、わたくしは他に何もいりませんわ!」 「ラル様…私だけを見ていてください。誰よりも、ずっとずっと……」 「ねぇラル君、その人の名前……まだ覚えてるの?」 「ラル、そんなに気にしなくていいよ!ミアがいるから大丈夫だよねっ!」   命がけの戦場より、ヒロインたちの“甘くて圧が強い愛情”のほうが数倍キケン!? 順番待ちの寝床争奪戦、過去の恋の追及、圧バトル修羅場―― ラルの平穏な日常は、最強で一途な彼女たちに包囲されて崩壊寸前。   これは―― 【過去の傷を背負い静かに生きようとする男】と 【彼を神のように慕う最強少女たち】が織りなす、 “甘くて逃げ場のない生活”の物語。   ――戦場よりも生き延びるのが難しいのは、愛されすぎる日常だった。 ※表紙のキャラはエリスのイメージ画です。

友人(勇者)に恋人も幼馴染も取られたけど悔しくない。 だって俺は転生者だから。

石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていた魔法戦士のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもない状態だった。 だが、此の状態は彼にとっては『本当の幸せ』を掴む事に必要だった 何故なら、彼は『転生者』だから… 今度は違う切り口からのアプローチ。 追放の話しの一話は、前作とかなり似ていますが2話からは、かなり変わります。 こうご期待。

魔王を倒した手柄を横取りされたけど、俺を処刑するのは無理じゃないかな

七辻ゆゆ
ファンタジー
「では罪人よ。おまえはあくまで自分が勇者であり、魔王を倒したと言うのだな?」 「そうそう」  茶番にも飽きてきた。処刑できるというのなら、ぜひやってみてほしい。  無理だと思うけど。

神様、ちょっとチートがすぎませんか?

ななくさ ゆう
ファンタジー
【大きすぎるチートは呪いと紙一重だよっ!】 未熟な神さまの手違いで『常人の“200倍”』の力と魔力を持って産まれてしまった少年パド。 本当は『常人の“2倍”』くらいの力と魔力をもらって転生したはずなのにっ!!  おかげで、産まれたその日に家を壊しかけるわ、謎の『闇』が襲いかかってくるわ、教会に命を狙われるわ、王女様に勇者候補としてスカウトされるわ、もう大変!!  僕は『家族と楽しく平和に暮らせる普通の幸せ』を望んだだけなのに、どうしてこうなるの!?  ◇◆◇◆◇◆◇◆◇  ――前世で大人になれなかった少年は、新たな世界で幸せを求める。  しかし、『幸せになりたい』という夢をかなえるの難しさを、彼はまだ知らない。  自分自身の幸せを追い求める少年は、やがて世界に幸せをもたらす『勇者』となる――  ◇◆◇◆◇◆◇◆◇ 本文中&表紙のイラストはへるにゃー様よりご提供戴いたものです(掲載許可済)。 へるにゃー様のHP:http://syakewokuwaeta.bake-neko.net/ --------------- ※カクヨムとなろうにも投稿しています

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

魔王を倒した勇者を迫害した人間様方の末路はなかなか悲惨なようです。

カモミール
ファンタジー
勇者ロキは長い冒険の末魔王を討伐する。 だが、人間の王エスカダルはそんな英雄であるロキをなぜか認めず、 ロキに身の覚えのない罪をなすりつけて投獄してしまう。 国民たちもその罪を信じ勇者を迫害した。 そして、処刑場される間際、勇者は驚きの発言をするのだった。

間違い転生!!〜神様の加護をたくさん貰っても それでものんびり自由に生きたい〜

舞桜
ファンタジー
「初めまして!私の名前は 沙樹崎 咲子 35歳 自営業 独身です‼︎よろしくお願いします‼︎」  突然 神様の手違いにより死亡扱いになってしまったオタクアラサー女子、 手違いのお詫びにと色々な加護とチートスキルを貰って異世界に転生することに、 だが転生した先でまたもや神様の手違いが‼︎  神々から貰った加護とスキルで“転生チート無双“  瞳は希少なオッドアイで顔は超絶美人、でも性格は・・・  転生したオタクアラサー女子は意外と物知りで有能?  だが、死亡する原因には不可解な点が…  数々の事件が巻き起こる中、神様に貰った加護と前世での知識で乗り越えて、 神々と家族からの溺愛され前世での心の傷を癒していくハートフルなストーリー?  様々な思惑と神様達のやらかしで異世界ライフを楽しく過ごす主人公、 目指すは“のんびり自由な冒険者ライフ‼︎“  そんな主人公は無自覚に色々やらかすお茶目さん♪ *神様達は間違いをちょいちょいやらかします。これから咲子はどうなるのか?のんびりできるといいね!(希望的観測っw) *投稿周期は基本的には不定期です、3日に1度を目安にやりたいと思いますので生暖かく見守って下さい *この作品は“小説家になろう“にも掲載しています

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。