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第六章 帰って早々、呆気なくフィリス聖王国調査を始めました。
第八十九幕 薄っぺらいと影
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室内に入るとそこはとても質素な造りになっていた。
(俺達八聖天の部屋よりもしっそだな。必要最低限のものしかない)
聖王国は教会が大きくなり出来た国、そのため他の国とは違い階級制度がないが、世襲制度はある。そのため国のトップと一部の官僚だけは変わらないでいた。だからと言って役職が高いほど給料が高いわけではなく、その逆である。国の事、民の事を本気で想っている者が上に立つ、その代わり給金は安い。他の国の貴族が知れば、有り得ないと口を揃えて叫ぶだろう。そのためヴァイスの家系は代々皇族として生きてきたが、その暮らしは下級貴族程度である。
それはフーリッシュも同じで書斎には本棚とオフィスデスクとオフィスチェア、応対用のソファーとテーブルしかない。
(だが、それを考えると冒険者での税金の高さが不自然過ぎるんだよな。いったい何に使ってるんだか)
和也はそんな部屋を見て闇の深さに笑みが零れそうになる。
「フーリッシュ枢機卿、突然お邪魔してしまい、申し訳ありませんでした」
「何、気にする事はない。エクス君が誘ったと聞いている。ささ質素な部屋だが寛ぎたまえ」
「では、お言葉に甘えてそうさせて貰います」
爽やかな笑みを浮かべて対応する和也。その姿はまさに好青年と言うべきだろう。知り合いがその姿を見れば違和感を通り過ぎて気分が悪くなりそうである。その証拠にエクスも少し頬を引き攣っていた。
「フーリッシュ枢機卿もご存知の通り私はまだ経験が浅い身。色々と学ばせて貰います」
「いやいや、それは致し方が無い事。これから頑張れば良い事だ。私で出来る事があれば何でも言ってくれ給え」
「ご多忙の身でありながら寛大な心遣いに感謝致します」
本当に和也の事をよく知る人間が居れば間違いなく、薄っぺらい言葉、心にも無い言葉と罵るだろう。
「しかし、エクス君から聞いている人物とは随分と違うね。円卓会議の時では冷徹だと聞いていたが」
フーリッシュの言葉にエクス身体がビクッっと反応するが和也は気づかない振りをして口を開いた。
「それは間違いありません。あの場では自分の意見をハッキリと言う場だと思いました。生憎と私は言葉足らずな処がありまして、相手を怒らせてしまう事があります。それで他の八聖天の皆様の気分を害したのなら申し訳ないと想ってはいます。ですが、八聖天は民とこの国を護る盾であり、悪を滅する剣でもあります。ですから少しでもこの国のためと思ってしまうと言葉がストレート過ぎになってしまいますと言いますか。鋭くなってしまうのです」
「確かに言葉足らずな処は直すべきだと私も思うよ。だけど自分の意見をハッキリ示す場合は飾らず言った方が良いのは確かだ」
「そう言って貰える有難いです」
「最初、君の存在を知った時は一介の冒険者が、と思ったがそれは私の間違いだったよ。きっと君が住んでいた世界は素晴らしい処なんだろうね」
「国も幾つもあるので、一概には言えませんが私の住んでいた国は法律で子供達が必ず教育を受けるようになっていました。それは勿論教養を身に付ける物なので、体術や剣術などはありません。ま、身体を動かすと言う意味でなら自分の意思で学ぶ事も可能でしたが」
「ほう、それは素晴らしい。それで人間しかいないのだろう」
「はい。私の国では人間しかいません。国によって言語の違い等はありますがね」
「それは致し方が無い事だ。だがそれだけだ。君の世界が羨ましいよ」
「そう言って頂けるのは有難いですが、残念な事もあります」
「ほう、それはなんだね」
「私達の世界には魔法が存在しません。魔法と言う言葉自体は存在します。ですがそれは小説や物語などにしか出てきませんので」
「そうなのか。だがそれは些細な事だ。魔法が無いのなら他の物を発展させれば良いだけの事だ」
「まさにそう通りです。流石はフーリッシュ枢機卿」
「何、褒めたって何も出ないよ」
「いえいえ、こうして話せるだけでも私には褒美と同じですので」
「あはは、そうかね」
「はい」
まさにごますりである。これほど欲の篭った事が分る会話もないだろう。しかしフーリシュは和也の言葉に浮かれていた。
その後はフーリシュによる講義にも似た話し合いで終わりを迎えようとしていた。
「おっともうこんな時間だ」
「突然お邪魔したにも拘わらずこんなに時間を割いてしまい申し訳ありませんでした」
「なに、気にする事はない。私も君ともっと話したいと思っていた所だったからね」
「そう言って貰えるのは恐悦至極にございます。でしたらまた後日窺っても宜しいでしょうか?」
「構わないよ。そうだ君には見せたい物がある。是非明日も来てくれ」
「有難う御座います。では私はこれで失礼させていただきます」
「楽しみにしているよ」
「はい」
笑みを浮かべたまま部屋を後にしドアを閉める。
閉めた瞬間、光が闇に一瞬にして変わったかのように表情が変貌する。
(まったく予想以上の下種野朗だな。質素な服装はしていたが袖から見えたブレスレット。あれは間違いなく高級品だ。それを複数身に付けるなんていったいどんんだけ横領してるんだか)
内心思いながら企みが順調に進んでいる事に不適な笑みを零す。
そんな和也を監視する一つの影がある事に和也は気づいていなかった。
(俺達八聖天の部屋よりもしっそだな。必要最低限のものしかない)
聖王国は教会が大きくなり出来た国、そのため他の国とは違い階級制度がないが、世襲制度はある。そのため国のトップと一部の官僚だけは変わらないでいた。だからと言って役職が高いほど給料が高いわけではなく、その逆である。国の事、民の事を本気で想っている者が上に立つ、その代わり給金は安い。他の国の貴族が知れば、有り得ないと口を揃えて叫ぶだろう。そのためヴァイスの家系は代々皇族として生きてきたが、その暮らしは下級貴族程度である。
それはフーリッシュも同じで書斎には本棚とオフィスデスクとオフィスチェア、応対用のソファーとテーブルしかない。
(だが、それを考えると冒険者での税金の高さが不自然過ぎるんだよな。いったい何に使ってるんだか)
和也はそんな部屋を見て闇の深さに笑みが零れそうになる。
「フーリッシュ枢機卿、突然お邪魔してしまい、申し訳ありませんでした」
「何、気にする事はない。エクス君が誘ったと聞いている。ささ質素な部屋だが寛ぎたまえ」
「では、お言葉に甘えてそうさせて貰います」
爽やかな笑みを浮かべて対応する和也。その姿はまさに好青年と言うべきだろう。知り合いがその姿を見れば違和感を通り過ぎて気分が悪くなりそうである。その証拠にエクスも少し頬を引き攣っていた。
「フーリッシュ枢機卿もご存知の通り私はまだ経験が浅い身。色々と学ばせて貰います」
「いやいや、それは致し方が無い事。これから頑張れば良い事だ。私で出来る事があれば何でも言ってくれ給え」
「ご多忙の身でありながら寛大な心遣いに感謝致します」
本当に和也の事をよく知る人間が居れば間違いなく、薄っぺらい言葉、心にも無い言葉と罵るだろう。
「しかし、エクス君から聞いている人物とは随分と違うね。円卓会議の時では冷徹だと聞いていたが」
フーリッシュの言葉にエクス身体がビクッっと反応するが和也は気づかない振りをして口を開いた。
「それは間違いありません。あの場では自分の意見をハッキリと言う場だと思いました。生憎と私は言葉足らずな処がありまして、相手を怒らせてしまう事があります。それで他の八聖天の皆様の気分を害したのなら申し訳ないと想ってはいます。ですが、八聖天は民とこの国を護る盾であり、悪を滅する剣でもあります。ですから少しでもこの国のためと思ってしまうと言葉がストレート過ぎになってしまいますと言いますか。鋭くなってしまうのです」
「確かに言葉足らずな処は直すべきだと私も思うよ。だけど自分の意見をハッキリ示す場合は飾らず言った方が良いのは確かだ」
「そう言って貰える有難いです」
「最初、君の存在を知った時は一介の冒険者が、と思ったがそれは私の間違いだったよ。きっと君が住んでいた世界は素晴らしい処なんだろうね」
「国も幾つもあるので、一概には言えませんが私の住んでいた国は法律で子供達が必ず教育を受けるようになっていました。それは勿論教養を身に付ける物なので、体術や剣術などはありません。ま、身体を動かすと言う意味でなら自分の意思で学ぶ事も可能でしたが」
「ほう、それは素晴らしい。それで人間しかいないのだろう」
「はい。私の国では人間しかいません。国によって言語の違い等はありますがね」
「それは致し方が無い事だ。だがそれだけだ。君の世界が羨ましいよ」
「そう言って頂けるのは有難いですが、残念な事もあります」
「ほう、それはなんだね」
「私達の世界には魔法が存在しません。魔法と言う言葉自体は存在します。ですがそれは小説や物語などにしか出てきませんので」
「そうなのか。だがそれは些細な事だ。魔法が無いのなら他の物を発展させれば良いだけの事だ」
「まさにそう通りです。流石はフーリッシュ枢機卿」
「何、褒めたって何も出ないよ」
「いえいえ、こうして話せるだけでも私には褒美と同じですので」
「あはは、そうかね」
「はい」
まさにごますりである。これほど欲の篭った事が分る会話もないだろう。しかしフーリシュは和也の言葉に浮かれていた。
その後はフーリシュによる講義にも似た話し合いで終わりを迎えようとしていた。
「おっともうこんな時間だ」
「突然お邪魔したにも拘わらずこんなに時間を割いてしまい申し訳ありませんでした」
「なに、気にする事はない。私も君ともっと話したいと思っていた所だったからね」
「そう言って貰えるのは恐悦至極にございます。でしたらまた後日窺っても宜しいでしょうか?」
「構わないよ。そうだ君には見せたい物がある。是非明日も来てくれ」
「有難う御座います。では私はこれで失礼させていただきます」
「楽しみにしているよ」
「はい」
笑みを浮かべたまま部屋を後にしドアを閉める。
閉めた瞬間、光が闇に一瞬にして変わったかのように表情が変貌する。
(まったく予想以上の下種野朗だな。質素な服装はしていたが袖から見えたブレスレット。あれは間違いなく高級品だ。それを複数身に付けるなんていったいどんんだけ横領してるんだか)
内心思いながら企みが順調に進んでいる事に不適な笑みを零す。
そんな和也を監視する一つの影がある事に和也は気づいていなかった。
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