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第六章 帰って早々、呆気なくフィリス聖王国調査を始めました。
第九十八幕 ベイラントと時間稼ぎ
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「これで残りは4人か」
気を失った者、戦意喪失した者、倒された者が続出するなか七聖剣たちは八つの属性を持つヤマタノオロチと、不敵な笑みを浮かべて操る男に苦戦を強いられていた。
(このままではジリ貧だ。どうにかして相手の隙を作らなければ。だが……)
レイはベイラントと対峙する千夜に一切の隙が無い事に冷や汗を流す。それどころか、仲間が減った事で相手をする大蛇の数も増え、千夜へ攻撃する余裕すらない。
「シッ」
襲い掛かってくる大蛇を躱し反撃するが斬った感覚は無く、直ぐに再生してしまう。
(なんて魔力量だ。これほどの魔法を発動するのにも相当の魔力が必要の筈。なのにそれを継続させるとは。どうやら俺は選択を間違えたようだ。いや、正解にするしかない。だが、その手立てが見つからない!)
「レイよ!」
「教皇様!」
突如ヴァイスの声が耳に届く。しかし視線を向ける余裕すらない。
「お前の必殺技をここで使用する事を許可する!」
「っ! しかしあれをここで使えば被害が大きくなります。そうなれば住民たちが気付く恐れが……」
「構わぬ。理由など後から同にでもなる。それよりも今は目の前の男を倒す事だけ考えろ!」
「はっ!」
(流石は教皇様仕えるに値するお方だ)
思わず物思いに耽ってしまいそうになるが、直ぐに頭を切り替え口を開いた。
「ベイラント、リアン、イザベラ!」
「「「!」」」
「俺はあの技を使う。その間この大蛇と漆黒の鬼夜叉の事は任せた!」
「あい、分かった!」
「まったく、第二席だけでなく、第一席まで無茶させる。ま、心躍るから許すけどね!」
「私は後方支援タイプなのに! 無茶させないでよ」
「なら、僕がその役割を果します!」
「エクス、生きていたか」
「はい……あんな奴の……攻撃で……死ぬ筈が……ありません………正義は……必ず勝つと……信じてますから……」
「そうだな」
頼もしい事を口にはしているが、体はすでにボロボロ。額からは血が流れ、肩で息をしている状態だ。
「なんだまだ生きていたか。流石に一人は殺したろ思っていたがしぶとい奴だ」
肩越しに視線を向けて挑発する千夜。
「お前なんかに俺は殺られない!」
「そうか。なら生き延びてみろ」
そう言った瞬間、今度は水と土、それぞれの属性を持つ大蛇2匹がエクス目掛けて襲い掛かる。
「クッ!」
なんとか躱すエクス。しかし既に体はボロボロ動くだけで体中から激痛が襲う。
「上手く躱す。ま、頑張ってくれ。俺はこの男と戦う所だ」
そう言って千夜はベイラントに視線を向ける。
「お主程の男と戦えるのは嬉しいが、正直今は怒りの方が勝っている! 俺たちを騙した諸行、やはりお主は悪。ここで死んで貰う!」
「確かに騙したがそれは依頼だ。諜報活動だ。お前らの国だってしている事だろう」
「むぅ……」
「ベイラント、言い包められないでよ!」
「しかし、本当の事だからな……」
「そうだけど、私たちの中のライラを傷付けたのよ! 許せるの!」
「それは許せん!」
「なら、早く戦いなさいよ!」
「解った!」
戦場であって戦場では無い様なそんな感じの会話に千夜は夫婦の会話を聞いているような、そんな気分になる。
「さて、もう良いのか?」
「来い!」
「そうか、なら、死ね」
「なぬっ!」
8メートル以上離れていた距離を一瞬にして零距離にした千夜は下段の構えから一気に夜天斬鬼を振り上げる。その事に驚きを隠せないベイラントだが、これまでの経験と体に染み付いた動きでなんとか躱す。それでも軽く頬を掠る。
軽く裂けた頬から血が滴り落ちるがベイラントの見た目からしたら逆にその姿が歴戦の戦士のように似合っていた。
(なんと言う速さだ。これも魔法かスキルによる物なのか。いや、それよりもどうしてレイの言葉に焦りが見当たらない。普通あの会話を聞いたら一目散にレイの所に向かう筈。なのにこの男は未だに俺と戦っている)
理解出来ない千夜の行動にベイラントは困惑する。が、千夜の表情でその答えを目にする。
(そういう事か。魔族との戦いでも見た事がある。あれは戦いを楽しんでいる顔だ。だが、なんだ。戦いを楽しんでいるにも拘わらず無駄な動きがない。接近攻撃に対する警戒は驚異的にされている。なんていう男だ)
戦いを楽しむ。だからと言って死ぬつもりは毛頭無い。その姿にベイラントは戦慄を覚える。
(怪物だ)
「どうした。早く攻撃して来い」
「そっちからしてきたらどうなのだ?」
「なら、遠慮なく」
「なに!」
(普通は遠慮する所であろう)
戦場に遠慮など無い。それよりも千夜がどれだけ遠慮しているのかを気付くべきだと言うべきだろう。
千夜の連撃を躱し、防ぎだけの防戦一方に奥歯を噛み締める。
(我慢だ。レイがあの技の準備を終えるまでの我慢だ!)
しかし、突如千夜の攻撃が止まる。
「どうやら準備が整ったようだ」
まるで待ち焦がれていたかの様に。ベイラントの事を無視して移動する。
気を失った者、戦意喪失した者、倒された者が続出するなか七聖剣たちは八つの属性を持つヤマタノオロチと、不敵な笑みを浮かべて操る男に苦戦を強いられていた。
(このままではジリ貧だ。どうにかして相手の隙を作らなければ。だが……)
レイはベイラントと対峙する千夜に一切の隙が無い事に冷や汗を流す。それどころか、仲間が減った事で相手をする大蛇の数も増え、千夜へ攻撃する余裕すらない。
「シッ」
襲い掛かってくる大蛇を躱し反撃するが斬った感覚は無く、直ぐに再生してしまう。
(なんて魔力量だ。これほどの魔法を発動するのにも相当の魔力が必要の筈。なのにそれを継続させるとは。どうやら俺は選択を間違えたようだ。いや、正解にするしかない。だが、その手立てが見つからない!)
「レイよ!」
「教皇様!」
突如ヴァイスの声が耳に届く。しかし視線を向ける余裕すらない。
「お前の必殺技をここで使用する事を許可する!」
「っ! しかしあれをここで使えば被害が大きくなります。そうなれば住民たちが気付く恐れが……」
「構わぬ。理由など後から同にでもなる。それよりも今は目の前の男を倒す事だけ考えろ!」
「はっ!」
(流石は教皇様仕えるに値するお方だ)
思わず物思いに耽ってしまいそうになるが、直ぐに頭を切り替え口を開いた。
「ベイラント、リアン、イザベラ!」
「「「!」」」
「俺はあの技を使う。その間この大蛇と漆黒の鬼夜叉の事は任せた!」
「あい、分かった!」
「まったく、第二席だけでなく、第一席まで無茶させる。ま、心躍るから許すけどね!」
「私は後方支援タイプなのに! 無茶させないでよ」
「なら、僕がその役割を果します!」
「エクス、生きていたか」
「はい……あんな奴の……攻撃で……死ぬ筈が……ありません………正義は……必ず勝つと……信じてますから……」
「そうだな」
頼もしい事を口にはしているが、体はすでにボロボロ。額からは血が流れ、肩で息をしている状態だ。
「なんだまだ生きていたか。流石に一人は殺したろ思っていたがしぶとい奴だ」
肩越しに視線を向けて挑発する千夜。
「お前なんかに俺は殺られない!」
「そうか。なら生き延びてみろ」
そう言った瞬間、今度は水と土、それぞれの属性を持つ大蛇2匹がエクス目掛けて襲い掛かる。
「クッ!」
なんとか躱すエクス。しかし既に体はボロボロ動くだけで体中から激痛が襲う。
「上手く躱す。ま、頑張ってくれ。俺はこの男と戦う所だ」
そう言って千夜はベイラントに視線を向ける。
「お主程の男と戦えるのは嬉しいが、正直今は怒りの方が勝っている! 俺たちを騙した諸行、やはりお主は悪。ここで死んで貰う!」
「確かに騙したがそれは依頼だ。諜報活動だ。お前らの国だってしている事だろう」
「むぅ……」
「ベイラント、言い包められないでよ!」
「しかし、本当の事だからな……」
「そうだけど、私たちの中のライラを傷付けたのよ! 許せるの!」
「それは許せん!」
「なら、早く戦いなさいよ!」
「解った!」
戦場であって戦場では無い様なそんな感じの会話に千夜は夫婦の会話を聞いているような、そんな気分になる。
「さて、もう良いのか?」
「来い!」
「そうか、なら、死ね」
「なぬっ!」
8メートル以上離れていた距離を一瞬にして零距離にした千夜は下段の構えから一気に夜天斬鬼を振り上げる。その事に驚きを隠せないベイラントだが、これまでの経験と体に染み付いた動きでなんとか躱す。それでも軽く頬を掠る。
軽く裂けた頬から血が滴り落ちるがベイラントの見た目からしたら逆にその姿が歴戦の戦士のように似合っていた。
(なんと言う速さだ。これも魔法かスキルによる物なのか。いや、それよりもどうしてレイの言葉に焦りが見当たらない。普通あの会話を聞いたら一目散にレイの所に向かう筈。なのにこの男は未だに俺と戦っている)
理解出来ない千夜の行動にベイラントは困惑する。が、千夜の表情でその答えを目にする。
(そういう事か。魔族との戦いでも見た事がある。あれは戦いを楽しんでいる顔だ。だが、なんだ。戦いを楽しんでいるにも拘わらず無駄な動きがない。接近攻撃に対する警戒は驚異的にされている。なんていう男だ)
戦いを楽しむ。だからと言って死ぬつもりは毛頭無い。その姿にベイラントは戦慄を覚える。
(怪物だ)
「どうした。早く攻撃して来い」
「そっちからしてきたらどうなのだ?」
「なら、遠慮なく」
「なに!」
(普通は遠慮する所であろう)
戦場に遠慮など無い。それよりも千夜がどれだけ遠慮しているのかを気付くべきだと言うべきだろう。
千夜の連撃を躱し、防ぎだけの防戦一方に奥歯を噛み締める。
(我慢だ。レイがあの技の準備を終えるまでの我慢だ!)
しかし、突如千夜の攻撃が止まる。
「どうやら準備が整ったようだ」
まるで待ち焦がれていたかの様に。ベイラントの事を無視して移動する。
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