鬼神転生記~勇者として異世界転移したのに、呆気なく死にました。~

月見酒

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第六章 帰って早々、呆気なくフィリス聖王国調査を始めました。

第九十九幕 エクスカリバーと羅道閃鬼

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(さて、いよいよだ)
 レイの必殺技が如何様な物なのか楽しみで仕方が無かった千夜はレイと対峙する。距離は凡そ25メートル。その間にはヤマタノオロチが未だに他の七聖剣と戦っていた。

「戦闘中止して安全領域まで下がれ!」
 レイの言葉に全員がヤマタノオロチとの戦闘を切り上げる。中には倒れたままのクロウを抱えて離脱する者も居た。
(さて、どうするか。攻撃を受けるつもりは無いが、斬るか、ヤマタノオロチで反撃するか、それとも攻撃スキルで対抗するかだな。ヤマタノオロチの魔力残量から考えると対抗するだけの魔法を発動するのは無理だろう。さてどうするか)
 ヤマタノオロチとはアースウォールとは違い。魔力を注ぎ込むのではなく、魔法を発動すると同時に魔力を与え自立的に攻撃させるようにしている。つまり魔物生成に似ている。だが、魔力が無くなれば自然に消滅する。簡単に言えば、有線ではなく無線で充電パック付きだと考えて貰えば解り易いだろう。
 そのため残り魔力残量からして対抗する魔力はあるが、それを使えば消滅すると言う事だ。
(仕方が無い。相手の必殺魔法が如何様な物か解らない以上、ヤマタノオロチに任せる事は出来ない。ここは相手の魔法を発動と同時に攻撃スキルで相殺するしかない)
 対抗策を決めた千夜は夜天斬鬼を握り直す。
(来る!)

「光、希望、正義を持って、目の前の敵を滅ぼせ! 全てを光で包み込むエクスカリバー!」

(斬撃か! いや、違う。特大の光の球体だと!)
 叫んだ魔法名で、あるアニメと同じようになるかと思えば振り下ろされた瞬間に半径6メートルの光の球体が出現し、千夜目掛けて襲い掛かる。その事に驚くが魔法の凄さにではない。予想と違った事の驚きだ。
 中間でうねるヤマタノオロチも一瞬で飲み込むと直ぐに千夜を襲う。が、

「一刀流秘儀、羅道閃鬼らどうせんき!」

 ――羅道閃鬼。
 全てを破壊し、一本道が出来るかの如く一撃。から付けられた名前。それはまさにその通りだった。千夜が放った一撃はレイの全てを光で包み込むエクスカリバーを一瞬にして破壊するとそのままレイ目掛けて一直線に突き進んだ。

「なんだ………と……」
 己の必殺技を一瞬にして破壊された一撃にレイは動く事が出来ず、羅道閃鬼を食らいこの世から消滅した。しかし冷酷にも羅道閃鬼はそのまま壁の一部を破壊し一直線に進む。これは余談だが、同時刻に海へ漁をしていた複数の漁師が雲が裂けるのを目撃したと噂していた。

「ヤマタノオロチを消滅させたのは凄かったが、思ったより見掛け倒しだったな」
 夜天斬鬼を担いだ千夜は呟く。

「よくも………よくも……」
「ん?」
「よくも……よくも……よくも、レイ殿をおおおぉぉ!」
 完全に我を忘れ怒り狂ったエクスが千夜に襲い掛かろうとする。

「止めよ!」
 しかし、一人の叫びによってそれは邪魔される。

「しかし教皇様、この男はレイ殿を殺したのですよ!」
「そうだ。しかしそれは我々が選択を誤ったからだ。この男は最初平和に解決しようとした。だが、ワシもそして他の者たちもそれを拒んだ。その結果がこれだ。これ以上被害を出すわけにはいかぬ!」
「しかし……」
「エクスよ。お主の気持ちも分かる。だがこれ以上他の者たちまで死んでも構わぬと言うのなら剣を構えるが良い」
「くっ………」
 ヴァイスの言葉にエクスは奥歯を噛み締めながら剣を落とした。
(ようやく終わったか)

「漆黒の鬼夜叉よ」
「何だ?」
「今すぐ、用事をすませてこの国を立ち去れ」
「そうさせて貰う。それとさっきも警告したが――」
「解っている。お主には手を出さぬ。お主が大切にしている者にもな」
「話が早くて助かる。それじゃ俺はこれで」
 そう言って千夜は王城を後にするため破壊された壁へと向かう。
 その近くには未だに現実が受け止められないライラが座り込んでいた。
(……仕方が無い。少しだけ本心を伝えておくか)
 擦れ違い様にライラにしか聞こえない声量で呟いた。

「確かに嘘だらけだったが、あの書庫での一時は俺も楽しかったし、心が和んだ。これだけは嘘偽りの無い本当の事だ」
「カズ――」
「じゃあな」
 手を伸ばし捕まえようとしたライラだったが、既に千夜は城壁から飛び降りた後だった。
 そんな千夜の後ろ姿を眺めるライラの心にはある決意が生まれた。

(必ず、またアイツに会う!)
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