鬼神転生記~勇者として異世界転移したのに、呆気なく死にました。~

月見酒

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第六章 帰って早々、呆気なくフィリス聖王国調査を始めました。

第百四幕 寝込むと食事会

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 報告を終えた千夜は屋敷に帰ろうと王宮の廊下を歩いていた時。

「あ、カズ……センヤさん。お久しぶりです」
「久しぶりセレナ。今日は勇者たちと一緒じゃないんだな」
「はい……」
「どうした?」
 浮かない顔をするセレナの姿に千夜は問い掛ける。

「実はフィリス聖王国から齎された情報で勇治さんたちが寝込んでしまったんです」
「なるほどな」
 簡単な説明で察した千夜。

「勇治さんたちだけにも本当の事を伝えてあげれば」
「駄目だ。伝えれば面倒な事になる。それに一番伝えたくない奴らに伝えるなんて論外だ」
「何故ですか?」
「嫌いだから」
「………解りました」
「セレナ」
「はい……」
「お前は優しい。他人が傷ついて居るのを見るだけで悲しむ事が出来る、とても優しい子だ」
「そんな事は……」
「だが、あいつ等はもう子供じゃない。あいつ等はあいつ等できっと乗り越えられる。俺がそうだったようにな。あいつ等の事を信じてやれ」
「そうですね……」
 千夜の慰めで少しは心の落ち着きを取り戻したセレナ。

「そうだセレナ。この後時間あるか?」
「この後ですか? はい、別に用事はありませんが?」
「なら、我が家に来ないか?」
「え、センヤさんのお宅にですか。ですが……」
「大切な話がある。俺の正体をエリーゼたちに教える。だからお前にも一緒に聞いて欲しい」
「そう言う事なら解りました。出かけてくると伝えて来ますので、少し待っていてください」
「解った。城門前で待っている」
「はい」
 一旦別れた千夜は城門前でセレナが来るのを待つ。その間セバス宛にセレナが来る事を手紙で伝える。
 銃数分後にようやくセレナ一人だけで遣ってきた。

「護衛の騎士は居ないのか?」
「騎士よりもセンヤさんの方が安心ですし頼りになります。それに今日はお泊りするつもりでいますので」
「そうか」
 騎士に同情しながらもセレナと共に屋敷へと戻る。


 屋敷へと戻るとエリーゼたちが出迎えてくれた。

「お帰りなさい旦那様。セレナよく来てくれたわ」
「突然来てしまって申し訳ありません」
「旦那様が誘ったんでしょ。なら平気よ」
「そう言って下さるのなら。ではお邪魔します」
 なれた動作で靴を脱ぎ家に上がる。

「俺が居ない間どれぐらい家に来ていたんだ?」
「周に3~4回は来ていたわよ」
「そんなにか。ま、別に構わないが」
 気にする事ではないが、予想以上に来ていた事に驚きを隠せない千夜だったが、すでに夕食の準備が出来ているらしく全員で大広間へと向かう。そこにはフーリッシュの屋敷に監禁されていた女たちが座布団に座っていた。

「どうしたんだそんなに緊張して?」
 硬直とも呼べるほど背筋を伸ばして固まっている彼女たちを見て怪訝に首を傾げる。

「だってまさかこんな豪邸に住んでるなんて思って無いし、まさかファブリーぜ皇国の第一皇女様まで一緒なんて……」
「そんなに気にする事はありません。この家では種族も階級も国も関係ありません。全員が仲良く食事する場所ですので私事はセレナたお呼びください」
「「「「「「は、はい! セレナ皇女様!」」」」」」
「皇女様は要らないのですが……」
「セレナ、初対面なんだ。無理を言っては駄目だ」
「そうよセレナ。言われて直ぐにタメ口で話せるのは旦那様ぐらいよ」
「それは褒めているのか」
「勿論」
 腑に落ちない千夜ではあったが、全員が席に着く。
 テーブルには豪華な食事が大量に並べられお酒もビール、果実酒と各種揃えられていた。

「こ、これがオールリキュールのお酒。まさかこんな早くに飲めるなんて……」
 蕩けた瞳で見詰める。それだけ飲みたかったのだろう。

「それじゃ、任務達成を祝って乾杯」
『乾杯!』
 千夜の簡素な音頭で楽しい食事が始まった。
 千夜に助けられた女性たちは豪華な食事を食べながらオールリキュールの酒を堪能し、セレナはエリーゼたちと談話し、千夜はセバス、タイガーと男性陣だけで酒を楽しむ。ラムは無我夢中でお肉を頬張る。
 各々楽しむ食事解はあっという間に時間が過ぎ、食事会が終わったのは3時間後の事だった。
 美味しい過ぎて飲みすぎた女性たちは客間に行き、タイガーは食べて寝てしまったラムを連れて寝室に向かう。セバスたちは後片付けを開始する。そして千夜、エリーゼ、ミレーネ、クロエ、エルザ、セレナは寝室に向かった。

「私も一緒に来て宜しかったのでしょうか?」
「良いじゃない。婚約したんだし」
「でも、まだお父様たちにも伝えてませんし」
「それは千夜が何とかするわ」
「丸投げされてもな」
「でも、もしも時はなんとかするんでしょ?」
「当たり前だ」
「ほらね」
 手玉に取られたような気がして不に落ちない千夜であったが、愛する者に危険が起きるのであれば何だってするのが千夜の流儀だ。

「それじゃ、話して頂戴。旦那様が私たちに隠している秘密」
「ああ、分かっている。約束したからな」
 重たくなる口をどうにかして開ける。
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