248 / 351
第七章 忙しいが、呆気なく都市ルーセントに向かう事になりました。
第十二幕 死霊生成と別れ道
しおりを挟む
エリーゼの推測通り走って十分で別れ道に到着した。
枝木のように三方向に分かれた道にはそれぞれ看板があり、名前が綴られていた。
「左がケアド、真ん中がルーセント、右がダラか。さてと……」
マップを開いた千夜は周りに敵が居ない事を確認した後、バンシーを呼び出す。
「この時をお待ちしておりました。我が君」
目深く被ったフードで素顔は分からないが、その姿から漂う妖艶な雰囲気に普通の男ならば固唾を呑むところだが、千夜とウィルは昨晩の事を思い出しため、ため息が漏れる。
「どうかされたのですか?」
「いや、なんでもない。それよりバンシーお前にはここに居る俺を含む6名の分身をそれぞれ5体生成して欲しい」
「畏まりました。して、お好みがあれば聞きますが?」
「何があ――」
「お任せで頼む」
「畏まりました?」
好奇心から尋ねようとするエリーゼの言葉を遮り、お任せにした千夜。
(聞かない方が精神的、衛生面的にも良い筈だ。エリーゼ頼むから睨まないでくれ)
頬を膨らせて睨みつけてくるエリーゼの姿に千夜は視線を合わせようとしなかった。
「それでは始めさせて貰います。サイズは全員の身長と同じぐらいで宜しいですね」
「ああ、それで構わない。あと出来れば独自で戦闘が可能だと助かる」
「畏まりました。さあ、お出でなさい私の可愛い実験体たち」
死霊生成スキルによって生み出された各種のアンデットたち。そこから漂う死臭にエリーゼたちは顔を顰めて口と鼻を覆い隠す。
「なんて酷い臭いなの」
「鼻が捥げそうなのじゃ」
「そうですか? 私にはとても安心できる臭いなのですが」
「旦那様とウィルが嫌そうな顔をした意味が分かったわ」
「フィリス聖王国、スレッド法国、教会がしったら真っ先に討伐対象になりますね」
「どうしてこんな頭のイカれた眷属を主は創ったのですか」
「イメージで」
「よく、分かりました」
魔物生成や死霊生成で自我を持つ存在を作り出す時、人格などは使用者のイメージが反映される。
次々と地面から這い出すようにして出てくるアンデットは屍戦死、腐敗子供、屍鬼、屍暗殺者、屍弓兵、腐肉吸血鬼がそれぞれ5体姿を現した。
ホラースポットや墓場よりも恐怖を与えそうな異様な光景に千夜たちは言葉が出てこなかった。ウィルにいたっては青ざめエリーゼの背中に隠れてしまった。
「これでよろしいでしょうか、我が君」
「ああ、よくここまでの者を作り出してくれた」
「勿体無きお言葉にございます。して如何様な命令を下せば宜しいでしょうか?」
「そうだな。それぞれに目的地を与える。そこまで到達する事が出来たら消滅させてくれ。街や村に被害をだしたくないからな。勿論敵意や殺意をもって襲い掛かってくる奴らは殺しも構わない。あと、盗賊を発見しだい殲滅しろ」
「畏まりました。我が君」
「それじゃあ、全員にこの外套を配る顔が見えないように目深く被れ」
全員に配り終えるとアンデットたちは無言で外套に身を包む。
「さあ、私の実験体たち、我が君の命令に従いそれぞれの目的地に向かいなさい」
返事も頷く事もしないが理解は出来ているのかそれぞれが目的地に向かって行動を開始した。
「バンシー、お前は亜空間に戻り、呼び出しがあるまで待機。アンデットたちが目的を果たして消滅するのが嫌なら亜空間に連れ込んでもかまわない」
「畏まりました。それでは我が君、いつでもおよび下さい」
「あ、ああ」
ようやく精神的安寧を取り戻した千夜は安堵し、息を吐く。
「それにしても私たちが予想していた魔人とは大違いね」
「そうですね。スケアクロウさんやラッヘンさんとも違います」
「あれが一番身の危険を感じたのじゃ」
「一番、主に近づけては駄目な女です」
「僕、トラウマになりそうです」
各々がそれぞれの感想を述べる姿に千夜は責任感を感じるのであった。
(次からはもう少しイメージを抑えて創るとしよう)
そうでもないかもしれない。
「でも、あれじゃどれが本体なのか解らないわね」
「あれに勘違いられるのは癪ですけど」
「僕の分身の子供目から蛆虫が湧いてました」
「ま、これで盗賊の殲滅は一気に進むだろう」
「そうね」
「私たちの分身死体に殺される盗賊たちが少し不憫に感じますが仕方ないですよね」
「考えないようにするのじゃ」
「俺らも都市ルーセントに向かう。今日入れて4日の道のりになる。何が起きるか解らない。全員周囲警戒しつつ向かうとしよう」
千夜の言葉に全員が頷く。ウィルだけは未だに恐怖で震えていた。
別れ道の一つに入り千夜たちは都市ルーセントに向けて行動を再開した。
枝木のように三方向に分かれた道にはそれぞれ看板があり、名前が綴られていた。
「左がケアド、真ん中がルーセント、右がダラか。さてと……」
マップを開いた千夜は周りに敵が居ない事を確認した後、バンシーを呼び出す。
「この時をお待ちしておりました。我が君」
目深く被ったフードで素顔は分からないが、その姿から漂う妖艶な雰囲気に普通の男ならば固唾を呑むところだが、千夜とウィルは昨晩の事を思い出しため、ため息が漏れる。
「どうかされたのですか?」
「いや、なんでもない。それよりバンシーお前にはここに居る俺を含む6名の分身をそれぞれ5体生成して欲しい」
「畏まりました。して、お好みがあれば聞きますが?」
「何があ――」
「お任せで頼む」
「畏まりました?」
好奇心から尋ねようとするエリーゼの言葉を遮り、お任せにした千夜。
(聞かない方が精神的、衛生面的にも良い筈だ。エリーゼ頼むから睨まないでくれ)
頬を膨らせて睨みつけてくるエリーゼの姿に千夜は視線を合わせようとしなかった。
「それでは始めさせて貰います。サイズは全員の身長と同じぐらいで宜しいですね」
「ああ、それで構わない。あと出来れば独自で戦闘が可能だと助かる」
「畏まりました。さあ、お出でなさい私の可愛い実験体たち」
死霊生成スキルによって生み出された各種のアンデットたち。そこから漂う死臭にエリーゼたちは顔を顰めて口と鼻を覆い隠す。
「なんて酷い臭いなの」
「鼻が捥げそうなのじゃ」
「そうですか? 私にはとても安心できる臭いなのですが」
「旦那様とウィルが嫌そうな顔をした意味が分かったわ」
「フィリス聖王国、スレッド法国、教会がしったら真っ先に討伐対象になりますね」
「どうしてこんな頭のイカれた眷属を主は創ったのですか」
「イメージで」
「よく、分かりました」
魔物生成や死霊生成で自我を持つ存在を作り出す時、人格などは使用者のイメージが反映される。
次々と地面から這い出すようにして出てくるアンデットは屍戦死、腐敗子供、屍鬼、屍暗殺者、屍弓兵、腐肉吸血鬼がそれぞれ5体姿を現した。
ホラースポットや墓場よりも恐怖を与えそうな異様な光景に千夜たちは言葉が出てこなかった。ウィルにいたっては青ざめエリーゼの背中に隠れてしまった。
「これでよろしいでしょうか、我が君」
「ああ、よくここまでの者を作り出してくれた」
「勿体無きお言葉にございます。して如何様な命令を下せば宜しいでしょうか?」
「そうだな。それぞれに目的地を与える。そこまで到達する事が出来たら消滅させてくれ。街や村に被害をだしたくないからな。勿論敵意や殺意をもって襲い掛かってくる奴らは殺しも構わない。あと、盗賊を発見しだい殲滅しろ」
「畏まりました。我が君」
「それじゃあ、全員にこの外套を配る顔が見えないように目深く被れ」
全員に配り終えるとアンデットたちは無言で外套に身を包む。
「さあ、私の実験体たち、我が君の命令に従いそれぞれの目的地に向かいなさい」
返事も頷く事もしないが理解は出来ているのかそれぞれが目的地に向かって行動を開始した。
「バンシー、お前は亜空間に戻り、呼び出しがあるまで待機。アンデットたちが目的を果たして消滅するのが嫌なら亜空間に連れ込んでもかまわない」
「畏まりました。それでは我が君、いつでもおよび下さい」
「あ、ああ」
ようやく精神的安寧を取り戻した千夜は安堵し、息を吐く。
「それにしても私たちが予想していた魔人とは大違いね」
「そうですね。スケアクロウさんやラッヘンさんとも違います」
「あれが一番身の危険を感じたのじゃ」
「一番、主に近づけては駄目な女です」
「僕、トラウマになりそうです」
各々がそれぞれの感想を述べる姿に千夜は責任感を感じるのであった。
(次からはもう少しイメージを抑えて創るとしよう)
そうでもないかもしれない。
「でも、あれじゃどれが本体なのか解らないわね」
「あれに勘違いられるのは癪ですけど」
「僕の分身の子供目から蛆虫が湧いてました」
「ま、これで盗賊の殲滅は一気に進むだろう」
「そうね」
「私たちの分身死体に殺される盗賊たちが少し不憫に感じますが仕方ないですよね」
「考えないようにするのじゃ」
「俺らも都市ルーセントに向かう。今日入れて4日の道のりになる。何が起きるか解らない。全員周囲警戒しつつ向かうとしよう」
千夜の言葉に全員が頷く。ウィルだけは未だに恐怖で震えていた。
別れ道の一つに入り千夜たちは都市ルーセントに向けて行動を再開した。
20
あなたにおすすめの小説
戦場帰りの俺が隠居しようとしたら、最強の美少女たちに囲まれて逃げ場がなくなった件
さん
ファンタジー
戦場で命を削り、帝国最強部隊を率いた男――ラル。
数々の激戦を生き抜き、任務を終えた彼は、
今は辺境の地に建てられた静かな屋敷で、
わずかな安寧を求めて暮らしている……はずだった。
彼のそばには、かつて命を懸けて彼を支えた、最強の少女たち。
それぞれの立場で戦い、支え、尽くしてきた――ただ、すべてはラルのために。
今では彼の屋敷に集い、仕え、そして溺愛している。
「ラルさまさえいれば、わたくしは他に何もいりませんわ!」
「ラル様…私だけを見ていてください。誰よりも、ずっとずっと……」
「ねぇラル君、その人の名前……まだ覚えてるの?」
「ラル、そんなに気にしなくていいよ!ミアがいるから大丈夫だよねっ!」
命がけの戦場より、ヒロインたちの“甘くて圧が強い愛情”のほうが数倍キケン!?
順番待ちの寝床争奪戦、過去の恋の追及、圧バトル修羅場――
ラルの平穏な日常は、最強で一途な彼女たちに包囲されて崩壊寸前。
これは――
【過去の傷を背負い静かに生きようとする男】と
【彼を神のように慕う最強少女たち】が織りなす、
“甘くて逃げ場のない生活”の物語。
――戦場よりも生き延びるのが難しいのは、愛されすぎる日常だった。
※表紙のキャラはエリスのイメージ画です。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
魔王を倒した手柄を横取りされたけど、俺を処刑するのは無理じゃないかな
七辻ゆゆ
ファンタジー
「では罪人よ。おまえはあくまで自分が勇者であり、魔王を倒したと言うのだな?」
「そうそう」
茶番にも飽きてきた。処刑できるというのなら、ぜひやってみてほしい。
無理だと思うけど。
友人(勇者)に恋人も幼馴染も取られたけど悔しくない。 だって俺は転生者だから。
石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていた魔法戦士のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもない状態だった。
だが、此の状態は彼にとっては『本当の幸せ』を掴む事に必要だった
何故なら、彼は『転生者』だから…
今度は違う切り口からのアプローチ。
追放の話しの一話は、前作とかなり似ていますが2話からは、かなり変わります。
こうご期待。
神様、ちょっとチートがすぎませんか?
ななくさ ゆう
ファンタジー
【大きすぎるチートは呪いと紙一重だよっ!】
未熟な神さまの手違いで『常人の“200倍”』の力と魔力を持って産まれてしまった少年パド。
本当は『常人の“2倍”』くらいの力と魔力をもらって転生したはずなのにっ!!
おかげで、産まれたその日に家を壊しかけるわ、謎の『闇』が襲いかかってくるわ、教会に命を狙われるわ、王女様に勇者候補としてスカウトされるわ、もう大変!!
僕は『家族と楽しく平和に暮らせる普通の幸せ』を望んだだけなのに、どうしてこうなるの!?
◇◆◇◆◇◆◇◆◇
――前世で大人になれなかった少年は、新たな世界で幸せを求める。
しかし、『幸せになりたい』という夢をかなえるの難しさを、彼はまだ知らない。
自分自身の幸せを追い求める少年は、やがて世界に幸せをもたらす『勇者』となる――
◇◆◇◆◇◆◇◆◇
本文中&表紙のイラストはへるにゃー様よりご提供戴いたものです(掲載許可済)。
へるにゃー様のHP:http://syakewokuwaeta.bake-neko.net/
---------------
※カクヨムとなろうにも投稿しています
間違い転生!!〜神様の加護をたくさん貰っても それでものんびり自由に生きたい〜
舞桜
ファンタジー
「初めまして!私の名前は 沙樹崎 咲子 35歳 自営業 独身です‼︎よろしくお願いします‼︎」
突然 神様の手違いにより死亡扱いになってしまったオタクアラサー女子、
手違いのお詫びにと色々な加護とチートスキルを貰って異世界に転生することに、
だが転生した先でまたもや神様の手違いが‼︎
神々から貰った加護とスキルで“転生チート無双“
瞳は希少なオッドアイで顔は超絶美人、でも性格は・・・
転生したオタクアラサー女子は意外と物知りで有能?
だが、死亡する原因には不可解な点が…
数々の事件が巻き起こる中、神様に貰った加護と前世での知識で乗り越えて、
神々と家族からの溺愛され前世での心の傷を癒していくハートフルなストーリー?
様々な思惑と神様達のやらかしで異世界ライフを楽しく過ごす主人公、
目指すは“のんびり自由な冒険者ライフ‼︎“
そんな主人公は無自覚に色々やらかすお茶目さん♪
*神様達は間違いをちょいちょいやらかします。これから咲子はどうなるのか?のんびりできるといいね!(希望的観測っw)
*投稿周期は基本的には不定期です、3日に1度を目安にやりたいと思いますので生暖かく見守って下さい
*この作品は“小説家になろう“にも掲載しています
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!
没落した貴族家に拾われたので恩返しで復興させます
六山葵
ファンタジー
生まれて間も無く、山の中に捨てられていた赤子レオン・ハートフィリア。
彼を拾ったのは没落して平民になった貴族達だった。
優しい両親に育てられ、可愛い弟と共にすくすくと成長したレオンは不思議な夢を見るようになる。
それは過去の記憶なのか、あるいは前世の記憶か。
その夢のおかげで魔法を学んだレオンは愛する両親を再び貴族にするために魔法学院で魔法を学ぶことを決意した。
しかし、学院でレオンを待っていたのは酷い平民差別。そしてそこにレオンの夢の謎も交わって、彼の運命は大きく変わっていくことになるのだった。
※2025/12/31に書籍五巻以降の話を非公開に変更する予定です。
詳細は近況ボードをご覧ください。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。