鬼神転生記~勇者として異世界転移したのに、呆気なく死にました。~

月見酒

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第七章 忙しいが、呆気なく都市ルーセントに向かう事になりました。

第十四幕 事情聴取と活気ある街

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(これは不味い。実に不味い。計画に支障を来すだけでなく、エリーゼたちの視線が痛い。なんとかしなければ……)
 思考を巡らせる千夜だが、答えが出ないでいた。この場から逃げる事も考えたが、大勢に目撃された以上逃げたところで意味をなさない。それよりも千夜にはエリーゼたちの方をなんとかしたい気持ちに狩られていた。
 走行しているうちに事件を嗅ぎつけた憲兵隊数名がやって来た。

「おい、これは何の騒ぎだ!」
 先頭に立つ男が代表して事情を聞きだす。

「ヒッタクリをした男が短剣で襲い掛かって来た。だから身を護る為に反撃した。それだけだ」
「本当だろうな?」
 憲兵は疑いの目を向けてくる。その事に不満を感じたのかエルザが纏う雰囲気が淀みだす。
(不味い。このままだと殺人事件に発展する)
 どうにかして誤解を解こうとする千夜だが、その必要は無かった。

「その男が言っている事は本当だぜ」
「そうよ。私たちが見てたもの」
「捕まえるなら、あっちで倒れてる男を捕まえなさいよ」
 先程まで傍観していた住民たちが千夜たちを庇うように喋りだす。その光景に流石の憲兵隊も信じるほか無かった。

「解った。ただし念のために事情聴取はさせてもらう。詰所まで来て貰おうか」
「俺一人で良いか?」
「構わないが、後ろのは仲間か?」
「そうだ。今先程この都市に着いたばかりの冒険者だ」
「そうか。それは災難だったな」
 心にも無い事を吐きながら憲兵は気絶している男を捕まえるよう部下に指示を出す。

「事情を聞くのはお前だけで良い」
 了承を得ると千夜はエリーゼたちに宿屋を探して置くように伝える。
 思わぬ事件に巻き込まれた千夜たちだったが、どうにか穏便にすませられた事に内心安堵する。
 エリーゼたちと別れ、詰所で事情聴取を受け開放されたのは一時間後の事だった。

「椅子に座りっぱなしで腰が痛い」
 年寄り臭い事を呟きながら軽くストレッチをする。

「さて、エリーゼたちと合流するか」
 歩き出した千夜。しかし数歩歩いてその足取りは急遽止まる。

「合流場所決めてなかったな」
 千夜らしくもないミスを連発に本人は嘆息するがすぐさま切り替え歩き出す。

「あ、あの!」
「ん?」
「先程は有難う御座いました!」
 突如呼び止められ声の主に視線を向けると淡い緑と白いスカート姿の女性がお辞儀していた。
(20代前半と言ったところか。だが、何故お礼される?)

「どこかで会ったか?」
「わ、私は先程ヒッタクリにあった者です」
「なるほどな」
 よく見ると白いスカートの一部が土で汚れていた。

「気にするな。相手が剣を向けてきたんだ。事故防衛本能が働いただけだからな」
「で、でも」
「気にする事はない。それにこのあと仲間と合流しないといけないからな」
 そういい残して千夜は立ち去った。
 大通りを歩く事数分。屋台の串焼きを買い食いしながら観察する。
(平和そのものだな。活気もあるし村と違って値段もお手ごろだ。私利私欲を満たす代官ではないみたいだが……)
 街の光景に一つの答えに辿り着く。が、
(なら、何が目的で暗霧の十月ミラージ・サヴァンと手を組む)
 私利私欲を満たす以外に手を組む理由がまったく掴めないでいた。
(反乱や重鎮の暗殺を企むのならば、もっと早くしているだろう。代官としてこの領地に派遣される前にでもしている筈だ。なら、何が目的だ?)
 思考を巡らせるが一方に代官の目的が解らない千夜。すると、

「旦那様!」
「ん?」
 俯きがちに歩いていると前から聞き慣れた声が耳に届く。
 顔を上げ前を見るとエリーゼたちが立っていた。

「思ったより早く終わったのね。普通なら倍は掛かるもの」
「ああ、住民たちの口添えが大きかったようだ。あれのお陰で簡単な事情著種だけで終わったからな」
「なるほどね。宿屋は確保したけどどうするの?」
「明日冒険者としてギルドに向かう。今日はこの街の探索も含めて見物だな」
「なら、私が案内するわ」
 嬉しそうに喋るエリーゼの姿に微笑む。

「なら、頼むとしよう。特産品などがあればタイガーたちに土産として買って帰ろう」
「そうね。なら案内するわ」
 手を引っ張って案内する。その後姿は何処にでもいる健気な少女にも見えた。
 今日一日新婚旅行の続きをしている気分で終えた千夜たちはエリーゼたちが手配した中級の宿屋で寛いでいた。
 村の下級宿屋と違い。6人全員が寝泊り出来る一室を借りていた。と言っても千夜の屋敷にあるキングサイズのベットがあるのではなく。両脇にベッドが三つずつ並んでいるだけだ。

「買い食いし過ぎて夕食は食べられないかと思ったがこの宿のご飯は美味しかったな」
「そうですね。ベルガーさんたちの六王鬼の祠にも負けない美味しさでした」
「美味じゃったのじゃ」
「ロイドさん程ではないですが」
「美味しかったです!」
「そうね」
 各々感想を述べたが、切り替え真剣な面持ちで顔を付き合わせた。
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