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第七章 忙しいが、呆気なく都市ルーセントに向かう事になりました。
第十七幕 宰相ヘンリー・ハントと魔王ベルヘルム・ファウダー
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「ふう、ようやくか」
ウラエウスは高さ5メートルはある扉の前に立っていた。
魔王の勅命を受けがレット獣王国から帰還し、すぐさま手に入れた情報と千夜の事を伝えようとした。しかし帰還してみれば魔王は誰とも会おうとしなかった。
その理由は一家臣であるウラエウスに教えられる事はなかった。魔王直轄の少数精鋭部隊の体長であろうと。勿論、この異常事態に動かないウラエウスではない。しかし四天王ですら謁見を許されておらず、魔王の言葉を配下の者たちに伝えるのは、宰相であり魔王の補佐でもあるヘンリー・ハントだった。ヘンリーだけ魔王との謁見を許されているのはそれだけ信頼されている証拠なのだろう。
しかし一ヶ月以上姿を現さない事に死んでいるのではという噂が流れたが、その夜王宮の一室からアノルジ大陸全土に魔王の魔力の波動が放たれた事により噂は鎮火した。
しかし、そのあとも姿を現す事もなく、魔王の代弁者であるヘンリーの指示に従い数ヶ月働いてきた。
そして帰還して8ヶ月。ようやく魔王と謁見が出来る日が訪れたのだ。
久々の謁見にウラエウスは緊張していた。
アノルジ大陸で暴れていた頃、偶然魔王と出会った日の事が頭の中を過ぎる。
「………ゴクリ」
思わずその場で喉を鳴らしてしまう。それ程魔王と初めて出会った日は衝撃的だった。
一言で言うなら、恐怖。
勝てる気も、この場から逃げれる気もまったくしない。それどころか死を覚悟した程だった。
(きっとセンヤでも魔王様には勝てない)
初めて千夜と闘った時、もしかしたらと頭を過ぎった事を思い出す。しかし、
(あの考えは愚かな考えだった)
数十センチはある分厚い扉に隔てられた謁見の間前からでも魔王のオーラを身を持って感じる。
(いよいよだ)
扉が開くのを感じ取ったウラエウスは覚悟を決める。
真剣な面持ちになった直後、片方数トンはある扉が軋み音をたてながらゆっくりと開かれる。
数分して完全に開かれた扉を確認したウラエウスは一歩足を踏み出した。
「うっ」
謁見の間にたった一歩足を踏み込んだだけでウラエウスは悟った。
(完全に前より遥かに強くなっている)
室内に充満した魔王のオーラは重く、奥に進むほど船酔いしたように眩暈するほどだ。
それでもウラエウスは自我を強く持ち魔王の数メートル近くまで近づき跪く。
「久しいな、ウラエウスよ」
「お、お久しぶりでございます。魔王ベルヘルム・ファウダー様」
「して、お主に出していた命は無事に完遂したのであろうな」
「はい……ガレット獣王国の戦力調査は無事に終えました」
「そうか。それはご苦労であった。後でヘンリーに調査報告書を提出せよ」
「畏まりました。魔王様」
「まだ何かあるのか?」
「はい。実はガレット獣王国に調査に行った際にとある者と接触したました」
「ほう……して、その者とは?」
「はい。Xランク冒険者の漆黒の鬼夜叉に御座います」
「貴族吸血鬼の若造共が逃げ帰ってきた原因を作った奴か。してその者実力は?」
「正直危険です」
「ほう、お前がそこまで言うほどか」
「はい。漆黒の鬼夜叉、名をセンヤと言うのですが闘う機会がありその実力を確かめたのですが、服に掠らず事も出来ず負けてしまいました」
「…………そうか。四天王に匹敵する力を持つお前が服に掠らせる事も出来ない存在か」
「………はい」
「いったい何者だ。人間ではあるまいしな」
「センヤの種族は私同様混合種に御座います」
「なるほど。ならば勧誘すれば途轍もない戦力となるだろう」
「そう思われると思い既に勧誘を試みました」
「して、結果は?」
「残念ながら失敗に御座います」
「そうか。なら殺すしかあるまいな」
「ですが、そうなればこちらにも甚大な被害を齎します。こちらの戦力はまだ完全に回復しきっていない状況です。それにセンヤは魔王様との会談を望んでいます」
「ほう、用件は?」
「はい。センヤは冒険者ゆえ、戦争に参加しないと」
「甘いな」
「しかし、テリトリーに侵入すれば問答無用で殺すとの事です」
「ほう、テリトリーとな?」
「はい。センヤが活動している帝都を攻撃すれば容赦なく反撃するという事かと」
「なるほどな……」
「………」
額に指先数本を当て頭を支えるベルヘルム。
何も喋らなくなった事に跪き床を見詰めるウラエウスには不気味でしかなかった。
「……ク……ククッ……クハハハハハハハハハハッ!」
突如、天を見上げ高らかに笑い出す。それがウラエウスには不気味でならなかった。
「つまりはこういう事かだな。こちらから手出しはしない。好きにすれば良い。しかし俺を怒らせるような事はするなと。このアノルジ大陸の覇者にして魔王たるこの俺に上から物を言うとは。何たる愚か者だ。決めたぞ!」
「いったい何をでしょうか?」
「その冒険者、センヤと言ったか。暗殺対象から外すものとする」
「はっ!」
(良かった。これでセンヤの命は護れた)
ウラエウスは内心安堵する。が、
「その代わり俺自ら殺してやる! ヘンリー!」
「ここに」
どこから姿を現したかは解らないが、いつの間にか扉の横に立っていた。
「今すぐ手紙を用意させろ。魔王ベルヘルム・ファウダーが直々に会ってやるとな」
「畏まりました」
「ちょっ――」
「ウラエウス。お前は手紙を持ってその男に手紙を渡して来い」
「か、畏まりました」
もうどうする事も出来なくなったウラエウスはただ返事をするしかなかった。
「そうだ。ついでに異世界から召喚された勇者を殺して来い。今は弱くても後々厄介な存在になるかもしれないからな」
「畏まりました」
(先に勇者を探す。そうすれば少しはセンヤは長生き出来るはず)
打算的な考えではある事は本人であるウラエウスがよく解っていたが、今はこれしか思いつかなかったのだ。
ウラエウスは高さ5メートルはある扉の前に立っていた。
魔王の勅命を受けがレット獣王国から帰還し、すぐさま手に入れた情報と千夜の事を伝えようとした。しかし帰還してみれば魔王は誰とも会おうとしなかった。
その理由は一家臣であるウラエウスに教えられる事はなかった。魔王直轄の少数精鋭部隊の体長であろうと。勿論、この異常事態に動かないウラエウスではない。しかし四天王ですら謁見を許されておらず、魔王の言葉を配下の者たちに伝えるのは、宰相であり魔王の補佐でもあるヘンリー・ハントだった。ヘンリーだけ魔王との謁見を許されているのはそれだけ信頼されている証拠なのだろう。
しかし一ヶ月以上姿を現さない事に死んでいるのではという噂が流れたが、その夜王宮の一室からアノルジ大陸全土に魔王の魔力の波動が放たれた事により噂は鎮火した。
しかし、そのあとも姿を現す事もなく、魔王の代弁者であるヘンリーの指示に従い数ヶ月働いてきた。
そして帰還して8ヶ月。ようやく魔王と謁見が出来る日が訪れたのだ。
久々の謁見にウラエウスは緊張していた。
アノルジ大陸で暴れていた頃、偶然魔王と出会った日の事が頭の中を過ぎる。
「………ゴクリ」
思わずその場で喉を鳴らしてしまう。それ程魔王と初めて出会った日は衝撃的だった。
一言で言うなら、恐怖。
勝てる気も、この場から逃げれる気もまったくしない。それどころか死を覚悟した程だった。
(きっとセンヤでも魔王様には勝てない)
初めて千夜と闘った時、もしかしたらと頭を過ぎった事を思い出す。しかし、
(あの考えは愚かな考えだった)
数十センチはある分厚い扉に隔てられた謁見の間前からでも魔王のオーラを身を持って感じる。
(いよいよだ)
扉が開くのを感じ取ったウラエウスは覚悟を決める。
真剣な面持ちになった直後、片方数トンはある扉が軋み音をたてながらゆっくりと開かれる。
数分して完全に開かれた扉を確認したウラエウスは一歩足を踏み出した。
「うっ」
謁見の間にたった一歩足を踏み込んだだけでウラエウスは悟った。
(完全に前より遥かに強くなっている)
室内に充満した魔王のオーラは重く、奥に進むほど船酔いしたように眩暈するほどだ。
それでもウラエウスは自我を強く持ち魔王の数メートル近くまで近づき跪く。
「久しいな、ウラエウスよ」
「お、お久しぶりでございます。魔王ベルヘルム・ファウダー様」
「して、お主に出していた命は無事に完遂したのであろうな」
「はい……ガレット獣王国の戦力調査は無事に終えました」
「そうか。それはご苦労であった。後でヘンリーに調査報告書を提出せよ」
「畏まりました。魔王様」
「まだ何かあるのか?」
「はい。実はガレット獣王国に調査に行った際にとある者と接触したました」
「ほう……して、その者とは?」
「はい。Xランク冒険者の漆黒の鬼夜叉に御座います」
「貴族吸血鬼の若造共が逃げ帰ってきた原因を作った奴か。してその者実力は?」
「正直危険です」
「ほう、お前がそこまで言うほどか」
「はい。漆黒の鬼夜叉、名をセンヤと言うのですが闘う機会がありその実力を確かめたのですが、服に掠らず事も出来ず負けてしまいました」
「…………そうか。四天王に匹敵する力を持つお前が服に掠らせる事も出来ない存在か」
「………はい」
「いったい何者だ。人間ではあるまいしな」
「センヤの種族は私同様混合種に御座います」
「なるほど。ならば勧誘すれば途轍もない戦力となるだろう」
「そう思われると思い既に勧誘を試みました」
「して、結果は?」
「残念ながら失敗に御座います」
「そうか。なら殺すしかあるまいな」
「ですが、そうなればこちらにも甚大な被害を齎します。こちらの戦力はまだ完全に回復しきっていない状況です。それにセンヤは魔王様との会談を望んでいます」
「ほう、用件は?」
「はい。センヤは冒険者ゆえ、戦争に参加しないと」
「甘いな」
「しかし、テリトリーに侵入すれば問答無用で殺すとの事です」
「ほう、テリトリーとな?」
「はい。センヤが活動している帝都を攻撃すれば容赦なく反撃するという事かと」
「なるほどな……」
「………」
額に指先数本を当て頭を支えるベルヘルム。
何も喋らなくなった事に跪き床を見詰めるウラエウスには不気味でしかなかった。
「……ク……ククッ……クハハハハハハハハハハッ!」
突如、天を見上げ高らかに笑い出す。それがウラエウスには不気味でならなかった。
「つまりはこういう事かだな。こちらから手出しはしない。好きにすれば良い。しかし俺を怒らせるような事はするなと。このアノルジ大陸の覇者にして魔王たるこの俺に上から物を言うとは。何たる愚か者だ。決めたぞ!」
「いったい何をでしょうか?」
「その冒険者、センヤと言ったか。暗殺対象から外すものとする」
「はっ!」
(良かった。これでセンヤの命は護れた)
ウラエウスは内心安堵する。が、
「その代わり俺自ら殺してやる! ヘンリー!」
「ここに」
どこから姿を現したかは解らないが、いつの間にか扉の横に立っていた。
「今すぐ手紙を用意させろ。魔王ベルヘルム・ファウダーが直々に会ってやるとな」
「畏まりました」
「ちょっ――」
「ウラエウス。お前は手紙を持ってその男に手紙を渡して来い」
「か、畏まりました」
もうどうする事も出来なくなったウラエウスはただ返事をするしかなかった。
「そうだ。ついでに異世界から召喚された勇者を殺して来い。今は弱くても後々厄介な存在になるかもしれないからな」
「畏まりました」
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打算的な考えではある事は本人であるウラエウスがよく解っていたが、今はこれしか思いつかなかったのだ。
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