鬼神転生記~勇者として異世界転移したのに、呆気なく死にました。~

月見酒

文字の大きさ
254 / 351
第七章 忙しいが、呆気なく都市ルーセントに向かう事になりました。

第十八幕 サンライトの実とアース・シャーク

しおりを挟む
 サンライトの実を捜しに都市ルーセントから南南西に進む。
 サンライトの実が生息している場所は徒歩で半日程度の場所だが、千夜たちは2時間で目安に目指す。
 途中魔物に襲われる可能性も踏まえて警戒は怠らない。特に今回はウィルが居る事も考えいつも以上に警戒度を上げる。
 しかし、高速で移動する千夜たちを襲う魔物は居らず、予定通り目的地に到着する。

「このあたりにあるはずだ」
 森の中に開いた空間を太陽の光が草が生い茂る地面を照らす。千夜たちはサンライトの実が生る木を探す。

「お父様、あの淡い黄色い実ですか?」
「そうだウィル。よく見つけたな」
 頭を撫でながら褒める。

「いえ、偶然です」
(謙虚だな。貴族には居ないタイプだ)
 内心そんな事を思いながらサンライトの実が生る木に近づく。
(っ!)

「全員止まれ」
 突如千夜が低い声音で指示をだす。
 真剣な面持ちで周りに視線を向ける千夜の姿に緊張が走る。

「ちょっと面倒だな」
「どうしたの旦那様?」
「魔物だ」
「数は?」
「3体だ」
「その程度なら問題ないわ」
「そうでもない。3体のうち2体は東北東と東南東から猛スピードでこちらに向かっている。多分俺たちに気づいたんだろう。強さからBランク程度」
「で、もう1体は?」
「俺たちの足元だ」
「え?」
 千夜の言葉に全員の視線が地面に向けられる。

「さっきまで気配すらなかった。きっとサンライトの実を狙って来る奴らを捕食するためだ」
(俺のマップにも表示されなかったからな)

「それで大きさは?」
「推定12メートル」
「12!? 私たちが倒したブラットワームより大きいわ」
「ああ、地面に振動が伝わってこない事を考えると相当深く潜っている」
「12メートルもある魔物がそんなに深く?」
「ああ。多分Sランクの魔物だ」
「どうしてそんな魔物がルーセントの近くに居るなんて」
「ああ、考えたくもないが居るのは確かだ」
「それでどうするの?」
「だれも動くなよ。まだ俺たちを襲ってこないという事が場所が特定出来ていない証拠だ。だが少しでも動けば振動で位置を特定されて直ぐに襲ってくるはずだ」
「でも、このままじゃこっちに向かっている魔物に襲われるわ!」
「大丈夫だ。ちゃんと考えがある。全員俺が出す指示通りの行動をしてくれ」
 全員が頷く。
 誰もが一言も喋る事もなく、ただただ静寂が支配する空間となる。
 数分して二つの方向から地鳴りの音が徐々に大きく近づいてくるのを察知する。
(後少しだ)
 千夜はその時をジッと待つ。
 それから1分も立たないうちに魔物が森から飛び出した。

「全員、真上に跳べ!」
 千夜の指示を聞いたエリーゼたちは全力で真上に跳ぶ。
 千夜たちの姿を見失った2体の魔物は動きを止めようとするがすぐさまサンライトの木を目指して走り出す。が、
(面倒だな)
 突如地面から大きく裂けた口が飛び出し、2体の魔物を捕食する。

「なんなのじゃあれは!」
地鮫アース・シャークだ。獰猛で狡猾な魔物だ」
地鮫アース・シャーク。なんなのじゃそれは?」
「土の中に生息する鮫の魔物だ。地上に飛び出すのは獲物を捕らえるときだけだ。今すぐ倒すぞ」
「解ったわ」
「フカヒレスープにしてやります」
「残りの部位は塩漬けにして酒と一緒に食べるのじゃ」
「皮は高く売れそうですね」
 自然落下しているにも拘わらず呑気に話すクロエたち。
(お父様そうですが、お母様たちもたいがいです!)
 20メートル以上の落下という初体験にウィルは涙目になりながら内心叫ぶ。

「地面の中に生息しているからな鱗は竜なみに硬いぞ。それから奴の尖った歯には注意だ。一度噛み付かれたら引き千切られると思ったほうが良い」
「解ったわ!」
「急ぐぞ。地面の中に潜られる!」
 千夜たちは相手の動きを鈍らせる為に上空から魔法攻撃を開始する。
 突然頭上から降り注ぐ多種多様の魔法に地鮫アース・シャークは困惑の色を見せる。

「今だ。奴の鰓部分を狙え!」
 接近戦が得意なエリーゼとエルザが両側から一斉に斬撃を食らわせる。
 味わった事のない激痛に表現する事の出来ない叫び声が森に響き渡る。

「止めだ」
 そして最後に鬼椿を片手に持った千夜の一振りによって絶命した。

「なんとかなったわね」
「皮剥ぎはどうしますか」
「今此処で済ませよう。都市に戻っても出来ないからな」
「私はウィル君と一緒にサンライトの実を採ってきますね」
「私も手伝うわ」
「解った。エルザ悪いが手伝ってくれ」
「解りました」
 ミレーネ、エリーゼ、ウィルの3人はサンライトの実を採取すべく5メートルはあるサンライトの木の許に向かった。
 その間千夜とエルザは地鮫アース・シャークの皮剥ぎし、クロエは周辺警戒を行う。
 一時間程度で皮剥ぎも終わりサンライトの実もゲットした千夜たちはアイテムボックスに収納して都市ルーセントに戻る。



しおりを挟む
感想 694

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

戦場帰りの俺が隠居しようとしたら、最強の美少女たちに囲まれて逃げ場がなくなった件

さん
ファンタジー
戦場で命を削り、帝国最強部隊を率いた男――ラル。 数々の激戦を生き抜き、任務を終えた彼は、 今は辺境の地に建てられた静かな屋敷で、 わずかな安寧を求めて暮らしている……はずだった。 彼のそばには、かつて命を懸けて彼を支えた、最強の少女たち。 それぞれの立場で戦い、支え、尽くしてきた――ただ、すべてはラルのために。 今では彼の屋敷に集い、仕え、そして溺愛している。   「ラルさまさえいれば、わたくしは他に何もいりませんわ!」 「ラル様…私だけを見ていてください。誰よりも、ずっとずっと……」 「ねぇラル君、その人の名前……まだ覚えてるの?」 「ラル、そんなに気にしなくていいよ!ミアがいるから大丈夫だよねっ!」   命がけの戦場より、ヒロインたちの“甘くて圧が強い愛情”のほうが数倍キケン!? 順番待ちの寝床争奪戦、過去の恋の追及、圧バトル修羅場―― ラルの平穏な日常は、最強で一途な彼女たちに包囲されて崩壊寸前。   これは―― 【過去の傷を背負い静かに生きようとする男】と 【彼を神のように慕う最強少女たち】が織りなす、 “甘くて逃げ場のない生活”の物語。   ――戦場よりも生き延びるのが難しいのは、愛されすぎる日常だった。 ※表紙のキャラはエリスのイメージ画です。

友人(勇者)に恋人も幼馴染も取られたけど悔しくない。 だって俺は転生者だから。

石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていた魔法戦士のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもない状態だった。 だが、此の状態は彼にとっては『本当の幸せ』を掴む事に必要だった 何故なら、彼は『転生者』だから… 今度は違う切り口からのアプローチ。 追放の話しの一話は、前作とかなり似ていますが2話からは、かなり変わります。 こうご期待。

魔王を倒した手柄を横取りされたけど、俺を処刑するのは無理じゃないかな

七辻ゆゆ
ファンタジー
「では罪人よ。おまえはあくまで自分が勇者であり、魔王を倒したと言うのだな?」 「そうそう」  茶番にも飽きてきた。処刑できるというのなら、ぜひやってみてほしい。  無理だと思うけど。

神様、ちょっとチートがすぎませんか?

ななくさ ゆう
ファンタジー
【大きすぎるチートは呪いと紙一重だよっ!】 未熟な神さまの手違いで『常人の“200倍”』の力と魔力を持って産まれてしまった少年パド。 本当は『常人の“2倍”』くらいの力と魔力をもらって転生したはずなのにっ!!  おかげで、産まれたその日に家を壊しかけるわ、謎の『闇』が襲いかかってくるわ、教会に命を狙われるわ、王女様に勇者候補としてスカウトされるわ、もう大変!!  僕は『家族と楽しく平和に暮らせる普通の幸せ』を望んだだけなのに、どうしてこうなるの!?  ◇◆◇◆◇◆◇◆◇  ――前世で大人になれなかった少年は、新たな世界で幸せを求める。  しかし、『幸せになりたい』という夢をかなえるの難しさを、彼はまだ知らない。  自分自身の幸せを追い求める少年は、やがて世界に幸せをもたらす『勇者』となる――  ◇◆◇◆◇◆◇◆◇ 本文中&表紙のイラストはへるにゃー様よりご提供戴いたものです(掲載許可済)。 へるにゃー様のHP:http://syakewokuwaeta.bake-neko.net/ --------------- ※カクヨムとなろうにも投稿しています

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

魔王を倒した勇者を迫害した人間様方の末路はなかなか悲惨なようです。

カモミール
ファンタジー
勇者ロキは長い冒険の末魔王を討伐する。 だが、人間の王エスカダルはそんな英雄であるロキをなぜか認めず、 ロキに身の覚えのない罪をなすりつけて投獄してしまう。 国民たちもその罪を信じ勇者を迫害した。 そして、処刑場される間際、勇者は驚きの発言をするのだった。

間違い転生!!〜神様の加護をたくさん貰っても それでものんびり自由に生きたい〜

舞桜
ファンタジー
「初めまして!私の名前は 沙樹崎 咲子 35歳 自営業 独身です‼︎よろしくお願いします‼︎」  突然 神様の手違いにより死亡扱いになってしまったオタクアラサー女子、 手違いのお詫びにと色々な加護とチートスキルを貰って異世界に転生することに、 だが転生した先でまたもや神様の手違いが‼︎  神々から貰った加護とスキルで“転生チート無双“  瞳は希少なオッドアイで顔は超絶美人、でも性格は・・・  転生したオタクアラサー女子は意外と物知りで有能?  だが、死亡する原因には不可解な点が…  数々の事件が巻き起こる中、神様に貰った加護と前世での知識で乗り越えて、 神々と家族からの溺愛され前世での心の傷を癒していくハートフルなストーリー?  様々な思惑と神様達のやらかしで異世界ライフを楽しく過ごす主人公、 目指すは“のんびり自由な冒険者ライフ‼︎“  そんな主人公は無自覚に色々やらかすお茶目さん♪ *神様達は間違いをちょいちょいやらかします。これから咲子はどうなるのか?のんびりできるといいね!(希望的観測っw) *投稿周期は基本的には不定期です、3日に1度を目安にやりたいと思いますので生暖かく見守って下さい *この作品は“小説家になろう“にも掲載しています

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。