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第七章 忙しいが、呆気なく都市ルーセントに向かう事になりました。
第三十二幕 ラクスの種とお祭り
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「どうぞ」
「ありがとう」
出されたお茶を飲む千夜たち。リッチネス商会や王宮などで出されたお茶に比べれば酷いが千夜たちは気にしない。それどころか千夜にとってはちょっと懐かしい味でもあった。
(じいちゃんの家でのんだお茶に似ているな)
そんな事を思いながら再び木のコップに口をつける。
「すまないな息子を休ませるためにベットを借りて」
「いえ、少しでも恩返しが出来るのであれば嬉しいので」
「そうです。この程度で恩返しが出来たとは思っていませんから」
あの後、地下倉庫に隠れていた女子供が村人たちの知らせで出て着た。無事に討伐されたと知り村の中はちょっとしたお祭り状態である。
「いや、俺たちは恩を売るために戦ったわけではない。俺たちは冒険者だ。依頼を受けそれを達成したに過ぎないからな」
「それでもです。私たちにとっては貴方方は救世主なのですから」
「………」
その言葉に千夜は言葉を発しない。それどころか聞こえなかったようにコップを口につける。
「さて、今後の話をしたいんだが、構わないか?」
これ以上持ち上げられるのは困るため話を強制的に逸らす。
しかし、その言葉にアミッツの両親は首を傾げる。
「今後についてですか?」
「そうだ。ゴブリン軍団を討伐はした。だが死体をあのまま放置すれば最悪アンデットになって再び村を襲うかもしれない。ならなくても死体を放置すれば病気になるからな」
「確かにそうですね」
「だから俺たちがゴブリンの死体を焼却処分したんだが、戦場になった一帯が完全に焼け野原になってしまったんだ」
「それは……」
「数年はまともな草木は生えて来ないだろう」
「そうですね」
「そこでだ。これを渡したいと思っている」
「これは?」
懐から出した一つの袋をテーブルに置く。それを興味深そうに見詰めるアミッツの両親。
「この中にはラクスの種が入っている」
「ラクスってあのラクスですか?」
「ああ。だが、このラクスの種は特殊でどんな土地でも実を宿す事ができる代物だ」
「それってハイラクスですか?」
「ほう、知っていたか?」
「昔、商人から聞いたことがあります」
ラクスとは日本で言うところの葡萄にあたる果実だ。少し違うのは一粒の大きさがテニスボールとほぼ同じ大きさという点だけだ。
「だからその種を植えて新しい商売を始めるといい」
「そんな助けていただいただけでなく、種まで頂けるなんて」
「気にするな。焼け野原にした謝罪だ」
「本当にありがとうございます。これで私たちの村は豊かになります」
涙を流す両親たち。アミッツは理解できていないのか「どうしたの?」と問いかけていた。
「一応育て方をまとめた資料も渡しておく」
「ありがとうございます」
「気にするな。ただ助けてそこで終わりというのが嫌いなだけだ。やるなら最後までするのが俺の主義だからな」
千夜の言葉に目を見開けるがすぐに笑みを浮かべ再び呟く。有難う御座います、と。
その日の夜はお祭りとなった。日中の出来事が嘘に思えるほど賑やかで笑いと笑みが絶えない夜となった。
もちろんその祭りの主役は千夜たちだ。
最初は参加を拒否したが、村人たちにどうしても頼まれ参加する事になった。
千夜は女性陣から熱い視線を向けられ、エリーゼたちは男性陣から卑猥な視線を向けらる。勿論そんな視線を向けた者には千夜の睨みが返って着た事は言うまでも無い。
ウィルは同い年や少し年下の子供たちのヒーローとなっていた。
「ねぇねぇセン」
「ん、なんだ?」
お酒を飲む千夜にアミッツが話しかけてくる。
「これまで倒してきた魔物とかの話が聞きたい」
「別に構わないが面白くもなんともないぞ」
「それでも聞きたい」
「そうか」
そう言ってアミッツはちょこんと地面に座り搾りたてのミルクを飲む。
「どんな話が聞きたいんだ?」
「じゃあ、エリーお姉ちゃんとはどこで出会ったの?」
「エリーとか?」
「うん!」
興味津々の目で見つめてくるアミッツ。だがよく見ればアミッツの声が聞こえたものたちもまた興味津々に耳を傾けていた。
「エリーとは盗賊に襲われているときに知り合ったんだ」
「盗賊に?」
「そうだ。偶然通りかかった場所でエリーたちが盗賊に襲われていてな。ちょっと知りたいこともあって見返り欲しさに助けたんだ」
盛ったり飾ったりせず正直話す。
「見返り? 正義のためじゃなくて」
「そうだ」
千夜の言葉に落胆する事はなくアミッツは興味本位だけで聞いてくる。
「じゃあ見返りって何を求めたの?」
「情報だ」
「情報?」
「そうだ。俺は田舎育ちでな。自分が住んでいた国の名前も知らなかったんだ」
「ここよりも田舎なの?」
「そうだ。森の中に家が一つしか建っていない田舎だ」
「それって田舎なの?」
「ん? どうだろうな?」
二人とも首を傾げる姿に笑いが起こる。
「じゃあ、情報以外に見返りは求めなかったの」
「ああ。それだけだ」
「本当はエリーお姉ちゃんと結婚したくて助けたんじゃないの? エリーお姉ちゃん綺麗だから」
(真顔で聞いてくるか?)
とんでもない質問をしてくるアミッツに視線を向けるが真顔に本当に興味本位なんだと改めて思い知らされる。
「残念ながらそうじゃない。助けたときエリーが居ることは知らなかった。助けた後に居たことを知ったからな」
「そこで一目惚れしたの?」
「そうだ」
躊躇う事も濁すことも無く堂々と答える千夜に周りから口笛の音が飛び交い、エリーゼは顔を赤くする。
「正確には自分でも気づかないうちに惚れていたというのが正しいがな」
「そうなんだ」
「こんなもんで良いか?」
「うん!」
そう言ってアミッツはエリーゼたちの所に向かった。
「ありがとう」
出されたお茶を飲む千夜たち。リッチネス商会や王宮などで出されたお茶に比べれば酷いが千夜たちは気にしない。それどころか千夜にとってはちょっと懐かしい味でもあった。
(じいちゃんの家でのんだお茶に似ているな)
そんな事を思いながら再び木のコップに口をつける。
「すまないな息子を休ませるためにベットを借りて」
「いえ、少しでも恩返しが出来るのであれば嬉しいので」
「そうです。この程度で恩返しが出来たとは思っていませんから」
あの後、地下倉庫に隠れていた女子供が村人たちの知らせで出て着た。無事に討伐されたと知り村の中はちょっとしたお祭り状態である。
「いや、俺たちは恩を売るために戦ったわけではない。俺たちは冒険者だ。依頼を受けそれを達成したに過ぎないからな」
「それでもです。私たちにとっては貴方方は救世主なのですから」
「………」
その言葉に千夜は言葉を発しない。それどころか聞こえなかったようにコップを口につける。
「さて、今後の話をしたいんだが、構わないか?」
これ以上持ち上げられるのは困るため話を強制的に逸らす。
しかし、その言葉にアミッツの両親は首を傾げる。
「今後についてですか?」
「そうだ。ゴブリン軍団を討伐はした。だが死体をあのまま放置すれば最悪アンデットになって再び村を襲うかもしれない。ならなくても死体を放置すれば病気になるからな」
「確かにそうですね」
「だから俺たちがゴブリンの死体を焼却処分したんだが、戦場になった一帯が完全に焼け野原になってしまったんだ」
「それは……」
「数年はまともな草木は生えて来ないだろう」
「そうですね」
「そこでだ。これを渡したいと思っている」
「これは?」
懐から出した一つの袋をテーブルに置く。それを興味深そうに見詰めるアミッツの両親。
「この中にはラクスの種が入っている」
「ラクスってあのラクスですか?」
「ああ。だが、このラクスの種は特殊でどんな土地でも実を宿す事ができる代物だ」
「それってハイラクスですか?」
「ほう、知っていたか?」
「昔、商人から聞いたことがあります」
ラクスとは日本で言うところの葡萄にあたる果実だ。少し違うのは一粒の大きさがテニスボールとほぼ同じ大きさという点だけだ。
「だからその種を植えて新しい商売を始めるといい」
「そんな助けていただいただけでなく、種まで頂けるなんて」
「気にするな。焼け野原にした謝罪だ」
「本当にありがとうございます。これで私たちの村は豊かになります」
涙を流す両親たち。アミッツは理解できていないのか「どうしたの?」と問いかけていた。
「一応育て方をまとめた資料も渡しておく」
「ありがとうございます」
「気にするな。ただ助けてそこで終わりというのが嫌いなだけだ。やるなら最後までするのが俺の主義だからな」
千夜の言葉に目を見開けるがすぐに笑みを浮かべ再び呟く。有難う御座います、と。
その日の夜はお祭りとなった。日中の出来事が嘘に思えるほど賑やかで笑いと笑みが絶えない夜となった。
もちろんその祭りの主役は千夜たちだ。
最初は参加を拒否したが、村人たちにどうしても頼まれ参加する事になった。
千夜は女性陣から熱い視線を向けられ、エリーゼたちは男性陣から卑猥な視線を向けらる。勿論そんな視線を向けた者には千夜の睨みが返って着た事は言うまでも無い。
ウィルは同い年や少し年下の子供たちのヒーローとなっていた。
「ねぇねぇセン」
「ん、なんだ?」
お酒を飲む千夜にアミッツが話しかけてくる。
「これまで倒してきた魔物とかの話が聞きたい」
「別に構わないが面白くもなんともないぞ」
「それでも聞きたい」
「そうか」
そう言ってアミッツはちょこんと地面に座り搾りたてのミルクを飲む。
「どんな話が聞きたいんだ?」
「じゃあ、エリーお姉ちゃんとはどこで出会ったの?」
「エリーとか?」
「うん!」
興味津々の目で見つめてくるアミッツ。だがよく見ればアミッツの声が聞こえたものたちもまた興味津々に耳を傾けていた。
「エリーとは盗賊に襲われているときに知り合ったんだ」
「盗賊に?」
「そうだ。偶然通りかかった場所でエリーたちが盗賊に襲われていてな。ちょっと知りたいこともあって見返り欲しさに助けたんだ」
盛ったり飾ったりせず正直話す。
「見返り? 正義のためじゃなくて」
「そうだ」
千夜の言葉に落胆する事はなくアミッツは興味本位だけで聞いてくる。
「じゃあ見返りって何を求めたの?」
「情報だ」
「情報?」
「そうだ。俺は田舎育ちでな。自分が住んでいた国の名前も知らなかったんだ」
「ここよりも田舎なの?」
「そうだ。森の中に家が一つしか建っていない田舎だ」
「それって田舎なの?」
「ん? どうだろうな?」
二人とも首を傾げる姿に笑いが起こる。
「じゃあ、情報以外に見返りは求めなかったの」
「ああ。それだけだ」
「本当はエリーお姉ちゃんと結婚したくて助けたんじゃないの? エリーお姉ちゃん綺麗だから」
(真顔で聞いてくるか?)
とんでもない質問をしてくるアミッツに視線を向けるが真顔に本当に興味本位なんだと改めて思い知らされる。
「残念ながらそうじゃない。助けたときエリーが居ることは知らなかった。助けた後に居たことを知ったからな」
「そこで一目惚れしたの?」
「そうだ」
躊躇う事も濁すことも無く堂々と答える千夜に周りから口笛の音が飛び交い、エリーゼは顔を赤くする。
「正確には自分でも気づかないうちに惚れていたというのが正しいがな」
「そうなんだ」
「こんなもんで良いか?」
「うん!」
そう言ってアミッツはエリーゼたちの所に向かった。
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