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第七章 忙しいが、呆気なく都市ルーセントに向かう事になりました。
第三十六幕 依頼主と闇の傭兵団
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ルイラ村を出発して20分。千夜たちは行きとは違い、ちゃんと舗装された道を歩く。すでに村は見えなくなり周りは森で覆われているが、舗装されているお陰で行きよりも歩きが楽であった。
「で、旦那様昨夜の話の続きお願いできるかしら?」
「ああ、分かった」
一応周囲に視線を向け怪しい影が無いか確かめてから口を開いた。
「昨夜も話したとおり今回の事件には間違いなく暗霧の十月が関っている。というよりも魔物たちを捨て駒として使っているんだろう」
「魔物を……」
「まるで魔族が行っているみたいですね」
「それってまさか――!」
エルザの言葉に反応して嫌な想像しそうになるが千夜が遮る。
「いや、その可能性は無いだろう。暗霧の十月の中に魔族がいるかは分からないが魔物を従わせ捨て駒にしているのは人間だ。魔族ではない」
「そう……」
千夜の言葉にエリーゼは安堵する。
「だが、今回の事件で一番の黒幕は代官だ」
「「え?」」
千夜から吐かれた一言にエリーゼとウィルの思考が一瞬停止する。
「それってどういう事?」
「俺が思うに暗霧の十月は謎の組織だが、蟲毒の蛇みたいな何かを崇めたり掲げる組織では無いと考えている。どちらかと言えば闇ギルドに近いだろう」
「どういう事?」
「闇ギルドとは裏社会の依頼を受ける組織だ。暗殺、誘拐、強盗といった内容の依頼が集まる場所。いわば斡旋所だ。だから仲間意識はない。同業者が死んだところでなんとも思わない。だが暗霧の十月は違う。依頼を受けたら徹底的に組織全体で行う。だから一人でも死ねば直ぐにその情報が組織全体に行き渡る。裏社会の傭兵団と言った所だろう」
「なるほどね」
「ああ、だが一番厄介なのは徹底した情報統制による秘密主義だ。ま、捨て駒にはそこまで気が回らなかったようだが」
最初に倒した盗賊の事を思い出す。
「まって、つまり今回のゴブリン軍団襲撃を行ったのは暗霧の十月が使役している魔物だったけど、本当に村を襲うように依頼したのは代官ってこと?」
「そういう事だ」
「まって! どうして代官がそんな事をするのよ。代官はお金を欲しているのよ。なのに殺してしまっては今後税金が入ってこなくなるわ。それは本末転倒よね」
「確かにそうだが、すでにルイラ村は数ヶ月税金を滞納しているらしい」
「それが? あの村は昔から麦で税金を払っていたのよ。それをいきなりお金だけで支払えってなったら、こうなるのは当たり前よ」
「その通りだ。いや、それが代官の目的と言うべきだろう」
「どういう事?」
「ルイラ村はたまにしか行商人が来る場所じゃない。そのせいで麦を売るにしても自分たちで近い町、もしくは都市に向かわなければならない。もしもそんな時に盗賊に襲われたらどうする?」
「まさか……」
「そういう事だ。暗霧の十月の捨て駒の一つである盗賊たちに麦を奪わせるのさ」
「でも、襲われたら直ぐにでも代官やこの領地の私兵たちが直ぐにでも討伐に向かう筈よ」
「確かにそうだ。だが、誰一人死んでいないとしたら」
「え?」
「アミッツの父親から聞いた話だが、麦袋は奪われても誰一人殺されなかったそうだ」
「なんで?」
「そっちの方が都合が良いからだろう。盗賊に襲われたと代官に知らせたとしても誰一人死んでいないとなれば、誰もそんな話をまともに聞こうとしない。どうせ、税金が払えないから嘘を言っているとしか思われないだろうからな」
「そんな……」
「もしも嘘でなかったとしても、殺さない盗賊が居るとは誰も考えないだろう。そうなれば代官や私兵たちは動こうとはしないからな」
「で、でもそれとどうゴブリン軍団と繋がるの?」
「簡単な事だ。お金が支払えないから襲わせた。そんなところだろう」
「だからどうしてそうなるのよ!」
荒々しく質問攻めするエリーゼに千夜は一旦落ち着け。と宥める。
「落ち着いたか?」
「ええ、ごめんなさい……」
「気にするな」
優しく頭を撫でる千夜の手のひらにエリーゼは思わず申し訳なさを感じてしまう。
「それで、どうしてなの?」
「国に報告するつもりだったんだろう?」
「どういう事?」
「税金を払えない村は代官の野望には必要のない存在だと判断されたんだろう。そこでゴブリンの大群に襲わせて、それを国に報告すればどうなる?」
「それは……」
「ゴブリン軍団の討伐にと資金が出るだろう。それはルイラ村から支払われる税金数年分ぐらいはな」
「っ!」
「現在はいつ魔族と戦争が起きてもおかしくない状況だ。そんな状況下で兵を送ってくることはまず考えられない。少しでも兵を温存したいからな。その代わり通常より少し上乗せされた資金が貰える筈だ。少しでも早く国内の問題を解決したいと考えるだろうからな」
「でもそれなら盗賊でも良いと思うけど?」
「なあ、エリーゼ」
「なに?」
「もしもエリーゼが領主だったとして、行商人が盗賊に何度も襲われているって情報と、とある村がゴブリン軍団によって壊滅させられたって情報が同時に入ってきたとしたらどちを優先する」
「それは勿論ゴブリっ!」
「気づいたようだな」
「まさか……」
「そう、どちらの情報を耳にして危機意識をもっとも強めるのは後者の話だ。それは国上層部も同じだろう。特に今は魔族、魔物に関してはシビアになっているからな。それに盗賊は行商人などを襲わせるのに必要な駒だからな。あんまり大事にはしたくない筈だ」
「確かにそうね」
「代官はそこまで考えて……」
「どうだろうな」
だれにも聞かれることのなかった千夜の呟きは微風で揺れる葉音によって掻き消される。
「で、旦那様昨夜の話の続きお願いできるかしら?」
「ああ、分かった」
一応周囲に視線を向け怪しい影が無いか確かめてから口を開いた。
「昨夜も話したとおり今回の事件には間違いなく暗霧の十月が関っている。というよりも魔物たちを捨て駒として使っているんだろう」
「魔物を……」
「まるで魔族が行っているみたいですね」
「それってまさか――!」
エルザの言葉に反応して嫌な想像しそうになるが千夜が遮る。
「いや、その可能性は無いだろう。暗霧の十月の中に魔族がいるかは分からないが魔物を従わせ捨て駒にしているのは人間だ。魔族ではない」
「そう……」
千夜の言葉にエリーゼは安堵する。
「だが、今回の事件で一番の黒幕は代官だ」
「「え?」」
千夜から吐かれた一言にエリーゼとウィルの思考が一瞬停止する。
「それってどういう事?」
「俺が思うに暗霧の十月は謎の組織だが、蟲毒の蛇みたいな何かを崇めたり掲げる組織では無いと考えている。どちらかと言えば闇ギルドに近いだろう」
「どういう事?」
「闇ギルドとは裏社会の依頼を受ける組織だ。暗殺、誘拐、強盗といった内容の依頼が集まる場所。いわば斡旋所だ。だから仲間意識はない。同業者が死んだところでなんとも思わない。だが暗霧の十月は違う。依頼を受けたら徹底的に組織全体で行う。だから一人でも死ねば直ぐにその情報が組織全体に行き渡る。裏社会の傭兵団と言った所だろう」
「なるほどね」
「ああ、だが一番厄介なのは徹底した情報統制による秘密主義だ。ま、捨て駒にはそこまで気が回らなかったようだが」
最初に倒した盗賊の事を思い出す。
「まって、つまり今回のゴブリン軍団襲撃を行ったのは暗霧の十月が使役している魔物だったけど、本当に村を襲うように依頼したのは代官ってこと?」
「そういう事だ」
「まって! どうして代官がそんな事をするのよ。代官はお金を欲しているのよ。なのに殺してしまっては今後税金が入ってこなくなるわ。それは本末転倒よね」
「確かにそうだが、すでにルイラ村は数ヶ月税金を滞納しているらしい」
「それが? あの村は昔から麦で税金を払っていたのよ。それをいきなりお金だけで支払えってなったら、こうなるのは当たり前よ」
「その通りだ。いや、それが代官の目的と言うべきだろう」
「どういう事?」
「ルイラ村はたまにしか行商人が来る場所じゃない。そのせいで麦を売るにしても自分たちで近い町、もしくは都市に向かわなければならない。もしもそんな時に盗賊に襲われたらどうする?」
「まさか……」
「そういう事だ。暗霧の十月の捨て駒の一つである盗賊たちに麦を奪わせるのさ」
「でも、襲われたら直ぐにでも代官やこの領地の私兵たちが直ぐにでも討伐に向かう筈よ」
「確かにそうだ。だが、誰一人死んでいないとしたら」
「え?」
「アミッツの父親から聞いた話だが、麦袋は奪われても誰一人殺されなかったそうだ」
「なんで?」
「そっちの方が都合が良いからだろう。盗賊に襲われたと代官に知らせたとしても誰一人死んでいないとなれば、誰もそんな話をまともに聞こうとしない。どうせ、税金が払えないから嘘を言っているとしか思われないだろうからな」
「そんな……」
「もしも嘘でなかったとしても、殺さない盗賊が居るとは誰も考えないだろう。そうなれば代官や私兵たちは動こうとはしないからな」
「で、でもそれとどうゴブリン軍団と繋がるの?」
「簡単な事だ。お金が支払えないから襲わせた。そんなところだろう」
「だからどうしてそうなるのよ!」
荒々しく質問攻めするエリーゼに千夜は一旦落ち着け。と宥める。
「落ち着いたか?」
「ええ、ごめんなさい……」
「気にするな」
優しく頭を撫でる千夜の手のひらにエリーゼは思わず申し訳なさを感じてしまう。
「それで、どうしてなの?」
「国に報告するつもりだったんだろう?」
「どういう事?」
「税金を払えない村は代官の野望には必要のない存在だと判断されたんだろう。そこでゴブリンの大群に襲わせて、それを国に報告すればどうなる?」
「それは……」
「ゴブリン軍団の討伐にと資金が出るだろう。それはルイラ村から支払われる税金数年分ぐらいはな」
「っ!」
「現在はいつ魔族と戦争が起きてもおかしくない状況だ。そんな状況下で兵を送ってくることはまず考えられない。少しでも兵を温存したいからな。その代わり通常より少し上乗せされた資金が貰える筈だ。少しでも早く国内の問題を解決したいと考えるだろうからな」
「でもそれなら盗賊でも良いと思うけど?」
「なあ、エリーゼ」
「なに?」
「もしもエリーゼが領主だったとして、行商人が盗賊に何度も襲われているって情報と、とある村がゴブリン軍団によって壊滅させられたって情報が同時に入ってきたとしたらどちを優先する」
「それは勿論ゴブリっ!」
「気づいたようだな」
「まさか……」
「そう、どちらの情報を耳にして危機意識をもっとも強めるのは後者の話だ。それは国上層部も同じだろう。特に今は魔族、魔物に関してはシビアになっているからな。それに盗賊は行商人などを襲わせるのに必要な駒だからな。あんまり大事にはしたくない筈だ」
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