鬼神転生記~勇者として異世界転移したのに、呆気なく死にました。~

月見酒

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第七章 忙しいが、呆気なく都市ルーセントに向かう事になりました。

第四十幕 言い掛かりと風呂上りの一杯

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 次の日。
 バンシーから数人だけ生け捕りにし残りは殺して実験台にした報告を受けた千夜たちは都市ルーセントに戻ってきていた。
 この都市に来てからいつも通りの光景の中をただ歩く。
 ギルドに到着し中に入るとざわめきが起こる。予想していたのか気にする様子も無く受付に向かう。

「センさん。そ、そのどうでしたか?」
 アミーが余所余所しく尋ねてくる。

「依頼は達成してきた。ギルドカードの更新を頼む」
「え!? は、はい。解りました!」
 信じられないと言いたげな表情だが、すぐさま仕事に取り掛かる。
 千夜のギルドカード内容を水晶版に映し出す。

「え、本当に……」
 目を見開けるアミー。それだけで冒険者たちや他の受付嬢たちは理解した。依頼は本当に達成された。見事ルイラ村は救われたと。

「終わったか?」
「あ、はい! 依頼は無事に完了していました」
「そうか。ならエリーたちのも頼む」
「解りました」
 エリーゼたちもギルドカードを私依頼達成を確認して貰う。

「全員の確認終わりました。緊急依頼、ゴブリン軍団の討伐の依頼達成おめでとうございます」
「ありがとう。それじゃあ俺たちは宿に戻る」
「あ、はい。解りました」
 そう言ってギルドを後にしようとした。が、無理だった。

「おい、待てよ!」
「なんだ?」
 突如一人の男が憤りを露にして怒鳴りだした。よく見るとその男は先日昼間から酒を飲んでいた酔っ払いだった。
(今日は飲んでいないんだな)
 内心そんな事を思いながらも千夜たちは、その男に視線を向ける。

「本当に依頼達成したのかよ!」
「そうだが。それがお前に関係あるのか?」
「嘘言ってんじゃねぇぞ! あの状況から間に合うわけねぇだろ!」
「俺たちは嘘など言った覚えはない。事実俺たちはゴブリン軍団を倒した。嘘だと思うのならアミーに聞いてみればいい」
 千夜の言葉に冒険者たちの視線がアミーに集まる。

「は、はい。確かにセンさんたちはゴブリン軍団討伐に成功しています。センさんに至ってはゴブリンジェネラルの討伐記録もあります」
 その内容にギルド内は再びざわめく。

「これでも信じられないか?」
「あ、当たり前だ! 常識的に考えろよ! どうせ村が襲われた後にゴブリン軍団を討伐したんだろうが! そんなんで本当に嬉しいのかよ! この英雄気取りが!」
 不審に感じていた冒険者も何人か居るのかざわつき出した。
 その光景がエルザに苛立ちを覚えさせ今にも男に襲い掛かりそう形相になる。
(まずいな)
 内心そんな事を思いながら口を開く。

「常識的? 知ったことじゃないな。俺は俺だ。これは前にも言ったと思うが」
「じゃあ証拠を見せろよ! どうせあの餓鬼も口封じに殺したか、もしくはどこかに捨ててきたんだろうが!」
 今度はエリーゼたちまでもが憤り今にも爆発しそうになる。

「そんなに信じられないか?」
「あ、当たり前だ!」
「だったら、見に行けば良いだろう?」
「なに?」
「信じられないんだろう。だったら自分の目でルイラ村に行けば良い。そしたら解ることだ」
 その言葉に行って確かめてみるか? などの声も出始めた。

「話は終わりか? だったら俺たちは宿屋に戻る」
 言いがかりばかり言ってくる男の言葉を軽くあしらった千夜たちは宿屋に戻る。
 それから一週間後、ルーセンとにルイラ村が千夜たちによって救われた事が事実だと知れ渡ることは言うまでもなかった。


 宿屋に戻った千夜たちはお風呂に入り数日の汗と垢を落とすと湯船に浸かる。

「あ"~……」
 あまりの気持ちよさに口から声が漏れる。
 今にもこのまま目を瞑りたくなる思いだったが、なんとか踏みとどまり風呂を出た。
 部屋に戻ると千夜はアイテムボックスから飲み物を取り出し一気に流し込む。熱くなった体に冷たいジュースが一気に浸透し幸福感を与える。

「ウィルも飲むか?」
「はい!」
 着替え終わったウィルにアイテムボックスから取り出したジュースを私2人同時に喉を潤す。

「「ぷはっ!」」
 満面の笑みを浮かべる2人。
 その後も同じ事を繰り返す親子。
 十数分遅れでようやくエリーゼたちが部屋に戻ってきた。

「遅くなったわ」
「久しぶりのお風呂に堪能してしまいました」
「気持ちよかったのぉ~」
「屋敷のお風呂のほうが何百倍も気持ち居です」
「エルザ張り合わなくていいわよ」
 そんな会話をしながらベットに座る。

「それで明日からどうするの?」
「決まっている。普通どおりに冒険者活動だ」
「でしょうね」
「と、言いたいところだが」
「違うの?」
「ああ。明日一日は冒険者活動は休みとし自由行動とする。一日寝るもよし、鍛錬するもよし、観光するもよしだ」
「本当ですか!」
「ああ」
 嬉しそうに聞き返してきたのはエリーゼではなくミレーネだった。

「どこか行きたい場所でもあるのか?」
「あ、はい。エリーゼお姉さまに教えて貰った雑貨やに行ってみないと思いまして」
「なるほどな。別に構わないぞ。ただし単独行動は駄目だ。最低二人以上で行動しろ」
「はい、解りました!」
 嬉しそうに返答したミレーネは楽しそうにクロエと話し出す。
 結局、その日は疲れが残っていたのかベットに横になると全員すぐさま意識を闇へと沈めたのだった。
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