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第七章 忙しいが、呆気なく都市ルーセントに向かう事になりました。
第四十六幕 一時撤退とあれね……
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(このままだと不味いな。こんな狭い場所でこれ以上敵が増える続ければ必ず負傷者がでる)
千夜はなにより大切な仲間、家族が傷つく事を許さない。それはエルザが瀕死に陥った時に確固たるものへとなっていた。
(ヤマタノオロチを使えば即座にこの戦いは終わるだろうが、敵の数が明確で無い以上おいそれと使うわけにはいかない。もしもそれで逃げられたりでもしたら他の場所で被害が出る可能性だってあるからな)
戦いながら千夜は思考を巡らせ、一つの答えを出し大きな声で叫ぶ。
「一旦退くぞ!」
「「「「「え!?」」」」」
突如、千夜からの指示に困惑するエリーゼたち。しかし直ぐに頭を切り替え千夜の指示に従い廃村入り口。つまりミレーネとクロエの許へと向かう。
「ミーネ、クーエは中級魔法を放つ準備!」
「分かりました!」
「任せるのじゃ」
二人はそれぞれ、中級魔法の準備を始める。と言っても今のミレーネとクロエは中級魔法程度なら短縮詠唱で発動することが出来る。その中でも得意とする風属性と闇属性魔法を準備し千夜の合図を待つ。
エルザにウィル、エリーゼと。ミレーネたちの許へやって来た。あとは千夜だけである。
エリーゼたちが入り口まで戻ったことを確認した千夜は近くに居たコボルトを殺してからエリーゼたちの許へと向かった。その進路先を阻もうと魔物たちが道を塞ぐが、縫うような動きで敵の間を抜けていく。勿論すれ違いざまに殺すことも忘れない。
その時千夜が叫んだ。
「今だ!」
千夜の叫びを合図にミレーネとクロエは魔法を放った。
「暴風刃!」
「影槍の丘!」
追随してくる魔物の集団に対してミレーネとクロエの同時攻撃が見事決まる。
突如襲い掛かる強烈な暴風は魔物たちの皮膚を切り裂き、地面から生えた大量の黒槍。いや、影槍は魔物の四肢や胴体を貫く。中には頭部を貫かれ絶命している者もいた。
それでも魔物は大量に千夜たちに殺気を放つ。最前列の魔物が立ったまま絶命しているお陰でバリケード代わりになり道を塞ぐことには成功したがクロエの魔法が解ければすぐさま追いかけてくる。その間に千夜たちは一時撤退した。
街道沿い近くまで戻ってきた千夜たちは一旦休憩も含めて反省と作戦を練り直す事にした。
「まさか情報より魔物の数が多いなんて」
「俺の落ち度だ。敵の情報にも拘らずそれを信じてしまった。すまない」
「旦那様のせいじゃないわ。逆に旦那様が気付いてくれたお陰で私たちはあの場で死なずに済んだんだから」
責任を感じる千夜をエリーゼたちは慰める。その光景はウィルにとって驚きでしかなかった。
「お父様でも失敗するんですね」
「当たり前だ。俺は神ではないからな。これまで上手くいっていたのは積み重ねた鍛錬と経験によるものだ」
(ゲーム内で得た経験だが)
「だからあんまり俺を過大評価しないで貰いたい。プレシャーでしかないからな」
「旦那様でもプレッシャーは感じるのね」
「当たり前だ。俺を何だと思っていたんだ?」
「冷静沈着な私の愛する夫」
「……半分正解だな」
「あら、どっちが?」
「愛する夫の方だ」
「そっちは大正解じゃないの?」
「そうだな」
「この状況でいちゃつかないで下さい!」
二人の世界に入りかけた千夜とエリーゼをミレーネが引っ張り戻す。
「さて、俺たちが倒した数は既に200は過ぎている。だが、見た感じまだ倍以上の数は居るだろう。ゴブリン軍団の時に比べたらまだ少ないが、狭い場所で戦うには辛い数だ」
「一気に魔法で焼き殺しちゃだめなの?」
「依頼内容を忘れたか? 村への被害は最小限にって言われているからな。焼け野原にしたら間違いなく依頼は未達成になる。あの金好きの男の事だ、銅貨一枚も払いはしないだろう」
「確かにそうね」
「でしたらどこかに誘き出しては?」
「それも難しいな。このあたりに誘き出せそうな場所が無い。伏兵が潜んでいる可能性が消えたわけでも無いしな。一番最悪なのが誘き出している最中に他の人を襲われることだ。森を抜ければ都市に続く街道だからな」
「確かにそうですね……」
「先ほどまで寝ていた奴らも起きたとなれば数はまだまだ増えるだろう。それも踏まえるとなると………やはり一番は俺のヤマタノオロチだろうな」
「あれなのね……」
「あれですか……」
「あれなのかのぉ……」
エルザ以外の女性陣は千夜が出した魔法名に唸り声にも似た声で呟く。
「ヤマタノオロチってなんですか?」
「ヤマタノオロチとは主が得意とする超級魔法の一つです。それぞれの属性が大蛇の姿となり敵を襲うのです。食われれば即死、属性によっては食われなくても周囲にいた者も即死する魔法です」
「そんな恐ろしい魔法をお父様は使えるのですか……」
「正確には主が考案した魔法です」
「オリジナル! 流石です!」
「あ、ああ。だがあの魔法は流石に使えないな。村への被害が大きく過ぎる」
「でしょうね」
「それならどうしますか?」
「………仕方が無い。あの作戦で倒すしかないだろう」
「「「「「あの作戦?」」」」」
「ああ。昔の仲間と考案した作戦だ。俺たちはその作戦を【ドーナッツ】と呼んでいた」
その作戦名にエリーゼたちは首を傾げるのだった。
千夜はなにより大切な仲間、家族が傷つく事を許さない。それはエルザが瀕死に陥った時に確固たるものへとなっていた。
(ヤマタノオロチを使えば即座にこの戦いは終わるだろうが、敵の数が明確で無い以上おいそれと使うわけにはいかない。もしもそれで逃げられたりでもしたら他の場所で被害が出る可能性だってあるからな)
戦いながら千夜は思考を巡らせ、一つの答えを出し大きな声で叫ぶ。
「一旦退くぞ!」
「「「「「え!?」」」」」
突如、千夜からの指示に困惑するエリーゼたち。しかし直ぐに頭を切り替え千夜の指示に従い廃村入り口。つまりミレーネとクロエの許へと向かう。
「ミーネ、クーエは中級魔法を放つ準備!」
「分かりました!」
「任せるのじゃ」
二人はそれぞれ、中級魔法の準備を始める。と言っても今のミレーネとクロエは中級魔法程度なら短縮詠唱で発動することが出来る。その中でも得意とする風属性と闇属性魔法を準備し千夜の合図を待つ。
エルザにウィル、エリーゼと。ミレーネたちの許へやって来た。あとは千夜だけである。
エリーゼたちが入り口まで戻ったことを確認した千夜は近くに居たコボルトを殺してからエリーゼたちの許へと向かった。その進路先を阻もうと魔物たちが道を塞ぐが、縫うような動きで敵の間を抜けていく。勿論すれ違いざまに殺すことも忘れない。
その時千夜が叫んだ。
「今だ!」
千夜の叫びを合図にミレーネとクロエは魔法を放った。
「暴風刃!」
「影槍の丘!」
追随してくる魔物の集団に対してミレーネとクロエの同時攻撃が見事決まる。
突如襲い掛かる強烈な暴風は魔物たちの皮膚を切り裂き、地面から生えた大量の黒槍。いや、影槍は魔物の四肢や胴体を貫く。中には頭部を貫かれ絶命している者もいた。
それでも魔物は大量に千夜たちに殺気を放つ。最前列の魔物が立ったまま絶命しているお陰でバリケード代わりになり道を塞ぐことには成功したがクロエの魔法が解ければすぐさま追いかけてくる。その間に千夜たちは一時撤退した。
街道沿い近くまで戻ってきた千夜たちは一旦休憩も含めて反省と作戦を練り直す事にした。
「まさか情報より魔物の数が多いなんて」
「俺の落ち度だ。敵の情報にも拘らずそれを信じてしまった。すまない」
「旦那様のせいじゃないわ。逆に旦那様が気付いてくれたお陰で私たちはあの場で死なずに済んだんだから」
責任を感じる千夜をエリーゼたちは慰める。その光景はウィルにとって驚きでしかなかった。
「お父様でも失敗するんですね」
「当たり前だ。俺は神ではないからな。これまで上手くいっていたのは積み重ねた鍛錬と経験によるものだ」
(ゲーム内で得た経験だが)
「だからあんまり俺を過大評価しないで貰いたい。プレシャーでしかないからな」
「旦那様でもプレッシャーは感じるのね」
「当たり前だ。俺を何だと思っていたんだ?」
「冷静沈着な私の愛する夫」
「……半分正解だな」
「あら、どっちが?」
「愛する夫の方だ」
「そっちは大正解じゃないの?」
「そうだな」
「この状況でいちゃつかないで下さい!」
二人の世界に入りかけた千夜とエリーゼをミレーネが引っ張り戻す。
「さて、俺たちが倒した数は既に200は過ぎている。だが、見た感じまだ倍以上の数は居るだろう。ゴブリン軍団の時に比べたらまだ少ないが、狭い場所で戦うには辛い数だ」
「一気に魔法で焼き殺しちゃだめなの?」
「依頼内容を忘れたか? 村への被害は最小限にって言われているからな。焼け野原にしたら間違いなく依頼は未達成になる。あの金好きの男の事だ、銅貨一枚も払いはしないだろう」
「確かにそうね」
「でしたらどこかに誘き出しては?」
「それも難しいな。このあたりに誘き出せそうな場所が無い。伏兵が潜んでいる可能性が消えたわけでも無いしな。一番最悪なのが誘き出している最中に他の人を襲われることだ。森を抜ければ都市に続く街道だからな」
「確かにそうですね……」
「先ほどまで寝ていた奴らも起きたとなれば数はまだまだ増えるだろう。それも踏まえるとなると………やはり一番は俺のヤマタノオロチだろうな」
「あれなのね……」
「あれですか……」
「あれなのかのぉ……」
エルザ以外の女性陣は千夜が出した魔法名に唸り声にも似た声で呟く。
「ヤマタノオロチってなんですか?」
「ヤマタノオロチとは主が得意とする超級魔法の一つです。それぞれの属性が大蛇の姿となり敵を襲うのです。食われれば即死、属性によっては食われなくても周囲にいた者も即死する魔法です」
「そんな恐ろしい魔法をお父様は使えるのですか……」
「正確には主が考案した魔法です」
「オリジナル! 流石です!」
「あ、ああ。だがあの魔法は流石に使えないな。村への被害が大きく過ぎる」
「でしょうね」
「それならどうしますか?」
「………仕方が無い。あの作戦で倒すしかないだろう」
「「「「「あの作戦?」」」」」
「ああ。昔の仲間と考案した作戦だ。俺たちはその作戦を【ドーナッツ】と呼んでいた」
その作戦名にエリーゼたちは首を傾げるのだった。
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