294 / 351
第七章 忙しいが、呆気なく都市ルーセントに向かう事になりました。
第五十八幕 考え方と友好な関係
しおりを挟む
グレムリン商会で買い物を済ませた千夜たちは大通りを歩いていた。
「それにしても旦那様、本当に良かったの?」
「ん? なにがだ?」
「宝石よ」
「嫌だったか?」
「そんな事ないわ。とても嬉しいわ。でも、グレムリン商会に気に入られるためだけに宝石をいくつも買うなんて」
「俺らしくないか?」
「そ、そんな事は……」
あまり無駄遣いしない千夜はどりからといえば、節約するタイプだ。ましてや冒険者活動のためだけに金貨を何十枚も使うような事はしない。それはいつも傍に居るエリーゼたちとっては尚更だった。
「ま、確かに船に乗るためだけに金貨何十枚も使うのは俺らしくないかもな」
「じゃあ、なんで」
「考え方の違いだな」
「考え方の違い?」
千夜の言葉にエリーたちは疑問符を浮かべながら首を傾げる。
「ああ。船に乗る為にグレムリン商会と仲良くなるのには何か購入するのが手っ取り早い。だが、そんなの誰だって嫌だ。ま、今後の関係のためにって考えるならちょっとした出費って言えなくもないが、流石の俺もそんな事で金を使うのは嫌だな」
「なら、どうして?」
「簡単だ。エリーたちに喜んで欲しかったからだよ」
「旦那様……」
千夜の言葉にエリーゼたちの歩みが止まる。
「何か買うなら目的の為でなく、誰かの為に喜んで貰ったほうが買う行為にも意味がある」
「ほんと旦那様はずるいわ……」
頬を赤く染めるエリーゼたちの頭をそれぞれ撫でる。
「嫌だったか?」
「バカ……そんなわけないでしょ」
「そうです。愛する人からプレゼントされて嬉しくないわけないです」
「そうなのじゃ」
「そうです」
「そうか。それなら良かった」
そんな愛する妻たちの言葉に千夜は安心したのか微笑むのだった。
「あ、あのお父様」
「ん、どうしたウィル」
言い難そうにウィルが千夜に声を掛ける。
「出来ればそういう事は宿屋に戻ってからしてくれませんか」
「ん?」
ウィルの言葉に千夜たちは周りに視線を向けると、男たちの嫉妬と怒りの篭った視線と、頬を赤く染めて羨ましそうに見つめる女性の視線が千夜たちに集中砲火を浴びせていた。
「確かに大通りのど真ん中ですることじゃないわね」
「そ、そうですね」
恥かしさからエリーゼたちの顔がますます赤くなっていった。
「それじゃあ、これ以上目立つ前に宿屋に戻るとするか」
「そ、そうね。そうしましょう」
「「「は、はい……」」」
堂々と歩く千夜と違い、エリーゼたちは俯きながら宿屋に戻るのだった。
******************************
千夜たちが宝石を購入し出て行った後の一室では。
「どうかなさいましたか?」
一人の女性がベノワに話しかけていた。
「あの、冒険者は何者か知っているかしら?」
「申し訳ありません。私は存じておりません」
「あなたは?」
「多分ですが、噂の冒険者ではないかと?」
「噂?」
「はい。先日のこの都市にAランクの冒険者パーティーが来たとか。なんでもそのパーティーは6人組で、家族でパーティーを組んでいるとか」
メガネをかけた女性店員は先日耳にした噂をベノワに伝えた。
「なるほど。多分その噂の冒険者でしょうね」
「それがどうかしましたか?」
「あのリーダーの男。本当にただの冒険者かしら?」
「それはどういう意味でしょうか?」
ベノワの言葉に女性店員2人は首を傾げる。
「Aランクの冒険者パーティーともなれば力だけでなく、知識も求められてくるもの」
「確かにその通りですね」
「でも、Aランクの冒険者とはいえ、高価な品に触る時手袋をするなんて知識、冒険者が知りえるものかしら?」
「そ、それは……」
「確かに言われてみれば……」
「その証拠に妻たちである女性陣は普通に素手で触っていた。にも拘わらずあの男は手袋をしていた。大手の商会でしかしない事を」
「まさか、どこかの商会が送り込んできた諜報員という事でしょうか」
「それは解らないわ。でも、ただの冒険者ではないのは確かよ」
顔の前で手を組んだベノワは千夜の姿を思い浮かべる。
(もしも、彼が諜報員などではなくただの冒険者だとしたら、友好な関係を築くべきでしょうね)
「少しでも多くあの冒険者について調べて頂戴。大至急よ」
「「は、はい! 畏まりました!」」
慌てて出て行く情勢店員を視界の端で確認したベノワは思考の海に潜っていく。
(それよりも今は今度の海底遺跡の発掘よ。あれが上手くいけば、グレムリン商会は間違いなく今の危機を乗り越える事ができる筈よ)
予想外の出来事続きでグレムリン商会は未曾有の危機に立たされていた。
その事を知っているのはまだベノワと夫であるグレムリン商会の会頭のみ。
「なんとしても絶対に成功させて見せるわ」
「それにしても旦那様、本当に良かったの?」
「ん? なにがだ?」
「宝石よ」
「嫌だったか?」
「そんな事ないわ。とても嬉しいわ。でも、グレムリン商会に気に入られるためだけに宝石をいくつも買うなんて」
「俺らしくないか?」
「そ、そんな事は……」
あまり無駄遣いしない千夜はどりからといえば、節約するタイプだ。ましてや冒険者活動のためだけに金貨を何十枚も使うような事はしない。それはいつも傍に居るエリーゼたちとっては尚更だった。
「ま、確かに船に乗るためだけに金貨何十枚も使うのは俺らしくないかもな」
「じゃあ、なんで」
「考え方の違いだな」
「考え方の違い?」
千夜の言葉にエリーたちは疑問符を浮かべながら首を傾げる。
「ああ。船に乗る為にグレムリン商会と仲良くなるのには何か購入するのが手っ取り早い。だが、そんなの誰だって嫌だ。ま、今後の関係のためにって考えるならちょっとした出費って言えなくもないが、流石の俺もそんな事で金を使うのは嫌だな」
「なら、どうして?」
「簡単だ。エリーたちに喜んで欲しかったからだよ」
「旦那様……」
千夜の言葉にエリーゼたちの歩みが止まる。
「何か買うなら目的の為でなく、誰かの為に喜んで貰ったほうが買う行為にも意味がある」
「ほんと旦那様はずるいわ……」
頬を赤く染めるエリーゼたちの頭をそれぞれ撫でる。
「嫌だったか?」
「バカ……そんなわけないでしょ」
「そうです。愛する人からプレゼントされて嬉しくないわけないです」
「そうなのじゃ」
「そうです」
「そうか。それなら良かった」
そんな愛する妻たちの言葉に千夜は安心したのか微笑むのだった。
「あ、あのお父様」
「ん、どうしたウィル」
言い難そうにウィルが千夜に声を掛ける。
「出来ればそういう事は宿屋に戻ってからしてくれませんか」
「ん?」
ウィルの言葉に千夜たちは周りに視線を向けると、男たちの嫉妬と怒りの篭った視線と、頬を赤く染めて羨ましそうに見つめる女性の視線が千夜たちに集中砲火を浴びせていた。
「確かに大通りのど真ん中ですることじゃないわね」
「そ、そうですね」
恥かしさからエリーゼたちの顔がますます赤くなっていった。
「それじゃあ、これ以上目立つ前に宿屋に戻るとするか」
「そ、そうね。そうしましょう」
「「「は、はい……」」」
堂々と歩く千夜と違い、エリーゼたちは俯きながら宿屋に戻るのだった。
******************************
千夜たちが宝石を購入し出て行った後の一室では。
「どうかなさいましたか?」
一人の女性がベノワに話しかけていた。
「あの、冒険者は何者か知っているかしら?」
「申し訳ありません。私は存じておりません」
「あなたは?」
「多分ですが、噂の冒険者ではないかと?」
「噂?」
「はい。先日のこの都市にAランクの冒険者パーティーが来たとか。なんでもそのパーティーは6人組で、家族でパーティーを組んでいるとか」
メガネをかけた女性店員は先日耳にした噂をベノワに伝えた。
「なるほど。多分その噂の冒険者でしょうね」
「それがどうかしましたか?」
「あのリーダーの男。本当にただの冒険者かしら?」
「それはどういう意味でしょうか?」
ベノワの言葉に女性店員2人は首を傾げる。
「Aランクの冒険者パーティーともなれば力だけでなく、知識も求められてくるもの」
「確かにその通りですね」
「でも、Aランクの冒険者とはいえ、高価な品に触る時手袋をするなんて知識、冒険者が知りえるものかしら?」
「そ、それは……」
「確かに言われてみれば……」
「その証拠に妻たちである女性陣は普通に素手で触っていた。にも拘わらずあの男は手袋をしていた。大手の商会でしかしない事を」
「まさか、どこかの商会が送り込んできた諜報員という事でしょうか」
「それは解らないわ。でも、ただの冒険者ではないのは確かよ」
顔の前で手を組んだベノワは千夜の姿を思い浮かべる。
(もしも、彼が諜報員などではなくただの冒険者だとしたら、友好な関係を築くべきでしょうね)
「少しでも多くあの冒険者について調べて頂戴。大至急よ」
「「は、はい! 畏まりました!」」
慌てて出て行く情勢店員を視界の端で確認したベノワは思考の海に潜っていく。
(それよりも今は今度の海底遺跡の発掘よ。あれが上手くいけば、グレムリン商会は間違いなく今の危機を乗り越える事ができる筈よ)
予想外の出来事続きでグレムリン商会は未曾有の危機に立たされていた。
その事を知っているのはまだベノワと夫であるグレムリン商会の会頭のみ。
「なんとしても絶対に成功させて見せるわ」
10
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
戦場帰りの俺が隠居しようとしたら、最強の美少女たちに囲まれて逃げ場がなくなった件
さん
ファンタジー
戦場で命を削り、帝国最強部隊を率いた男――ラル。
数々の激戦を生き抜き、任務を終えた彼は、
今は辺境の地に建てられた静かな屋敷で、
わずかな安寧を求めて暮らしている……はずだった。
彼のそばには、かつて命を懸けて彼を支えた、最強の少女たち。
それぞれの立場で戦い、支え、尽くしてきた――ただ、すべてはラルのために。
今では彼の屋敷に集い、仕え、そして溺愛している。
「ラルさまさえいれば、わたくしは他に何もいりませんわ!」
「ラル様…私だけを見ていてください。誰よりも、ずっとずっと……」
「ねぇラル君、その人の名前……まだ覚えてるの?」
「ラル、そんなに気にしなくていいよ!ミアがいるから大丈夫だよねっ!」
命がけの戦場より、ヒロインたちの“甘くて圧が強い愛情”のほうが数倍キケン!?
順番待ちの寝床争奪戦、過去の恋の追及、圧バトル修羅場――
ラルの平穏な日常は、最強で一途な彼女たちに包囲されて崩壊寸前。
これは――
【過去の傷を背負い静かに生きようとする男】と
【彼を神のように慕う最強少女たち】が織りなす、
“甘くて逃げ場のない生活”の物語。
――戦場よりも生き延びるのが難しいのは、愛されすぎる日常だった。
※表紙のキャラはエリスのイメージ画です。
友人(勇者)に恋人も幼馴染も取られたけど悔しくない。 だって俺は転生者だから。
石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていた魔法戦士のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもない状態だった。
だが、此の状態は彼にとっては『本当の幸せ』を掴む事に必要だった
何故なら、彼は『転生者』だから…
今度は違う切り口からのアプローチ。
追放の話しの一話は、前作とかなり似ていますが2話からは、かなり変わります。
こうご期待。
魔王を倒した手柄を横取りされたけど、俺を処刑するのは無理じゃないかな
七辻ゆゆ
ファンタジー
「では罪人よ。おまえはあくまで自分が勇者であり、魔王を倒したと言うのだな?」
「そうそう」
茶番にも飽きてきた。処刑できるというのなら、ぜひやってみてほしい。
無理だと思うけど。
神様、ちょっとチートがすぎませんか?
ななくさ ゆう
ファンタジー
【大きすぎるチートは呪いと紙一重だよっ!】
未熟な神さまの手違いで『常人の“200倍”』の力と魔力を持って産まれてしまった少年パド。
本当は『常人の“2倍”』くらいの力と魔力をもらって転生したはずなのにっ!!
おかげで、産まれたその日に家を壊しかけるわ、謎の『闇』が襲いかかってくるわ、教会に命を狙われるわ、王女様に勇者候補としてスカウトされるわ、もう大変!!
僕は『家族と楽しく平和に暮らせる普通の幸せ』を望んだだけなのに、どうしてこうなるの!?
◇◆◇◆◇◆◇◆◇
――前世で大人になれなかった少年は、新たな世界で幸せを求める。
しかし、『幸せになりたい』という夢をかなえるの難しさを、彼はまだ知らない。
自分自身の幸せを追い求める少年は、やがて世界に幸せをもたらす『勇者』となる――
◇◆◇◆◇◆◇◆◇
本文中&表紙のイラストはへるにゃー様よりご提供戴いたものです(掲載許可済)。
へるにゃー様のHP:http://syakewokuwaeta.bake-neko.net/
---------------
※カクヨムとなろうにも投稿しています
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!
魔王を倒した勇者を迫害した人間様方の末路はなかなか悲惨なようです。
カモミール
ファンタジー
勇者ロキは長い冒険の末魔王を討伐する。
だが、人間の王エスカダルはそんな英雄であるロキをなぜか認めず、
ロキに身の覚えのない罪をなすりつけて投獄してしまう。
国民たちもその罪を信じ勇者を迫害した。
そして、処刑場される間際、勇者は驚きの発言をするのだった。
間違い転生!!〜神様の加護をたくさん貰っても それでものんびり自由に生きたい〜
舞桜
ファンタジー
「初めまして!私の名前は 沙樹崎 咲子 35歳 自営業 独身です‼︎よろしくお願いします‼︎」
突然 神様の手違いにより死亡扱いになってしまったオタクアラサー女子、
手違いのお詫びにと色々な加護とチートスキルを貰って異世界に転生することに、
だが転生した先でまたもや神様の手違いが‼︎
神々から貰った加護とスキルで“転生チート無双“
瞳は希少なオッドアイで顔は超絶美人、でも性格は・・・
転生したオタクアラサー女子は意外と物知りで有能?
だが、死亡する原因には不可解な点が…
数々の事件が巻き起こる中、神様に貰った加護と前世での知識で乗り越えて、
神々と家族からの溺愛され前世での心の傷を癒していくハートフルなストーリー?
様々な思惑と神様達のやらかしで異世界ライフを楽しく過ごす主人公、
目指すは“のんびり自由な冒険者ライフ‼︎“
そんな主人公は無自覚に色々やらかすお茶目さん♪
*神様達は間違いをちょいちょいやらかします。これから咲子はどうなるのか?のんびりできるといいね!(希望的観測っw)
*投稿周期は基本的には不定期です、3日に1度を目安にやりたいと思いますので生暖かく見守って下さい
*この作品は“小説家になろう“にも掲載しています
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。