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第七章 忙しいが、呆気なく都市ルーセントに向かう事になりました。
第五十七幕 海底遺跡の宝石とベノワ・グレムリン
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グレムリン商会があるのはギルドから徒歩で、およそ5分の場所にある。
この都市で一番大きい商会だけあって、その建物はとても立派だった。
(帝都のギルド並みの大きさだな。リッチネス商会本部に比べれば小さいが)
内心そんな事を思いながら千夜たちはグレムリン商会に入る。
「いらっしゃいませ。当商会のご利用は初めてでしょうか?」
店に入るなり、制服姿の女性が近づいてきた。
「ああ。この都市に着たばかりでな。物を買うならここが良いと教えて貰ったんだ」
「それはそれは、当商会をご来店頂き有難う御座います。それでどのような商品をお求めでしょうか?」
「そうだな……」
(正直何も考えてなかったな……ん? あれは……)
顎に手を当てて考え込む千夜の視界に珍しい物が入り込む。
「この都市ではよく海底遺跡で取れたものが店に並ぶと聞いているが、この商会でも扱っているのか?」
「はい。それは勿論取り扱っておりますが」
「そうか。なら宝石類と武器を見せて貰えると有難い」
「はぁ、ですがお客様海底遺跡の品は大変気象でしてお値段もお高くなっております」
今の千夜たちの姿はどうみても少しお金持ちの冒険者にしか見えない。そんな冒険者風情が海底遺跡の品を手に入れる事など不可能に近い。そのため店員は不審な視線を千夜たちに向けてくる。
「金の心配は不要だ」
そう言って千夜は懐から金貨が大量に入った袋を取り出し、女性店員に中身を見せる。
「た、大変失礼しました! そ、それではこちらの個室で少々お待ちください!」
「ああ、解った」
(ミレーネたちを買った時の奴隷商人を思い出すな)
そんな事を考えながら千夜たちは案内された個室のソファーに座る。
数分して個室の扉が開かれると入ってきたのは、銀色の長髪の中年女性とメガネ姿の女性店員だった。
千夜はその女性店員を見て一瞬秘書かなにかと思ったが、ただ単に千夜たちにお茶を持ってきただけだった。
「お待たせして申し訳ありません。私は当商会で副店長を務めておりますベノワ・グレムリンと申します」
(グレムリン。という事はこの商会会頭の奥さんか妹あたりか)
「俺はセンだ。で、こっちが妻の――」
「エリーです」
「ミーネです」
「クーエじゃ」
「ルーザに御座います」
「息子のウィルです」
一人一人挨拶する姿にベノワは一瞬目を見開ける。
「まあ、随分と礼儀正しい冒険者ですね」
「貴族たちから依頼を受ける事もあるからな」
「なるほど。そうでしたか」
千夜はいつも通りに態度を変える事無く答える。
「それで、当商会で扱っている宝石や武器を見たいとの事でしたが?」
「その通りだ。見ての通り俺たちは冒険者だが、妻たちはこれでも女なんでな。何かプレゼントをと思ったんだ。だが、俺は宝石やアクセサリー類には疎くてな。正直よく解らないんだ。だから妻たち本人に選んで貰おうかと。その間に俺は武器でもあれば見てみたいと思ってな」
「なるほどそうでしたか。ではいくつかご用意致しますので少々お待ちください」
ベノワはそう言うとテーブルに置かれた鈴を鳴らす。
「御呼びでしょうか、副店長」
「海底遺跡の宝石と武器をいくつか持ってきて頂戴」
「畏まりました」
部屋の向こうで待機していたであろう先ほどのメガネ店員に指示を出すベノワ。
数分後、ドアがノックされ、入って来た3人の店員はそれぞれ、武器と宝石類を手に持っていた。
テーブルの上に置かれた宝石類と数本の剣と短剣。それを見てエリーゼたちは目を輝かせる。
「どうでしょうかお気に召した物は御座いますでしょうか?」
「手にとって見ても良いか?」
「ええ、構いませんとも」
了承を得た千夜は懐から白い手袋を取り出し着けると、剣を持つ。
(この人……)
その姿にベノワの視線が鋭くなる。
(流石は海底遺跡。今となってはそうそう手に入らない良い武器だ)
天才級や英雄級の武器に千夜は真剣な表情で剣を見入る。
「一つ聞きたいことがある」
「なんでしょうか?」
「この剣や宝石類は一つの海底遺跡からとれた物なのか?」
「はい、そうです」
「その遺跡の名前は?」
「ヴィアベルフロワです」
「ヴィアベルフロワ……」
「旦那様聞いたことがあるの?」
「いや、ない……」
真剣な面持ちでヴィアベルフロワという名前を呟く。その姿にエリーゼが怪訝そうに訊くが否定さた。
(ヴィアベルフロワ。初めて聞く名前だ。やはりこの世界と俺が知るゲームとは別物なのか?だが、遺跡から発見された武器の等級から考えても……)
答えの出ない思考の海に潜り続ける千夜。しかし直ぐに無意味と気付き浮上する。
「それで、エリーたちは欲しい宝石は決まったのか?」
「え、本当に買ってくれるの!」
「そのために来たつもりだったんだが」
「愛してるわ旦那様」
「ああ、俺も愛しているよ」
嬉しそうに抱きつくエリーゼ姿にやはりエリーゼも女なんだと改めて実感する。
そのあと、千夜はエリーゼたちへのプレゼントに海底遺跡の宝石を4つ購入した。勿論偽者でないか超解析スキルを使って確かめているため騙される事はない。
3600万J、つまり金貨360枚を支払った千夜。
「奥様が多いと大変ですね」
「確かに大変だが、これぐらいの事で喜んでくれるなら安いものだ」
「まあ、それはそれは。私どももお手伝いが出来て良かったですわ」
社交辞令を言い合うベノワと千夜を他所に嬉しそうに宝石を見つめるエリーゼたちであった。
この都市で一番大きい商会だけあって、その建物はとても立派だった。
(帝都のギルド並みの大きさだな。リッチネス商会本部に比べれば小さいが)
内心そんな事を思いながら千夜たちはグレムリン商会に入る。
「いらっしゃいませ。当商会のご利用は初めてでしょうか?」
店に入るなり、制服姿の女性が近づいてきた。
「ああ。この都市に着たばかりでな。物を買うならここが良いと教えて貰ったんだ」
「それはそれは、当商会をご来店頂き有難う御座います。それでどのような商品をお求めでしょうか?」
「そうだな……」
(正直何も考えてなかったな……ん? あれは……)
顎に手を当てて考え込む千夜の視界に珍しい物が入り込む。
「この都市ではよく海底遺跡で取れたものが店に並ぶと聞いているが、この商会でも扱っているのか?」
「はい。それは勿論取り扱っておりますが」
「そうか。なら宝石類と武器を見せて貰えると有難い」
「はぁ、ですがお客様海底遺跡の品は大変気象でしてお値段もお高くなっております」
今の千夜たちの姿はどうみても少しお金持ちの冒険者にしか見えない。そんな冒険者風情が海底遺跡の品を手に入れる事など不可能に近い。そのため店員は不審な視線を千夜たちに向けてくる。
「金の心配は不要だ」
そう言って千夜は懐から金貨が大量に入った袋を取り出し、女性店員に中身を見せる。
「た、大変失礼しました! そ、それではこちらの個室で少々お待ちください!」
「ああ、解った」
(ミレーネたちを買った時の奴隷商人を思い出すな)
そんな事を考えながら千夜たちは案内された個室のソファーに座る。
数分して個室の扉が開かれると入ってきたのは、銀色の長髪の中年女性とメガネ姿の女性店員だった。
千夜はその女性店員を見て一瞬秘書かなにかと思ったが、ただ単に千夜たちにお茶を持ってきただけだった。
「お待たせして申し訳ありません。私は当商会で副店長を務めておりますベノワ・グレムリンと申します」
(グレムリン。という事はこの商会会頭の奥さんか妹あたりか)
「俺はセンだ。で、こっちが妻の――」
「エリーです」
「ミーネです」
「クーエじゃ」
「ルーザに御座います」
「息子のウィルです」
一人一人挨拶する姿にベノワは一瞬目を見開ける。
「まあ、随分と礼儀正しい冒険者ですね」
「貴族たちから依頼を受ける事もあるからな」
「なるほど。そうでしたか」
千夜はいつも通りに態度を変える事無く答える。
「それで、当商会で扱っている宝石や武器を見たいとの事でしたが?」
「その通りだ。見ての通り俺たちは冒険者だが、妻たちはこれでも女なんでな。何かプレゼントをと思ったんだ。だが、俺は宝石やアクセサリー類には疎くてな。正直よく解らないんだ。だから妻たち本人に選んで貰おうかと。その間に俺は武器でもあれば見てみたいと思ってな」
「なるほどそうでしたか。ではいくつかご用意致しますので少々お待ちください」
ベノワはそう言うとテーブルに置かれた鈴を鳴らす。
「御呼びでしょうか、副店長」
「海底遺跡の宝石と武器をいくつか持ってきて頂戴」
「畏まりました」
部屋の向こうで待機していたであろう先ほどのメガネ店員に指示を出すベノワ。
数分後、ドアがノックされ、入って来た3人の店員はそれぞれ、武器と宝石類を手に持っていた。
テーブルの上に置かれた宝石類と数本の剣と短剣。それを見てエリーゼたちは目を輝かせる。
「どうでしょうかお気に召した物は御座いますでしょうか?」
「手にとって見ても良いか?」
「ええ、構いませんとも」
了承を得た千夜は懐から白い手袋を取り出し着けると、剣を持つ。
(この人……)
その姿にベノワの視線が鋭くなる。
(流石は海底遺跡。今となってはそうそう手に入らない良い武器だ)
天才級や英雄級の武器に千夜は真剣な表情で剣を見入る。
「一つ聞きたいことがある」
「なんでしょうか?」
「この剣や宝石類は一つの海底遺跡からとれた物なのか?」
「はい、そうです」
「その遺跡の名前は?」
「ヴィアベルフロワです」
「ヴィアベルフロワ……」
「旦那様聞いたことがあるの?」
「いや、ない……」
真剣な面持ちでヴィアベルフロワという名前を呟く。その姿にエリーゼが怪訝そうに訊くが否定さた。
(ヴィアベルフロワ。初めて聞く名前だ。やはりこの世界と俺が知るゲームとは別物なのか?だが、遺跡から発見された武器の等級から考えても……)
答えの出ない思考の海に潜り続ける千夜。しかし直ぐに無意味と気付き浮上する。
「それで、エリーたちは欲しい宝石は決まったのか?」
「え、本当に買ってくれるの!」
「そのために来たつもりだったんだが」
「愛してるわ旦那様」
「ああ、俺も愛しているよ」
嬉しそうに抱きつくエリーゼ姿にやはりエリーゼも女なんだと改めて実感する。
そのあと、千夜はエリーゼたちへのプレゼントに海底遺跡の宝石を4つ購入した。勿論偽者でないか超解析スキルを使って確かめているため騙される事はない。
3600万J、つまり金貨360枚を支払った千夜。
「奥様が多いと大変ですね」
「確かに大変だが、これぐらいの事で喜んでくれるなら安いものだ」
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