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第七章 忙しいが、呆気なく都市ルーセントに向かう事になりました。
第六十九幕 追加依頼と暗殺依頼
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海底遺跡を出て螺旋階段を上る千夜たちの足取りは下りる時も軽いものだった。戦闘があったわけではないが、それなりに動いている。なのに軽い軽い足取りなのは海底遺跡で見つけた財宝の効果がとても大きいのだろう。
地上に戻るなり点呼をして全員居るか確認を終えると解散した。
既に財宝を見つけた事が地上にいる連中にも耳にしたのか一目見ようと集まっていた。
そんな群集など気にすることなく千夜はエリーゼたちと一緒に部屋に戻ろうとしていた。
「よ、セン。財宝を見つけたそうだな」
「まあな」
「なんだよ。もう少し嬉しそうな顔でもしたらどうなんだ」
「いや、嬉しいとは思うが別に大した事じゃないからな」
「流石はAランク冒険者だな。俺たちと言う事が違うぜ」
「正直俺としては宝石よりお酒の方が良かったんだけどな」
「あはは!確かに財宝は飲めも食えもしないからな」
「センさん少し宜しいでしょうか?」
バレルと雑談していると、ベノワの秘書が話しかけてきた。
「どうした?」
「ベノワ様がお呼びに御座います」
「俺にか」
「はい」
(海賊に関しての事か)
なんとなく理解した千夜は、エリーゼたちに先に部屋に戻っていろと伝え秘書と一緒にベノワの許へ向かった。
人工島の中で最も豪華な建物に案内された千夜。と言っても二階建ての小さな家だ。そのうちの一部屋に通された千夜は眼鏡をかけて仕事をするベノワの前に立つ。
しかし、会話が始まる気配がない。
何かを計算するベノワとそんな彼女を待つ千夜。
十分ほどして計算が終わったのか眼鏡を外して千夜に視線を向けた。
「お呼びして申し訳ありません」
「別にそれは構わない。それで話ってなんだ」
「二つほどあります」
(二つもあるのか)
千夜の中では海賊以外で話すことがあるのかと思ってしまうほどだ。
「一つ目は海賊の事です。他に忍び込んでいる奴は分かりましたか?」
「ああ、二人はな。だがあと二人だけはどうしても分からない」
「そうですか。では早く見つけてください」
「なにか問題でもあるのか?」
「いえ、そうではありません。ただあれだけの財宝が見つかったのです。どれだけの海賊船が襲い掛かるか分かりません。ですから早く情報のやり取りを断っておきたいのです」
「なるほど分かった。今日の話し合いにでも探してみる」
「お願いします」
「それでもう一つはなんだ?」
「これはお願いではなく決定事項です。明日からも海底遺跡の探索に向かって貰います」
「一度探索に入った冒険者は次の日休みじゃなかったか?」
「その通りです。ですが今日の探索で危険度が増しました。正直Cランクの依頼ではありません。最低でもBランクです」
「確かにその通りだな」
「ですから死人が出ないようにしたいのです。勿論海賊の密偵は別です。探索中に殺して貰っても構いません」
「どちらかと言えば後者の方が一番の目的に感じるんだが?」
「否定はしません」
「そうか。だが良いのか?今回の事で間違いなく冒険者たちに情報が回った筈だ」
「見つけたらそのうちの一つをあげるって事ですか?」
「そうだ。それなら出来るだけ探索に参加したいと誰もが思うはずだ」
「確かに特別扱いはあまりよくわりませんが、誰もが貴方の実力を認めています。特に今回の探索で最後まで同行した冒険者たちはそうでしょう。ですから誰も文句は言わないと思いますよ」
「確かにそうだろうな」
文句は言わないだろう。だが、不満に感じることも間違いないと千夜は内心そう思った。
「ま、決定事項だから仕方がない。その事は今日の話し合いで言うのか?」
「ええ、そのつもりです」
「なるほど。で、一つ聞きたいんだが」
「なんでしょうか?」
「参加するのは俺だけか?」
「そのつもりです」
「出来ればもう一人だけ同行を許して貰いたいんだが」
「それはどうしてですか?」
「俺の仲間に暗殺が得意な奴がいる」
「なるほど、よく理解できました。ですがあれだけの美女の中に暗殺者が。なんて恐ろしい」
ベノワが呟いた言葉。それは美女の暗殺者がいることに対しててだけでなく、そんな暗殺者を虜にするほどの魅力と力を備えている千夜に対する畏怖が込められているとは千夜は思いもしないだろう。
「それじゃ、俺は部屋に戻る」
「分かりました。明日からもよろしくお願いしますね」
「依頼だからな」
話を終えた千夜はエリーゼたちが待つプレハブ小屋に戻るため外に出た。既にお酒を飲み始めている冒険者や武器の手入れや情報交換、博打など様々なことをしながら夜の話し合いまで時間を潰していた。
(エリーゼたちにも参加させるべきか?)
エリーゼたちを束縛しているつもりはない千夜だが、ガラの悪い冒険者たちと一緒にさせたくないと考えている。だから帝都でもエリーゼたちが会話をするのは同じ女冒険者ぐらいだ。だがこういう場所で情報を手に入れるには話すしかない。千夜が話せば問題ないが、こういう時の効率を考えるなら自由に行動させるべきかと思うのであった。
「お帰りなさい」
「ただいま」
考え込んでいるといつの間に到着していた千夜は考えるのをやめてベッドに腰を下ろす。
「それで話ってなんだったの?」
「明日からも海底遺跡の探索に参加するように言われただけだ」
「ま、当然でしょうね」
「驚かないのか?」
意外な返答に思わずエリーゼたちに視線を向ける。
「今日の出来事を考えたら仕方がないわよ」
「はい。冒険者の皆様の実力を考えたらセンさんが居なければ全滅しますからね」
「そうか」
エリーゼたちが成長していることに内心嬉しく思いつつ千夜はエルザが用意してくれたお茶を飲む。
「それでだ明日の探索なんだが俺とクロエだけ参加する」
その言葉に一瞬にして部屋の空気が重たくなる。ウィルにいたってはエリーゼたちが発するオーラを感じ取ったのかあたふたとしていた。
「理由を聞いても?」
輝きを失った瞳で問いかけるエリーゼに対して千夜はあたふたとすることなく口を開いた。
「理由を話す前に話す事がある」
「何かしら?」
「どうやら冒険者の中に海賊の密偵が紛れ込んでいるらしい」
「それは本当なの?」
「ああ。前に酔っ払って船から落ちた奴が居ただろ」
「ええ。もしかして」
「そうだ」
なんとなく理解したのかエリーゼたちの目に輝きが戻り真剣な面持ちに変わる。
「残り四人いると分かっている。でそいつらを」
「探索中に暗殺するのね」
「そうだ」
「だから暗殺が得意なクロエなわけね」
「その通りだ。だがまだ四人のうち二人しか判明していないが、今日の話し合いで見つけるつもりだ」
「分かったわ。その間私たちは何をしていたら良いかしら?」
「出来れば情報を集めて貰いたい。勿論如何わしい事をしてくるようなら死なない程度に懲らしめても構わない」
「分かったわ」
「ウィルはエルザたちと一緒に情報収集の勉強か剣の稽古だな」
「分かりました」
こうして明日の予定を話し合っているうちに時間は過ぎ話し合いの時間となった。
地上に戻るなり点呼をして全員居るか確認を終えると解散した。
既に財宝を見つけた事が地上にいる連中にも耳にしたのか一目見ようと集まっていた。
そんな群集など気にすることなく千夜はエリーゼたちと一緒に部屋に戻ろうとしていた。
「よ、セン。財宝を見つけたそうだな」
「まあな」
「なんだよ。もう少し嬉しそうな顔でもしたらどうなんだ」
「いや、嬉しいとは思うが別に大した事じゃないからな」
「流石はAランク冒険者だな。俺たちと言う事が違うぜ」
「正直俺としては宝石よりお酒の方が良かったんだけどな」
「あはは!確かに財宝は飲めも食えもしないからな」
「センさん少し宜しいでしょうか?」
バレルと雑談していると、ベノワの秘書が話しかけてきた。
「どうした?」
「ベノワ様がお呼びに御座います」
「俺にか」
「はい」
(海賊に関しての事か)
なんとなく理解した千夜は、エリーゼたちに先に部屋に戻っていろと伝え秘書と一緒にベノワの許へ向かった。
人工島の中で最も豪華な建物に案内された千夜。と言っても二階建ての小さな家だ。そのうちの一部屋に通された千夜は眼鏡をかけて仕事をするベノワの前に立つ。
しかし、会話が始まる気配がない。
何かを計算するベノワとそんな彼女を待つ千夜。
十分ほどして計算が終わったのか眼鏡を外して千夜に視線を向けた。
「お呼びして申し訳ありません」
「別にそれは構わない。それで話ってなんだ」
「二つほどあります」
(二つもあるのか)
千夜の中では海賊以外で話すことがあるのかと思ってしまうほどだ。
「一つ目は海賊の事です。他に忍び込んでいる奴は分かりましたか?」
「ああ、二人はな。だがあと二人だけはどうしても分からない」
「そうですか。では早く見つけてください」
「なにか問題でもあるのか?」
「いえ、そうではありません。ただあれだけの財宝が見つかったのです。どれだけの海賊船が襲い掛かるか分かりません。ですから早く情報のやり取りを断っておきたいのです」
「なるほど分かった。今日の話し合いにでも探してみる」
「お願いします」
「それでもう一つはなんだ?」
「これはお願いではなく決定事項です。明日からも海底遺跡の探索に向かって貰います」
「一度探索に入った冒険者は次の日休みじゃなかったか?」
「その通りです。ですが今日の探索で危険度が増しました。正直Cランクの依頼ではありません。最低でもBランクです」
「確かにその通りだな」
「ですから死人が出ないようにしたいのです。勿論海賊の密偵は別です。探索中に殺して貰っても構いません」
「どちらかと言えば後者の方が一番の目的に感じるんだが?」
「否定はしません」
「そうか。だが良いのか?今回の事で間違いなく冒険者たちに情報が回った筈だ」
「見つけたらそのうちの一つをあげるって事ですか?」
「そうだ。それなら出来るだけ探索に参加したいと誰もが思うはずだ」
「確かに特別扱いはあまりよくわりませんが、誰もが貴方の実力を認めています。特に今回の探索で最後まで同行した冒険者たちはそうでしょう。ですから誰も文句は言わないと思いますよ」
「確かにそうだろうな」
文句は言わないだろう。だが、不満に感じることも間違いないと千夜は内心そう思った。
「ま、決定事項だから仕方がない。その事は今日の話し合いで言うのか?」
「ええ、そのつもりです」
「なるほど。で、一つ聞きたいんだが」
「なんでしょうか?」
「参加するのは俺だけか?」
「そのつもりです」
「出来ればもう一人だけ同行を許して貰いたいんだが」
「それはどうしてですか?」
「俺の仲間に暗殺が得意な奴がいる」
「なるほど、よく理解できました。ですがあれだけの美女の中に暗殺者が。なんて恐ろしい」
ベノワが呟いた言葉。それは美女の暗殺者がいることに対しててだけでなく、そんな暗殺者を虜にするほどの魅力と力を備えている千夜に対する畏怖が込められているとは千夜は思いもしないだろう。
「それじゃ、俺は部屋に戻る」
「分かりました。明日からもよろしくお願いしますね」
「依頼だからな」
話を終えた千夜はエリーゼたちが待つプレハブ小屋に戻るため外に出た。既にお酒を飲み始めている冒険者や武器の手入れや情報交換、博打など様々なことをしながら夜の話し合いまで時間を潰していた。
(エリーゼたちにも参加させるべきか?)
エリーゼたちを束縛しているつもりはない千夜だが、ガラの悪い冒険者たちと一緒にさせたくないと考えている。だから帝都でもエリーゼたちが会話をするのは同じ女冒険者ぐらいだ。だがこういう場所で情報を手に入れるには話すしかない。千夜が話せば問題ないが、こういう時の効率を考えるなら自由に行動させるべきかと思うのであった。
「お帰りなさい」
「ただいま」
考え込んでいるといつの間に到着していた千夜は考えるのをやめてベッドに腰を下ろす。
「それで話ってなんだったの?」
「明日からも海底遺跡の探索に参加するように言われただけだ」
「ま、当然でしょうね」
「驚かないのか?」
意外な返答に思わずエリーゼたちに視線を向ける。
「今日の出来事を考えたら仕方がないわよ」
「はい。冒険者の皆様の実力を考えたらセンさんが居なければ全滅しますからね」
「そうか」
エリーゼたちが成長していることに内心嬉しく思いつつ千夜はエルザが用意してくれたお茶を飲む。
「それでだ明日の探索なんだが俺とクロエだけ参加する」
その言葉に一瞬にして部屋の空気が重たくなる。ウィルにいたってはエリーゼたちが発するオーラを感じ取ったのかあたふたとしていた。
「理由を聞いても?」
輝きを失った瞳で問いかけるエリーゼに対して千夜はあたふたとすることなく口を開いた。
「理由を話す前に話す事がある」
「何かしら?」
「どうやら冒険者の中に海賊の密偵が紛れ込んでいるらしい」
「それは本当なの?」
「ああ。前に酔っ払って船から落ちた奴が居ただろ」
「ええ。もしかして」
「そうだ」
なんとなく理解したのかエリーゼたちの目に輝きが戻り真剣な面持ちに変わる。
「残り四人いると分かっている。でそいつらを」
「探索中に暗殺するのね」
「そうだ」
「だから暗殺が得意なクロエなわけね」
「その通りだ。だがまだ四人のうち二人しか判明していないが、今日の話し合いで見つけるつもりだ」
「分かったわ。その間私たちは何をしていたら良いかしら?」
「出来れば情報を集めて貰いたい。勿論如何わしい事をしてくるようなら死なない程度に懲らしめても構わない」
「分かったわ」
「ウィルはエルザたちと一緒に情報収集の勉強か剣の稽古だな」
「分かりました」
こうして明日の予定を話し合っているうちに時間は過ぎ話し合いの時間となった。
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