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本編
10 「辛いときは眠るのが一番の薬だ」って、伯父さんが言ってたなぁ……
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――セブナスの話は、楽しいままでは終わらなかった。
クビが自主退団にすり変えられていたことなんて、まだ序の口だったんだよ。
「それにさー、お前が辞めてから少しして、中途で入団してきたヤツが貴族のおバカでさ、残念が倍増中なんだよ。婚約者にいいとこ見せたいから、訓練試合で負けろとか言うし。――面白いこと言うねーって、爆笑しながら速攻で潰したけど」
「ぶっは! なんだそれ! どういう脳みそしてんだ」
「でしょー! なんかコネ入団らしいよ」
……ん? コネだって?
「お前の枠が空いて定員割れしたっていっても、あんなのを中途入団なんてね。箔付け? とかいうやつだって噂もあるし。バカモヤシに箔付けたって、秒で剥がれるでしょ。ウケる!」
…………は?
「団長の推薦とからしいけどさぁ、なーんか怪しいよね。実技免除でもしなくちゃ、あんなの入れないよ普通」
絶対それ、俺をクビにした理由だろ! クソ団長があああ!
「……そっか、そんなのが入ったのかぁ。大変だなぁ! ははは」
怒りと動揺で、声が震えなかったのが不思議だった。笑っている自分の声が、他人みたいに感じた。腹の中が煮えるようなのに、外側だけが冷えて、何でもないように楽しそうな声が口から勝手に出ていくなんていう経験を初めてした……。
「大変っていうか、うざい。あれはうざすぎ。演習のどさくさで埋めたい」
「埋めてしまえばいいと思う!」
「うん。こっそり埋めるー! 決定だね」
ギャ―ギャー騒ぎながらチキンフライを貪り食って、ぐしゃぐしゃになった気持ちを紛らわせる。ここら辺から、フライの味が分かんなくなってた。セブナスがさらっと明るいタイプなのが救いだった。これであれこれ聞かれて心配されでもしたら、その場で泣いて全部自白してたな。
「じゃ、またねー。困ったことがあったら言ってね。相談のるよー」
「おう、そんときはよろしくな。また!」
チキン&ポテトフライを食い尽くしたところで店を出て、セブナスと別れた。
それからお屋敷の近所まで帰って来たときに、限界は急にやってきた。クビにされたときも相当に堪えたけど、セブナスから聞いた新事実は、あんまりにもあんまりだったから。
「ふっ、ううっ。……ぐっ……、うぅ……!」
ブワッと涙が出て、その場でちょっと泣いた。叫びたかったけど歯を食いしばって、腕で顔を隠して……、ほんのちょっとだけ。
箔付け? なんだよそれ! ふざけんなよ!
なんで、こんな酷いことされるんだよ。おかしいだろ……。
すごく頑張って、なんとか騎士団の試験に受かって入団したのに。なんでそんなバカのために、クビにされなきゃいけないんだよ。
セブナスとか、先輩達に相談したいけど、巻き込んじゃうのは嫌だな。
伯父さんみたいな騎士になりたかったなぁ……。
あ、そうだ! 伯父さんなら、力になってくれるかもしれないぞ! って、隠居してのんびり暮らしてる人に、無茶言いたくないなぁ……。
はぁ、もうやだよ。
後から後から、たくさん色んな考えが浮かんでくるけど、上手くまとまらない。ゴミみたいにめちゃくちゃに頭の中に詰まっていく気がした。
へこんでないで何とかしなくちゃ駄目だろうが! しっかりしろよ俺! って思うのに、何をどう考えてもいいアイディアとは思えなくて、自分で自分に駄目出ししまくった。
こんなの間違ってるって、分かってるのに。はは、情けないな。俺、こんなに弱くて無力だったんだ。もう何がなんだかよく分からない。吐き気がして、気持ちが悪い。
夕飯の支度までにはまだ時間があるから、横になろう。カムロさんに夕飯は一緒に食べましょうって約束してるんだから、少しでも回復しないと。こんな状態じゃ、飯なんて作れない。
あの人に、心配掛けたくない。
早くお屋敷に帰りたい。こうやって弱ったときに、居心地のいい帰れる場所があるのは幸せだな。カムロさんのとこで働かせてもらって、凄く救われてたんだって、今改めて気付いた。
酒場で飲んだくれてたときに、あの人に拾ってもらえずに独りで路頭に迷ってたら、俺は潰れてたかもしれない。ブチ飛んだことしてくるカムロさんにビビることもあるけど、なんだかんだで楽しいもんな。
よぼよぼしながらこっそりと寝室へ入って服を脱ぎ散らかして、パンイチでベッドに飛び込んだ。……ふわあぁ、やっぱ高級ベッドはすごいなぁ。最悪な気分でも、ふかふかで癒やしてくれる……。
ちょっとだけ、眠っとこう。
――「辛いときは眠るのが一番の薬だ」って、伯父さんが言ってたなぁ……。
クビが自主退団にすり変えられていたことなんて、まだ序の口だったんだよ。
「それにさー、お前が辞めてから少しして、中途で入団してきたヤツが貴族のおバカでさ、残念が倍増中なんだよ。婚約者にいいとこ見せたいから、訓練試合で負けろとか言うし。――面白いこと言うねーって、爆笑しながら速攻で潰したけど」
「ぶっは! なんだそれ! どういう脳みそしてんだ」
「でしょー! なんかコネ入団らしいよ」
……ん? コネだって?
「お前の枠が空いて定員割れしたっていっても、あんなのを中途入団なんてね。箔付け? とかいうやつだって噂もあるし。バカモヤシに箔付けたって、秒で剥がれるでしょ。ウケる!」
…………は?
「団長の推薦とからしいけどさぁ、なーんか怪しいよね。実技免除でもしなくちゃ、あんなの入れないよ普通」
絶対それ、俺をクビにした理由だろ! クソ団長があああ!
「……そっか、そんなのが入ったのかぁ。大変だなぁ! ははは」
怒りと動揺で、声が震えなかったのが不思議だった。笑っている自分の声が、他人みたいに感じた。腹の中が煮えるようなのに、外側だけが冷えて、何でもないように楽しそうな声が口から勝手に出ていくなんていう経験を初めてした……。
「大変っていうか、うざい。あれはうざすぎ。演習のどさくさで埋めたい」
「埋めてしまえばいいと思う!」
「うん。こっそり埋めるー! 決定だね」
ギャ―ギャー騒ぎながらチキンフライを貪り食って、ぐしゃぐしゃになった気持ちを紛らわせる。ここら辺から、フライの味が分かんなくなってた。セブナスがさらっと明るいタイプなのが救いだった。これであれこれ聞かれて心配されでもしたら、その場で泣いて全部自白してたな。
「じゃ、またねー。困ったことがあったら言ってね。相談のるよー」
「おう、そんときはよろしくな。また!」
チキン&ポテトフライを食い尽くしたところで店を出て、セブナスと別れた。
それからお屋敷の近所まで帰って来たときに、限界は急にやってきた。クビにされたときも相当に堪えたけど、セブナスから聞いた新事実は、あんまりにもあんまりだったから。
「ふっ、ううっ。……ぐっ……、うぅ……!」
ブワッと涙が出て、その場でちょっと泣いた。叫びたかったけど歯を食いしばって、腕で顔を隠して……、ほんのちょっとだけ。
箔付け? なんだよそれ! ふざけんなよ!
なんで、こんな酷いことされるんだよ。おかしいだろ……。
すごく頑張って、なんとか騎士団の試験に受かって入団したのに。なんでそんなバカのために、クビにされなきゃいけないんだよ。
セブナスとか、先輩達に相談したいけど、巻き込んじゃうのは嫌だな。
伯父さんみたいな騎士になりたかったなぁ……。
あ、そうだ! 伯父さんなら、力になってくれるかもしれないぞ! って、隠居してのんびり暮らしてる人に、無茶言いたくないなぁ……。
はぁ、もうやだよ。
後から後から、たくさん色んな考えが浮かんでくるけど、上手くまとまらない。ゴミみたいにめちゃくちゃに頭の中に詰まっていく気がした。
へこんでないで何とかしなくちゃ駄目だろうが! しっかりしろよ俺! って思うのに、何をどう考えてもいいアイディアとは思えなくて、自分で自分に駄目出ししまくった。
こんなの間違ってるって、分かってるのに。はは、情けないな。俺、こんなに弱くて無力だったんだ。もう何がなんだかよく分からない。吐き気がして、気持ちが悪い。
夕飯の支度までにはまだ時間があるから、横になろう。カムロさんに夕飯は一緒に食べましょうって約束してるんだから、少しでも回復しないと。こんな状態じゃ、飯なんて作れない。
あの人に、心配掛けたくない。
早くお屋敷に帰りたい。こうやって弱ったときに、居心地のいい帰れる場所があるのは幸せだな。カムロさんのとこで働かせてもらって、凄く救われてたんだって、今改めて気付いた。
酒場で飲んだくれてたときに、あの人に拾ってもらえずに独りで路頭に迷ってたら、俺は潰れてたかもしれない。ブチ飛んだことしてくるカムロさんにビビることもあるけど、なんだかんだで楽しいもんな。
よぼよぼしながらこっそりと寝室へ入って服を脱ぎ散らかして、パンイチでベッドに飛び込んだ。……ふわあぁ、やっぱ高級ベッドはすごいなぁ。最悪な気分でも、ふかふかで癒やしてくれる……。
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――「辛いときは眠るのが一番の薬だ」って、伯父さんが言ってたなぁ……。
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