【完結】騎士団をクビになった俺、美形魔術師に雇われました。運が良いのか? 悪いのか?

ゆらり

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本編

11 狙ってやったのか? だとしたら相当だぞ! やっぱりこわぁ!

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 ……ん、なんか、頭を撫でられてる。優しいなぁ。母さん? 違うよな?

「ん、んんっ……?」

 うっすら目を開けると、まだ明るい。ちゃんと起きられたみたいだなぁ……って! 頭撫でてたのは、カムロさんだった! 

 こっそり帰って来たのにバレてたのか! にしてもここ、寝室だぞ。なぜに超美形魔術師様が、俺が寝てるベッドの端に座っていらっしゃるんでしょうかね?

「夜這いに来ました。昼間ですけど」
「ひえぁっ!」

 変な声出た! 何てことを言いやがりますかこの魔術師様は!

「ふふ、冗談です」

 ぬあああ! からかわれた! ちくしょう! 

「はぁ。まったくもう。……いや、すみませんね。寝ちゃってました」
「お休みですから構いませんけれど」
「あー、まあそうですけどね。ははは」
「帰って来た気配はしたのに、妙に静かだったので様子を見に来たんですよ。無断で寝室に入ってしまってすみませんでした。どうしても、気になってしまって」

 さすがと言うべきなのかな。魔術師は気配に敏感なのかもしれない。朝飯が出来たタイミングで必ず起きてくるし。そういうスキルは高そうだよなカムロさんは。

「酷く疲れた顔をして眠っていたので、心配しましたよ。具合が悪かったんですか?」
「……あー。いや、大丈夫、です。眠ったら落ち着きました」
「本当に、大丈夫なんですか? ハス君のそんな疲れた顔、ここに来てくれてから初めて見ました」

 そんなにかぁ……。

 眠ったことで、めちゃくちゃだった気分は確かに落ち着きはしたんだよ。それでもまだ、胸が痛いっていうか、むかむかする。でも、そんなことはカムロさんには関係ないことだし、不調の原因になった話は言わないでおこう。

「いやいや、心配する程のことじゃ、ないです。晩飯食ったら元に戻りますって」
「そうですか……。それならいいですけど」

 やんわり俺の頭を撫でてくるカムロさんはなんていうか、慈愛っていうのかな……、包み込んで癒してくれそうな優しい表情をしていた。撫でる手もすごく優しい。たまにブチ飛んだことして俺をビビらせる超魔術師様から、こんな母性……いや違うな、父性っぽさを感じる日が来るとは!

「そろそろ晩飯作ります。ご要望はありますか」
「今日は特には……。でも、貴方が作る料理なら何でも美味しいですから」

 おっと。過分なお言葉、まことにありがとうございます。

「あはは。ありがとうございます」

 真っ向から言われると嬉しいけど、照れるなぁ。まずい飯を作る気はないけど、人には好みがある。万人受けは難しいから万が一、口に合わないなら言って欲しいですカムロさん。

 にしても、ずっとなでなでされてる。頭だけじゃなくて、ほっぺたも撫でられた。スキンシップがちょっと多くないですか。俺が元気なさそうだからって、癒し効果でも狙ってるのかなぁ……。

「……髪、短くなりましたね。額が出ていると腕白な子供みたいです」

 ぐっ! 大人っぽくない自覚はあるんです言わないで欲しい。17で成人したらそれなりに大人になれるって思ったけど、3年経っても大して変わってない気がする。渋さとか、落ち着きとか、ないよな。俺。

「乾かしやすいし、持ちが良いんですよ。デコ撫でないで下さい」

 さすがに時間もないから、このまま喋ってはいられない。ゆっくりと体を起こすと、シーツがずれて自慢の割れた腹筋がお目見えしてしまった。あっ! そういやパンイチだった! 男同士だからいいのか? いやでも、雇い主の前でほぼ裸ってのも失礼だな。

「あの、カムロさん、俺は今から着替えるんで、そろそろ退室した方がよいかと思われますが」
「別に構いませんけれど」

 俺は構う! さすがにパンイチショーはどうかと思うぞ!

 起き上がったせいで距離が近い。麗しのご尊顔が目と鼻の先だ。するっと、カムロさんの指が俺の顎下を撫でた。手付きがエロいって思ったのは俺の心が汚れているから……じゃない気がする! ぞわっと悪寒じゃない何か別のものが背筋を爆走して、俺の後頭部に蹴りを入れた。

 いや、ウソじゃないぞ! ほんとにそうだった! ガツンと蹴られた!

 紫の瞳がとろりと細められて、ちょっとだけ厚めで艶感のある唇の両端が、ゆったりと上がって弧を描く。深みのある金色をしている真っすぐで光沢のある髪が、少し頬に掛かっているのが色っぽい……。
 
 ぎゃあああ! 

 カムロさん色気が俺を殺しに掛かる勢いなんですが! さっきまでの父性パパっぷりはどこへ! 

 ぎゅっと目を閉じて、視界からカムロさんを追い出した。そうでないと、殺されるっていうか食われそうだって気がした。食われるってそっちの意味なのかあっちの意味なのかとか、そいうレベルじゃないなんだこれ! とにかくなんかやばい! こわあああ!

「ごめんなさいすみませんなんかもう限界ですとにかく出て行ってください俺今パンイチなんですよちょっと礼儀に反しますお願いしますなんでそんなに色気爆発させてんですかドン引きするくらい怖いんで止めてください殺す気ですか今すぐ死にそうです」

 息継ぎしないでよく言えたな。

 って! よく言えたなじゃないぞ俺ぇ! 心の声が外に出てるダダ漏れだうわあぁ! 

「わかりましたよ。書斎にでも行っています」

 うえええ! 声が甘い。いい声すぎる! 目を閉じてるのに耳からおかしくされそうだから止めてくれ! ビビって縮み上がった俺。くすくすと笑うカムロさん。なんだこの空間。もう混沌カオスだな!
 
「それじゃ、退散しますね。お邪魔しました」

 デコにやんわりと触れる感触がして、カムロさんの濃すぎる気配がベッドから離れていく。それから扉が開閉される音がして……、やっと寝室が静かになった。

 目を開けると、貴族のお屋敷らしい広々とした寝室に、窓からの西陽が射し込んでいるばかりだった。見慣れたけど、やっぱり豪華だなぁこの部屋。

 カムロさんの綺麗すぎて色気爆発の顔が、目に焼き付いて離れない。まだここに居るみたいに気配が残ってるっていうか……、強烈だったな。マジでビビった。あんな色気を出すのは、俺には無理だろうな! 勝てねぇよ!

「はぁああああ」

 思いっきり息を吐き出しながら、脱力した。膝の上に置いた手にある銀色の指輪が、きらきら光って眩しいなぁ。なんか、カムロさんみたいな指輪だな。眩しい仲間だ。うん。

 なんてバカなことを考えながら、少しぼーっとした。

 それから、のろのろとベッドを下りて脱ぎ散らかした服を拾って洗濯物籠に放り込んでから、新しい服に着替えた俺は、キュッとエプロンを締めて調理場に向かった。

 仕事の時間だぞー!

 ……にしても、なんかムカムカしてたのが、カムロさんの色気爆発の威力で吹き飛ばされてすっきりした。えっこれ、もしかして元気出させようとして、ショック療法みたいなのをしてくれたのかな。




 ……狙ってやったのか? だとしたら相当だぞ! やっぱりこわぁ!
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