【完結】騎士団をクビになった俺、美形魔術師に雇われました。運が良いのか? 悪いのか?

ゆらり

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番外編 騎士団に復帰後のアレコレ

とんでもない初日になったなぁ。でも、俺も話せてよかったですよ!

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 ※後味が悪い話の可能性があります。その場で聞いているハスも、若干困惑する展開。




























「――私はね、幼子の頃から子供らしくなくて、違う世界を見ていたカムロに構って欲しくて、悪戯ばかりしていたんだよ。嫌われると分かっていても、泣いたり怒ったり、怖がったりするカムロは……とても可愛かった。そうして、私に強い感情を向けてくれるのが、何より嬉しかったんだよ」

 出だしから危ない発言が!

 えっと、カムロさんが家を出たのが10歳だから、少なくとも10代の子供だったキアムルさんがそういう風に考えてたってことだよな? さすがにそんな感じの人が俺の兄ちゃんだったら、ガチ泣きする!

「カムロとは5歳年が離れているし、本来なら兄として守るべき存在だ。……してはいけない事だという自覚はあった。だが、私はカムロを追い詰めた。……憎いと思ってしたことは一度だってない。誰からも否定されるだろうけれど、私は弟を愛しているんだ」

 憎んでいたんじゃないってことは、話しているキアムルさんの表情でよく分かる。可愛くて仕方ないっていう顔だ。……父さんや、母さん、それにクラさんが、俺に向けてくれる顔と同じだったから。

「3回転半捻りくらいしてる愛情だったんですね」

 否定はしないけれど、同意はしないっ! 俺としてはカムロさんの苦労を思うと頷けなくて、捻ねくれたコメントになった。

「ははは。愉快な評価をありがとう」

 ……にしてもだ、ブラコンこじらせるにも程が!  

 好きな子ほどイジメたいとか、そういうノリとちょっと違う気もするしな。

「両親もそうだ。豊かな暮らしをするために仕事に熱中していた……。商売で利益が上がれば、それだけ私やカムロにいい思いをさせてあげられるってね。……私達を放置していることに気付かないくらいに、そう妄信していたんだ」

 カムロさんの言っていたことは、事実だった。

 でもなんでだろう……怒りを覚えるよりも、切ない気分になっちゃったぞ。うん、まあ、なんというか、カムロさんが家を飛び出したのは仕方がなかったんだろうって納得もしたし、俺自身に起きたことじゃないから、どうしたらよかったかなんて分からないし、これからだってどうしていいか………分からない。

 ……いつかは和解して……なんて、そんな軽い言葉なんて言えない。そういう事を俺が言うのは、カムロさんにとって重荷になるかも知れないし。実際、ご両親に挨拶したいとか言ったら、凄く不機嫌になってたしな! デリケートな問題だ。

「今でも、父と母は、彼らなりの幸せの中で生きているよ。それとなく指摘した事はあるけれど、自分達の何がカムロを苦しませたかなんて、まるで理解することができないんだよ。決して、悪い人達ではないのだけれどね」

 うわぁ。途方に暮れちゃいそうな話になったな。

 家族だからとか、親だから、兄弟だからって……、仲良く暮らしていけるとは限らない。それが悲しく思えて、ちょっと泣きそうになった。

「カムロが家を飛び出して、絶縁までして距離を取ってくれた事で私はやっと自制ができた。……それから……それなりに年を取って、私なりの分別を身に着けたよ。今回の誘拐は、ちょっとタガが外れてしまったけれどもね」

 ……ニコッと笑って言った最後の一言で、ひゅっと涙が引っ込みましたよお兄様。ダメだこの人! 根本的になんかの部品が頭から抜け落ちてる人なんだよ! 

「あまり驚かないようだけれど、カムロから聞いていたのかな」
「ええっと、……結婚する前に、ご両親に挨拶したいって言ったことがあったんですよ。でも、カムロさんはしなくていいって言うばっかりでそれっきりなってしまって。……家族と上手くいってなかった話は、そのときに少し聞いてましたから」
 
 そっちよりも、誘拐されてキアムルさんと会うことになった方がよっぽど驚いたわっ! 

「嫌な話を聞かせてしまって、済まなかった」
「そんなことないです。話して下さって、ありがとうございます」

 俺が真顔でお礼を言うと、キアムルさんは……泣いているような、笑っているような……奇妙な表情をしてじっと俺を見詰めた後、「どういたしまして」と、返してくれた。

「まあ、自己満足だからお礼なんて言われてしまうと、申し訳ない気がするけれど。私からもお礼を言うよ。ありがとうハス君。こんなろくでもない男の話を、無暗に怒らずに聞いてくれて」
「……正直ちょっとしょっ引こうかって思うくらいには怒ってましたけど、なんかもうキアムルさんの性格が濃すぎて色々吹っ飛びましたよ……」
「ぷっ! くく、言うね君。正直殴られるくらいは覚悟していたけれど、君が柔軟な性格でよかった」

 ……マジ殴ってふん縛った方がよかったかな?

 ある意味そっちの行動の方が、誘拐犯相手としては妥当だろうな! なんかもう、そういう気になれないけど。それに、この人は、ちゃんとカムロさんのお兄さんなんだ。かなりアレな人だけどな。

 もうこれさぁ、誘拐って言う名のサプライズってことでよくないか? この人捕まえてもきっと超めんどくさいぞ! 絶対! ――って、心の中で悪魔が妙に疲れ切った声で囁いてるのが聞こえた気がした。ちなみに天使の方はアレコレ衝撃的過ぎて、とっくに息をしていないっぽい!
 
「あの……、俺、そろそろ帰らせてもらえます?」

 お兄様のキャラが濃過ぎだし、話の内容も重たかったからマジで疲れたんでございますよ。あと、ディナーに間に合うならカムロさんと一緒にバターソテー食べたい! イチャイチャ新婚旅行中なんだからな! 早く旦那様のとこに帰りたいっ!

「ああ、もうじきカムロが迎えに来る。きっとね」
「はぁ。まあ、カムロさんですからね」

 さすがに何かしら仕掛けていると思う。俺の居場所ぐらい簡単に突き止めるんじゃないかな。魔術刻印びっしりの外れない指輪に、何か付与されてそうだよなぁ……。ブチ飛んでるカムロさんなら、何でもかんでもやりかねない!

「カムロを本当に信頼しているんだね。ふふ。ますます気に入ったよ」

 ニコニコ上機嫌なお兄様。気に入られて喜んでいいのか悪いのか微妙でございますよ! こういうタイプの人に気に入られると、なんかとんでもない悪戯とかされそうで怖いっ!

「――ハス君! 迎えに来ましたよ!」

 バアン! ってドアがブチ開けられて、マイ旦那様が飛び込んできたあああ!

「うおっ! カ、カムロさんっ!」 

 駆け寄って来たカムロさんが、俺を椅子から引っ張り上げてぎゅっぎゅしてきて「大丈夫ですか。何かされませんでしたか?」なんて聞いてくるけど、苦しっ! うぐぁ! 締め上げる勢いでハグしないで下さい!

「く、苦しいっ! だ、大丈夫ですからっ……!」って、ぺしぺし背中を叩くと「あ、すみません」って言ってパッと放してくれた。ふぅ、締め落とされるかと思った! 1日に2回も気絶なんてシャレにならないですよ!

「私のハス君を誘拐するなんて! どこまで陰湿なんですかっ!」
「お前がつれないからだよ」
「どの口が言いますか! 社会的に抹殺しますよ!」
「はは。怖いね。……お前の伴侶と話をしてみたかったんだ。とてもいい子だね。お前をよろしく頼むよと言ったら、一生大切にするって言ってくれたよ」
「誘拐する必要がありますか!」
「正攻法でそう連絡を入れても、お前が受け付けるとは思えなくてね」
「当然でしょう! 信用できません!」

 カムロさんに超怖い顔で睨まれて、めちゃくちゃ怒鳴られてるのに、キアムルさんは幸せそうに笑っている。

 あああ、カムロさんダメですよ! お兄様はちょっとネジと歯車が飛んでいらっしゃるから、そんな勢いで何言っても余計に喜んじゃうんですよ! 

 ……っていうか今、キアムルさんがいいコト言ってたのに、スルーしてるし! 

「さ、帰りましょう。こんな性根の腐れた人間と同じ空気を吸っていると、穢れてしまいますよ」
「こき下ろし方がキレキレですよカムロさんっ! あ、えっと、じゃ、帰りますんで。お兄さん、お父さんとお母さんにも伝えてください。俺、カムロさんを幸せにしますって」
「ハス君! こんな悪人と口をきいてはいけませんっ!」
「むがっ!」

 がしっと口を押さえられてジタバタしている俺を見て、キアムルさんは「ぶっは!」と盛大に吹き出した。お兄様、笑いの沸点が低いんでしょうかね。よく笑うなぁ。ロタとはまた違うテンションだけど。

「ははは。ああ、わかった。伝えておくよ。きっと両親も喜んでくれる。いやぁ、誘拐してよかったよ」
「ふざけないで下さい! この犯罪者!」

 ぬああああ! このお兄様はっ! 燃料投下せんでくださいよバカあああああ!
 
「むぐ……っ! あ、あの、カムロさん、早くバターソテー食べたいです。ディナーには間に合いますよね。俺もう、すんごく腹ペコなんですよ!」

 何とかカムロさんの手を口から引っぺがして、キュッと両手で握って必死に訴える。これ以上もめるとなんかヤバそうだし! キアムルさんから引き離さないとだ!

「あ、はい。まだ十分間に合いますよ」
「よかったぁ! 急いで帰らないと! カムロさんもお腹空いてますよね」
「はい。空いてます」

 よ、よーし、いつものニコニコしたカムロさんに戻ったぞ。俺はそのまま、よそ見しないでカムロさんを引っ張って、いそいそと部屋を出る。

「気を付けて帰るんだよ。君と話せてよかった。2人で幸せにね」

 っていう、お兄様のほんっとーに楽しそうで嬉しそうな声が、背後から聞こえた。遊びに来てたみたいな感覚で見送られてるけど……、俺、誘拐されてたんだよな? ちょっとどうかと思う!





 ――とんでもない初日になったなぁ。でも、俺も話せてよかったですよ!






※……キアムル氏、薄めきれない濃さでした。作者的にも困惑させられる人物。ヤバさ加減で言えばカムロ氏もある意味相当ですが、ハスにとっては可愛い旦那様。
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