【完結】騎士団をクビになった俺、美形魔術師に雇われました。運が良いのか? 悪いのか?

ゆらり

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番外編 騎士団に復帰後のアレコレ

ああもう! 大好き! 今夜は俺、マジで頑張っちゃいますよ! 

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※番外第二話の、カムロ氏子供時代の苛めなどの部分を少し修正しました。キアムル氏がここまで話に食い込むとは、予想外でした。恐るべし。












 ――誘拐は、誘拐という名のサプライズだった。

 サプライズだから犯罪じゃないぞ! 変な貴族とか、悪意のある魔術師とかに誘拐されなかっただけ幸運だったんだ!

 ……って思うことにした。

 帰ろうとして外に出ると、誘拐の実行犯……もといサプライズ仕掛け人な体格のいい男2人組……が、すんごく低姿勢な態度で「宿までお送り致します」って言ってきて、ちょっと引いた。

 「あの男の部下ですよ」

 という魔術師様のご説明が。危ない仕事を請け負うアングラ業者とかじゃないんだ……。いやでも、誘拐の手際が鮮やか過ぎやしませんかね? ふ、深く考えないようにしとこう!  
  
 ビシッとした礼服姿で隙のない2人組に、大渓谷に掛かる橋のところに停められていた馬車へ案内された。さすがにもう、何も起こらないよな? 

 ここで拒否したら歩いて帰らないといけないけど、歩く気力なんてあんまりないぞ! 内心でちょっとビクビクだったけど、カムロさんがツーンとした顔で黙って馬車に乗り込んだから、俺もそれに続いた。

「はぁ。なんかすごい人でした……」
「すごいで片付けられるような人間ではありません」

 キアムルさんは悪気がちっともないような顔してたけど、……なんていうか、何をしでかすか分からない人だよな。笑いながら超大事件を起こしそうというか……。また会いたいかって聞かれると、もにゃりますよお兄様っ! 

 馬車が走り出したら、またプンスカとカムロさんが怒り始めた。

「誘拐するくらいなら、直接会いに来ればいいんですよ」
「そうですね。さすがに誘拐はないと思います」

 でも多分っていうか絶対に、目の前にキアムルさんが現れた途端にカムロさんがキレキレになって、俺と話すどころじゃなかったですよね。

「幸せにね……なんて、あの男になんて言われなくても、とっくに幸せですよね」
「うん。幸せですね。キアムルさん、きっと安心したと思う」
「悪人に安心されても嬉しくもなんともないですから……!」
「ま、まあ、そんなこと言わずに。俺としては、お兄さんだけでも挨拶できてよかったです」
「ハス君は人が良すぎます。誘拐されたんですから、訴えてもいいくらいですっ!」

 なんか罪を追及したらしたで、奇人で構ってちゃんなキアムルさんは大喜びしそうだよな。

 はっきり言ってめんどくさいと思ったんで、正直に「めんどくさそうなんで、止めといた方がいいんじゃないですかね……」って言ったら。カムロさんが「……否定はしません」なんて言って、すごくマズい物を食べた顔になった。

「……まったく、あの男のする事は……、いつも理解できません」

 小さな声で言った横顔が、泣きそうになってる子供みたいで……少し胸がギュってなった。馬車が宿に到着するまで、俺はカムロさんの背中を優しくなでなでしてあげてた。

 始めから終わりまでキアムルさんに暴言をぶつけて怒鳴っていたけど、カムロさんなりにキアムルさんやご両親の気持ちを理解しているのかもな。……ただ、『そういうもの』だって、頭では解っていても感情の上でいつまでも消化できてないだけで。

 なんとなくだけど、そう思った。

 

 結局、釣りをする時間はもうなかったから、ディナーはカムロさんの釣った大物を2人で分け合って食べることになった。丸々と太った生きのいい魚を切り身にして、地元産の新鮮ハーブとバターや岩塩を使ったソテーだ! 美味いに決まってるだろ!

「んー! 美味い! 最高!」

 ふっくらしっかりしているけど繊細な歯ざわりで、口の中で優しく解れていく。脂の乗った身はバターやハーブとの相性が最高! 口の中に旨味の余韻だけが残って、生臭さが少しも感じられないのにビックリした。

「こんなに美味しいなんて……。自分で釣った魚だから、余計に美味しく感じるんでしょうか……」
「うんうん。それに、カムロさんが初めて釣った魚だから、もうプレミア物ですよ」
「ふふ。プレミアですか。確かにそうですね」

 皿に残ったソースも、パンで綺麗に吸い取ってペロッと完食した。他にもいろんな料理が出てきたし、全部美味かったけど、その中でも一番美味かった! 

 この美味さは、旅の思い出になる美味さだ!

 胃袋どころか心まで満たされた感覚に浸りながら、食後のお茶を飲んでまったり。誘拐事件はあったけど無事に帰還できたし、ディナーは超美味かった! 今日はいい1日になったなぁ。

「釣り、楽しかったです。明日も釣りをしませんか」
「いいですね。今日はちょっと短かったし、明日は朝から釣りましょうか」
「昼からにしませんか。今夜は、甘えたいですから」

 えっ? 甘えたい? 

 お、お誘いがきた! き、今日は俺が抱かれるのかな? それとも抱く方かな? そわそわしちゃいながらじいっとエロ魔術師様を見詰めると「……抱いてください。ハス君に優しく甘やかして欲しいです」って、言われたああああ!

「は、はいっ! 頑張ります!」

 動揺して思わずビシィ! って敬礼した俺。よおおし! 今夜こそ、トロトロのかんわいいカムロさんを堪能するんだっ! 急ピッチで心の準備をしちゃうぞ!

 ふんすと気合を入れてる俺を見て「いっぱい甘えさせてください」なんて言っちゃって、カムロさんがほんのりと微笑んだ。

 ……ぬあああああ! ちょっと照れてる感じがもう、たまらんですよ! エロケダモノ魔術師様なのにすんごく初々しい感じがして、そこが超可愛い! 今すぐぎゅーってしちゃいたいっ!






 ――ああもう! 大好き! 今夜は俺、マジで頑張っちゃいますよ! 

 











※次回、R18ではありません。どのような一夜だったかはご想像にお任せします。そしてさすがにもうキアムル氏は出てこないはず。というか出てこないでくださいおねがいします……。
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