【完結】騎士団をクビになった俺、美形魔術師に雇われました。運が良いのか? 悪いのか?

ゆらり

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番外・20年後

永遠に愛してますよ……ハス君

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 ――ハス君と出逢ってから、20年ほどが過ぎました。

 私たちが結婚した頃には赤子だったレーン君はすっかり大人になって、両親ゆずりの端正な顔立ちをした若者に成長しました。てっきり料理店を継ぐと思っていたのですが、どういうわけか騎士を目指し始めて、今は王都の騎士団の宿舎に住んでいます。料理店の方は、レーン君の双子の妹さんたちが頑張っているそうですよ。
 
「んん! 美味しいっ! 伯父さんのシチューはやっぱり最高っ!」
「おう! ありがとな」

 レーン君はハス君にかなり懐いていて、騎士団に近い私たちの家に、たまに遊びに来ます。

 ハス君の作るシチューが大好物で、とても美味しそうに食べてくれます。見ているこちらもいい気分になってしまう食べっぷり。ゆったりと二人で食べるのも悪くないですが、こうした賑やかな雰囲気もいいですね。

 私とハス君の間に子どもがいたとしたら、こんなふうだったかもしれませんね。

 ハス君との子どもがほしいと思ったこともありますが、今現在の技術ではまだまだ母体への負担が大きすぎるので実行するのは見送っています。いつか、ハス君に似た可愛い子どもがほしいですよ。

「伯父さんみたいな人と結婚したいなぁ……。料理上手で可愛い人がいい」
「あっはっは。レーンはイケメンだからなぁ。きっと可愛いお嫁さんがもらえるぞ」
「そうかなぁ。伯父さんくらいの料理上手って難しくない?」
「ふふ、ハス君ほど素敵な人はそういませんね」
「ちょ、カムロさん恥ずかしいっていうか、ほめすぎです……!」

 レーン君がハス君に向ける視線がほんの少し、熱を帯びていることに気付いてはいますが……、レーン君はハス君にとって可愛い甥ですし、私にとってもそうです。あくまでも甥として伯父に甘える態度くらいは許してあげていますよ。私はそこまで狭量ではありませんからね。

 こうして暮らしていられることが、とても、とても……幸せで、時折、これは都合のいい夢ではないかと思ってしまいます。覚めてしまわないかと恐ろしくなることさえも。

 そして、ハス君と出逢ったときのことを思い返しては、幸運を噛み締める日々です。

 ――あの日、あの酒場でハス君に出逢えたときから、私の幸せは始まりました。

 騎士団を追い出され、失意の底に沈んでいたハス君の話を聞いたとき、私は運命の巡り合わせに内心で歓喜していました。ハス君の心がどれほど疲弊し傷付いているかなど……、推し量ることもなく、ただ単純に自分自身の欲求を満たすことだけを考えていました。

 今でも、そのことを思い返すと苦いものが込み上げてくるのを感じます。この胸に刺さったまま抜けない感情は、二度と見せません。……ハス君を困らせてしまうだけですから。

 弱り果てた心の隙に、どうやって入り込もうか。なにをすれば手懐けることができるか。そういった狡猾なことばかりを考えていました。

 ……寂しかった。温もりが欲しかった。

 普段なら近付きもしない庶民向けの酒場に立ち寄ったのも、そんな人恋しさからでした。

 雇い入れたその日から、独りでは冷たく暗く思えていた屋敷が明るく居心地のよい場所へと一変しました。

 ただ体を維持するためだけに適当に食べていた食事も、彼とならとても美味しく、楽しく食べられるようになったのです。

 1年にも満たない時間で、すっかり骨抜きにされました。

 もう、優しく温かい彼のいない生活なんて考えられなかった。彼が私に向けてくれる感情が、同情やすり込みであってたとしも。逃がしてはならないと思いました。

 だからこそ、愛を囁き、体を求めました。

 愛撫に熱く蕩けていく彼はとても艶やかで可愛らしくて……、男性同士であることなど、その魅力の前では些細な問題でした。時さえ許すのなら、永久に繋がっていたいとすら思えるほどの幸福感と深い快楽に私は溺れました。

 場の空気に流されそうになりながらも、駄目ですと訴えるハス君を言葉で丸め込むようにして行為を進めてしまった自覚はあります。多少強引だったことは否めませんが……、最終的にはハス君は私を受け入れてくれました。

 どこまでも、優しくて愛しい私の伴侶……貴方を失ったら、私は生きてはいけません。


 ――それからの20年は、あっという間でした。

「今日のデザートは、卵たっぷりの固めのプリンのブランデー入り生クリーム添えです」
「わぁ、なんか贅沢な感じだ!」
「ブランデーは超高いけど後は安い材料だぞ。クリーム添えるだけで高級感アップだ」
「おおー。伯父さんさすが!」
「良い香りですね。ん、プリンの甘味とよく合います」
「お口に合いましたか。よかったです」
「ハス君の作るもので口に合わないものなんて、今まで一度もありませんよ」
「ひえっ! あ、ありがとうございます……」

 熟年になってくると冷めてくるなどという人もいますが、出逢った当時と変わらず私の気持ちは今でも熱いままです。ハス君も相変わらず、私を甘やかして、愛してくれています。

「ぶっは! 伯父さん、顔真っ赤になってる!」
「ぐっ、しょ、しょうがないだろ! カムロさん、俺に甘すぎ……。美味しくないときは美味しくないっていってくださいよ? 俺、カムロさんに我慢なんてしてほしくないですからね」
「ふふ。大丈夫ですよ。いつも満足していますから」
「うわぁ、甘々だぁ……。爺ちゃんと婆ちゃん甘々最強だと思ってたけど、伯父さんとカムロさんの方が上かな……」
「そ、そんなことないだろ! あっちの方が泥甘だ!」

 40代になったハス君は、相変わらず若々しくて可愛いです。さすがナイブレイド家の血を受け継ぐだけのことはありますね。

 ハス君の伯父様……あの超危険指定魔獣よりも厄介者なクラノゥサ・ナイブレイドも……齢80を超えてなお、40代の若さです。

 わたしは今年で50歳になりますが、20代の若さを保っています。魔術師は基本、長命で若作りなんですよ。


 ハス君との年齢差が出ないのはありがたいところですね。もっとも……、そうでなかったとしても、ハス君にはずっと私と同じ若い姿のままでいてもらいますけれど。

 ずっと……、100年でも200年でも。嫌だと言っても、絶対に逃がさない。貴方と死に別れるなんて考えられない。いつまでもあなたに甘えて……、甘やかしもしたい。あなたとの時間がたった数十年なんて、足りない。

 永遠に愛していますよ……ハス君。






※執着攻めカムロ氏。レーン君、超恐ろしい魔術師様に見逃されているだけでした。
※数百年後には不思議の森の魔法使いフウフとして、別の物語で伝説的存在になっていそうでもあり。
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