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ラズラウド①
しおりを挟む――あれは、父から狩りの仕方を教わり始めたばかりの事。
弓矢の練習のために広場へ行くと、大樹のところに見かけない子供がいた。
服の裾から見える手足がびっくりするくらい白くて綺麗だった。黒い髪もつやつやしてて、柔らかそうだ。
「なにしてるの?」
近づきながらそう声を掛けると、ぱっと振り返った。ちょっとつり上がり気味できつが、ぱっちりとした目をした可愛い子どもだった。顔も白くてびっくりするくらい綺麗だ。
「……大きな樹だと思って、見ていただけだ」
高めの声も綺麗で、可愛い。こんな子どもがいるなんてすごいと思った。
「お前は、何しに来たんだ」
大きな紫紺の瞳が凄く綺麗だった。真っすぐこちらを見て小さく首をかしげるのも可愛い。
「弓の練習に来たんだよ」
言いながらこどもの横に立って印を結んで、大樹に弓が上手くなりますようにと祈った。
「変わった祈り方だな」
「俺のとこで伝わってるお祈りだよ。他はどうかしらないけど」
「なるほど。この土地の特別な祈りなんだな」
「面白いな」と、言って笑った顔も可愛い。胸がぽかぽかと温かくなり、もっと話したくなった。
「弓が上手くなりますようにとか、良い獲物が捕れますようにとか、無事に帰れますようにとか、そういう事を祈るんだよ」
「そうか。それなら僕もそうしておこう」
すっと、印を結んで祈る。
「えっ、印を知ってるの?」
「いいや、お前がやったのを今見たからできたんだ」
「そうかあ。凄いね。一回でできるなんて。俺は父さんから教わったけど、ちょっとむつかしかったよ」
「そうか? ……お前は、今からここで弓の練習をするのか」
「あ、うん。そうだよ」
「もう少し話たかったが、邪魔をしてはいけないな……」
「えっ、じゃ、邪魔とかそういうのはないよ。お、俺も、もっと話したい!」
綺麗な子に話したいといわれたのが嬉しくて叫んだシタンに、こどもは瞳を丸くして驚いたかと思ったら嬉しそうに笑った。最初は少し目付きがきつかったのに、今の笑い顔は凄く可愛かった。
「――可愛い……」
シタンが思わず言ってしまった言葉を聞いた途端に笑顔が引っ込んで、子どもは鋭い目つきをした。
「……僕は男だぞ」
「うん。わかってるよ。でも、可愛いし」
もじもじと背負いの矢筒を結わえた紐を弄りながら素直に言うと、「失礼な奴だなっ!」と、怒りながら小さな手でシタンの胸板や肩を引っ叩いてきた。
「痛っ! ご、ごめん、うわ、い、痛いっ……!」
小さな手でも、力いっぱいやられるとかなり痛い。「やめてよ!」と、振り上げられた腕を掴んだが、折れそうな細さに怖くなって直ぐに放してしまう。
「お、俺が悪かったよぉ……」
謝りながらきつく目をつぶって身を小さくすると、叩くのが止まった。ゆっくりと目を開いてみると、少年は腕を組んでこちらを睨んでいる。
「ふん、悪かったと思ったのなら良い。……僕はラズラウドだ。お前は?」
怒っているのか恥ずかしかったのか、少し頬が赤くなっていた。そんな頬をしてツンと澄ました表情も可愛くて、叩かれた肩や胸板をさすりながら緩く笑いが漏れてしまう。
「えへへ。俺は、シタンだよ。……えっと、ラズ……ラウド?」
「ラズで良い。よろしく、シタン」
「うん。よろしくね、ラズ。ねぇ、せっかくだから遊ぼうよ。釣りとかどうかな」
弓の練習よりもラズと一緒に遊びたい。そわそわとしながら好きな釣りに誘ってみると、「つり?」と、不思議そうに眼を瞬いた後、「……やってみたい」と言った。
「よし、それじゃあ家に釣竿持ちに行くから、ついてきて」
「わかった」
こうして、その日のうちにラズと友達になった。
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