【完結・加筆修正中】横暴領主が平民狩人の俺に執着してくるんだけど、どうしたらいいと思う?

ゆらり

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52 戸惑いの連続と、諦め

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 ――こうして王都での出稼ぎ仕事が始まったのだが、それは戸惑いの連続だった。 

 机に向かいなにやら難しい仕事をしているハイレリウスの傍らで、彼が押印をした書類とそうでないものを仕分けたり、補佐をしている人達に渡したりする仕事をした。……文字に関しては難しい内容ばかりで全く読めないが、印の有無は分かる。

 ……とても簡単な仕事だ。

 時折、思い出したようにハイレリウスが振ってくる他愛ない質問や雑談に応じ、休憩時には茶と菓子を二人で摘まみ、屋敷を囲む広い庭園での息抜きと称した散歩の供をする。

 ……これも別に難しくない。いなくても良いだろう。

 シタンは何度か「俺、いる?」と、聞こうと思ったが、「いるとも」としか返されないのは最初に学んでいる。

 だが、彼と仕事をしている周囲の人間からしてみると、いつになく上機嫌で進みが速いそうだ。新しい考えも浮かびやすいらしく「シタン様のお陰です」などと、こっそりと耳打ちされたことまであった。

 ……ちっとも喜べない。役に立っている気がしないだけに、物凄く複雑な気分だ。

 仕事そのものだけではなくて、屋敷での扱われ方にも戸惑った。

 着る物の支度などは自分でしなくても良いし、風呂なども毎日準備されている。食事は料理人が作ってくれて、美味くて温かい料理が朝昼晩と食べられる。

 屋敷へ来た翌日には、体にぴったりの侍従の服を着せられて靴なども上等な物が渡された。どうせすぐにいなくなるのだから無駄になるよという気持ちを伝えはしたが、それを言った翌日に「似合うから着てごらん」と、新しい服が追加される始末。

 辺境の領主もそうだが、貴族というのは人の話を聞かないのかとやさぐれそうになった。

 侍従のウェイドや侍女達はシタンの銀髪を気に入り、やたらと手入れをしたがった。気が付けば使ったことのない油や、獣の毛で作られた櫛を使って丁寧に整えられ、複雑な編み込みや三つ編みを施されるようになっていた。 

 そして、髪を結う紐は、当然ハイレリウスが買った平紐だ。どうしてか、淡い青色を結ばれることが多い。

 仕事にしても衣食住に関しても、不足がないどころか度が過ぎている。
 
「――庭園に的場を作ったから、矢を射るところを見せてね」

 三日目にはそんなことを言われて、危うく気が遠くなるところだった。正直、そこまでされると申し訳なさと怖さが先に立ってしまったが、「あ、ありがと……」と、礼を言うしかない。

「なにか不足があるようなら、言うといい」
「じゅ、充分だよぉ……」

 ある方がおかしい。

 嬉々として世話を焼く屋敷の面々に囲まれて数日もした頃には……、色々と諦めた。
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